ロボットキャディがキャディ料金を変える、韓国ゴルフ場の実験

韓国・京畿道の高陽市(コヤン、ソウル近郊)のパブリックゴルフ場、高陽カントリークラブ(高陽CC)が2026年9月、ロボットキャディ「Hello Caddy(ハローキャディ)」40台を正式導入した。開発はゴルフ場向けAIロボットを手がけるエアロボット(Airobot、社名はティーティーエヌジー)。同じく京畿道のスプリングヒルズカントリークラブ(Spring Hills CC)では、コース管理AIロボットのエックスアップ(X-Up)製芝生補修ロボットが導入された。背景には、パンデミック明けに高止まりしたキャディ・カート料金への不満から若年層の来場者が減り続ける、韓国パブリックゴルフ場のコスト構造問題がある。

ゴルフをする側からすれば、キャディ・カート代の圧縮と、人間キャディの代わりにロボットに先導される体験の変化だ。ビジネス・IT視点では、労働集約型サービスをロボットで代替する投資回収の実例であり、人手不足に悩む他業界の経営判断にも示唆を持つ。本稿では両コースの事例から、コスト構造転換と日本への示唆を追う。

なぜ韓国のパブリックゴルフ場はコスト構造の転換を迫られているのか

結論から言えば、来場者減少とキャディ・カート料金の高止まりが同時に進んでいるためだ。

韓国ゴルフ場経営協会(KGBA)の集計によれば、全国524コースの年間来場者数は2022年度の5058万人をピークに減少に転じ、2023年度4772万人、2024年度4741万人、2025年度4641万人と3年連続で減った[2]。パブリックコース単体でも、1コースあたり平均来場者数(18ホール換算)は2024年の8万9376人から2025年は8万5642人へ4.2%減った[2]。

要因は、パンデミック期の需要拡大で上がったグリーンフィー・キャディ料金・カート料金の高止まりだ。若年層は「コスパの悪い趣味」としてゴルフから離れ、東南アジアや日本への「ゴルフ旅行」に流れる動きも出ている[2]。高陽CCやスプリングヒルズCCのロボット投資は、この客離れに歯止めをかける固定費の作り直しという文脈で見る必要がある。

韓国のゴルフ場来場者数は2022年をピークに3年連続で減少

人口減少とゴルフ場の持続可能性という構造問題を、韓国パブリックコースのロボット投資とあわせて考えるための一冊。

ロボットキャディ「Hello Caddy」はキャディ・カート代をどれだけ圧縮するのか

Hello Caddyは、キャディとカートの機能を一台にまとめたロボットで、利用料は伝統的なキャディ+カート方式より安く設定されている。

高陽CCが8月の試験運用を経て9月に正式導入したHello Caddyは、ゴルフバッグを載せてプレーヤーを自動追従し、残り距離やペナルティエリアの情報を端末に表示する[1]。追従はLIDARセンサー、距離計測はボイスキャディ(Voice Caddie)社のAPL(Auto Pin Location、ピン位置の自動測位データ)を使い、レーザー距離計並みの精度を出す[1][3]。

利用料は1人3万ウォン(約3300円、1ウォン=0.11円換算)で、従来のキャディ料金(3万〜4万ウォン)とカート料金(2万〜3万ウォン)を合わせた5万〜7万ウォン(約5500〜7700円)より4〜6割安い[1]。高陽CCのイ・ウォンヒ氏は「プレー費用が下がり、6〜7km歩く運動にもなった」と話す[1]。現在は3・4番ティー時間帯限定で、試験期間中は5〜6組の枠が満枠になった[1]。

項目伝統的なキャディ+カートHello Caddy
キャディ料金3万〜4万ウォン(約3300〜4400円)ロボットが代替
カート料金2万〜3万ウォン(約2200〜3300円)料金に込み
1人あたり合計目安5万〜7万ウォン(約5500〜7700円)3万ウォン(約3300円)
Hello Caddyの利用料は伝統的なキャディ+カート料金を下回る
ゴルフテック/海外展開

豪州のゴルフテック企業GolfTrak(ゴルフトラック)と、米国のプラットフォーム企業ChipIn(チップイン)が、2026年8月上旬に越境合併を発表した[1][2]。GolfTrakはスマートフォンのカメラとコンピュータビジョン技術(画[…]

芝生補修AIロボットは何を変えるのか

結論としては、コース管理という別の人手不足領域でも、ロボットが人件費とメンテナンスコストを圧縮し始めている。

スプリングヒルズCCが導入したのは、エックスアップ製の自律走行AIロボット2種だ[4]。「チェウム(채움)」はGPSでコース構造を学習し、AI画像認識でフェアウェイのディボット跡(芝がえぐれた跡)を自動検出して目土補修(トップドレッシング)を行い、人間の作業水準と比べ92%の精度という[4]。「セウム(세움)」はグリーン上のボールマーク(ボール落下のくぼみ)を補修するロボットだ[4]。

スプリングヒルズCCの試算では、この2台の稼働で5年間に約7億ウォン(約7700万円、1ウォン=0.11円換算)のコース管理コストを削減できる見込みだという[1]。猛暑でも広い面積を継続巡回できる点は、コース管理スタッフの高齢化と人手不足に直面する韓国のゴルフ場にとって、キャディ以上に切実な課題への回答になり得る[1]。

チェウムとセウムが芝生補修を分担し5年で7億ウォン削減
X-Up製ロボット2台がコース管理の人手不足を補う
ガバナンス/ゴルフテック

米国ゴルフ協会USGA(全米のゴルフ規則とハンディキャップ制度を管轄する統括団体)が、AIによるルール解説サービス「Rules AI」を公式アプリGHIN(USGAが提供するハンディキャップ管理アプリ)上で試験展開している。開発を支えたの[…]

ロボット投資は韓国パブリックコース全体の料金構造をどう変えつつあるのか

両CCの事例は単発の実験ではなく、来場者減少に直面したパブリックコースが人件費構造を見直す動きの一部だ。

オリンピックカントリークラブ(Olympic CC)は「ザ・コミュニティA」というゴルフレジデンス型会員プランで、ラウンドと宿泊・文化活動をセットにした囲い込みを進める[1]。ハンヤンパインCC(Hanyang Pine CC)はアプリ「カロット(Karrot)」経由で地域住民向けにグリーンフィーを割り引く[1]。ロボット投資もこれらと根は同じで、「上がり続けるコストをテクノロジーで圧縮し、来場料に還元して客数を守る」という一つの流れの中にある。

来場者減少からロボット投資、料金圧縮、来場者維持へと続く流れ
来場者減少がロボット投資と料金戦略を連鎖させる
ガバナンス

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日本のゴルフ場でロボットキャディはキャディ料金を下げているのか

結論から言えば、日本でもキャディ不足という現象自体は現実に起きているが、韓国のような料金圧縮につながる規模でのロボットキャディ導入には至っていない。

帝国データバンクの調査によれば、2024年度の日本の「ゴルフ場」市場規模は8100億円で前年比3.0%増、4年連続増という韓国とは逆の回復基調にある[5]。同調査は、キャディ中心の既存スタッフの高齢化と若手確保の難しさを課題に挙げ、キャディ不足を背景とした「カート化」(セルフプレー化)の進行や派遣キャディの人件費上昇が販管費を押し上げていると分析する[5]。

ロボットキャディ自体は日本にも前例がある。兵庫県のザ・サイプレスゴルフクラブは2017年、英スチュワートゴルフ製「X9」を1ラウンド3000円で導入した[6]。ただし早朝・薄暮のセルフプレー補助にとどまり、高陽CCのような規模の導入やキャディ料金の置き換えを狙ったものではない。

差の背景には、日本のゴルフ場が「キャディ付き」を前提とせず、セルフプレー普及で人手不足を先に吸収してきた市場構造がある。キャディ付き文化が主流の韓国パブリックコースでは、人件費の重みがそのまま来場料にのしかかる。韓国の事例は「セルフ化で吸収しきれない領域(コース管理等)にロボット投資が広がるか」の先行指標であり、ゴルファーにとってはロボット同伴ラウンドの日常化はまだ先だ。

項目韓国(高陽CC等)日本
市場の勢い来場者3年連続減(2025年4641万人)[2]市場規模4年連続増、8100億円[5]
キャディ不足への対応ロボットキャディ本格導入(40台)[1]セルフプレー普及+部分試験(兵庫、2017年〜)[6]
キャディ料金への効果1人3万ウォン、従来比4〜6割減[1]

※「—」は本稿で確認していない項目、「非公表」は公開されていない項目。

まとめ

高陽CCのHello Caddyとスプリングヒルズの芝生補修ロボットは、来場者減少というプレッシャーの下でキャディ・カート料金という固定費を組み替える動きだ。ゴルフをする読者にとっては、コースを選ぶ際、料金だけでなく「誰が、何がラウンドをサポートするのか」という体験の質も比較軸に入ってくる。ビジネス・IT視点の読者にとっては、労働集約型サービスの人件費をロボット投資でどこまで回収できるかという判断のロジックが、具体的な数字とともに示された事例として参考になる。人手不足は日本のサービス業にも共通する課題だけに、韓国の実験の続報は追う価値がある。

よくある質問(FAQ)

Q. Hello Caddyはいくらで使えるのか?
A. 高陽CCでは1人3万ウォン(約3300円)で、伝統的なキャディ+カート料金(5万〜7万ウォン程度)より安い[1]。

Q. ロボットキャディは人間のキャディを完全に置き換えるのか?
A. 高陽CCでは現状、3・4番ティー時間帯限定で人間キャディと併用する運用にとどまる[1]。

Q. 日本のゴルフ場でもロボットキャディは使えるのか?
A. 兵庫県の一部コースに試験導入の前例はあるが、韓国のように料金体系を変えるほどの普及には至っていない[6]。

出典

[1] https://en.sedaily.com/sports/2026/09/04/goyangs-9-hole-courses-court-golfers-with-robot-caddies-ai
[2] https://en.sedaily.com/finance/2026/08/24/young-koreans-quit-golf-as-costs-bite-course-traffic-falls
[3] https://irova.kr/press/%E3%88%9C%ED%8B%B0%ED%8B%B0%EC%97%94%EC%A7%80-%EB%A1%9C%EB%B4%87%EC%B9%B4%ED%8A%B8-%ED%97%AC%EB%A1%9C%EC%BA%90%EB%94%94-%EA%B5%AD%EB%82%B4%EC%99%B8-%EA%B3%A8%ED%94%84%EC%9E%A5%EC%97%90%EC%84%9C/
[4] http://m.golftimes.co.kr/news/articleView.html?idxno=135461
[5] https://www.tdb.co.jp/resource/files/assets/d4b8e8ee91d1489c9a2abd23a4bb5219/76a62334abfc4321ac795bb5aef99384/20251201_「ゴルフ場業界」動向調査.pdf
[6] https://www.prdesse.com/posts/view/16296