
Azureの仮想マシン(VM)を予約インスタンス(Reserved Instance、以下RI。1年・3年単位で前払いし都度課金より安く使う購入方式)で運用しているクラウド費用担当者に関わる話だ。Microsoftは2026年7月1日をもって、D・Ds・Dv2・Dsv2など14系列の1年RIと、Dv3・Dsv3・Ev3・Esv3の1年・3年RIの新規購入・更新を終了すると案内している[1]。既存RIは契約満了までは有効だが、期限後に自動で次のRIへ切り替わるわけではない。契約が切れた瞬間、対象VMの課金はPAYG(Pay As You Go、従量課金。使った分だけ都度課金される基準単価)へ静かに移行し、請求額が跳ね上がる。IT×経営の意思決定層にとっては、固定費のつもりが変動費化し単価自体も上がる二重のリスクだ。本稿は終了措置の中身と失効時の挙動、今すぐ着手すべき棚卸しと代替コミットメントの手順を整理する。
予備知識
- 予約インスタンス(Reserved Instance、RI): 1年または3年前払いで契約し、都度課金より低い単価で使う購入方式
- PAYG(Pay As You Go、従量課金): コミットメントなしに、使った分だけ都度課金される基準料金
- Azure Savings Plan: 特定のVMシリーズに縛られず、時間あたりの支出額をコミットして割引を適用する契約方式
- FinOps: エンジニアリング・財務・事業部門が共同でクラウド費用を最適化する運用の枠組み
予約インスタンスの棚卸しやコミットメント選定は場当たり的な作業になりがちだが、FinOps Foundationの中心人物が書いた本書はその判断を体系立てる土台になる
何が終わるのか — 対象VMシリーズと期限
Azureの予約インスタンス終了措置は、VMシリーズによって対象期間が二段階に分かれる。1年RIのみが対象になるのは、Av2・Amv2・Bv1・D・Ds・Dv2・Dsv2・F・Fs・Fsv2・G・Gs・Ls・Lsv2の14系列だ[1]。1年・3年の両方が対象になるのはDv3・Dsv3・Ev3・Esv3の4系列である。これらは廃止予定のシリーズではなく現行世代として使い続けられるが、RIという購入形態が選べなくなる[1]。
区分に関わらず期限は共通で2026年7月1日だ。この日を境に、新規のRI購入と既存RIの更新(同条件での再契約)ができなくなる[1]。保有中のRIは契約満了まで割引価格が適用される。7月1日は既存RIを即座に打ち切る日ではなく、新しいRI契約を結べなくなる締切日だと理解したい。

Ev3・Esv3はVM自体を使い続けられるため、RIという購入手段だけが失われる点は見落とされやすい。VMシリーズの廃止だけを警戒していると、現行世代のEv3のRI切れを見逃す恐れがある[1]。
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失効時の請求はどう変わるのか — PAYGへの静かな切り替え
RIが失効すると、対象VMの課金は自動的にPAYGの基準単価へ切り替わり、事前の承認や通知フローを経ずに請求額が上がる。
保有RIに自動更新を設定していても、今回の対象VMシリーズでは保護にならない。自動更新は同条件のRIを再購入する動作であり、2026年7月1日以降はその再購入自体が受け付けられなくなるためだ[1]。自動更新の設定を確認して安心していたチームほど、想定外のPAYG移行に気づくのが遅れる。
実際の影響幅を示す事例として、128vCPUのEv3クラスタを1VM単位で見た場合、RI適用時は1時間あたり0.504ドル(1ドル=155円換算で約78円)、PAYG移行後は1時間あたり1.01ドル(約157円)になったと報告されている[2]。年間コストでは約4,420ドル(約68.5万円)から約8,840ドル(約137万円)へと、ほぼ2倍に増える計算だ[2]。

この数値は事例報告からの引用であり、Microsoft Learnの案内自体には具体的な試算例はない[1]。ただし単価が割引から基準単価へ戻る以上、上昇の方向自体はRIとPAYGの価格設計から見て一貫している。同様の構成を複数VM・複数リージョンで組む組織ほど、影響額は積み上がる。
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代替コミットメント手段の選び方 — 更新・Savings Plan・世代移行
7月1日以降にコストの割引を維持する手段は、期限内のRI更新、Azure Savings Planへの切り替え、次世代VMシリーズへの移行の三つに整理できる。
7月1日より前であれば対象シリーズの1年・3年RIを通常どおり再購入できる。これが最後のRI更新機会であり、既存運用を変えずに割引を延長したいチームに向く[1]。ただし更新後のRIにも期限は来るため、次にRIを選べなくなる点は変わらない。
Microsoftが移行先として案内するのがAzure Savings Planだ。特定のVMシリーズに縛られず時間あたりの支出額をコミットする契約方式で、対象シリーズを跨いで割引が適用される[1]。RIと違い特定シリーズへ固定されない分、次世代VMへの入れ替えがあっても割引を維持しやすい。

| 項目 | RI | PAYG | Savings Plan |
|---|---|---|---|
| 価格 | 前払いで単価固定 | 割引なし基準単価 | 金額コミット制で変動 |
| コミット期間 | 1年/3年 | なし | 1年/3年 |
| 対象範囲 | 特定シリーズ・リージョン固定 | 全VMサイズ | シリーズ横断 |
| 7/1以降の新規契約 | 対象14+4系列は不可 | 制限なし | 制限なし(推奨) |
もう一つの選択肢が、次世代VMシリーズへの移行と新規RI購入だ[1]。移行コストは発生するが価格性能比の改善も見込め、中長期で比較する価値がある。
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クラウドコストチームが今すぐやるべき棚卸し手順
対応の起点は保有RIの一覧化と失効日の確認であり、これを終えなければ更新すべきRIを取りこぼす。
サブスクリプション横断で保有RIを抽出し、VMシリーズが対象14系列・4系列に該当するかを判定する。次に各RIの契約満了日を確認し、2026年7月1日より前か後かで対応の緊急度が変わる。前に満了するRIは、期限内に更新するかどうかを即断する必要がある。
Microsoftは、RI失効の6〜12カ月前から計画を始めることを推奨している[1]。7月1日という一律の締切がある今回は、満了日が近いRIほど優先度を上げて点検したい。

点検の最後に、担当者と対応期限を記録に残す工程を挟むと、複数チームでRIを分散管理している組織でも見落としを防ぎやすい。棚卸しの結果、更新かSavings Planへの切り替えかを選ぶ判断は、ワークロードがVMシリーズを固定したままか、将来的に構成を変える予定があるかで決まる。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 保有しているRIが今回の対象かどうか、どこで確認できるか。
Azureポータルの予約(Reservations)一覧でVMシリーズ名を確認し、前述の1年RI対象14系列・1年3年RI対象4系列のいずれかに該当するかを照合する[1]。
Q2. 自動更新を設定していれば失効後も割引は続くか。
続かない。対象VMシリーズでは2026年7月1日以降、自動更新が実行する再購入自体が受け付けられないため、設定に関わらずPAYGへ切り替わる[1]。
Q3. RIを更新せず放置した場合、いつから請求が上がるか。
保有RIそれぞれの契約満了日を過ぎた時点でPAYGの基準単価に切り替わる。満了日はRIごとに異なるため、個々の契約日を基準に確認したい[1]。
まとめ
Azureの予約インスタンス終了は、VM自体の廃止ではなく購入手段の締切であり、7月1日以降は新規RIも更新も選べなくなる。自動更新を設定していても保護にはならず、契約満了とともに静かにPAYGへ切り替わり、128vCPU Ev3クラスタの事例のようにほぼ2倍のコスト増になりうる[2]。今すぐやるべきは保有RIの棚卸しと満了日の確認、そして更新・Savings Plan・次世代シリーズ移行のどれを選ぶかの判断だ。固定費のつもりが変動費に戻る前に、着手日を決めておく価値がある。




