ロンドンの室内ゴルフに大富豪家族が投資、6拠点が20拠点へ

英国・ロンドンで、住宅設備の緊急修理サービスなどを手がける企業HomeServe(ホームサーブ)の共同創業者ジェレミー・ミドルトン氏が、自身のファミリーオフィス(一族の資産を専属で運用・管理する非公開の資産管理会社。外部の投資家から資金を集めるファンドと異なり、一族自身の資金だけを長期の判断で動かせる点が特徴)を通じて、都心型の室内ゴルフクラブハウス「TeeGo(ティーゴ)」に100万ポンド超(約1億9,500万円超。1ポンド=約195円換算、以下同じ)を投資したと2026年7月に発表された[1][2]。TeeGoは米Trackman(トラックマン。レーダーとカメラでスイングやボールの軌道を計測する据え置き型シミュレーター機器で、プロツアーの公式計測にも使われる)の最上位機種を全打席に設置した室内ゴルフブランドで[5]、発表はゴルフの主要大会「The Open(全英オープン)」の開催時期に合わせたものだった[2]。ゴルフをする側にとっては、こうした投資がロンドンの室内ゴルフ拠点の増加に直結し、都市部で練習・シミュレーター環境をどう選べるようになるかを占う手がかりになる。一方でビジネス・IT側の読者にとっては、伝統的なベンチャーキャピタル(VC)やプライベートエクイティ(PE)ファンドではなく、一族の個人資本がレジャー産業の多店舗展開(ロールアップ)に流れ込むという、資金の出し手そのものの多様化が論点になる。本稿ではTeeGo投資の中身を整理したうえで、日本のインドアゴルフ市場への示唆を考える。

TeeGoとはどんなサービスなのか-ロンドン発のTrackman室内ゴルフクラブハウス

TeeGoは、ロンドン都心部で展開する会員制の室内ゴルフクラブハウスである。パットニー、ハムステッド、エンジェル、バラム、バタシー、ハックニー・ウィックの6拠点を構え、いずれも住宅街や商業エリアに近い立地を選んでいる[1][3]。

TeeGoの打席とTrackmanシミュレーター画面。後ろ姿で顔は映っていない
TeeGoの打席とTrackmanシミュレーター画面(画像:TeeGo公式サイトより)

各拠点の打席にはTrackmanの最上位機種「Trackman iO」を設置し[5]、世界400以上のバーチャルコースをプレーできるほか、PGA資格を持つコーチによるレッスンも提供する[2][3][5]。CEOのジェイ・パテル氏は「400以上のコースから選んで、18ホールを25〜30分でプレーできる」と説明しており[1][2]、天候に左右されず短時間でラウンド体験ができる点を強みに据えている。TeeGoは直近1年間で6,000ラウンドがプレーされ、前年比155%増という急成長を記録した[2][3]。同社は2024年時点ではロンドンに1拠点しかなかったが、わずか2年で6拠点まで増やしており、都心の路面店を有利な条件で借り上げる交渉力も拡大の背景にあるとされる[2]。

TeeGoの拠点数は2024年の1拠点から2028年に20拠点目標へ

なぜベンチャーキャピタルではなくファミリーオフィスが投資したのか

TeeGoの資金調達を担ったのは、伝統的なVCやPEファンドではなく、ミドルトン氏個人の資産管理会社Middleton Enterprisesだった。ミドルトン氏は住宅設備の緊急修理・保険サービスを手がけるHomeServeを共同創業し、同社は投資会社ブルックフィールドへ41億ポンド(約7,995億円)で売却されている[2][3]。

HomeServe売却益がミドルトン氏のファミリーオフィスを通じてTeeGoに投資される
HomeServe売却益がファミリーオフィス経由でTeeGoに向かう

ファミリーオフィスは、外部の出資者へのリターン説明やファンド満期といった制約を受けにくく、一族の判断だけで長期の資金を投じられる「忍耐強い資本(ペイシェント・キャピタル)」であることが特徴とされる[3]。Middleton Enterprisesは、寿司宅配ブランドのSushiDogやパデル(テニスとスカッシュを組み合わせた球技)施設のSmash Padelなど、消費者向けレジャー・サービス業への投資を重ねてきた実績があり[2]、TeeGoへの投資もその延長線上にある[3]。パテル氏は、TeeGoについて「既存のゴルファーを奪い合うのではなく、新しいプレーヤーをゴルフに呼び込む」事業だと位置づけ、Middleton Enterprisesが手がけるパデル事業と並ぶ成長領域として説明している[3]。

項目ファミリーオフィス伝統的なVC・PEファンド
資金の出し手一族単独の資産複数の外部投資家(LP)
投資期間の制約定めなし(長期保有が可能)ファンドの満期(一般に7〜10年)
投資判断の速さ一族の判断のみで迅速に決定投資委員会などの合議が必要
リターン圧力比較的低いLPへの説明責任・目標リターン設定あり

6拠点から20拠点へ 2028年までの拡大計画は何を意味するのか

TeeGoは現在のロンドン6拠点から、2028年末までに英国内20拠点への拡大を計画している[2][3]。出店先にはバーミンガム、マンチェスター、ノッティンガムといった地方都市が挙がっており、首都圏に閉じた出店から全国チェーンへの転換を目指す内容だ[2]。

ロンドンの6拠点を起点にバーミンガム・マンチェスター・ノッティンガムへ拡大し2028年に20拠点を目指す
ロンドン6拠点から英国全土20拠点への拡大ルート

パテル氏は、ロンドンでは1年以内に室内ゴルフのラウンド数が屋外ゴルフを上回るとの見通しも示しており[1]、都市部の限られた床面積でも高い回転率を確保できる室内ゴルフの単位経済性(ユニットエコノミクス、1拠点あたりの採算構造)への自信をうかがわせる。個人資本やファンド資金を使ってレジャー施設を急速に多店舗展開する動きは、米国の室内ゴルフチェーンFive Iron Golfやゴルフエンターテインメントの大手Topgolfにも共通する構図であり、TeeGoの規模はまだこれらに及ばないものの、同じロールアップ型の成長モデルをたどっている点は押さえておきたい[3]。一方で、20拠点という目標はプレスリリース段階の計画であり、実際の出店ペースや個別物件の契約が公表通りに進むかどうかは今後の続報を待つ必要がある。

ゴルフテック/海外展開

豪州のゴルフテック企業GolfTrak(ゴルフトラック)と、米国のプラットフォーム企業ChipIn(チップイン)が、2026年8月上旬に越境合併を発表した[1][2]。GolfTrakはスマートフォンのカメラとコンピュータビジョン技術(画[…]

日本のインドアゴルフ市場に、同じような富裕層マネーは入っているのか

結論から言うと、日本にも成長中のインドアゴルフ市場は存在するが、TeeGoのようにファミリーオフィスという投資主体が前面に出て多店舗展開を主導する事例は、本稿で調べた範囲では確認できなかった。日本のインドアゴルフ運営企業としては、韓国発のスクリーンゴルフ大手GOLFZON(ゴルフゾン)系列や、国内のフィットネス・エンタメ企業が展開するチェーンが目立つが、資金の出し手は上場企業の自己資金や金融機関からの借入が中心で、業界横断で信頼できるインドアゴルフ市場規模(金額ベース)の公表値も、本稿の調査範囲では見つからなかった。背景には、日本では正式なファミリーオフィスの組織率がまだ低く、富裕層の資産運用が証券会社や信託銀行経由に偏りやすいという事情がある一方、野村総合研究所の推計では純金融資産1億円以上の「富裕層」「超富裕層」が合わせて165.3万世帯に達しており、潜在的な担い手自体は増えている[4]。都心の賃料水準の違いも大きく、ロンドンの住宅街に近い路面店を軸にするTeeGoのモデルをそのまま日本に当てはめるには、テナント条件の精査が要る。ビジネス面では、日本でも富裕層個人がレジャー業態のロールアップに直接資金を出す余地は今後広がりうる一方、ゴルファー・練習利用者にとっては、当面はTeeGoのような単一資本主導の急拡大よりも、複数事業者が並走する形でインドアゴルフの選択肢が増えていく可能性が高い。

項目英国・ロンドン(TeeGo)日本
主な投資主体創業家のファミリーオフィス上場企業の自己資金・金融機関借入が中心
直近の拠点数6拠点(ロンドン)非公表
拡大目標20拠点(2028年末・英国全土)
主要プレーヤーTeeGo等の専業ブランドGOLFZON系列・国内フィットネス系チェーン等

※「非公表」は公開されていない項目、「—」は本稿で確認していない項目。

マーケティング/海外展開

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まとめ

TeeGoへの投資が示すのは、レジャー産業の多店舗展開を支える資金の出し手が、伝統的なVC・PEファンドだけでなく、創業者一族のファミリーオフィスにまで広がっているという構図である。ゴルフをする側にとっては、こうした資本の流入が都市部のインドアゴルフ拠点を増やし、練習・シミュレーター環境の選択肢を広げる材料になる。ビジネス・IT側の読者にとっては、レジャー業態の成長資金を検討する際に、ファンド以外の資金調達チャネルとしてファミリーオフィスの動向を注視する価値があることを示す事例と言える。TeeGoが2028年までに本当に20拠点まで拡大できるかどうかは、今後の続報で確認していきたい。

よくある質問(FAQ)

Q1. TeeGoとはどんなサービスなのか。
A. ロンドン都心部で展開する会員制の室内ゴルフクラブハウスで、全打席にTrackman iOを設置し[5]、400以上のバーチャルコースをプレーできる[2][3]。

Q2. ファミリーオフィスとは何なのか。
A. 一族の資産を専属で運用・管理する非公開の資産管理会社を指す。外部の投資家から資金を集めるファンドと異なり、一族自身の資金だけを長期の判断で動かせる点が特徴である[3]。

Q3. 日本にもTeeGoのようなファミリーオフィス主導のインドアゴルフ投資はあるのか。
A. 本稿で調べた範囲では確認できなかった。日本のインドアゴルフ運営企業は、上場企業の自己資金や金融機関からの借入で拡大するケースが中心である。

ゴルフテック/マーケティング

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出典

[1] https://golfbusinessnews.com/news/corporate/teego-receives-investment-boost-to-fast-track-uk-growth/
[2] https://www.cityam.com/sushidog-investor-pumps-seven-figure-sum-into-golf-sim-brand-ahead-of-open/
[3] https://familyofficehub.io/blog/middleton-family-office-invests-seven-figure-sum-in-golf-simulator-brand-teego/
[4] https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/20250213_1.html
[5] https://www.teego.co.uk/