
国内でデータセンターの新設・増設を計画している事業者と、系統用蓄電池事業を手がける事業者の、事業開発・インフラ企画担当者に向けた話である。系統連系(発電設備や大口の需要設備を電力網につなぐこと)の予約は契約申込みの先着順で決まるため、確保した容量の一部しか使わない「空押さえ」が起きる。資源エネルギー庁は2026年8月6日の第12回次世代電力系統ワーキンググループ(WG)で、空押さえ対策の具体案を示した[1]。協議が停滞しても連系予約は維持されるため実質的に空押さえが可能となっており、後着の事業者の検討に遅れが生じる可能性もある、というのが規律の出発点にある認識だ[2]。6月10日の第11回で対象を最終契約電力30MW以上と定めた[2]のに続き、今回は規律の発動条件、容量開放の対象エリアの基準、費用精算額の算定式まで踏み込んでいる。規律は既存契約にも及ぶため、2027年4月を目標とする導入時期をまたぐ計画は、いま設定している契約電力そのものが判断材料になる。
予備知識
- 空押さえ: 系統への接続容量を確保したまま、その一部しか実際には使わない状態
- 契約電力: 需要家が電力会社と契約する使用電力の上限値。1年単位で設定する
- 段階別契約: 稼働開始に合わせて契約電力を段階的に引き上げる契約。最後の段階が最終契約電力
- 特別高圧: 契約電力が大きい大口需要家の電圧区分。大規模なデータセンターの多くが該当する
系統連系や容量確保の話を専門用語のまま読み下せるよう、電力系統の基礎を1冊で押さえたい担当者に。
第12回WGで、制度はどこまで具体化したか
第11回の時点で固まっていたのは枠組みまでだった。規律の対象を最終契約電力30MW以上とすること、契約面の規律は2027年度初頭の適用開始を目指すこと、段階別契約の最長期間を原則6年とすること[2]。第12回の資料3は、そこから先の発動時期・対象系統・負担額を具体化した案にあたる。ただし記述はいずれも「〜としてはどうか」で、事務局案として提示された段階にある[1]。
今回あらためて明記されたのが発動条件である。容量開放は「供給開始日の延期・契約電力の減少が1年以上継続」した場合、費用精算は「最終契約電力への未達が1年以上継続」した場合に発動する[1]。この1年の猶予は、託送供給契約の最小単位が1年であることに合わせたものである[2]。導入開始時期は2027年4月が目標で、既存契約には託送供給等約款の改定以降に適用される[1]。
需要側の圧力は緩んでいない。電力広域的運営推進機関の需要想定は、データセンター・半導体工場の新増設分を個別に計上し、2035年度の最大需要電力で合計762万kW(データセンター661万kW、半導体工場101万kW)、需要電力量で568億kWhの増加を見込む[3]。一方で系統接続の予約は先着順で決まるため、情報が固まらない段階でも申し込むインセンティブが働く。受電地点などの供給条件の見通しが得られていないために一般送配電事業者が技術検討に着手できず、契約申込みから現地調査・技術検討の間で協議が停滞している事例が確認されている[2]。

先に動くのは手続き面の規律である。契約申込みに需要家都合の不備または変更があれば申込みを取り消して列へ並び直し、供給承諾から工事費負担金の入金までの期限を3か月以内とする。資料1はこの2つを「本年10月1日付(予定)で関係規程類を改正し、同日より特高需要家を対象として運用を開始する」としており、2026年9月時点ではまだ始まっていない[2]。
電力調達だけでなく施設全体の計画・運用まで、業界標準の実務基準に沿って点検したい担当者に。
「容量開放」と「費用精算」は、別々の条件で発動する
2つの規律は目的も発動条件も対象エリアも別に設定されている。どちらか一方が選ばれる二者択一ではない。段階別契約の途中段階で容量開放が発動すると最終契約電力も引き下げられ、その結果として費用精算も発動する[1]。
| 項目 | 対応① 容量開放 | 対応② 費用精算 |
|---|---|---|
| 規律の内容 | 段階別契約の途中段階での供給開始の延期・契約電力の減少 | 通常契約・段階別契約の最終契約電力での供給開始の延期 |
| 目的 | 既存設備の最大限活用と公平な接続機会の確保 | 他需要家の託送料金負担の増加抑制 |
| 発動条件 | 延期・減少が1年以上継続 | 最終契約電力への未達が1年以上継続 |
| 対象エリア | 申込みが多いエリア(空き容量30MW未満の系統とする案) | 全エリア |
| 対象需要家 | 最終契約電力30MW以上 | 同左 |
| 導入開始時期 | 2027年4月(目標) | 同左 |
| 既存契約 | 託送供給等約款の改定以降に適用 | 同左 |
出典: [1]
容量開放の対象エリアの基準は、第11回では「系統の空き容量の水準を用いる」ところまでで、水準そのものは次回以降に送られていた[2]。第12回の案は、大規模需要の水準である30MWをそのまま基準に置き、「空き容量が30MW未満となっている系統を容量開放の対象としてはどうか」というものである。新たな大規模需要が1件も入らない系統から先に開放する考え方になる。見直しは年1回が基本で、系統状況に大きな変更が生じた場合は1年以内の再見直しもあり得る[1]。
予見性への手当ても入った。連系前については、段階別契約を前提とする需要家が事前検討を申し込むと、一般送配電事業者は工事の要否などに加えて、その系統がその時点で対象エリアかどうかも併せて回答する。連系後については、供給開始の延期や契約電力の引き下げを申し出た時点で対象エリアかどうかを判断するが、申し出た時点では対象外でも、後からそのエリアが対象になれば、対象になった時点から1年を超えて延期や引き下げが続く場合に容量開放の対象となる[1]。なお通常契約(1年契約)では容量開放は発動せず、費用精算だけが発動する[1]。
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費用精算はいくらになるか
第12回で示された算定式は、需要家が自分で計算できる形をとる。総工事費用に、その工事で増える電力容量全体をベースとしたkW按分比率を掛ける[1]。
費用負担額 = 総工事費用 ÷ 設備工事後に増加する電力容量全体 ×(使用予定電力容量 − 使用実績電力容量)
資料3の変圧器の例では、総工事費用30億円、工事後に増加する電力容量全体300MW、使用予定電力容量150MW、使用実績電力容量50MWで、費用負担額は10億円になる[1]。諸元は事前に分かる。契約申込みの時点で一般送配電事業者が総工事費用・増加する電力容量・当該需要家の使用予定容量を回答し、総工事費用は工事完了後に確定するため、確定後に改めて通知される[1]。
この需要規模に応じた費用精算は、費用を個別に特定しにくい上位系統(送電設備・変電設備)に加えて、供給線も対象とする案になっている。30MW未満の需要家は上位系統・供給線のいずれも現行約款による費用精算のままで、この算定式には入らない[1]。最終契約電力にいったん到達させてから1年未満で引き下げる規律逃れについても、現行の費用精算に代えて需要規模に応じた費用精算の対象とする案が示された[1]。
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段階別契約の6年は「原則」であって、一律ではない
6年という上限は、費用精算を避けるために最終契約電力の到達時期を過度に先送りすることを防ぐために置かれた。第11回は全国の段階別契約の年数を調べ、現状契約の約9割をカバーする期間として原則6年を示している[2]。
第12回はこれを「1度に受け付けることができる段階別契約の最長期間」と整理し直した。当初契約に係る費用精算はそこで一度区切り、追加投資などで新たな需要増加が生じれば新たな段階別契約を結べるようにする案である[1]。同じ需要場所で一定期間後に増設する計画まで6年で縛る形にはならない。
原則外として6年超を認めるケースも2つ挙がった。系統増強工事が長期間に及び工事と並行して段階的に供給する場合(系統設備の制約)と、国または地方自治体の文書に計画が明記された公共インフラなどの場合(公共案件)である。加えて、すでに6年を超える契約を結んでいる需要家には見直しを求める影響が大きいとして、現時点で供給承諾済みであれば引き続き現行契約を認める方向が示された[1]。いま6年を超えている契約を、ただちに詰め直す話ではない。
一方で、1年を超える延期が認められる事由は狭い。資機材調達の遅れや建設遅延を需要家の責に帰すべきか個別に判断するのは実務上難しいとして、災害による被災や工事の継続が物理的に不可能となった場合など、明確に確認可能な被害に限る整理になっている[2]。
どの契約が対象に入るか
30MWという閾値は、2020年度以降に新設された全国の特別高圧需要家で契約成立済みのもののうち、上位約1割が対象になる水準として設定された[2]。ただしこれは閾値を決めるための母集団であって、適用範囲が2020年度以降の新設に限られるわけではない。現行の託送供給等約款は変更後の約款によることを明記しており、契約締結済みで最終契約電力に達していない需要家にも新たな規律が適用される[2]。

絞り込みの軸は3つである。特別高圧であること、最終契約電力が30MW以上であること、最終契約電力にまだ到達していないこと[1][2]。到達済みの需要家は従来の扱いに戻り、30MW未満の需要家は容量開放の対象にならない[1]。閾値は固定ではなく、容量分割による規律逃れの可能性などをフォローアップしたうえで見直すとされている[2]。
2026年8月からの接続検討申込みの上限は、系統用蓄電池だけの規律
ここまでは需要家側の契約に対する規律である。これとは別に、発電等設備の系統アクセス手続きにも規律が入っており、時期が近いぶん混同しやすい。
第12回の資料2は、導入済みの5つの対策と適用範囲を一覧にしている。接続検討プロセスでは、①土地情報の書類提出の要件化(2026年1月〜)、②1事業者当たりの接続検討申込数の上限設定(2026年8月〜)、③工事費等が要望に合わない場合の早期回答(2026年4月〜)。契約申込みプロセスでは、④土地の使用権原提出の要件化(2026年10月〜)、⑤保証金の引上げ等(2026年4月〜)。資料2はこれらに「①・③・④は系統用蓄電池を含む発電等設備全体に適用。②・⑤は系統用蓄電池のみに適用」と注記している[4]。
つまり2026年8月から動いている接続検討申込数の上限は、系統用蓄電池だけにかかる規律である。データセンターの需要家が行う契約申込みは、これとは別の系列にある。上限は1事業者当たりの件数で、接続検討の申込みから結果の回答までが対象範囲になる。超過分は申込書類の確認が行われず、超過が解消された後に改めて申し込む扱いになる[5]。

図の数値は2026年3月時点の試算で、エリアごとの実績(平均値+2σ)から算定されている。東京の11件が最も多く、北海道・中部・中国・四国の5件が最も少ない。沖縄は設定されていない[5]。
蓄電池側の規律はさらに強まる方向にある。第12回の資料2は、契約申込済み案件が35GW積み上がり、接続検討数の増加が発電設備全体にも影響し続けていることを挙げ、接続検討料の引上げを含む見直し、土地の確保に関する追加的な対策、低圧の系統用蓄電池への対策を今後の検討事項としている[4]。
よくある質問(FAQ)
Q. 系統の空押さえとは何か。
A. 接続容量を確保したまま、実際にはその一部しか使わない状態を指す[1]。段階別契約では最終契約電力を維持する限り、途中段階の契約電力を減らしても系統容量は開放されない[2]。
Q. 自社は対象になるか。
A. 容量開放・費用精算の対象は、最終契約電力が30MW以上で、まだ最終契約電力に到達していない特別高圧の需要家である[1]。既存契約も託送供給等約款の改定以降は対象に入る[2]。
Q. 制度はいつから変わるか。
A. 手続き面の規律は2026年10月1日付での関係規程類の改正が予定されている段階で、2026年9月時点では始まっていない[2]。容量開放・費用精算は2027年4月の導入開始が目標で、第12回で示された内容は事務局案の段階にある[1]。系統用蓄電池を対象とする接続検討申込数の上限は2026年8月から適用されている[4]。
Q. 段階別契約が6年を超えていると、組み直す必要があるか。
A. 6年は原則で、系統増強工事が長期間に及ぶ場合や公共案件は原則外として6年超が認められる案になっている。現時点で供給承諾済みであれば、6年を超える現行契約を引き続き認める方向が示されている[1]。
まとめ
系統容量の確保は、データセンターにとっても系統用蓄電池事業にとっても投資計画の前提になっている。その前提は、2026年10月1日(予定)の手続き面の規律と、2027年4月(目標)の容量開放・費用精算という2段階で変わる[1][2]。系統用蓄電池を対象とする接続検討申込数の上限は、これとは別に2026年8月から動いている[4]。
インフラ企画で先に確定させたいのは、拠点ごとの最終契約電力が30MWの境目のどちら側にあるか、最終契約電力に到達済みかどうかの2点である。到達していなければ、約款改定以降は既存契約でも対象に入る[1][2]。段階別契約が6年を超えていること自体は問題にならず、供給承諾済みであれば現行契約が認められる方向にある[1]。費用精算の金額は、総工事費用・設備工事後に増加する電力容量全体・使用予定と使用実績の差がそろえば概算できる[1]。
ただし第12回の案はいずれも「〜としてはどうか」という提示の段階にとどまり、確定するのは託送供給等約款の改定による。2027年4月の目標時期まで、次回以降のWG資料で条件が動く余地は残っている[1]。
出典
[1] 局地的な大規模需要に対する規律確保について(資源エネルギー庁 第12回次世代電力系統ワーキンググループ 資料3、2026年8月6日)[2] 局地的な大規模需要に対する規律確保について(資源エネルギー庁 第11回次世代電力系統ワーキンググループ 資料1、2026年6月10日)
[3] 全国及び供給区域ごとの需要想定(2026年度)(電力広域的運営推進機関、2026年1月21日公表)
[4] 系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について(資源エネルギー庁 第12回次世代電力系統ワーキンググループ 資料2、2026年8月6日)
[5] 系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について(資源エネルギー庁 第10回次世代電力系統ワーキンググループ 資料2、2026年4月16日)


