
数百のWebアプリをAzure App Serviceで運用し、年次のセキュリティ監査を受ける企業のプラットフォーム担当者は、2026年後半に複数のランタイムが立て続けにサポート終了を迎える事態に向き合うことになる。対象はAzure App Service上のPython 3.10、.NET 9(STS、短期サポート版、Standard Term Support)、.NET 8(LTS、長期サポート版、Long Term Support)で、いずれも2026年10月から11月にかけてEOL(サポート終了、End of Life)を迎える[1][2][3][4]。加えて、同じ運用チームが管理することの多いAzure Automationでも、Python 2.7・3.8とPowerShell 7.1・7.2が2026年9月30日に同様の扱いになる[5]。EOLを迎えても稼働中のアプリはそのまま動き続けるが、セキュリティ更新は止まる[1]。数百本のアプリを抱える組織ほど、どのアプリがどのランタイムで動いているかの棚卸しに時間がかかり、稟議による予算化の準備を今から始めないと期限に間に合わない。本稿は、各ランタイムの正確なEOL日と、稼働継続とセキュリティ空白の関係、棚卸しと予算化の進め方を整理する。
予備知識
- EOL(サポート終了、End of Life): ベンダーが機能追加・バグ修正・セキュリティ更新の提供をやめる時点。稼働自体は止まらない。
- STS(短期サポート版、Standard Term Support): 相対的に短い期間だけサポートされる.NETのリリース系列。.NET 9が該当する。
- LTS(長期サポート版、Long Term Support): 長期間サポートされる安定版の.NETリリース系列。.NET 8や.NET 10が該当する。
- ランブック: Azure Automationで実行する自動化スクリプトの単位。PythonやPowerShellで記述する。
App ServiceなどPaaSの構築・運用・IaC化を体系的に扱っており、複数アプリを抱える運用チームの実務基盤になる
Azure App Serviceで2026年後半に何が終了するのか
Azure App Serviceでは、Python 3.10と.NET 9(STS)、.NET 8(LTS)の3つが2026年10月から11月にかけて相次いでサポートを終える。Python 3.10は2026年10月1日にApp ServiceとAzure Functionsの双方でサポートが終了する[2]。.NET 8(LTS)は2026年11月10日に終了し、Microsoftは後継の.NET 10(LTS、2028年11月までサポート)への移行を推奨している[3][4]。.NET 9(STS)も同じ2026年11月10日に終了するが、これは一度動いた期限である。当初のAzure側の告知は2026年5月12日という早い期限だったが、Microsoftが2025年9月にSTSのサポート期間を18カ月から24カ月に延長したことで、.NET 8と同じ期日にそろった[4][6]。1つのランタイムの期限が一度動いた事実は、EOL日を固定値として扱う危うさを示している。
| ランタイム | Azureでの区分 | EOL日 | EOL後の状態 |
|---|---|---|---|
| Python 3.10 | App Service/Azure Functions共通 | 2026年10月1日 | 稼働継続、セキュリティ更新なし[2] |
| .NET 9 | STS(短期サポート版) | 2026年11月10日(旧告知は2026年5月12日) | 稼働継続、セキュリティ更新なし[4][6] |
| .NET 8 | LTS(長期サポート版) | 2026年11月10日 | 稼働継続、セキュリティ更新なし、.NET 10へ移行推奨[3][4] |
| Python 3.8/2.7、PowerShell 7.1/7.2 | Azure Automationのランブック(App Serviceとは別サービス) | 2026年9月30日 | ランブック実行継続、セキュリティ更新・サポートなし[5] |

移行コスト算定やコンバージョン管理、テスト計画など、ランタイム更新プロジェクトの落とし穴と進め方を実務目線で解説
サポート終了後もアプリが動き続けるのはなぜ危険なのか
EOLはアプリの停止を意味しない。この「動き続ける」という事実こそが、対応の優先順位を下げてしまう最大の要因になる。App Serviceの公式ポリシーは、コミュニティサポートが終了した言語について「アプリケーションは変更なく動作し続けるが、App Serviceはそのランタイムバージョンにセキュリティパッチや関連サポートを提供できない」と明記している[1]。障害としては現れないため、監視ダッシュボードにもアラートは上がらない。だが脆弱性情報が公開されるたびに、パッチが来ない状態のまま露出時間だけが積み上がっていく。年次のセキュリティ監査では、稼働中のランタイムバージョンとサポート状況の突き合わせが確認項目に入ることが多く、EOL済みランタイムの残存は指摘事項になりやすい。パッチ済みかどうかを機械的に確認するチェックだけでは、この種の「静かに保護を失ったアプリ」を見落とす。

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Azure Automationのランタイム終了もなぜ無視できないのか
App Serviceとは別サービスのAzure Automationでも、同じ四半期にランタイムEOLが集中する。2026年9月30日以降、Automationのランブックが使うPython 2.7・3.8とPowerShell 7.1・7.2はサポートされなくなり、公式告知は「これらのバージョンは2026年10月1日以降Automationでサポートされなくなる」と明記している[5]。ランブックは動き続けるが、セキュリティ更新もバグ修正もサポートも受けられなくなる点はApp Serviceと同じ構図である[5]。App Serviceのアプリと、その運用を支える定期パッチ適用やバックアップの自動化ランブックは、実際には同じプラットフォームチームが管理しているケースが多い。App Service側のPython 3.10やNET移行に気を取られ、Automation側の対応を後回しにすると、9月末の期限を静かに越えてしまう。棚卸しの対象は、App ServiceのWebアプリだけでなく、それを支えるAutomationランブックまで含めて設計する必要がある。
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棚卸しと予算化はどう進めるべきか
数百本規模のアプリを抱える組織では、対象把握そのものが最初の関門になる。App Serviceのリソース一覧からランタイムスタックとバージョンを機械的に抽出し、EOL日ごとにグルーピングすれば、どのアプリ群が最初の期限に当たるかが見える。優先順位付けでは、外部公開の有無や取り扱うデータの機微度を軸にし、EOLまでの残り日数だけで並べない方がよい。アップグレード作業には検証環境での動作確認とリリース調整が伴うため、稟議による予算化は8月から9月のうちに着手しないと、11月の期限に間に合わない。棚卸しの結果は一覧表として残し、次回以降のEOL波でも再利用できる形にしておくと、毎回ゼロから資産を洗い出す手間がなくなる。


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SIer保守契約と稟議フローがランタイムEOL対応を遅らせる日本企業特有の要因
同じ構図は日本企業のAzure環境でもそのまま成立するが、対応速度を左右する要因が異なる。多くの企業はApp Serviceの保守をSIerに委託しており、保守契約の範囲は「障害対応」と「定例パッチ適用」に閉じていることが多く、ランタイムのメジャーバージョン更新は契約外の追加案件として別途見積もりと稟議が必要になりやすい。稟議を起案してから決裁が下りるまでに数週間から数カ月かかる組織では、8月に着手しないと11月の期限に間に合わない。数百本のアプリのうち、開発時の担当者がすでに異動・退職しているものも珍しくなく、動作検証の当てが立たないまま期限だけが迫るケースも起こる。
| 論点 | IT部門の判断 | 決裁側の判断材料 |
|---|---|---|
| 対象把握 | App ServiceとAzure Automationの両方でランタイム一覧を今すぐ抽出する | 棚卸し自体は通常の保守範囲で承認可 |
| アップグレード予算 | SIerに追加見積もりを依頼し、検証工数を含めて算定する | 保守契約外の追加案件として9月までに稟議を通すか判断 |
まとめ
Azure App ServiceのPython 3.10と.NET 9(STS)、.NET 8(LTS)は2026年10月から11月にかけて相次いでEOLを迎え、同じ時期にAzure AutomationのPythonとPowerShellも同様の扱いになる[1][2][3][4][5]。EOL後もアプリやランブックは動き続けるが、セキュリティ更新は止まる。IT部門の次の一手は、App ServiceとAzure Automationの両方でランタイム一覧を今すぐ抽出し、EOL日ごとに優先順位を付けることだ。決裁側は、SIerへの追加見積もりを含めたアップグレード予算を、保守契約外の案件として9月までに稟議に載せられるかを判断材料にするとよい。稼働中という安心は、保護され続けていることの証明にはならない。
よくある質問(FAQ)
Q1. EOLを迎えたランタイムのアプリはすぐ止まりますか。
A. 止まらない。Azure App Serviceの方針では、コミュニティサポート終了後もアプリケーションは変更なく動作し続けるが、セキュリティパッチや関連サポートは提供されなくなる[1]。
Q2. Python 3.10とPython 3.8はどちらもApp ServiceのEOL対象ですか。
A. Python 3.10はApp Serviceで2026年10月1日にEOLを迎える[2]。Python 3.8とPython 2.7が対象になっているのはApp Serviceではなく、Azure Automationのランブックで、期限は2026年9月30日である[5]。
Q3. .NET 9はいつまで使えますか。
A. .NET 9(STS)は2026年11月10日にサポートが終了する。当初のAzure告知は2026年5月12日だったが、Microsoftのサポート期間延長により.NET 8(LTS)と同じ期日にそろった[4][6]。



