
数百人規模で自社LLM基盤や生成AIサービスをAWS上に構築し、年次予算策定サイクルを持つ企業のインフラ担当・調達担当が対象になる。GPUインスタンスを一定期間確保できるCapacity Block(GPUインスタンスを予約購入できるAWSの方式)に調達を依存している場合、2026年に入って価格の前提が崩れている。AWSはEC2 Capacity Blocks for MLの予約価格を2026年1月の最初の週末に約15%、同年7月1日に約20%引き上げた[1][3]。
半年で2度の改定は、P5・P5e・P5en・P4deに加えBlackwell世代のP6-B200・P6-B300まで対象を広げた[2]。従来オンデマンドより安価と位置づけられてきたCapacity Blockが、必ずしも割安とは限らない局面に入っている。次年度のAI基盤予算を組む段階で、GPU調達コストの前提を単年度の実績値でなく、値上げが続く可能性を織り込んで見直す必要がある。
本稿はAWS公式資料と複数の独立系メディア報道を突き合わせ、値上げの実態とマルチクラウド化・長期契約化を含む調達戦略見直しの判断材料を示す。
予備知識
- Capacity Block: GPUインスタンスを数日〜数週間単位で予約購入できるAWSの方式。期間と数量を確定して前払いする
- オンデマンド: 使った分だけ時間単位で課金する標準の購入方式。予約なしで即座に起動できる
- リザーブドインスタンス(RI): 1年または3年単位の利用を約束して割引を受ける購入方式。Capacity Blockの料金には適用できない
- Blackwell世代: NVIDIAの最新GPUアーキテクチャ。B200・B300を搭載するP6系インスタンスがこれにあたる
値上げ局面での予算見直しを、財務と技術の共通言語で組み立てる枠組みを提供する
AWSのGPU予約価格は具体的にいつ、何%上がったのか
2026年1月の改定は週末に適用された[3]。価格ページには「現在の価格は2026年1月に更新予定」と時期だけが予告されており、引き上げなのか引き下げなのか、幅がどれほどかは事前に示されていなかった[3][5]。主要リージョンでの変化は次のとおりである。
| インスタンス | 構成 | 2026年1月改定前 | 2026年1月改定後 | 上昇率 |
|---|---|---|---|---|
| p5e.48xlarge | H200×8 | 34.61ドル/時(約5,365円) | 39.80ドル/時(約6,169円) | 約15% |
| p5en.48xlarge | H200×8 | 36.18ドル/時(約5,608円) | 41.61ドル/時(約6,450円) | 約15% |
(1ドル=155円換算)
2026年7月1日の改定はさらに広く、P6-B300・P6-B200・P5・P5e・P5en・P4deの6インスタンスファミリーを対象に約20%の引き上げとなった[2]。P6世代は1アクセラレータあたりの時間単価が新設され、P6-B300が14.04ドル(約2,176円)、P6-B200が12.355ドル(約1,915円)である[2]。


Capacity Blockを含むAWS購入オプションの使い分けと予算統制の実務手順を補強する
なぜ半年で2度も値上げが起きているのか
AWSは値上げの理由を、供給と需要のパターンによる価格変動と説明している[1][2]。Capacity Blockはもともと購入時点の需給で価格が決まる建て付けで、値上げ自体は仕組み上想定内の動きにあたる。
一方で異論もある。クラウドコストの専門家Corey Quinn氏は、1月の値上げを「価格ページの公開ベースレートを更新したものであり、需給ではなく政策判断だ」と指摘した[3]。ただし上げ幅はリージョンで一様ではなく、米国西部(北カリフォルニア)ではp5eが1時間あたり43.26ドルから49.75ドルへと、他リージョンより大きく上がっている[3]。
背景には旺盛なAI投資がある。Amazonは2026年のAI関連設備投資に約2,000億ドル(約31兆円)を計画し、2027年末までに約100万個のNVIDIA GPUチップを確保する見通しと報じられている[2]。需要超過が続く限り価格は下方に硬直しやすい。
需給説明と政策判断のどちらが実態に近くても、利用者から見た結果は同じである。半年に1度、20%前後の予算超過リスクを織り込む必要が生じた。
AWSがEC2 Capacity Blocks for ML(GPUインスタンスを一定期間だけ確保予約できるAWSの購入方式)の料金を、2026年7月1日付で再び引き上げた。対象はP6-B300・P6-B200・P5・P5e・P5en・P[…]
オンデマンドとCapacity Blockの料金差はどうなっているのか
Capacity Blockはオンデマンドより常に安いとは限らない。AWS公式ドキュメントは、価格が購入時点の需給次第で決まり、割引の仕組みではないと明記している[1]。
参考として、AWSは2025年6月にP5・P4d系のオンデマンド価格を最大45%引き下げた。H100搭載p5.48xlargeのオンデマンド価格は98.32ドル(約15,240円)から44%下がり、現在は約55ドル/時(約8,525円、us-east-1)が目安である[4]。Capacity Blockは容量確保の対価であり、この目安を上回る局面もある。
| 購入方式 | 価格の決まり方 | 確保の確実性 | Savings Plans/RIとの併用 |
|---|---|---|---|
| オンデマンド | 標準料金、随時変動しにくい | 在庫があれば即起動 | 対象 |
| Capacity Block | 購入時点の需給で決定、予約後は固定 | 期間・数量とも確保 | 不可 |
| リザーブドインスタンス | 1年/3年コミットで割引 | 容量確保は保証されない | 対象 |

Capacity Blockの価値は単価の安さでなく、学習ジョブに必要な期間・数量を確実に確保できる点にある。確保が必須のワークロードでは、値上げを前提に予算を組み直すほかない。
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国内SIer経由の調達契約はこの値上げをどう吸収するのか
同じ値上げは日本企業にも及ぶが、反映のされ方が異なる。米国企業の多くはAWSと直接契約し、価格改定を即座に予算へ反映できるのに対し、日本企業ではSIerが再委託や二次販売の形で仲介する契約構造が多く、値上げの反映に時間差が生じやすい。
| 観点 | 直接契約が前提の場合 | 日本企業で多い実態 |
|---|---|---|
| 契約主体 | 情シスがAWSと直接交渉、改定に即応 | SIer経由の保守契約が多く、価格転嫁までタイムラグが生じる |
| 予算承認 | 変動費として都度計上 | 年度予算を稟議で確定済み、期中の20%増は追加稟議が必要 |
| 監査・内部統制 | ベンダー任せになりやすい | 価格変動リスクの開示・説明責任が内部統制上求められる |
| 人材・体制 | FinOps専任がコスト監視 | クラウドコスト専任が少なく、値上げ検知が遅れやすい |
| 既存システムの年数 | 刷新サイクルが短い | 基盤刷新サイクルが長く、契約見直しの意思決定に時間がかかる |
含意は次の1行に集約できる。IT部門は月次でCapacity Block購入実績とAWS公式料金表を突き合わせ、値上げ検知の自動化を進める。決裁側は次年度予算にGPU調達コストの15〜20%変動枠を織り込み、SIer経由契約でも改定反映のタイムラグを契約書に明記させる。
※本記事は2026年7月時点の情報です。料金・提供条件は変動が速いため、最新は各公式でご確認ください。一部アフィリエイトリンクを含みます。 ✅ 先に結論(Seedance 2.0の要点) 何がすごい[…]
まとめ
IT部門担当者は、Capacity Block依存インスタンスの棚卸しを行い、P6世代への切替可否や長期契約への移行余地を検証する一手を次に打つべきである。決裁側は、次年度AI基盤予算にGPU調達コストの上振れ枠を設け、マルチクラウド化や複数ベンダー見積もりを判断材料に加える必要がある。
半年で2度の値上げは一過性の調整ではなく、GPU予約価格が恒常的な上昇局面に入った兆候として扱うべきである。

よくある質問(FAQ)
Q1. 既に購入済みのCapacity Blockの価格は今回の値上げの影響を受けるか
影響を受けない。価格は予約時点で固定され、その後の改定で遡って変わることはない[1]。
Q2. Capacity Blockは今後も値上げが続くか
AWSは公式の料金ページで「現在の価格は次回2026年10月に更新予定」と、次の改定月を公開している[5]。方向と幅は示されていないが、半年で2度の引き上げという実績を踏まえると、10月も上昇側を想定して予算を組むのが安全である[1][3][5]。
Q3. Capacity Block以外にGPU調達コストを抑える方法はあるか
稼働率が読める用途ではリザーブドインスタンスや長期Savings Plansが選択肢になる。複数クラウドでの見積もり比較も有効な手段である。
出典
[1] AWS公式ドキュメント: Capacity Blocks pricing and billing — https://docs.aws.amazon.com/AWSEC2/latest/UserGuide/capacity-blocks-pricing-billing.html[2] AI Weekly: AWS Raises EC2 GPU Capacity Block Prices 20% From July 1 — https://aiweekly.co/alerts/aws-raises-ec2-gpu-capacity-block-prices-20-from-july-1
[3] The Register: AWS raises GPU prices 15% on a Saturday, hopes you weren’t paying attention — https://www.theregister.com/2026/01/05/aws_price_increase/
[4] AWS News Blog: Announcing up to 45% price reduction for Amazon EC2 NVIDIA GPU-accelerated instances — https://aws.amazon.com/blogs/aws/announcing-up-to-45-price-reduction-for-amazon-ec2-nvidia-gpu-accelerated-instances/
[5] Amazon Web Services: EC2 Capacity Blocks for ML pricing — https://aws.amazon.com/ec2/capacityblocks/pricing/




