2022年4月にリメイク版が放映されていた、テレビドラマの『悪女(わる)』を見ました。
30年前の漫画が原作ですが、1992年に最初にドラマ化され、放送されました。
私は原作漫画は全巻読んでいて、女性のお仕事系漫画として大好きな作品の1つです。
前作のドラマもすごく好きでした。
30年経った今、改めて令和版悪女を見てみて、色々と感じるところがありました。
原作漫画はどんなストーリー?
落ちこぼれ、三流短大卒、顔は特に美人ではない、田中麻里鈴(まりりん)が主人公。
三流のコネで一流商社の近江物産に入社するけれど、三流らしく地下の仕事の無い窓際部署に配属される。
まりりんは、酒を飲み煙草をふかし、言葉遣いも品が無い、上品さとはかけ離れた女の子。
でも、明るさや諦めないメンタル、根拠のない自信に満ち溢れた、人を元気にするキャラクター。
なにか良いことあるかな?と過ごしていたある日、会社のロビーでたまたま出会った人に一目惚れ。
一方で、同じ窓際部署には謎の先輩女性社員峯岸さんからは、「あなた、出世してみない?」と声をかけられる。
一目惚れした顔しか知らない人に近づくために、どうにかイニシャルを調べ、名前を知り、そして堂々と告白できる自分になるために、仕事を頑張り、峯岸さんに教えを乞い窓際部署から出世を目指していくというストーリー。
色々な部署で仕事を経験し、色々な人と接して、少しずつステップアップしていき、最後には一目惚れした相手のいる部署で仕事をするようになります。
平成版1992年と令和版2022年の『悪女』を比較して思う
田中麻里鈴
以前の主演は石田ひかりさん。ものすごく可愛かった。
2022年版の『悪女(わる)』では、主演のマリリン役は今田美桜さん。
マリリンを演じる今田さんは、とても可愛い女優さんではあるけれど、ざんぎりのおかっぱや独特なダサ可愛いファッション、オーバーアクションな動作など、原作のまりりんを再現しています。
石田ひかりのマリリンは、ちょっと美しすぎたかもしれないので、今回の今田さんはとても良いです。(石田ひかりのマリリンもすごく好きだったけれど)
峰岸さん
峰岸さん役は味のある女優江口のり子さんで、前回は倍賞美津子さんでした。
倍賞さんは低めのハスキーな声で優しくかっこいいスーパーキャリアウーマンを演じていました。
原作漫画の峰岸さんのイメージは、美しすぎる倍賞さんよりも江口のり子さんの方が近いです。
原作の峰岸さんは美人キャラではないし、地味な全身を覆う真っ黒な服装も江口さんが再現しています。
1992年の前作と比べて、2022年版ではまりりんと峰岸さん役の風貌については、漫画の世界観を忠実に表現しているようです。
なお、峰岸さんの下の名前は、漫画と令和版は「峰岸雪」で、平成版は「峰岸佐和」となっています。
小野忠
原作漫画では厳しくも暖かくまりりんを指導してくれる、有能で女に偏見がある小野忠(おのただし)役は、前作の布施博さんから、若手俳優鈴木伸之さんが演じています。
漫画の小野さんの特徴である長身・太眉は共通だけれど、サラリーマンぽさ、暑苦しさは布施さんのほうが感じられて、今回の鈴木くんはちょっと若すぎるイメージです。
鈴木くんの小野忠は、見ていて有能社員というより見た目だけ今風で中身はおっさんの不出来な社員にすら見えてしまいます笑。
これは、見ている私が30年歳をとってしまったためなのでしょうか・・・?!
T.O(田村収)さん
マリリンが憧れる超重要なキャラクターのT.Oさんは、前作はXIU JIAN(修健)さんで、今回は向井理さん。
平成版では、T.Oさんが登場する場面は数えるほどだったので、XIU JIANさんの記憶も薄かったというのが本音です。ただ、とても端正な顔立ちで素敵な俳優さんです。
令和版のT.Oさんは、原作漫画でも前作でも無かった、峰岸さんとの謎の関係が気になるところです。
しかしこちらのT.O さんは、数回しか会ったことがないまりりんに対して馴れ馴れしいというか、女慣れしている感じに違和感があります!
ただ、爽やかで涼やかなT.Oさんということでは完璧なキャスティングだと思います。
人事部 夏目課長
峰岸さんと昔恋人を争い負けたという、夏目課長。
平成版では美しい女優の結城しのぶさんが演じていました。時代劇や多くのドラマに出ていた大女優ですね。倍賞美津子の峰岸さんと渡り合えていた感じです。
令和版では、前作へのオマージュということで、石田ひかりさんが出演!
ただなぁ、、。役の年齢や美しいキャラクターとしてはちょうど良かったのかもしれませんが、以前まりりんだった人が、歳をとって真逆のキャラの夏目課長を演じることについては、すごく違和感がありました。
もっと重要で昔とのつながりを感じる役を演じさせてほしかったです!
その他のキャラクター
他に登場するキャラクターは、
梨田友子
佐伯課長
山瀬くん
といったところ。懐かしい思いで、昔との比較をして楽しみました。
令和版だけ登場のキャラクター
令和版は悪女の設定で、独自のエピソードを作っているようです。
令和版悪女の第1話から第4話では、
- 営業一課 大井美加
- カスタマーセンター 三瓶花子
- エンジニア部 川端光
- その他男性キャラ
は漫画にも平成版ドラマにも登場していませんでした。
未登場?不在?の重要キャラクター
第4話が終わった時点でまだ登場していない、あるいは令和版では登場しないかもしれないキャラクターです。
タイチローで働く紺野涼子
まりりんの良き相談相手だった紺野良子。
漫画では焼き鳥屋の化粧っ気がない娘さんかと思えば、実は超優秀で美人な才媛で、でも、好きな男性と結婚するのが幸せ、という古風なキャラでした。
女性にも男性でももちろん同様ですが、理想の人生や選ぶ形は1つではなく、人それぞれだなと、感じたキャラ設定でした。
総務部の佐々木チエ
まりりんの足を引っ張ったり甘えたりと都合の良いミサは、前作は鶴田真由が演じていて、男性に都合よく媚びる女を本当に上手に演じていました。可愛らしい鶴田さんのキャラが最高に活きていた、嫌な女の役でした笑。今回は、第4話時点ではこのキャラは出てきていません。令和の時代にこのタイプはもう居ないと判断されてしまったのでしょうか、、。
まりりんをライバル視する同期の才媛石井美佐子
まりりんのライバル役、というか、まりりんをライバル視する優秀な才媛石井さんは、前作は渡辺満里奈。
真面目で優等生で努力家だけれど、人に頼ったり自由な発想ができないタイプで、まりりんとは真逆のキャラクター。渡辺満里奈の当時の清楚な感じがすごく合っていました。今作ではこの役はあるのか、誰が演じるか、とても楽しみです。
原作漫画も前回ドラマ版も、舞台は一流企業の「近江物産」という商社。今作はIT企業の「株式会社オウミ」という会社らしいけれど、ドラマでは特にIT企業らしさは感じず、むしろ商社という感じです。ただ、日系の大手IT企業にあの感じは確かにあるので、よく再現されているなと苦笑しました。
時代を感じた設定
30年経つと、いろいろなツールが昔と違っていました。ドラマに登場するツールで平成版で懐かしかったのは、
- 緑の公衆電話から会社の電話に電話する。今は公衆電話はもちろんのこと、会社の固定電話すら少なくなってきていますね。
- 制作した映像を、ビデオに収めて手渡す。テレビCMを作った試作品を渡すのに、ビデオカセットで渡していました笑。USBですら古い感じがしますが、それよりも遥か昔の話しなのですね。
- 職場のパソコンがバカでかい。出てくる画面もWindowsですらない。マリリンが憧れのT.Oさんの情報を探すのにアクセスしていた端末(パソコン?)は、ターミナルコンピューターの端末って感じで、文字が並んでいるだけでした。ものすごく懐かしいですね。
しかしよく考えたら、昔と違うのってそれぐらいでは無かっただろうか?と思いました。
大勢でエレベータに乗り、デスクで仕事をして、コピーを取ったり、会議室にゾロゾロ集まったり、社食で昼食を食べたり、、。職場の風景なんて30年前と大して変わっていないのかもしれません。
女性が働くことの背景
女性が働くことについても同じような状況だと思います。
女性差別の象徴のような、大量の湯飲みをまとめて配るお茶くみは少なくなっているかもしれないけれど、今作のドラマでは、会議室で飲んだコーヒーの片付けは女性社員が行うというシーンがありました。
峯岸さんは近江の役員になりますが、30年前も今も同じように、異色のスーパーキャリアウーマンということには変わりは無い訳です。
まぁ、特に大企業において女性役員というのは、一部の先進的な企業を除いて、外部から招いた人や相談役みたいな人の場合が多いですもんね。
「女性も出世したい」、というセリフ。そんなの当たり前だから今聞くとおかしい、という世の中には30年経ってもなっていません。
周囲では、育児休暇を取得する男性社員が少しずつ出てきている状況であるとは思います。
峯岸さんは前作のドラマの最終回で、
“結婚してもしなくて、子供を産んでも産まなくても良いような、女性ももっと軽やかに生きたい。でもあの子たちなら・・・”
と、30年前に20代そこそこだったまりりんや、OL達を見ながら語っていたけれど、、。
ちょうどその世代の私の年齢。
未だにそれが当たり前の世の中にはなっていない。選択肢が増えたのは事実ではある。
生涯未婚の人も増えているし、珍しくない。
でも、出世が当たり前、という世の中にはなっていない。30年じゃ足りないんだろうか?
北欧みたいになるにはどうしたらいいんだろうか。