
この記事でわかること
- Day1-5の学びの全体像と統合の方法
- 全6回のワークシートとコミットメントシートの対応関係
- 自己開発コミットメントシートの5セクションそれぞれの書き方
- 「志」を定義するWANT × CAN × NEEDフレームワーク
- 仲間からのフィードバックを最大限活かす4つの質問軸
- グループ対話の進め方(6分共有→10分意見交換→4分振り返り)
- 「意外に自分は…」「やっぱり自分は…」で自己認識の変化を振り返る方法
- 行動宣言(1分間スピーチ)の構造と意義
- 事上磨錬、出会いの意味、Be Yourself
- 卒業後も使い続けるフォローアップの方法
- 科目全体の核心メッセージ5つ
はじめに:全ての学びを1枚に統合する
Day6は「リーダーシップ開発と倫理・価値観」全6回の集大成だ。Day1-5で探求してきた全ての要素を1枚のシート「自己開発コミットメントシート」に統合し、今後の具体的なアクションプランとして言語化する。
この日のゴールは明確だ。「あなたはどんなリーダーになりたいのか。そのために何をするのか。それを自分の言葉で語れるか。」

Day1-5の振り返り:5つのワークシートの位置づけ
Day6の作業に入る前に、5枚のワークシートの相互関係を確認する。これらは独立したワークではなく、一つの大きな物語を構成している。

| ワークシート | 作成Day | 対応するコミットメントシートのセクション |
|---|---|---|
| WS1: リーダー要件 | Day1-2 | ①ありたい姿、②スキル面 |
| WS2: 免疫マップ | Day2 | ③自己変革を妨げている思い込み |
| WS3: 360度FB解釈 | Day3 | ②スキル面(強み・弱みの認識)、③スキルの現状 |
| WS4: 価値観棚卸 | Day4 | ②ウェイ面(価値観)、③ウェイの現状 |
| WS5: 倫理観棚卸 | Day5 | ②ウェイ面(倫理観)、③倫理の誘因 |
この対応関係を理解した上で、コミットメントシートの作成に入る。
自己開発コミットメントシートの全体構造
コミットメントシートは5つのセクションで構成されている。Day6のレポート(配点20点、科目の中で最も高い配点)はこのシートの質で評価される。

セクション①:ありたい姿
「何年後」は2年後以上で自由に設定する。「どんな舞台で何を実現しているか」を具体的に描く。
ここで問われる根本的な問いは、Day1で最初に投げかけられたものと同じだ。
あなたは本当にリーダーになりたいですか? 心の底からYesといえますか?
6回の授業を経た今、この問いに対する答えはDay1の時とは質的に異なっているはずだ。表面的な「なりたい」ではなく、自分の価値観と整合した、腹落ちした「ありたい姿」が描けるかどうかが問われる。
ありたい姿を描くポイント
- 具体的な場面が想像できるか — 「リーダーになりたい」ではなく「3年後、XXXの領域で、YYYのチームを率いて、ZZZを実現している」レベルの具体性
- 自分の価値観と整合しているか — ワークシート4で言語化した価値観と矛盾していないか
- 社会への貢献が含まれているか — 自分の成長だけでなく、それを通じて何を世の中に還元するか
- 心が躍るか — 論理的に正しくても、心が動かないビジョンでは持続しない
セクション②:スキルとウェイ
ありたい姿を実現するために必要な「能力面」と「意識面」を分けて記述する。
| スキル(能力面) | ウェイ(意識面) |
|---|---|
| 身につけておくべき能力・知識 | 重視したい価値観・倫理観 |
| Day1-3で特定した開発課題 | Day4-5で言語化した価値観・倫理観 |
| 例:財務分析力、英語プレゼン力、組織設計力 | 例:誠実さ、挑戦、チームへの貢献、知りながら害をなさない |
スキルは「What(何ができるか)」、ウェイは「Who(どんな人間であるか)」に対応する。両方が揃って初めて、信頼されるリーダーとしての行動が可能になる。
セクション③:差分と開発上の留意点
ここが最も内省を必要とするセクションだ。4つの観点で現状を冷静に分析する。

このセクションで特に重要なのは、「思い込み」と「倫理の誘因」の2つだ。スキルやウェイの「不足」は比較的書きやすいが、「何が自分の変革を阻んでいるか」「どんな状況で自分は倫理の線を踏み外しそうになるか」は、正直な自己直視なしには書けない。
セクション④:具体的アクションプラン
4つの領域に分けて、実行可能な具体策を記述する。

アクションプランのポイントは、「明日から何をするか」が具体的であること。壮大なビジョンも、明日のアクションがなければ絵に描いた餅だ。「いつ」「何を」「どのくらい」「誰と」が明記されていることが重要。
セクション⑤:進捗確認方法・メンター
開発プランを「描いて終わり」にしないための仕組みを設計する。
- 何をもって進捗を測るか — 定量的な指標(例:プレゼン回数、FB獲得数)と定性的な指標(例:行動の変化の自覚)を設定
- 誰と定期的に対話するか — メンター、同期、上司など。フィードバックを受ける相手を具体的に
- いつ見直すか — 3ヶ月後、半年後など、見直しのタイミングを事前に設定
志を考える3つの視点:WANT × CAN × NEED
ありたい姿を描く際の指針として示されたフレームワークが「志の3要素」だ。『志を育てる』(グロービス経営大学院著)で詳しく解説されている。

3つの視点の詳細
WANT(やりたいこと)
Day4のワークシート4で言語化した価値観、Day3のライフラインチャートで見つけた「心が躍る瞬間」、キャリア・アンカーが示す根源的な欲求。これらがWANTの原材料だ。
WANTがないビジョンは持続しない。義務感だけで動き続けられる人間はいない。
CAN(できること)
Day3の360度FBで確認した強み、現在の専門知識・スキル、これまでの経験から培われた能力。
CANだけで描くビジョンは「得意なことの延長」にとどまり、成長の余地が狭くなる。しかし、CANを無視すると非現実的な計画になる。
NEED(求められていること)
Day1-2のワークシート1で分析した外部環境・戦略・課題から導かれる「リーダーとして求められること」。組織のニーズ、社会の課題、時代の要請。
NEEDだけで描くビジョンは「他者の期待に応えるだけの人生」になりがちだ。
3つが重なる領域=志
WANTだけなら独りよがり。CANだけなら安全地帯に留まる。NEEDだけなら他者に支配される。3つが重なる領域に「志」がある。
完璧に3つが重なる必要はない。今は2つしか重なっていなくても、足りない1つを意識的に開発することで、志の領域を広げていける。例えば、WANTとNEEDが重なっているがCANが足りない場合、スキル開発に注力すれば志に近づく。
ピアフィードバック(ギフトコメント)
Day6のワークショップでは、グループメンバー同士でコミットメントシートを共有し、相互にフィードバックする。このプロセスは、Day3の360度FBに続く「他者の目を通した自己認識の深化」だ。
聞き手からの質問・アドバイスの4軸

4軸の中で特に価値があるのは「深める軸」と「挑戦軸」だ。
「深める軸」は、書き手が自分でも気づいていない「本当の想い」を引き出す。「なぜこのスキルを選んだのか」「この価値観の背景にある体験は何か」と問われることで、表面的な記述の奥にある真意が言語化される。
「挑戦軸」は、書き手の「安全策」を見破る。人は無意識に達成可能な範囲に目標を設定しがちだ。「もう一段上を目指せないか」と問われることで、自分の可能性の上限を再検討する機会が生まれる。
ギフトコメントの書き方
- 語り手のコミットメントシートを聞いて、素晴らしい点を素直に伝える
- もう少し改善すべきことがあるとしたら、1-2つ伝える
- 相手を否定することなく、成長を促すような表現を心がける
- 「私はこう感じた」というIメッセージで伝える
ギフトコメントは「評価」ではなく「贈り物」だ。受け取った側が全てを採用する必要はないが、なぜそう言われたかを考えることに価値がある。
グループ対話の進め方
Day6のワークショップは以下の時間配分で進行する(4人組の場合、1人あたり20分)。

共有(6分)のポイント
6分は短い。全てを説明しようとすると時間が足りない。ポイントは:
– ①ありたい姿を最初に明確に伝える(1分)
– ②と③を結びつけて説明する(3分)
– ④の中で特に聞いてほしいポイントを絞る(2分)
意見交換(10分)のポイント
- 聞き手は4軸を意識して質問する
- 一人の聞き手が長く話しすぎない(1質問1分程度)
- 語り手は防衛的にならず、問いを味わう
- メモを取りながら聞く
振り返り(4分)のポイント
- 各聞き手がギフトコメントを30秒-1分で伝える
- 語り手は「対話で新たに気づいたこと」を30秒で言語化する
- この振り返りの言語化が、行動宣言の材料になる
気づきの言語化:「意外に自分は…」「やっぱり自分は…」
Day6の終盤では、6回の学びを通じた自己認識の変化を2つの軸で振り返る。

この振り返りの意味
「意外に」は、360度FBやグループ対話を通じて発見した盲点や新しい自分だ。6回の授業で得た最も意外な発見を一つ選ぶ。
「やっぱり」は、対話や内省を経てもなお揺るがなかった自分の核心だ。ライフラインチャートの山の部分、キャリア・アンカー、価値観のキーワードのうち、6回の議論を経ても手放さなかったものを一つ選ぶ。
「意外に」と「やっぱり」を統合した先に、一点の曇りなく自分が目指したいと思えることが浮かび上がる。これが行動宣言の核となる。
行動宣言(1分間)
科目の締めくくりは「行動宣言」だ。1分間で全員の前で自分の言葉で語る。
宣言する内容
- 自分らしいリーダーとは?
- これから何を意識し、行動していくか?
行動宣言の構造
1分間で伝えるべき要素は:
1. 自分のリーダー像(「私は〜なリーダーでありたい」)
2. その核心にある価値観(「なぜなら私は〜を大切にしているから」)
3. 具体的な行動(「そのために明日から〜を続ける」)
行動宣言の意義
この「1分間の宣言」は、言語化の究極のテストだ。長い時間をかけて内省してきた内容を、最も凝縮された形で表現する。
そして、宣言には「宣言効果」がある。公の場で口にしたことは、心理的にコミットメントが高まる。「あの時ああ言った」という自覚が、日常の行動を方向づける。
飾った言葉は不要だ。流暢である必要もない。心からの言葉、正直な言葉が、聞いている人の心を動かし、そして何より自分自身を動かす。
科目を貫く3つの言葉
Day6の最終セッションで示されたいくつかの言葉が、科目全体のメッセージを凝縮している。
事上磨錬
真の学問は、日常の行為から離れた思索のうちにはなく、日々の生活や行動を通して修養するものである
―― 王陽明
リーダーシップ開発は、クラスの中だけで完結するものではない。日々の仕事と生活の中での実践こそが本質だ。教室で得た気づきは、実務の場で試され、磨かれ、初めて「自分のもの」になる。
出会いの意味
人間は一生のうち逢うべき人に必ず会える。しかも、一瞬早すぎず、一瞬遅すぎないときに。しかし、うちに求める心なくば、眼前にその人ありといえども、縁は生じず。
―― 森信三
この科目の同期メンバーとの出会いは偶然ではない。しかし、その出会いを学びに変えられるかどうかは、「求める心」にかかっている。
Be Yourself
本当の自分に正直に!
6回を通じて一貫して問われ続けたのは、この姿勢だ。
過去の事実は変わらない。しかし解釈は変えられる。今後の行動は選べる。そして何より、自分らしいリーダーシップは、自分の中にしかない。他者のコピーではなく、自分の価値観・強み・経験から生まれるリーダーシップを追求する。これがBe Yourselfの真意だ。
卒業までの継続的フォローアップ
コミットメントシートは提出して終わりではない。卒業までの期間、そしてその後のキャリア全体を通じて、定期的に見直しブラッシュアップすることが求められる。

フォローアップの具体的方法
- 3ヶ月ごとのセルフレビュー — コミットメントシートを読み返し、④アクションプランの進捗を確認。達成できたこと、できなかったことの理由を分析
- メンターとの月1対話 — ⑤で設定したメンターと定期的に対話。「最近どうですか」ではなく、コミットメントシートを軸にした構造的な対話
- 同期とのピア対話 — Day6のグループメンバーと半年に1度程度、互いのコミットメントシートの進捗を共有
- ライフイベントに合わせた大幅改定 — 転職、昇進、異動、プライベートの大きな変化があった時は、①ありたい姿から全面的に見直す
科目全体の核心メッセージ
Day6の最終セッションで改めて整理された、全6回を通じた5つの核心メッセージ。

- リーダーシップは先天的資質ではなく「開発」できる — ドラッカーが言うように「生まれついてのリーダーなど存在しない」。意識的な開発で誰でもリーダーになれる
- 開発の出発点は「自分を開いて見る」こと — 360度FB、ライフラインチャート、価値観・倫理観の棚卸。全ては自分を正直に直視することから始まる
- スキル(能力)だけでなくウェイ(価値観・倫理観)が行動の土台 — 行動=スキル×ウェイ。スキルだけでは持続しない。ウェイだけでは成果が出ない。両輪が必要
- 人は弱い。だからこそ仕組みと自覚で自分を支える — 性弱説に立ち、免疫マップで構造を理解し、4つの合理化の罠を知り、仕組みで倫理を守る
- 正解はない。自分らしいリーダーを自分で定義し、行動を積み重ねる — Be Yourself。他者のコピーではなく、WANT × CAN × NEEDの交差点にある自分だけの志を追求する
Be Yourself — 本当の自分に正直に。
実務への持ち帰り
1. コミットメントシートを「生きた文書」にする
3ヶ月に一度は見直し、新たな気づきや環境変化を反映する。Googleドキュメントなどに保存し、いつでもアクセスできるようにしておく。手帳やスマホの壁紙に「ありたい姿」の一文を貼るのも効果的だ。
2. メンターを見つけ、定期対話を始める
社内外に「正直にフィードバックしてくれる相手」を1-2人確保する。月1回程度の対話の時間を設ける。対話のアジェンダはコミットメントシートの進捗確認を軸にする。
3. 行動宣言を見える場所に貼る
Day6で宣言した内容を1枚のカードにまとめ、デスクや手帳に貼る。日々の行動が宣言と整合しているか、自問する習慣をつける。週末に5分間、「今週の自分は宣言通りだったか」と振り返る。
4. 小さな挑戦を週1で設計する
コミットメントシートの④アクションプランから、毎週1つの「小さな挑戦」を選んで実行する。大きな変化は小さな行動の積み重ねから生まれる。Day2の「小さな実験」と同じ原理だ。
5. 同期とのつながりを維持する
Day6のグループメンバーと連絡先を交換し、定期的に近況を共有する。互いのコミットメントシートを知っている仲間は、卒業後も貴重な「開発パートナー」になる。
参考書籍
本Day のハンドアウトで紹介・引用されている書籍は以下の通り。
『これからのマネジャーの教科書』 グロービス経営大学院著(東洋経済新報社)
スキル・ウェイ・ギャップの統合的理解。
『なぜ人と組織は変われないのか』 ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー著(英治出版)
免疫マップの振り返り。
『新版 敬天愛人 ゼロからの挑戦』 稲盛和夫著(PHP研究所)
「人間は一人では成長できない」の引用元。
『修身教授録』 森信三著(致知出版社)
「事上磨錬」の精神の出典。
FAQ
Q1: コミットメントシートの「ありたい姿」が壮大すぎて現実味がないのですが?
A: 最初は壮大でも構いません。重要なのは④のアクションプランで「明日から何をするか」に落とし込めているかどうかです。ビジョンは大きく、行動は具体的に。3年後のビジョンを100とすると、明日の一歩は1でいい。しかしその1がなければ100には絶対に届きません。
Q2: ギフトコメントで「もっとこうした方がいい」と言われたが、自分の考えと違う場合は?
A: 全てのフィードバックを受け入れる必要はありません。ただし、「なぜそう言われたか」は考えてみてください。自分の盲点を示している可能性があります。Day3のジョハリの窓でいう「見えない窓」が開いた瞬間かもしれません。
Q3: 行動宣言を1分で語るのが難しいです。コツは?
A: 「私は〜なリーダーになりたい。なぜなら〜だから。そのために明日から〜を続ける」のシンプルな3文構造で十分です。飾った言葉より、心からの言葉が人に響きます。練習するなら、この3文を何度も口に出して言ってみてください。言葉が自然に磨かれていきます。
Q4: 卒業後もコミットメントシートは使い続けるべきですか?
A: フォーマットにこだわる必要はありませんが、「ありたい姿」「現状」「差分」「アクション」のサイクルを回し続けることは一生の財産です。年に1度、年始や誕生日などのタイミングで振り返ることを推奨します。形式は変わっても、「自分を開いて見る」「自分に正直であり続ける」という姿勢を持ち続けることが最も大切です。
Q5: WANT × CAN × NEEDの3つが全く重なりません。どうすれば?
A: 完全に重ならないのは自然なことです。まず2つの重なりを見つけてください。WANT × CAN(好きで得意なこと)が見つかれば、それが社会のNEEDにどう結びつくか探す。WANT × NEED(やりたくて求められていること)が見つかれば、CANを開発する。いきなり3つの完全な重なりを求めるのではなく、少しずつ重なりの面積を広げていくイメージです。
まとめ:6回の学びの全体像

全6回を通じた核心メッセージ:
- リーダーシップは先天的資質ではなく「開発」できる
- 開発の出発点は「自分を開いて見る」こと
- スキル(能力)だけでなくウェイ(価値観・倫理観)が行動の土台
- 人は弱い。だからこそ仕組みと自覚で自分を支える
- 正解はない。自分らしいリーダーを自分で定義し、行動を積み重ねる
Be Yourself — 本当の自分に正直に。
この科目で作成した自己開発コミットメントシートは、MBA在学中はもちろん、卒業後のキャリア全体を通じて「自分の成長を測る指標」として機能し続ける。3ヶ月に一度の見直しを強く推奨する。事上磨錬 ―― 日々の実践の中でこそ、リーダーシップは磨かれる。



