室内で18ホールを丸ごとプレー、韓国発ゴルフが米国に初上陸

韓国発祥のスクリーンゴルフ最大手GOLFZON(ゴルフゾーン、シミュレーターを43カ国以上に導入する世界最大級の企業)の米国法人Golfzon Americaが、投資会社Nessie Capital(ネッシー・キャピタル)との合弁で、テネシー州ナッシュビルに全米初となる「フル18ホール屋内ゴルフ施設」CityGolf USAを開業する[1][2]。2026年8月6日に発表され、開業は2026年後半を予定する[1]。シミュレーターで打った球を実在のパッティンググリーンとアプローチエリアで仕上げる点が新しい。

打席内で完結する従来のシミュレーターゴルフと違い、実際にグリーン上でパットまで打つため、天候や日照時間に左右されず「1ラウンド」に近い体験を室内で再現できる。積雪地帯や高温多湿の季節でも練習・ラウンド環境が途切れない点は、プレーヤー側にとって室内ゴルフの選択肢が広がることを意味する。

一方で事業としては、JV(合弁事業)による資金調達の形と、シミュレーター販売中心だった同社が直営型の大型施設運営に踏み出す点が焦点になる。本稿では、CityGolf USAの仕組みと、屋内ゴルフ市場の競争軸がどこに向かうのかを読み解く。

CityGolf USAとは何か シミュレーターと実在グリーンを組み合わせた新形式か

CityGolf USAは、GOLFZONのシミュレーターで打った球を実際のグリーンで仕上げる、ハイブリッド型の屋内ゴルフ施設である。

ナッシュビル店は、フルショットをシミュレーターで打ったあと、18ヶ所の実在グリーンコンプレックスに移動してホールを完結させる構成である[1][4]。アプローチ、バンカーショット、パットはすべて実物の人工芝グリーン上で行う[1]。画面上の判定だけで完結する従来型のシミュレーターゴルフとは、ここが最大の違いである。建物は17万5,000平方フィート(約1万6,000平方メートル)で、開業は2026年後半を予定する[5]。

CityGolfの屋内グリーンコンプレックス。人工芝のグリーンと池、壁面に描かれた青空とコース風景
CityGolfの屋内グリーンコンプレックス。人工芝のグリーンとバンカー、池を実物で再現する(画像:CityGolf USA/Golf Business Newsより)

施設内にはシェフ監修のレストランとバー、プロショップ、貸切可能なイベントスペースを併設し、PGA公認プロによるレッスンやリーグ戦も提供する予定である[1][4]。18ホールのラウンド料金は時間帯により60〜125ドル(約9,300〜19,400円。1ドル=155円換算)、平均は100ドル未満(約1万5,500円未満)とされる[1]。

項目CityGolf USA従来型シミュレーターゴルフTopgolf型エンタメゴルフ
ホール構成実在グリーンで18ホール完結[1]打席内・画面上で18ホール判定的当て形式、ホール概念なし
仕上げ方法実物のグリーンでパット[1]画面内の判定で完結打球の的中で得点
想定用途ラウンド体験の代替練習・短時間ラウンド社交・エンターテインメント
1ラウンド料金約9,300〜19,400円[1]施設により数千円〜時間制で数千円〜

比較すると、CityGolf USAは「ラウンドそのものの代替」を狙う設計であり、練習用途中心の従来型シミュレーターや得点競技型のエンターテインメントゴルフとは目的が異なる。

JVを通じて多拠点展開を狙うCityGolf USAの座組を理解する土台になる一冊。

なぜナッシュビルを1号店に選んだのか

CityGolf USAの開発体制は、地元のゴルフ振興財団が座組に加わっている点が特徴である。

開発には、Golfzon AmericaとNessie Capitalに加え、Parlay Capital Holdings(開発パートナーの投資会社)とTennessee Golf Foundation(テネシー州のゴルフ振興財団)が名を連ねる[2][4]。地元の非営利団体が加わっている点は、単なる商業出店ではなく地域連携を伴う開発であることを示す。

公開されている報道では、ナッシュビルを1号店に選んだ具体的な立地条件までは開示されていない[1][2]。ただし18ホール分のグリーンコンプレックスと付帯施設を収める規模は、都心部の小型テナントが中心だった従来のスクリーンゴルフとは異なり、大規模不動産を前提にした出店であることは明らかである。CityGolf自体は2024年に中国で始動した業態で、米国では今回が初出店になる[3][4]。

10〜15拠点という緩やかな拡大目標が意味する事業リスクを、基礎から確認できる入門書。

JVとしての事業構造 誰が何を持ち寄っているのか

CityGolf USAは、Golfzon Americaの技術とブランド、Nessie Capitalの資金と運営体制を組み合わせた合弁事業である。

Nessie CapitalはCityGolf USAのマネージングパートナーであり、同社のTony Graffia Jr.氏がCityGolf USAの最高経営責任者(CEO)を兼務する[2]。GOLFZON側は、韓国本社が持つシミュレーター技術と「CityGolf」というブランド・業態を提供する立場にある[2][4]。

この座組は、GOLFZONがこれまで各国で採ってきた「シミュレーター販売」中心のビジネスから一歩踏み出す動きである。日本を含む主要市場でGOLFZONは主に機器の販売・設置支援を行い、実際の店舗運営は個々の事業者に委ねる形が中心だった[6]。CityGolf USAでは、GOLFZON自身がJVを通じて施設運営に資本参加する点が異なる。

サステナ/海外展開

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Golfzonの米国戦略における位置づけ 拡大目標は10〜15拠点

GOLFZONは2030年までに全米10〜15拠点へのCityGolf展開を目指すと表明している。

CityGolfは2024年に中国で始動した業態で、ナッシュビル店が米国1号店となる[3][4]。GOLFZONは今回の開業を皮切りに、2030年までに全米で10〜15拠点のCityGolf展開を目指すと発表した[3][4][5]。

その根拠になっているのが天津店の稼働だ。2024年9月に開業した天津のCityGolfでは、2025年の1年間で9,937ラウンド、2026年は6月末までに7,623ラウンドがプレーされている[5]。約5,000坪の面積と18メートルの天井高を持つ空間で、1ホールごとに打席を移動しながら回る構成である[7]。

屋内グリーンでパットを打つプレーヤーたち。高い天井とヤシの木の装飾が見える
ティーショットはシミュレーターへ打ち、グリーン上でホールを仕上げる(画像:CityGolf USA/Golf Business Newsより)

年1〜2拠点ペースの緩やかな拡大目標であり、Topgolfのような数百拠点規模のエンターテインメントゴルフとは展開速度が異なる。GOLFZONはすでに43カ国以上にシミュレーターを導入する世界最大級のスクリーンゴルフ企業であり[1]、CityGolfは機器販売という既存事業の上に、体験そのものを提供する新しい収益源を積み増す位置づけといえる。

海外展開

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日本でCityGolfのような施設は展開されるのか

現時点で日本にCityGolf型のフル18ホール屋内施設はなく、出店計画も公表されていない。ただし「日本にはない」で終わる話でもない。需要の側は、すでに動き始めている。

GOLFZON Japanは2026年7月15日から8月31日まで、全国の導入店舗を対象に「SUMMER 18H SERIES 2026」を実施した。猛暑で屋外ラウンドが難しくなる時期に、「暑いからゴルフを諦めるのではなく、暑いからこそ快適なインドアで18ホールをしっかり楽しむ」という提案を掲げた企画である[8]。屋内で18ホールを回るという発想自体は、日本市場に向けて既に打ち出されている。

壁になるのは空間だ。日本の屋内ゴルフは雑居ビル内の小型テナントが中心で、GOLFZON Japanは国内約600施設に約1,300台のシミュレーターを導入していると案内している[6]。対して天津のCityGolfは約5,000坪・天井高18メートル[7]、ナッシュビル店は約1万6,000平方メートルの建物に入る[5]。都市部の商業ビルでは収まらない。日本で成立させるなら、閉鎖した商業施設や倉庫、既存の練習場用地といった郊外の大型遊休不動産の転用が現実的な候補になる。

事業構造の違いもある。日本でのGOLFZONは機器の販売・設置支援が中心で、店舗運営は個々の事業者に委ねる形が主流だ[6]。米国のCityGolf USAはJVを組んで運営そのものに資本参加した。日本で同型を持ち込むなら、不動産を持つ側との座組が前提になる。

GOLFZONが公表しているのは2030年までに全米10〜15拠点という目標で、日本を含むアジアでの展開計画は今のところ示されていない[3][4]。需要の訴求は始まっており、残るのは用地と座組が揃うかどうかという段階にある。

項目日本のスクリーンゴルフCityGolf USA(ナッシュビル)
店舗形態雑居ビル内の小型打席が中心18グリーン+付帯施設の大型単独施設
出店コスト都市部テナント、小面積で開業可郊外型の大規模用地、初期投資が大きい
プレー体験画面判定で完結、練習用途中心実在グリーンで仕上げ、ラウンドの代替
事業モデル機器販売+運営委託が中心[6]JV直営、飲食・イベント併設の複合施設[1][2]

まとめ

CityGolf USAは、精度競争が続いてきた屋内ゴルフ市場に、実在グリーンでの仕上げという新しい体験軸を持ち込む試みである。JVという座組は、GOLFZONにとって機器販売から施設運営への拡張であり、2030年までに10〜15拠点という目標は緩やかだが継続的な検証を伴う展開といえる。

プレーヤーにとっては、天候に左右されない室内ラウンドという選択肢が米国で広がり始めたことを意味し、事業者にとってはシミュレーター単体ではなく体験全体を設計する競争が始まったことを意味する。日本の屋内ゴルフ市場が同じ方向に動くかは、今後の出店動向を見る必要がある。

よくある質問(FAQ)

CityGolf USAはいつどこに開業するのか

テネシー州ナッシュビルで2026年後半の開業を予定している[1][2]。

通常のシミュレーターゴルフと何が違うのか

打席内の画面判定で完結せず、実在するグリーンでアプローチとパットを行い、ホールを仕上げる点が異なる[1]。

日本でもプレーできるのか

現時点で日本に同型のフル18ホール施設はなく、出店計画も公表されていない[6]。ただしGOLFZON Japanは2026年夏に屋内で18ホールを回る企画を全国の導入店舗で実施しており、需要側の訴求は始まっている[8]。

出典

  1. FinancialContent(BusinessWire転載)「CityGolf USA to Debut America’s First Full 18-Hole Indoor Golf Course in Nashville」 https://www.financialcontent.com/article/bizwire-2026-8-6-citygolf-usa-to-debut-americas-first-full-18-hole-indoor-golf-course-in-nashville
  2. WSMV4 Nashville「New 18-hole indoor golf course coming to Nashville. Here’s what we know」 https://www.wsmv.com/2026/08/07/new-18-hole-indoor-golf-course-coming-nashville-heres-what-we-know/
  3. STARNEWS「Golfzon America Announces Roadmap to Open ‘Citygolf USA’ in Nashville, U.S.」 https://www.starnewskorea.com/en/business-life/2026/08/07/2026080710325882275
  4. GOLFZON公式サイト「CityGolf Nashville: GOLFZON’s New Indoor Golf Entertainment Concept Coming to the U.S.」 https://www.golfzongolf.com/news/citygolf-nashville-golfzon-brings-a-new-era-of-immersive-indoor-golf-to-the-u-s
  5. Golf Business News「CityGolf USA to open first indoor venue in Nashville」 https://golfbusinessnews.com/news/courses/citygolf-usa-to-open-first-indoor-venue-in-nashville/
  6. GOLFZON Japan公式サイト「会社概要」 https://golfzon.jp/company/
  7. GOLFZON Japan「近未来を形にした、GOLFZONの新しい施設『CITY GOLF』」 https://golfzon.jp/2025/05/26/citygolf-2/
  8. GOLFZON Japan「猛暑でも18ホールを楽しめる新しい夏のゴルフスタイルを提案『SUMMER 18H SERIES 2026』を開催」(PR TIMES) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000037099.html