EKS Auto Mode、GPU管理費最大60%減の見極め方

AWSは2026年7月7日、EKS Auto ModeのGPU・アクセラレータ向け管理費の引き下げを発表した。適用は同年7月1日からで、G系列が35%、P系列とAWS Trainiumが60%下がった[1]。Auto Modeを使っているクラスタには手続きなしで反映される[1]。

東京リージョンの料金表で確かめると、Auto Mode管理費はEC2オンデマンド単価に対してG系列が7.8%、P系列が4.8%になった。汎用インスタンスは12%だ[2][3]。一方、自前運用のノードプールからAuto Modeへ移る手間は値下げでは変わらない。EBSボリュームとロードバランサーは載せ替えが要り、代替CNIの構成は移行の対象外になっている[4]。値下げを移行の理由にするなら、管理費の比率、国内リージョンの品ぞろえ、載せ替えの作業量の3点を先に確かめることになる。

予備知識

  • EKS Auto Mode: ノードの起動・スケーリング・パッチ適用・障害ノードの交換をAWSが担うEKSの運用モード[5]。
  • G系列/P系列: GPUを積むEC2インスタンス群。東京の料金ではg6.xlargeが1時間1.1672ドル、p5.48xlargeが68.80ドルで、P系列のほうが1台の単価が大きい[3]。
  • AWS Trainium/Inferentia: AWSが独自に設計した機械学習用アクセラレータ。EC2ではTrainiumがtrn、Inferentiaがinfで始まるインスタンス名で提供される。
  • Auto Mode管理費: Auto Modeが起動・管理するEC2インスタンスごとに、EC2料金とは別にかかる時間単価。秒単位で課金され、最低1分から[2]。

GPUのような高額リソースの値下げ・移行判断を、現場と予算側が協調して下すFinOpsの型を学べる

Auto Modeが肩代わりする範囲

Auto Modeでは、ノードのOS設定・パッチ適用・監視・ヘルス維持までをAWSが受け持つ。ノードはBottlerocketベースのAMIで動き、NVIDIAとNeuron向けのカーネルドライバとプラグインが含まれる[5]。GPU向けには、ローカルNVMeを持つインスタンスでのコンテナイメージの並列プル・展開と、GPUのハードウェア障害を検知して異常ノードを自動で入れ替えるノード修復が用意されている[1]。

標準モードではGPUプラグインやヘルスチェッカー、EBS CSIドライバをアドオンとして自分で入れて管理するが、Auto Modeではこれらが中核コンポーネントとして組み込まれる[5]。自前運用なら、Karpenterなどのスケーラーの構成、GPUドライバの版管理、障害ノードのドレインと交換は運用チームの持ち分になる。アプリケーションの可用性・セキュリティ・監視と、VPCやクラスタ設定は、Auto Modeでも利用者側に残る[5]。

GPUノードの運用のうち、EKS Auto ModeではOS・パッチ・GPUドライバとGPU障害ノードの交換をAWSが担い、自前運用ではKarpenter等の構成とドライバ管理・ドレイン処理を自社が担うことを示す図。アプリケーションとVPC・クラスタ設定はどちらでも利用者側に残る
EKS Auto Modeと自前運用の責任分担

肩代わりの代わりに手放すものもある。AMIはAuto Modeが選び、GPUドライバもそのAMIに含まれる。ノードへのSSH・SSM接続はできず、ノードは最長21日で新しいものに入れ替わる。上限を短くすることはできる[5]。ドライバの版をアプリケーションの要件に合わせて固定している環境や、何週間も同じノードを使い続ける学習ジョブがある環境では、ここが移行の前提条件になる。

自前ノード運用とマネージド機能の使い分けを、本番環境を見据えた具体的な設計判断として理解できる

値下げ後の管理費——東京の料金表で見る比率

今回下がったのはEC2インスタンスの料金ではなく、その上に乗るAuto Mode管理費だ[1]。管理費はインスタンス種別ごとの時間単価で、EC2料金に上乗せされる[2]。東京リージョンの料金表から、EC2オンデマンド単価(Linux)と管理費を並べると次のようになる。

区分EC2オンデマンド(1時間)Auto Mode管理費(1時間)管理費÷EC2
汎用c6a.2xlarge0.3852ドル0.04622ドル12.0%
G系列g6.xlarge1.1672ドル0.09104ドル7.8%
G系列g6e.xlarge2.6990ドル0.21052ドル7.8%
P系列p5.48xlarge68.80ドル3.3024ドル4.8%
Inferentiainf2.xlarge1.1373ドル0.13648ドル12.0%

2026年9月11日時点の東京リージョンの料金ページ[2][3]から算出した。

7.8%は12%の35%減、4.8%は12%の60%減にあたり、発表の削減率と一致する。東京の料金表では、G系列のうちg3・g3sを除く全系列が7.8%、P系列はp3からp5enまで4.8%で並ぶ[2][3]。

発表の対象はG系列・P系列・Trainiumで、Inferentia(inf1・inf2)は含まれていない[1]。料金表でもinf2の管理費は汎用と同じ12%で、推論をInferentiaで回している場合は今回の値下げの効果がない[2][3]。

既存のAuto Modeクラスタには新料金が自動で反映され、利用者の作業は要らない[1]。判断が要るのは、まだAuto Modeを使っていない自前運用クラスタを移すかどうかのほうだ。なお、Amazon ECS Managed InstancesでもGPUインスタンスの管理費が同じ幅で引き下げられる[1]。

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請求の内訳——管理費はEC2の割引の対象外

Auto Modeを有効にしたクラスタの請求は、クラスタ料金、EC2インスタンス料金、Auto Mode管理費の3つが柱になる。クラスタ料金はKubernetesの標準サポート期間中なら1クラスタ1時間0.10ドル、延長サポート中は0.60ドルだ。EBSボリュームやパブリックIPv4アドレスなどは別に課金される[2]。

EKS Auto Modeの請求が、1クラスタ1時間0.10ドル(延長サポート中は0.60ドル)のクラスタ料金、Savings Plans等の割引が効くEC2インスタンス料金、割引の対象外で2026年7月1日からGPU系が引き下げられたAuto Mode管理費の3要素で構成されることを示す図
EKS Auto Modeの課金コンポーネント

見落としやすいのは、管理費がEC2の購入方法に左右されない点だ。リザーブドインスタンス、Compute Savings Plans、スポットインスタンスでEC2の支払いを下げても、Auto Mode管理費は変わらない[2]。上の表の7.8%・4.8%はオンデマンド単価に対する比率なので、割引でEC2を買っている組織では、実際のEC2支払額に対する管理費の比率はこれより高くなる。

月額の目安は、料金ページの計算例と同じ730時間で出せる[2]。東京のp5.48xlargeなら管理費は1台あたり月約2,411ドル(3.3024ドル×730時間)、g6.xlargeなら約66ドル(0.09104ドル×730時間)になる。この額と、ドライバ更新や障害ノードの切り離し・交換に自社で割いている工数を人件費に換算した額を並べるのが、移行の損得を見る基本の物差しになる。台数が多い組織では総額も積み上がる。料金ページは、組織全体で150ノードを超えてAuto Modeを使う場合はアカウントチームに料金を問い合わせるよう案内している[2]。

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東京・大阪の料金表に載っているGPU系列

Auto Modeは2024年12月の提供開始時に、AWS GovCloud (US)と中国を除く全リージョンで使えると発表され[6]、今回の値下げもAuto Modeが使える全リージョンが対象だ[1]。ただ、国内2リージョンで管理費が設定されているGPU・アクセラレータの系列には差がある。

区分(削減率)東京(ap-northeast-1)大阪(ap-northeast-3)
G系列(35%減)g4ad・g4dn・g5・g5g・g6・g6e・g7e・gr6g4dn・g6e
P系列(60%減)p3・p3dn・p4d・p4de・p5・p5en掲載なし
Trainium(60%減)掲載なし掲載なし
Inferentia(対象外)inf1・inf2掲載なし

2026年9月11日時点のEKS料金ページにあるAuto Mode料金表(リージョン別)[2]。「掲載なし」は料金表に該当する行がないことを示す。東京にはg3・g3sの行もあるが、管理費はEC2単価の12%で、値下げ後の比率になっていない。

60%減の対象のうち、P系列を国内で使えるのは東京だけで、大阪のGPUはG系列の2系列に限られる。Trainiumは東京・大阪とも料金表になく、trn1・trn1nが載っているのはバージニア北部・オハイオ・オレゴンの米国3リージョンだけだ。p6-b200・p6-b300も国内の料金表にはない[2]。EC2のオンデマンド料金表でも、東京にTrainiumの行はなく、大阪のGPUはg4dnとg6eだけだ[3]。Trainiumやp6をAuto Modeで使うなら国外リージョンのクラスタになるため、学習データを国内に置く方針の組織では、データの移送も設計に入れることになる。

比率は東京とオレゴンで同じだが、EC2単価が高い東京では管理費の額も高い。g6.xlargeの管理費は東京が1時間0.09104ドル、オレゴンが0.06277ドルだ[2]。

自前運用から移るときに載せ替えが要るもの

AWSの移行ガイドは、Karpenter、EKSマネージドノードグループ、EKS FargateからAuto Modeのノードへの移行には手順を用意している。一方で、次の3つは直接の移行に対応していないと明記している[4]。

対象ガイドの扱い必要な作業
EBSボリューム(EBS CSIアドオン)移行非対応。プロビジョナーが異なり、片方で作ったPVCはもう片方からマウントできないアプリケーションを止め、PVごとに同じEBSボリュームを指すPVを静的に作り直し、新しいPVCに付け替える
ロードバランサー(AWS Load Balancer Controller)既存のロードバランサーは直接移せないAuto Mode側に新しいロードバランサーを作り、Route 53などのDNSで段階的に切り替える(blue-green)
代替CNIなど非対応のネットワーク構成移行非対応手順の記載なし

EBSにはAWS Labsの移行ツールもあるが、既存のPVC・PVの削除と再作成を伴うため、本番以外での検証が前提とされている[4]。ロードバランサーは、移すまでの間AWS Load Balancer ControllerをAuto Modeのクラスタに残し、IngressClassやloadBalancerClassでどちらが管理するかを分けることもできる[4]。

つまり、クラスタでAuto Modeを有効にするだけで移行が終わるわけではない。GPU推論のエンドポイントをロードバランサー(LB)で公開し、モデルやデータをEBSのPVに置いている構成ほど、停止時間と切り替えの手順を先に決める必要がある。判断の順番をまとめると次のようになる。

使うGPU系列が東京・大阪のAuto Mode料金表にあるかを先に確かめ、あれば管理費の月額と運用工数の人件費換算を比べ、管理費のほうが小さければEBSとロードバランサーの載せ替えを計画に入れて移行を検討し、どちらかがNoなら保留とする判断フロー図
自前運用からAuto Modeへの移行を検討する判断フロー

まとめ

今回の値下げで、東京リージョンのAuto Mode管理費はEC2オンデマンド単価に対してG系列7.8%、P系列4.8%になり、汎用やInferentiaの12%との差が開いた。既存のAuto Modeクラスタには自動で反映されるが、自前運用から移る場合の条件は変わっていない。EBSとロードバランサーは載せ替えが要り、代替CNIは移行の対象外で、大阪で使えるGPUはg4dnとg6eに限られる。

次にやることは3つある。1つ目は、自社のGPUノードをインスタンス種別と台数で洗い出し、使う系列が東京・大阪の料金表にあるかを確かめること。2つ目は、単価×730時間で管理費の月額を出し、ドライバ更新と障害対応に割いている工数の人件費換算と並べること。3つ目は、EBS CSIアドオンで作ったPVCと、AWS Load Balancer Controllerが管理するロードバランサーの数を数えることだ。この2つの数が、移行時の停止時間とblue-green切り替えの作業量を決める。

よくある質問(FAQ)

Q1. すでにAuto ModeでGPUインスタンスを使っている場合、手続きは要るか。
要らない。2026年7月1日からの新料金は、Auto Modeの全クラスタに自動で適用される[1]。

Q2. 自前運用からAuto Modeへの移行に技術的な壁はあるか。
ある。EBS CSIアドオンで作ったPVCはAuto ModeのEBS CSIからマウントできず、アプリケーションを止めてPVを作り直す必要がある。AWS Load Balancer Controllerが作った既存のロードバランサーは直接移せず、blue-greenで切り替える。代替CNIなどの構成は移行の対象外だ[4]。

Q3. Savings Plansやリザーブドインスタンスを使っていても、管理費は同じか。
同じだ。Auto Mode管理費はEC2の購入オプションとは独立しており、オンデマンド・リザーブドインスタンス・Savings Plans・スポットのどれで買っても変わらない[2]。

Q4. Inferentiaも値下げの対象か。
対象外だ。発表の対象はG系列・P系列・Trainiumで[1]、東京の料金表でもinf2の管理費はEC2オンデマンド単価の12%と、汎用インスタンスと同率になっている[2][3]。

出典

[1] Amazon EKS Auto Mode reduces GPU management fees by up to 60%(AWS What’s New、2026年7月7日)
[2] Amazon EKS Pricing
[3] EC2 On-Demand Instance Pricing
[4] Enable EKS Auto Mode on existing EKS clusters
[5] Automate cluster infrastructure with EKS Auto Mode
[6] Announcing Amazon EKS Auto Mode(AWS What’s New、2024年12月1日)