AWSとGoogle Cloudを直結、マルチクラウド接続の新選択肢

AWSは2026年4月14日、自社のVPCと他クラウドのVPCをインターネットを通さずに直接つなぐマネージドサービス「AWS Interconnect – multicloud」を一般提供開始した[1]。開始時の接続先はGoogle Cloudだけで、対象は米国と欧州の5つのリージョンペアだった[1]。9月時点ではGoogle Cloudとのペアが8つに増え、アジア太平洋のシンガポールとシドニーが加わっている[2]。8月31日にはMicrosoft Azureとの接続がプレビューとして始まり、同じ告知でOracle Cloud Infrastructure(OCI)は一般提供と位置づけられた[3]。料金面では5月29日、AWS側の料金がかからない500Mbpsの接続枠が追加された[4]。

同じ8月には、AWS Direct Connectの仮想インターフェース(VIF)が受け付けるオンプレミス側の経路(プレフィックス)が、従来の最大100から、VIFごとに最大1,000まで割り当てられるようになった[5]。一方、Interconnect接続をDirect Connectゲートウェイ(DXGW)にアタッチすると、DXGWのプレフィックス割り当て枠10,000のうち2,000を消費する[6]。オンプレミスとの専用線と他クラウドとの直結を同じDXGWに集める構成では、経路数の配分を組み直すことになる。なお、東京・大阪リージョンはどの接続先とのペアにも入っていない[2]。

予備知識

  • AWS Direct Connect: AWSと自社拠点を専用線で接続するサービス。コロケーション施設を経由し、帯域を契約して利用する。
  • AWS Interconnect – multicloud: AWSのVPCと他クラウドのVPCを、インターネットを経由せず直接つなぐマネージドサービス。Google Cloud側の名称はPartner Cross-Cloud Interconnect for AWS[7]。
  • Direct Connectゲートウェイ(DXGW): Direct ConnectのVIFやInterconnect接続を束ね、仮想プライベートゲートウェイ(VGW)やTransit Gateway(TGW)へ経路を配るグローバルな論理オブジェクト[8]。
  • Cloud Interconnect: Google Cloudの専用接続サービス群。オンプレミス向けのDedicated Interconnect・Partner Interconnectと、他クラウドと物理回線でつなぐCross-Cloud Interconnectなどがある[9]。
  • BGP(経路制御プロトコル): ネットワーク機器どうしが経路情報をやり取りし、通信経路を決める仕組み。

VPCやルーティングの基礎を押さえた上で、今回のようなクロスクラウド接続の位置づけを理解する土台になる。

4月の一般提供から9月までに変わったこと

Interconnect – multicloudは、AWSのグローバルバックボーンと接続先クラウドのプライベートネットワークだけを通るレイヤー3の接続で、公衆インターネットを経由しない[1]。相互接続施設の物理リンクはMACsecで暗号化され、1本の接続が少なくとも2か所の物理施設にまたがる[1]。利用者は物理回線も冗長構成も用意しなくてよく、AWSによれば接続の作成は数分で済む[1]。

AWS Interconnect – multicloudの構成図。AWSリージョンのDirect Connectゲートウェイから、AWSのバックボーン、2か所の相互接続施設、接続先クラウドのバックボーンを経て、接続先クラウドのリージョンまで1本の接続が延びている
AWS Interconnect – multicloudの構成。AWSと接続先クラウドのバックボーンを、2か所の相互接続施設にある暗号化されたリンクがつなぐ(画像:AWS News Blogより)

対象リージョンは一般提供の後に広がった。AWSのリージョン対応表に載っている9月時点のGoogle Cloudとのペアは次の8つである[2]。

AWSリージョンGoogle Cloudのリージョン提供時期
バージニア北部(us-east-1)バージニア北部4月の一般提供時
北カリフォルニア(us-west-1)ロサンゼルス4月の一般提供時
オレゴン(us-west-2)オレゴン4月の一般提供時
ロンドン(eu-west-2)ロンドン4月の一般提供時
フランクフルト(eu-central-1)フランクフルト4月の一般提供時
ストックホルム(eu-north-1)ストックホルム一般提供後に追加
シンガポール(ap-southeast-1)シンガポール一般提供後に追加
シドニー(ap-southeast-2)シドニー一般提供後に追加

接続先も増えた。8月31日にはMicrosoft Azureとの接続がプレビューになり、対象のAWSリージョンはバージニア北部、北カリフォルニア、フランクフルト、シドニーの4つである[3]。同じ告知はGoogle CloudとOCIを一般提供と記している[3]。5月時点ではパブリックプレビューだったOCIとのペアは、AWSのバージニア北部とOCIのアッシュバーンの1つだけである[2][4]。

料金は要求した容量に応じた時間単位の定額で、単価はリージョンペアによって異なる[1]。AWS側では、転送したデータ量に応じた別料金はかからない[8]。5月29日に追加された無料枠では、500Mbpsの接続にAWS側の料金がかからない。AWSによれば500Mbpsは月におよそ160TBの転送量に相当し、冗長性は有償の接続と変わらない[4]。対象は顧客・AWSリージョンごとに、AWSで一般提供されている接続先1社につきローカル(Tier 1)接続1本までで、現時点ではGoogle CloudとOCIが該当する[3][4]。接続先クラウド側の料金は、各社がAWSとは別に決めて請求する[4]。

AWS VPCとGoogle Cloud VPCのアプリケーションをAWS Interconnect – multicloudで直結する構成図。接続のラベルに、500Mbpsまで無料なのはAWS側のみと記している
500Mbpsの無料枠が免除するのはAWS側の料金だけで、Google Cloud側の料金は別途かかる

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Direct Connectのプレフィックス上限拡大とDXGWの割り当て枠

8月20日、AWS Direct Connectにinbound prefix controlsが追加された[5]。これまでプライベートVIFとトランジットVIFがオンプレミスから受け付けるプレフィックスは最大100で、大きなネットワークは経路の集約やVIFの分割で上限を回避していた[5]。新機能ではVIFごとにIPv4・IPv6それぞれ最大1,000まで割り当てられ、追加料金はかからない[5]。

割り当ては、専用接続ごとの枠(IPv4・IPv6それぞれ、1Gbps・10Gbpsの接続で5,000、100Gbpsで30,000、400Gbpsで50,000)と、DXGWごとの枠(アタッチする全VIFの合計でIPv4・IPv6あわせて10,000)の両方から引かれる[6]。VIFで広告するプレフィックスが割り当て数を超えると、そのVIFのBGPセッションは切断される[6]。

DXGWにInterconnect接続をアタッチすると、その接続がDXGWの10,000のうち2,000を消費する[6]。Interconnect接続を1本アタッチしたDXGWでは、VIFに割り当てられるのは残り8,000になり、IPv4で1,000ずつ割り当てるVIFなら10本つなげるところが8本までになる。上限を超えるVIFのアタッチは拒否される[6]。

もう1つの制約として、InterconnectをアタッチしたDXGWに関連付けられるVGW・TGWは、Interconnectのローカルリージョン(作成時に選んだAWSリージョン)のものに限られる[8]。既存のDXGWを流用するか、Interconnect用に分けるかは、プレフィックス枠とこの制約の両方から決めることになる。

Google Cloud VPCからのInterconnect – multicloud接続と、オンプレミスからのDirect Connect(VIF)が同じDXGWに集まり、DXGWはローカルリージョンのVGW・TGWを経由してAWS VPCにつながる構成図。DXGWのプレフィックス割り当て上限10,000のうち2,000をInterconnect接続が消費し、VIFに残るのは8,000と記している
Interconnect接続を1本アタッチしたDXGWでは、VIFに割り当てられるプレフィックスが残り8,000になる
Cloud

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マルチクラウド接続の選択肢をどう整理するか

AWSとGoogle Cloudをつなぐ方法は以前からあった。AWSは、従来のクラウド間接続にはVPNトンネルの管理やコロケーション施設との調整が必要だったと説明している[1]。閉域の経路としては、コロケーション施設でDirect ConnectとGoogle CloudのCloud Interconnect(Dedicated/Partner)を個別に契約して相互接続する方法のほか、Googleが他クラウドとの間に物理回線を用意するCross-Cloud Interconnectもある[9]。専用の経路を持つ方法を並べると次のようになる。

接続方法物理回線の手配帯域の単位開通までの目安冗長化
コロケーション施設での相互接続(Direct Connect+Cloud Interconnect)必要(利用者が手配)契約する回線による利用者が構成
Cross-Cloud Interconnect(Google Cloud)必要(物理接続はGoogleが用意、AWS側のDirect Connectポート〈LAG〉は利用者が発注)[10][11]10Gbps/100Gbps[7]1〜4週間[7]利用者が構成[7]
AWS Interconnect – multicloud不要[7]用意された帯域から選択(AWS側の無料枠は500Mbps)[1][4]数分[1][7]製品に組み込み[1][7]

—は、公開情報で一律の目安を確認できなかった項目。

Google CloudはPartner Cross-Cloud Interconnect for AWSをCross-Cloud Interconnectの発展形と位置づけ、物理的な手配と冗長構成の設定を利用者に求めない点を違いに挙げている[7]。

AWSは500Mbps(月約160TB)を、マルチクラウドのワークロードやデータのレプリケーションを支えられる量だとしている[4]。大規模なデータ基盤の一括移行には足りない場面もあるが、アプリケーション間のAPI連携や差分レプリケーションなら無料枠で試せる可能性がある。既存の相互接続をまとめて置き換えるより、新しく作る連携経路から使い始めるほうが現実的である。

AWSとGoogle Cloudの間の経路ごとに、両端が対象8ペアのリージョンかを判断し、いいえ(東京・大阪など)なら既存方式の継続かCloud WANなどで対象リージョンへ延ばす。はいなら帯域が500Mbps以内かを判断し、以内ならAWS側の無料枠で試験導入(Google Cloud側の料金は別途)、超えるなら容量に応じた時間単位の料金で契約する判断フロー
AWSとGoogle Cloudの間の経路ごとに、リージョンペアと帯域で接続方式を選ぶ流れ(2026年9月時点の対象ペアに基づく)
経路消失の障害事例

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日本企業の場合、何を検討すべきか

最初の論点は対象リージョンである。9月時点で、東京(ap-northeast-1)と大阪(ap-northeast-3)はどの接続先とのペアにも含まれていない[2]。

接続先提供段階ペア数アジア太平洋のペア東京・大阪
Google Cloud一般提供8シンガポール、シドニー対象外
Microsoft Azureプレビュー4シドニー対象外
OCI一般提供1なし対象外

東京のワークロードから使うには、シンガポールなど対象リージョンのInterconnectまで経路を延ばす。AWS Cloud WANなら、同じDXGWにアタッチしたInterconnectへ、どのリージョンのコアネットワークエッジ(CNE)からも到達できる。AWSの料金ドキュメントも、東京とバージニア北部にCNEを置き、バージニア北部のInterconnectを両方から使う例を示している[8]。TGWで組む場合は、東京のTGWをInterconnectのローカルリージョンのTGWとピアリングし、リージョン間のデータ転送料金とTGWのデータ処理料金が加わる[8]。

料金のTier(ローカル、リージョナル、大陸内、長距離など)は、Interconnectとワークロードのリージョンの位置関係で自動的に決まり、無料枠の対象はローカル(Tier 1)の接続である[4][8]。東京から他リージョンの接続を使う構成は、Tierに応じた料金で試算することになる。

米国・欧州に加え、シンガポールやシドニーでAWSとGoogle Cloudを併用している企業なら、その区間から試す余地がある。国内リージョンだけで両クラウドをつないでいる企業は、東京・大阪がリージョン対応表に載るまで既存構成を維持する判断も成り立つ[2]。

Direct Connect側の変更は国内でもすでに使える。プレフィックス制御はDirect Connectを提供するすべての商用リージョンが対象で[5]、東京・大阪にもDirect Connectのロケーションがある[12]。VIFあたり100の上限に合わせて経路を集約してきたネットワークは、Interconnectとは関係なく割り当てを見直せる。

まとめ

AWS Interconnect – multicloudは、一般提供から5か月でGoogle Cloudとのペアが5から8に増え、Azureのプレビューも始まった[1][2][3]。ただし東京・大阪リージョンにはまだ接続を作れない[2]。この記事の内容から取れる行動は次の3つである。

  1. AWSとGoogle Cloudの間の通信をリージョンの組み合わせと帯域で洗い出し、8つのペアに入り500Mbpsに収まる経路を無料枠の候補にする[2][4]
  2. Interconnectを既存のDXGWにアタッチするなら、DescribeDirectConnectGateways APIのtotalPrefixPoolAllocationsでVIFの割り当て合計が8,000以内か、関連付けたTGWがローカルリージョンだけかを確認する[6][8]
  3. 東京・大阪が中心なら、Interconnectの対応を待つ間にVIFごとのプレフィックス割り当てを見直す[5]

よくある質問(FAQ)

Q. AWS Interconnect – multicloudは東京リージョンでも使えますか。
A. 2026年9月時点では、東京・大阪リージョンに接続を作れない。アジア太平洋の対象は、Google Cloudとのペアがシンガポールとシドニー、Azure(プレビュー)とのペアがシドニーである[2]。東京のワークロードからは、Cloud WANやTGWピアリングで対象リージョンの接続まで経路を延ばす[8]。

Q. 500Mbpsを超える帯域では使えませんか。
A. 使える。500Mbpsより大きい容量の接続は、容量に応じた時間単位の料金になる[1]。無料枠で免除されるのはAWS側の料金だけで、接続先クラウド側の料金は別に発生する[4]。

Q. Direct Connect経由でGoogle Cloudと相互接続していれば、乗り換える必要がありますか。
A. 必須ではない。既存の構成を残したまま、新しい連携経路から使い分けられる。同じDXGWにInterconnect接続をアタッチする場合は、VIFに割り当てられるプレフィックスが8,000に減る点と、関連付けられるVGW・TGWがローカルリージョンに限られる点を先に確かめておく[6][8]。

出典

[1] AWS Interconnect is now generally available, with a new option to simplify last-mile connectivity
[2] Regional Availability – AWS Interconnect
[3] AWS announces AWS Interconnect – multicloud connectivity with Microsoft Azure in preview
[4] AWS Interconnect – multicloud now offers a free 500 Mbps tier
[5] AWS Direct Connect introduces inbound prefix controls and higher prefix scale
[6] Inbound prefix controls for Direct Connect
[7] Partner Cross-Cloud Interconnect for AWS overview
[8] Pricing for AWS Interconnect
[9] Cloud Interconnect overview
[10] Cross-Cloud Interconnect overview
[11] Order AWS ports(Cross-Cloud Interconnect for AWS)
[12] AWS Direct Connect | Find Locations