
導入
豪州(オーストラリア)発のゴルフ会員制プラットフォーム「Future Golf」が、2026年9月9日に米国へ上陸した。まずはカリフォルニア州から展開し、ネバダ・テキサス・アリゾナ・フロリダを加えた5州、60以上の加盟コースへと広げる計画だ[1]。Future Golfは1つの会員資格とアプリだけで、加盟する複数のゴルフコースを渡り歩ける「共通会員権」型のサービスで、豪州では6万人超が利用する国内最大級のゴルフコミュニティに育っている[1]。単一クラブへの所属を前提にしてきた米国・日本の会員権文化とは異なる発想だ。
ゴルファーにとっては、予約とプレー料金の負担を抑えながら行くコースの選択肢を増やせる仕組みが実利になる。IT・ビジネス読者にとっては、既存の予約サイト型モデルとは違う「アクセス権のサブスク化」がどこまで市場を切り拓けるかが論点になる。単一クラブへの帰属を前提にゴルフを続けてきた読者ほど、この発想の違いは大きく映るはずだ。本稿では豪州での成長の経緯、米国での仕組み、そして日本の会員権文化との対比から、この動きが持つ示唆を整理する。
Future Golfとの違いを考える前提として、日本のゴルフ会員権の仕組みや売買のしかたを押さえておきたい読者には、会員権の基本を一冊にまとめたこの本が参考になる。
Future Golfとは何か 豪州発の会員制プラットフォームの正体
Future Golfは、2014年に豪州で創業したゴルフ会員制プラットフォームである[1]。創業者でCEOのアリ・テライ氏が地元コースのティータイムを買い取り、50豪ドルのFacebook広告と50豪ドル分のバウチャーでゴルファーを集めたのが始まりとされる[2]。当初は「Gen Y Golf」として若年層向けのグループ企画に力を入れていたが、対象を広げる形で現在のFuture Golfへと改称した[2]。
米国上陸を伝える同社の発表によれば、現在は6万人超の会員を抱え、「豪州最大かつ最も成長が速いゴルフコミュニティ」を自任する[1]。会員はアプリを通じてハンディキャップ管理、スコア記録、加盟コースの予約などにアクセスできる[1]。単一クラブへの入会金を払わずに複数コースへアクセスできる点が、従来型の豪州ゴルフクラブ会員権との違いだ。
現地メディアの取材によると、会員の約65〜70%はそれまでハンディキャップを持ったことがない層で、1万3000人超がその後に従来型クラブの会員へ移行したという[2]。単発の予約サービスではなく、ゴルフを始める入り口として機能してきた点が豪州での急成長を支えた。テライ氏自身、3歳で豪州に移住した移民家庭の出身で、正式なクラブ会員に頼らない独自の経路でゴルフに親しんだ経験が創業の原点になっているという[2]。

香港を拠点とするGolf Lifestyle Group(法人名はGLGHK Limited、以下GLGHK)が2026年8月31日、米証券取引委員会(SEC、米国の証券市場を監督する政府機関)にForm F-1(外国企業が米国で新規株式[…]
米国でどんな仕組みが使えるのか 1つの会員権と60超コースの中身
米国版Future Golfは、1つの会員資格とアプリで、カリフォルニア・ネバダ・テキサス・アリゾナ・フロリダの5州に広がる加盟コース網を使う仕組みだ。加盟コースは60以上に広げる計画で[1]、公式サイトによれば現時点では北カリフォルニアで25以上、全米で40以上が加わっている[3]。

会員はアプリでコースを探し、その場でティータイムを予約する。地元のコースに限らず、旅行先の加盟コースでも同じ会員資格でプレーできる[3]。この「州をまたいで使える」点が、単一クラブに紐づく従来の会員権とは最も違う部分だ。

米国上陸を記念し、先着1,000人限定の「ファウンディングメンバー」制度も用意された。加盟コースで使える12ラウンド分のプレー権、番号入りの特製キャップ、そして「生涯固定の会員価格」が特典として付く[1]。
公式サイトによると価格は年250ドル(約38,750円。1ドル=155円換算)で、通常価格の年400ドル(約62,000円)から約4割引きになる。会員である限りこの価格が固定される設計だ。実際にプレーできるのは10月27日からで、30日間の返金保証も付く[3]。
| 項目 | ファウンディングメンバー | 通常メンバー |
|---|---|---|
| 年会費 | 250ドル(約38,750円) | 400ドル(約62,000円) |
| 年間ラウンド数 | 12ラウンド | 非公表 |
| 価格の固定 | 会員継続中は生涯固定 | — |
| 特典 | Eastside Golfとの限定コラボキャップ(会員番号入り)など | — |
※「非公表」=Future Golfが公開していない項目、「—」=本稿で確認していない項目。
韓国・京畿道の高陽市(コヤン、ソウル近郊)のパブリックゴルフ場、高陽カントリークラブ(高陽CC)が2026年9月、ロボットキャディ「Hello Caddy(ハローキャディ)」40台を正式導入した。開発はゴルフ場向けAIロボットを手がけるエ[…]
なぜGolfNowやGolfPassと違うのか 米国既存モデルとの比較にみる差別化
米国にはすでに、ティータイム予約サイトGolfNowと同じグループの会員サービス「GolfPass+」がある。年会費119ドル(約18,445円)で、毎月10ドル分の予約クーポン(年120ドル分)や、予約12回分の手数料免除などが受けられる[4]。ただしGolfPass+は、個別の予約に割引・特典を積み上げる会員制であり、特定のコース網への包括的なアクセス権そのものを売る設計ではない。Future Golfは、会員資格そのものが加盟コース網への入場券になる点で異なる。

米国上陸にあたりFuture Golfは、ゴルフ界での多様性とアクセスの拡大を掲げるライフスタイルブランドEastside Golfと提携した[1]。ファウンディングメンバーに配る限定パックも、Eastside Golfと共同で制作したものだ[3]。
包括的なアクセス権とブランド提携を組み合わせ、「誰が・どうゴルフに入りやすくなるか」を打ち出している点が、予約割引を中心とする既存サービスとの違いだ。単純な低価格訴求では説明しきれない差別化軸といえる。
mermaid.initialize({startOnLoad:true}); なぜ不正会計は起きるのか──W社に学ぶガバナンスの本質 なぜ不正会計は起きるのか──W社に学ぶガバナンスの本質 MBA アカウンティング 実践講義ノー[…]
日本に複数コースを渡り歩けるゴルフ会員権はあるのか
似た発想の「共通会員権」は日本にもある。ただし仕組みも価格帯もFuture Golfとはかなり違う。ゴルフダイジェスト社が2020年2月に紹介した関東の例では、太平洋クラブの正会員の新規募集が630万円(税別)で、国内17コースと海外提携23クラブでプレーできる。山田クラブ21は正会員10万円以下(名義書換料は別途50万円、いずれも税別)で、複数県の6コースを利用できる[5]。
共通しているのは、日本の会員権が数十万円〜数百万円規模の資産性を持つ預託金や名義書換料を伴う点で、Future Golfのような年数万円の低額サブスクとは前提が異なる。土地の希少性と単一クラブへの帰属意識が強い商習慣が、この価格差の背景にある。
ビジネスの観点では、日本で同種モデルを展開するなら会員権を「資産」ではなく「アクセス権」として再定義する必要がある。ゴルファーにとっては、まとまった預託金を払わずに複数コースを試せる選択肢自体は、日本ではまだ限定的ということになる。
| 比較軸 | Future Golf(米国) | 日本の共通会員権(例) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 年250〜400ドル(約38,750〜62,000円) | 正会員10万円以下〜630万円(2020年2月時点・税別) |
| 位置づけ | サブスク型アクセス権 | 資産性のある会員権 |
| アクセス範囲 | 全米40超(5州60以上へ拡大予定) | 国内6〜17コース(太平洋クラブは海外提携23クラブも) |
| 途中解約 | 可能(返金保証あり) | 譲渡・売却が前提 |
まとめ
Future Golfの米国上陸は、ゴルフ会員権を「所有する資産」から「使うためのアクセス権」へ組み替える動きだ。ファウンディングメンバーを先着1,000人に絞った設計からも、価格勝負ではなく初期コミュニティの質を重視する姿勢がうかがえる。ゴルファーにとっては、年間数万円の固定費で複数コースを渡り歩ける選択肢が米国で現実になった。ビジネス読者にとっては、予約割引の積み上げ型だった既存市場に、会員資格そのものを商品化する新しい切り口が入り込んだ点が見どころになる。カリフォルニア以外の州でどこまで加盟コースを積み上げられるかが、豪州のような成長曲線を米国でも再現できるかの試金石になる。日本でこの発想がそのまま根付くかは、会員権文化そのものの見直しにかかっている。
よくある質問(FAQ)
Q. Future Golfはどこの国の会社ですか。
A. 2014年に豪州で創業した会社で、2026年9月9日にカリフォルニア州から米国へ展開を始めた[1]。
Q. 米国のファウンディングメンバーになるといくらかかりますか。
A. 公式サイトによると年250ドル(約38,750円)で、会員継続中はこの価格が固定される[3]。
Q. 日本でも同じように複数コースを1つの会員権で回れますか。
A. 太平洋クラブや山田クラブ21のような「共通会員権」はあるが、会員権を購入する資産型で、価格帯も位置づけも大きく異なる(詳しくは本文の日本節を参照)[5]。



