室内でも実物のグリーンでパットする新型ゴルフ施設が米国上陸へ

米国テネシー州ナッシュビルで、シミュレーターと人工芝の実物グリーンを組み合わせた新業態のゴルフ施設が2026年冬に開業する。運営するのは、投資会社ネシー・キャピタルが2026年に設立したシティゴルフUSA(CityGolf USA)で、韓国のシミュレーター大手GOLFZON(ゴルフゾーン)も共同所有者に名を連ねる[1][3]。同社は、全米屈指のゴルフコース設計者トム・フェイジオ氏の息子ギャビン・フェイジオ氏が設立したフェイジオ・デザイン・テクノロジーズ(FDT)と独占提携し、専用のデジタルコース8種を共同開発すると2026年8月26日に発表した[1]。

プレーヤーはティーショットからグリーン手前までを、GOLFZON製のシミュレーターで打つ。グリーンに近づくとスクリーンが上がり、その先に現れる人工芝の実物グリーンでアプローチとパットを仕上げる[1]。純粋なシミュレーター施設でも完全な屋外コースでもない中間形態である。

日本の室内ゴルフ利用者にとっても、シミュレーター練習の先に「実際のグリーンでパットする」選択肢が加わる可能性を示す事例だ。IT・ビジネス読者にとっては、シミュレーター機器とリアル施設運営を組み合わせた新しい収益モデルとして注目に値する。本稿では施設の仕組みと日本での可能性を整理する。

シミュレーターと実物グリーンはどう融合しているのか

シミュレーターと実物グリーンを1ラウンドの中でつなぐ仕組みが、この施設の核心である。18ホールそれぞれに専用の打席ブースがあり、プレーヤーはティーショットからグリーン手前の着弾エリアまでを、GOLFZON製シミュレーターの大型スクリーンに向かって打つ[1]。ボールがグリーン周辺に達するとスクリーンが上がり、起伏をつけた実物大の人工芝グリーンが現れる。

グリーンには本物の砂を使ったバンカー(壁の高さ最大約90センチ)やアプローチ用の傾斜があり、そこでチップとパットを打ってホールアウトする[2]。土手やアクリル板の安全対策も設けた[2]。

1ラウンドは約2.5時間[1]、施設は1日19時間、場合によってはそれ以上営業する見込みだ[2]。旗艦店の延べ床面積は約174,000平方フィート(約16,165平方メートル、東京ドーム=46,755平方メートルの約3分の1)、建設費は1棟あたり1,000万〜1,500万ドル(約15.5億〜23.25億円。1ドル=155円換算)とされる[2]。

GOLFZONの打席ブースでティーショットから着弾エリアまでを打ち、グリーン周辺でスクリーンが上がると、人工芝と砂のバンカーを備えた実物のグリーンでチップとパットを打ち、ホールアウトして次の打席へ歩く流れ
シミュレーターから実物のグリーンへの移行フロー。出典: CityGolf USA発表(First Call Golf掲載、2026-08-26)、Golf Course Trades(2026-09-02)

CityGolf USAのようなシミュレーター施設のビジネスモデルを、日本のインドアゴルフ経営の視点から読み解ける一冊。

ナッシュビル旗艦店はどんな施設になるのか

ナッシュビル旗艦店は、物流大手プロロジスが保有する「シティビュー・ビルディング6」内に入居し、2026年冬に開業する[1]。館内にはシェフ監修のレストランとバー、貸し切り可能なイベントスペース、PGA公認プロによるレッスン・フィッティング・リーグ運営、キャディ兼コンシェルジュ役の「プレーヤーホスト」を配置する[1]。同じ技術基盤を使う施設は、すでにアジアで稼働している。

GOLFZONは2024年9月、中国・天津に約5,000坪(約16,500平方メートル、天井高18メートル)の「CityGolf」を開業した[7]。ナッシュビル店は、この中国発の技術基盤を米国市場向けに再設計したものといえる。

GOLFZONが中国天津で運営する同型屋内ゴルフ施設の内部
GOLFZONが中国・天津で運営する同形態の屋内施設の内部。人工芝のグリーンエリアが並び、手前にはトーナメント用の看板が見える(画像:CityGolf USA公式サイトより)
ベンチャー

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料金と会員モデルはどう設計されているのか

運営形態は公開ラウンド中心の「セミプライベート」で、アジアで主流の会員制「ウルトラプライベート」とは一線を画す[1][2]。年間ラウンド数は1施設あたり15万〜20万を見込み、約9割を公開ラウンドが占める[2]。CEOのトニー・グラフィア・ジュニア氏は「100ドル(約1万5,500円)の価格で300ドル(約4万6,500円)相当の体験」を掲げる[2]。

料金は時間帯で変動し、閑散時間帯は30ドル(約4,650円)程度から、金曜夜のピーク帯はより高くなる[2]。会員制度「ファウンディングメンバーシップ」は募集人数を区切り、一度埋まると再募集はしない[3]。

項目公開ラウンドファウンディングメンバー
予約通常予約30日先まで優先予約
支払い都度払い月額375ドル(約5万8,125円)+年会費1,500ドル(約23万2,500円)。料金は2030年まで固定[3]
月間ラウンド都度課金4ラウンド込み、追加は20%割引
ゲスト同伴都度課金月1回無料
飲食割引なし15%割引
ベンチャー

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なぜ今、この業態が米国で広がるのか

背景にあるのは、コース外でゴルフを楽しむ「オフコース参加者」の急拡大である。米国のオフコースゴルフ参加者数は2025年に3,800万人近くに達し、従来のコース利用者数を上回った[2]。全米ゴルフ財団(NGF)の2023年11月の推計では、過去1年にシミュレーターでボールを打った米国人は約620万人で、コロナ禍前(2019年以前は400万人弱)から73%増えた[4]。

CityGolf USAはナッシュビルの開業後、全米に店舗を広げる方針だ[1]。当初は1号店をシカゴに置く計画だったが、許認可に時間がかかり、ナッシュビルが先になった。シカゴは今後の計画に残り、インディアナポリス、コロンバス、ミネアポリスといった市場も候補に挙がる。テキサス州やカリフォルニア州では都市の首長らが施設の建設費を全額負担すると申し出ており、ゴルフリゾート地のマートルビーチからも関心が寄せられているという[2]。

ナッシュビル旗艦店(2026年冬開業予定)を起点に、今後の計画に入る市場としてシカゴ(当初の1号店予定地)、インディアナポリス、コロンバス、ミネアポリス、都市の首長らが建設費の全額負担を申し出た州としてテキサス州とカリフォルニア州、関心を寄せる地域としてマートルビーチを示した図
ナッシュビル開業後の展開先として名前が挙がる都市・州。出典: Golf Course Trades(Forbes記事の転載、2026-09-02)、CityGolf USA発表(First Call Golf掲載、2026-08-26)

GOLFZON側も米国での拡大を見込む。米スポーツビジネス誌Sports Business Journal(SBJ)は2026年8月6日、GOLFZONがCityGolfを米国に持ち込み、2030年までに推定10〜15拠点へ広げる計画だと報じた[9]。次の同誌の投稿では、屋内にグリーンと水景を配した館内の様子も見られる。

Golf.comは、スクリーンが上がってグリーンでホールアウトする形式を、PGAツアー選手が参戦する屋内リーグ「TGL」を思わせると評しつつ、シカゴ郊外で構想されるドーム型コース「メガロドーム」とは別物だと区別している[5]。

実物グリーンと融合したインドアゴルフ施設は日本にあるのか

現時点で、スクリーンが上がった先に実物のグリーンが現れるCityGolf USA型の施設は日本では確認できない。技術基盤のGOLFZON自身は日本国内でも大規模に展開する。国内で2,700台・1,200施設に導入され、世界では43カ国・4万4,900台が稼働する[6]。

GOLFZONが2024年9月に天津で開業した実物グリーン一体型の「CityGolf」について、公式ブログは施設紹介にとどまり、日本開業時期には言及していない[7]。全日本ゴルフ練習場連盟の集計では、2021年10月末時点で屋内練習場1,265施設(前年比241増)、屋外練習場2,395施設(同26減)で屋内シフトが進む[8]。174,000平方フィート級の大型倉庫を都心近郊で確保するのは、地価・賃料水準が異なる日本では難しい。

項目米国(CityGolf USA)日本
実物グリーン一体型施設あり(ナッシュビル、2026年冬開業)確認できず
GOLFZON導入規模2,700台・1,200施設
同社の同型施設実績米国1号店は建設中中国天津で稼働中、日本開業時期は非公表

*「非公表」は数値非公開、「—」は本稿の取材範囲で未確認の項目を示す。

GOLFZONという同じ技術基盤の上で、米国と日本が異なる会員モデルを試す構図といえる。大型区画確保の制約がある限り、日本での短期登場は見込みにくい。

まとめ

CityGolf USAとフェイジオ・デザイン・テクノロジーズの提携は、シミュレーターと実物グリーンを1ラウンドの中でつなぐ、米国では新しい業態を生み出した。舞台はナッシュビルの倉庫街で、開業は2026年冬。セミプライベートの会員モデルと公開ラウンド中心の運営で、コース外ゴルフの需要拡大を取り込む。

ゴルファーにとっては、シミュレーター練習の先に「実物のグリーンでパットを詰める」選択肢が増える動きだ。ビジネス読者にとっては、同じGOLFZONの技術基盤の上で米国と日本が異なる収益モデルを模索している点が示唆に富む。ナッシュビル店の集客実績が、この中間形態の持続可能性を占う最初の指標になる。

よくある質問(FAQ)

Q1. CityGolf USAとGOLFZONは同じ会社か。
A1. 同じ会社ではない。CityGolf USAは投資会社ネシー・キャピタルが2026年に設立した運営会社で、公式サイトによるとGOLFZONも共同所有者に入っている。GOLFZONはシミュレーター機器を手がける韓国発の技術会社で、CityGolf USAの施設にもシミュレーターを供給する[1][3][6]。

Q2. 日本でも同じような施設はできるのか。
A2. スクリーン上昇型の実物グリーン一体施設は、2026年9月時点で日本国内では確認できていない。都心近郊での大型区画確保が普及のハードルになりうる。

Q3. 料金はいくらになるのか。
A3. CEOは「100ドル(約1万5,500円)の価格で300ドル相当の体験」を目標に掲げ、時間帯により30ドル(約4,650円)程度から変動する見込みだ[2]。

出典

  1. https://www.firstcallgolf.com/industry-news/release/2026-08-26/citygolf-usa-partners-with-fazio-design-to-build-americas-first-18-hole-indoor-golf-courses
  2. https://golfcoursetrades.com/citygolf-usa-partners-with-architect-tom-fazio-for-golf-course-designs/
  3. https://www.citygolfusa.net
  4. https://www.ngf.org/short-game/simulator-golf-sees-real-surge/
  5. https://golf.com/travel/city-golf-usa-nashville-indoor-golf-simulators/
  6. https://golfzon.jp/about/
  7. https://golfzon.jp/2025/05/26/citygolf-2/
  8. https://www.golfdigest-minna.jp/_ct/17555453
  9. https://www.sportsbusinessjournal.com/Articles/2026/08/06/golfzon-bringing-new-citygolf-concept-to-nashville/