旧ゴルフ場がメガソーラーに変わる仕組みと土地オーナーの選択

2026年5月28日、福島市松川町水原にあった旧・福島カントリークラブの跡地で、太陽光発電所が稼働を始めた。かつてゴルファーが歩いたフェアウェイの上に6万3000枚のソーラーパネルが並び、発電した電力はすべてAmazon(アマゾン)向けに、長期の電力購入契約(PPA、発電事業者と需要家があらかじめ価格・期間を決めて電力を売買する契約)のもとで供給されている[1][2]。事業主はポルトガルの電力大手EDPグループの再エネ子会社、EDP Renewablesだ。

このニュースが直接関わるのは、今プレーしているコースの話ではない。経営難で閉鎖が決まったゴルフ場の跡地が、その後どう使われるかという「跡地の行方」の話である。現役で営業中のコースの予約や会費に影響するものではないが、経営の厳しいコースを抱える地域では、閉鎖後の土地が誰に、どう引き継がれるかという選択肢の一つとして無関係ではない。

一方でビジネス視点では、なぜよりによってゴルフ場が太陽光発電の適地として選ばれ続けるのか、そして開発を規律する許可基準がどう変化してきたのかという構造の話として読む価値がある。

福島の旧ゴルフ場で何が起きたのか

福島市松川町水原の旧福島カントリークラブ跡地60ヘクタール(60万平方メートル、東京ドーム約12個分に相当)に、出力44MWp(メガワットピーク、太陽光パネルの理論上の最大出力を表す単位)の太陽光発電所が完成し、稼働率98%超で想定を上回る発電実績を記録している[1][5]。

パネル枚数は6万3000枚、年間発電量は48GWh(ギガワット時)超と見込まれ、一般家庭約1万1800世帯分の年間消費電力に相当する[1][2]。発電した電力を電力網へ実際に送り出せる連系出力は35MWで、パネル出力44MWpより低く抑えられている[2]。

事業者のEDP Renewablesは、造成工事をほとんど行わずゴルフコースの地形をそのまま活用し、伐採もパネルの採光に必要なコース間の林帯にとどめた[3]。土地の内訳は施設用地が70.96%、非改変の森林が15.99%、緑地が7.06%で、既存の樹林帯の大半を残す設計だ[3]。

旧福島カントリークラブ跡地に完成した太陽光発電所の全景
旧福島カントリークラブ跡地に完成した44MWpの太陽光発電所(EDP Renewables提供)(画像:EDP公式サイトより)
施設用地は約7割、残る3割は森林・緑地として保持
ガバナンス/ゴルフテック

米国ゴルフ協会USGA(全米のゴルフ規則とハンディキャップ制度を管轄する統括団体)が、AIによるルール解説サービス「Rules AI」を公式アプリGHIN(USGAが提供するハンディキャップ管理アプリ)上で試験展開している。開発を支えたの[…]

なぜゴルフ場は太陽光発電に向いているのか

ゴルフ場は、広い平坦地と電力網への接続実績をあわせ持つ数少ない民有地であることが、太陽光発電に向く理由だ。

18ホールのコースは数十ヘクタール規模の連続した土地で、フェアウェイ部分はすでに平坦に造成済みのため、造成をやり直す必要がなく土砂の搬出入コストもかからない[3]。ゴルフ場は排水設備や法面の防災対策をもともと備えており、雨水による地盤の軟弱化リスクが低いことも開発側にとって扱いやすい要素になる。

もう一つの条件が電力接続だ。クラブハウスやカート設備向けにすでに引き込まれていた高圧線や変電設備を転用・増強できれば、新規に長い送電線を敷く費用を抑えられる。福島のケースでも連系出力35MWの送変電設備が整備された[2][3]。周囲を樹林に囲まれ外部から見えにくい立地が多いことも、大規模開発にありがちな景観上の摩擦を避けやすくしている。

平坦地・防災設備・電力接続という3条件が太陽光の適地に結びつく図
ゴルフ場の土地条件が太陽光の適地につながる構造
マーケティング

タイトリスト、テーラーメイド、ウイルソン、コブラ。日本のゴルファーが店頭で手に取る主要ブランドは、いずれも持ち主がアジアの企業や投資ファンドに替わっている。誰が持っているかで、次のモデルに開発費がどれだけ入るのか、日本での価格やモデルサイ[…]

林地開発許可の基準はどう変わってきたのか

太陽光発電が森林を切り開いて建設される場合、林地開発許可という都道府県の許可が必要で、その基準は近年段階的に厳しくなっている[4]。

2023年4月、対象となる開発規模の基準が「1ヘクタール超」から「0.5ヘクタール超」に引き下げられ、より小規模な開発も許可審査の対象になった[4]。2025年12月には政府が大規模太陽光発電事業に関する対策パッケージを策定し、森林法に基づく規制強化の方針を打ち出した[4]。

これを受けて2026年2月、40ヘクタール以上の太陽光発電設備について、残置森林率をおおむね60%以上とし、1箇所あたりの開発面積をおおむね20ヘクタール以下に分散配置するという新たな技術的助言が示され、同年3月に都道府県へ通知された[4]。福島の案件は60ヘクタール全体を一体活用しているが、計画自体はこの最新基準が固まる前に許可を得ている。今後60ヘクタール級の跡地を新たに開発する事業者は、この新基準のもとで区画をより細かく分散させる必要が出てくる。

2023年から2026年にかけて許可基準が段階的に厳しくなる流れを示す図
林地開発許可の基準厳格化の推移
ゴルフテック/マーケティング

ガーミンは誰に何を売っているのか — STPで読む「計測器」ブランド 結論を先に言えば、ガーミンは狙う相手を「真剣なアマチュアと専心するプロ」に絞り込み、感性のスローガンではなくVO2max・電池・衛星精度・安全機能という「測れる成果」で[…]

跡地転用は誰の得になり、他のコースに何を示唆するのか

福島のケースが示すのは、経営に行き詰まったゴルフ場の土地が、閉鎖後も収益を生み続ける現実的な選択肢を持つということだ。

土地オーナーにとっては、更地化や住宅転用に比べて造成コストを抑えたまま、長期の賃料や売却収入を得られる。PPA契約先のAmazonにとっては、自社で用地を探す手間なく再エネ電力を確保できる。地域にとっても、荒廃しかねない跡地が固定資産税や雇用を生む用地として維持される利点がある。

日本国内で、ゴルフ場跡地の太陽光転用は今回が初めてではない。京セラは2017年に23MWの太陽光発電所を、2020年には鹿児島で100MWの太陽光発電所をそれぞれゴルフ場跡地に稼働させている[6]。福島の44MWはこの系譜に連なる規模で、経営難コースを抱える他地域のオーナーにとっても跡地活用の前例として参照されうる。

福島は国内のゴルフ場太陽光転用で最大級の一角

海外のゴルフ場太陽光転用は、日本と同じ土地の論理で起きているのか

部分的に同じで、部分的に異なる。転用が進んでいる事実は海外にもあるが、その背景にある動機は日本とずれがある。

米国では2003年から2018年にかけてゴルファー数が680万人減少し、1200のゴルフ場が閉鎖した。2021年前半だけで18ホールコース60件が閉鎖している[6]。ニューヨーク州ロングアイランドでは、元ドライビングレンジ跡地約27エーカー(約10.9ヘクタール)が2019年に太陽光発電所へ転換され、約1000世帯へ電力を供給し、地方政府に80万ドル(約1億2400万円。1ドル=155円換算)の追加収入をもたらした[6]。

平坦な地形と防災設備が転用の決め手になる点は日本と共通する[6]。一方で米国はゴルフ人口そのものの急減という需要側の要因が濃く、日本は電力会社・大手企業のPPA需要という供給側の要因が濃い。制度面でも、日本の林地開発許可のような森林転用規制の枠組みは国ごとに異なる。

項目福島(今回)米国ロングアイランドの例
転用前の敷地18ホールゴルフ場ドライビングレンジ
敷地規模60ha約10.9ha
稼働年2026年2019年
電力供給先Amazon(PPA)地域約1000世帯
主な転用の動機企業のPPA需要ゴルフ需要減・自治体収入

ビジネス側には、電力需要側と土地オーナー側のマッチングが進むほど、この種の転用が増えうるという含みが見える。ゴルファー側には、身近なコースの経営が悪化した場合、その跡地が更地放置ではなく発電用地として生き残る可能性がある、という程度の関わりにとどまる。

よくある質問(FAQ)

自分の使っているコースも太陽光になる可能性はあるのか
現役で営業しているコースが直接転用されるわけではない。転用が起きるのは経営難で閉鎖が決まった後の跡地であり、営業中のコースにこの事例がそのまま当てはまるわけではない。

なぜゴルフ場が太陽光発電に向いているのか
すでに平坦に造成され、排水・防災設備も整った広大な連続地であることに加え、クラブハウス向けの電力接続設備を転用しやすいためだ[3]。

跡地の所有者は誰でも自由に転用できるのか
できない。林地開発許可など森林法上の許可や、面積・残置森林率に関する基準を満たす必要があり、その基準は近年厳格化が続いている[4]。

まとめ

福島の旧ゴルフ場が太陽光発電所に姿を変えた背景には、平坦な広大地と既存の電力接続という土地の物理条件、そして厳格化が続く林地開発許可という規制環境がある。ゴルフをする読者にとっては、身近なコースの話ではなく、経営難コースの跡地がたどりうる選択肢の一つとして知っておく話だ。ビジネス読者にとっては、再エネ用地の調達競争が、遊休化した既存インフラの再利用という形で進んでいることを示す一例といえる。今後同規模の転用が動くたびに、2026年の新たな許可基準がどう運用されるかが焦点になる。


出典: [1] ギズモード・ジャパン「福島のゴルフ場、いつのまにか6万3千枚のソーラーパネルになってた」 https://www.gizmodo.jp/article/44mwp-solar-project-amazon-fukushima/ / [2] 日経BPメガソーラービジネス「ゴルフ場跡地の44MW太陽光、Amazon向けPPA」 https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/news/00001/04324/?ST=msb / [3] 日経BPメガソーラービジネス「福島市のゴルフ場跡地に44MWのメガソーラー計画、本格造成せず」 https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/news/00001/01667/?ST=msb / [4] 日経BPメガソーラービジネス「『林地開発許可』基準の厳格化、どうなるメガソーラー開発」 https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/feature/00005/062400085/?ST=msb / [5] EDP公式サイト「EDP officiates 44MWp solar project for Amazon in Japan」 https://www.edp.com/en/media/edp-officiates-44mwp-solar-project-amazon-japan / [6] EnergyTrend「Abandoned Golf Courses Repurposed as Solar Farms in the US and Japan」 https://www.energytrend.com/news/20211215-24863.html