SharePoint外部共有のOTP廃止、B2Bゲスト移行は待ったなし

取引先とSharePointやOneDriveでファイルを共有する際、相手にメールでワンタイムパスコードを送って確認してもらう、という運用に心当たりがある企業は多いはずだ。この認証方式が、2026年10月に完全に廃止される。取引先との日常的なファイル共有に依存している企業のIT基盤担当者にとっては、共有リンクが突然「アクセス拒否」に変わる前に、外部共有の仕組みそのものを作り直す必要に迫られる変更だ。

予備知識

  • SPO OTP(SharePoint One-Time Passcode): 外部ユーザーがSharePoint/OneDriveの共有リンクを開く際、メールで送られる使い捨てのパスコードを入力して本人確認する従来方式。
  • Microsoft Entra B2B(Business to Business): 社外ユーザーを「ゲストアカウント」として自社のEntra IDディレクトリに登録し、組織のアカウントとして外部共有を管理する仕組み。
  • ゲストアカウント: 外部ユーザー用にEntra ID上へ作成されるアカウント。一度作成されると、削除されない限りディレクトリに残り続ける。
  • 特定のユーザー向けリンク: SharePoint/OneDriveで、指定した個人だけがアクセスできるよう設定する共有リンクの種類。

外部共有を含むSharePoint運用管理の設定項目を画面つきで一通り確認したい担当者向け。

何が変わるのか:OTP認証そのものがなくなるわけではないが、経路が変わる

MicrosoftはSharePoint/OneDriveの外部共有を、2段階でEntra B2Bへ移行させている[1][2]。第一段階は2026年5月から始まっており、新規に作成される外部共有の招待と認証は自動的にEntra B2B経由になった。外部の相手にファイルを共有すると、Entra B2B招待マネージャーがその相手のゲストアカウントを自動的に作成し、以降はそのゲストアカウントを通じてアクセスする形になる[3]。

第二段階が、SharePoint独自のOTP認証の廃止だ。当初は2026年8月末が目標とされていたが、7月の更新で本番環境における開始日が10月1日、完了予定日が10月31日に再スケジュールされた[1]。この段階が完了すると、ゲストアカウントを持たない外部ユーザーは、過去に共有された「特定のユーザー向けリンク」を開いてもアクセス拒否になる[2][4]。なお、OTP認証という仕組み自体が消えるわけではなく、Entra ID側の認証方式の一つとしては残る場合がある。変わるのは、SharePointが独自に管理していたOTP経路が廃止され、Entra B2Bのゲストアカウントを介した経路に一本化される点だ。

SPO OTP廃止に至る2段階移行のタイムライン図
SharePoint外部共有のEntra B2B移行、2段階のスケジュール

権限管理とガバナンスの実践ガイドとして、外部共有ポリシーの全社設計を見直す際の参考になる一冊。

誰が、何に困るのか

影響を受けるのは、外部ユーザーとの共有リンクを「特定のユーザー向け」形式で運用してきたテナントすべてであり、商用・政府機関・ソブリンクラウドを含むMicrosoft 365テナントが対象になる。ただし同じ告知の7月17日更新で、フェーズ1・2ともGCC・GCCH・DoDは除外され、これらの環境の日程は別途案内するとされている[1]。つまり日本の商用テナントは10月の日程がそのまま適用され、猶予はない。特に、取引先や個人事業主など、社外の相手と日常的にファイルをやり取りしている業務部門ほど影響が大きい。

過去に共有したリンクの相手が、既にゲストアカウントとして自社ディレクトリに登録されていれば問題は起きない。しかし、OTP認証だけで運用してきた古い共有リンクの相手がゲストアカウント化されていない場合、10月の移行完了後にアクセス拒否が発生する。復旧するには、Entra B2Bでゲストアカウントを新規作成するか、共有元のユーザーが該当ファイル・フォルダ・サイトを少なくとも1回再共有する必要がある[4]。

状況10月の移行完了後
相手が既にEntra B2Bゲストとして登録済み影響なし、そのままアクセス可能
相手が未登録でOTP認証のみに依存アクセス拒否、ゲストアカウント作成か再共有が必要
今後新規に共有するリンク自動的にEntra B2B経由でゲストアカウントが作成される
ゲストアカウント有無によるアクセス可否の分岐図
移行完了後、外部ユーザーがアクセス可否を左右する分岐
M365の10月遮断

複合機のスキャン送信連携や会議室予約システムなど、Exchange Web Services(EWS、旧来のメール連携API)経由でメール機能を呼び出す社内システムを何年も運用してきた、数千人規模の企業の情報システム部門にとって、2026[…]

移行前に確認すべきこと

Microsoft Learnは現状把握の手順を具体的に示している。サイト単位で外部共有レポート(external sharing report)を出し、「User E-mail」列を見ることで、SPOのOTPで招待されたがEntra B2Bゲストとしてはまだ登録されていない相手を一覧できる[2]。告知側も同様に、ゲストアカウントを持たない外部協業者を外部共有レポートで特定するよう案内している[1]。特に、古い共有リンクに依存しているチームほど、移行完了後の影響が大きい。

対応フェーズ具体的アクション
現状把握サイト単位の外部共有レポートで「User E-mail」列を確認し、B2Bゲスト未登録の相手を洗い出す[2]
洗い出し業務部門ごとに主要な外部共有先(人・ドメイン)を一覧化
突き合わせ洗い出した相手がEntra B2Bゲストとして登録済みかを確認
事前対応未登録の重要な取引先には、10月の完了前に再共有してゲスト化しておく
外部共有先の棚卸しから事前ゲスト化に至る対応フロー図
移行完了前の事前対応フロー
Entraの廃止予定

Microsoft Entra ID(旧Azure AD)の動的メンバーシップグループで部署や役職ごとにTeamsとSharePointの権限を配り、年1回の内部監査でアクセス権の棚卸し証跡を求められている。数千人規模の企業でID基盤を預[…]

日本企業の「取引先とのファイル共有」は棚卸しできているか

日本企業では、取引先や協力会社とのファイル共有が部門ごとに個別に運用されがちで、情報システム部門が全社の外部共有状況を一元的に把握していないケースが多い。契約書や見積書のやり取りをSharePoint/OneDriveの共有リンクで行っている営業部門や購買部門は、IT部門の目が届きにくい領域だ。今回の移行は、こうした「見えていない外部共有」を可視化する機会になる一方、対応が後手に回ると、取引先とのやり取りが10月に突然止まるリスクを抱える。

海外企業では、外部共有のガバナンスをIT部門が一元管理し、監査ログの定期レビューを制度化している例が多い。日本企業では、部門ごとの共有運用まで情シスが把握しきれず、今回のような移行イベントが実際に起きて初めて影響が判明することが少なくない。

観点海外企業で進みやすいこと日本企業で起きやすいこと
外部共有の把握IT部門が監査ログを定期レビュー部門ごとの運用をIT部門が把握しきれない
移行対応ベンダー発表の時点で計画的に準備移行完了間際、または障害発生後に対応
取引先への周知事前に取引先へゲスト化の案内を送付取引先からの問い合わせで発覚することも
部門分散の外部共有からIT部門主導の体制構築に至る流れ図
日本企業における外部共有ガバナンス確立の流れ

IT部門担当者の次の一手は、部門横断で外部共有の実態を棚卸しし、重要な取引先については10月の完了前にゲストアカウント化を済ませておくことだ。決裁側にとっての判断材料は、この棚卸し作業と取引先への周知を、どの部門がいつまでに完了させるかという体制づくりになる。

まとめ

SharePoint/OneDriveの外部共有は、2026年10月にSPO OTP認証が完全廃止され、Entra B2Bゲストアカウントを介した経路に一本化される。ゲストアカウント化されていない外部ユーザーは、過去の共有リンクにアクセスできなくなる。IT部門担当者の次の一手は、部門横断での外部共有の棚卸しと重要な取引先の事前ゲスト化、決裁側の判断材料はその体制づくりをいつまでに完了させるかだ。取引先とのファイル共有が、ある日突然止まる事態を避けられるかどうかは、今の準備にかかっている。

よくある質問(FAQ)

Q. 今すぐ何か対応しないと、すべての外部共有が止まるのか?
A. 既にEntra B2Bゲストとして登録済みの相手には影響がない。影響を受けるのは、OTP認証のみに依存してきた古い共有リンクで、かつ相手がゲストアカウント化されていない場合に限られる。

Q. 外部ユーザーのゲストアカウントは誰が作成するのか?
A. 新規に共有を行うと、Entra B2B招待マネージャーが自動的にゲストアカウントを作成する。既存の共有についても、共有元のユーザーが対象ファイルやフォルダを再共有すればゲスト化のきっかけになる。

Q. 自社の外部共有の利用実態はどこで確認できるか?
A. サイト単位の外部共有レポートで確認できる。「User E-mail」列に、SPOのOTPで招待されたがEntra B2Bゲストとして登録されていない相手が並ぶ[2]。

出典

[1] https://mc.merill.net/message/MC1243549
[2] https://learn.microsoft.com/en-us/sharepoint/faqs-odspintegrationwithentrab2b
[3] https://blog.admindroid.com/entra-b2b-replaces-sharepoint-one-time-passcode-for-external-sharing/
[4] https://office365itpros.com/2026/03/06/guest-accounts-spo/