
従業員数千人規模で、オンプレミスのVMware仮想化基盤をAzure VMware Solution(AVS、MicrosoftがAzure上で提供するVMware互換の仮想化基盤サービス)へ移行済み、または移行中の日本企業は少なくない。情報システム部門やインフラ担当者が今向き合うべき変更が一つある。MicrosoftはAVSのうち、VCF(VMware Cloud Foundation、Broadcomが提供する仮想化ソフトウェアスイート)のライセンスを込みで販売してきたPAYGO(従量課金)型ノードについて、2026年10月31日までにBroadcomのVCF BYOL(Bring Your Own License、自己保有ライセンス持ち込み)サブスクリプションへ移行するよう求めている[2]。
Microsoftは2025年10月15日をもってVCF同梱でのAVS販売を終了し、2025年11月1日以降の新規デプロイはポータブルVCFが必須になっている[2][3]。今回の期限は、それ以前にデプロイ済みのライセンス込み環境が対象になる[3]。予約インスタンス(RI)で契約している場合は猶予が異なり、RIの期間終了時、遅くとも2027年8月30日までにBYOLへの切り替えが必要になる[2][4][5]。
契約形態と契約時期によって、10月末までに動くべきか、来年以降でよいかが変わる。本稿はこの判断材料を整理する。
予備知識
- AVS(Azure VMware Solution): MicrosoftがAzure上で提供する、オンプレミスのVMware仮想化基盤をそのまま動かせるマネージドサービス
- VCF(VMware Cloud Foundation): Broadcomが提供する仮想化ソフトウェアスイート。vSphereやNSXなどを含む
- BYOL(Bring Your Own License): 顧客がBroadcomから直接購入したライセンスを、クラウド事業者のインフラ上で使う契約形態
- PAYGO / RI(従量課金 / 予約インスタンス): PAYGOは使った分だけ課金、RIは1年または3年単位で事前予約し割引を受ける契約形態
AVSを含むAzure側のサービス選定と構成判断を体系的に押さえたい読者には次の一冊が向く。
ライセンス込み販売終了とBYOL移行期限の全体像
MicrosoftはVCFライセンス込みのAVS販売を段階的に終了しており、既存環境も期限内にBYOLへ切り替えないとBroadcomのライセンス要件に非準拠となる。
MicrosoftはBroadcomによるVMware買収後のライセンス方針変更を受け、AVSのライセンス提供体制を段階的に変えている。2025年10月15日を基準日として、VCF込みで利用できるvDefend Firewall(NSXのファイアウォール機能)のコア数が確定した[3]。2025年11月1日以降、新規に購入するAVSノードにはVCFライセンスが同梱されず、顧客はBroadcomから別途ポータブルVCFサブスクリプションを購入する必要がある[3][5]。

既存環境への影響は2段階に分かれる。ライセンス込みのPAYGO型ノードは2026年10月31日までにBYOLへ移行しないと、Broadcomのライセンス要件を満たさなくなる[3][2]。予約インスタンス(RI)でVCF込みホストを契約している場合は、RI期間終了まで従来どおり使えるが、遅くとも2027年8月30日までにBYOL版RIへの交換か、AVSからの移行が必要になる[3][4][5]。
もう一つ見落としやすい期限がある。2025年11月より前にメール経由でBYOL登録していた顧客は、2026年3月31日までにAzureポータル上で私有クラウドごとに再登録する必要がある[3]。この再登録を放置すると、ライセンス状態が正しく認識されないまま10月末の期限を迎えるリスクがある。
登録コア数の管理とライセンスコンプライアンスの実務を知りたい読者には次の一冊が参考になる。
PAYGO契約と予約インスタンスで分かれる対応期限
契約形態がPAYGOか予約インスタンスかで、担当者が今動くべきかどうかが変わる。
| 契約形態 | 現状 | 対応期限 | 期限後の状態 |
|---|---|---|---|
| PAYGO(ライセンス込み) | VCFライセンス込みで従量課金 | 2026年10月31日 | 未対応ならBroadcomライセンス非準拠[3] |
| RI(VCF込み、2025年10月15日以前購入分) | RI期間中はVCF込みのまま継続可 | RI満了時、遅くとも2027年8月30日 | 満了後は同一条件で継続不可[3][5] |
| 新規購入(2025年11月1日以降) | 最初からBYOL必須 | 購入時点で対応済み | 該当なし[3] |
| PAYGO(2025年10月15日より前にデプロイ) | ライセンス込みで継続可 | 2026年10月31日 | ポータブルVCFへ移行[3] |

PAYGO型ノードを使っている企業は、猶予がほぼ残っていない。2026年10月末まで2か月強しかなく、Broadcomからのライセンス購入とAzureポータルでの登録作業を今すぐ始める必要がある[3]。
RIで契約している企業は、RIの残存期間を確認することが最初の一手になる。RIが2027年8月30日より前に満了するなら、ライセンス込みの便益は満了時点で終わる[3]。満了がその日を越えるRIを持っていても契約自体は続くが、2027年8月30日にライセンス込みSKUそのものが廃止されるため、RIの残存期間中にライセンス込み扱いだけが切れることになる[2][3]。RI満了前にBYOLへ切り替えたい場合は、Azureポータルの予約ページからライセンス込みRIをVCF BYOL版RIへExchange(交換)する[5]。
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BYOL移行後のコスト構造とコア管理の負担
BYOL移行後は、AzureインフラとVCFライセンスの請求元が分かれ、コア数の自己管理という新しい運用負担が生じる。
BYOL移行後、AVSの費用は2つに分かれる。Microsoftへの支払いはAzureインフラとAVSマネージドサービスの分のみとなり、VCFサブスクリプションはBroadcomへ別途支払う[5]。AVS VCF BYOL版の単体価格はライセンス込み版より低く設定されているが、これはBroadcomへのVCF費用を含まない比較である点に注意がいる[1][2]。
コア管理の負担も増える。ホスト種別ごとの搭載コア数はAV36とAV36Pが36、AV48が48、AV52が52、AV64が64で、BYOLホストの台数分だけ登録コア数を計算し、Broadcomからの購入コア数と一致させる必要がある[3]。

複数のプライベートクラウドで1つのVCFキーを分割登録することもできるが、登録コア数の合計がBroadcom契約の上限を超えると非準拠になる[3]。Microsoftは登録状況を毎月Broadcomへ報告するため、コア数のずれは看過されない[3]。
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移行の実務ステップと判断のタイミング
移行作業自体はダウンタイムなしで完了するが、Broadcomとの契約締結や社内承認には数週間単位の時間がかかる。
実務上の移行手順は5つに整理できる。Broadcomから25文字のVCFライセンスキーを購入し、Azureポータルでポータブルライセンスとして登録、展開済みコア数と登録コア数を一致させ、RI保有者はBYOL版RIへ交換する[5]。以後の顧客側の義務は登録コア数を実態と一致させ続けることで、Broadcomへの月次報告はMicrosoftが行う[5]。この手順自体は稼働中の環境をダウンタイムなしで切り替えられる[5]。

時間がかかるのはBroadcomとの契約締結側だ。公表された標準リードタイムはないが、VCFサブスクリプションの新規購入や見積取得には、ベンダー側の手続きだけで数週間を要することが珍しくない(筆者の実務上の見立て)。この前提に立つなら、10月末までに完了させるには9月上旬までに発注を終えておきたい。自社の調達期間は代理店に確認して逆算するのが確実だ。
vDefend Firewallを使っている場合はさらに注意がいる。2025年10月16日より前にライセンス込みRIでvDefend Firewallを有効化していれば、RI満了か2027年8月30日のいずれか早い方まで同条件を使えるが、それ以降はアドオンライセンスを別途登録しないと非準拠になる[3]。
SIer運用のAVS環境、稟議と保守契約がボトルネックになる理由
日本企業の多くはAVSをSIer経由の保守契約で運用しており、Broadcomとの直接契約や稟議手続きが海外企業より一段階多い。
米国発の分析記事はMicrosoftとの直接契約を前提に書かれているが、日本企業の多くはAVSをSIer(システムインテグレーター)経由の保守契約で利用している。Broadcomとの契約手続きやAzureポータルでの登録作業も、SIerが代行しているケースが多い(公表統計はなく、筆者の観測による)。
この構造がもたらす違いは主に2つある。1つ目は意思決定の階層で、BYOL移行に伴うVCF費用の追加発生は、SIerとの保守契約改定と社内稟議の両方を経てからでないと予算化できない。2つ目は監査対応で、内部統制上ライセンス非準拠状態のまま決算期を迎えることを避けたい企業が多く、10月末という期限は決算スケジュールと重なりやすい。

| 観点 | 直接契約(Microsoft/Broadcomと直取引) | SIer経由の保守契約 |
|---|---|---|
| 対応主体 | 情報システム部門が直接登録 | SIerへ照会後、SIerが登録代行 |
| 予算化 | 部門内の予算調整で完結しやすい | 保守契約改定と稟議が必要 |
| リードタイム(公表値なし・筆者の見立て) | 数週間 | 1〜2か月以上かかることがある |
IT部門の判断は1つ。契約書のPAYGO/RI区分とSIer経由かどうかを今週中に確認する。
決裁側の判断も1つ。VCF費用の追加発生を前提に、10月末を待たず9月中に稟議を起票する。
よくある質問(FAQ)
Q. AVSのBYOLって何のことですか。
A. BroadcomからVCF(VMware Cloud Foundation)ライセンスを直接購入し、Azure VMware Solution環境に持ち込んで使う契約形態のことです[5]。
Q. 10月末までに移行しないとどうなりますか。
A. Broadcomのライセンス要件に非準拠となり、環境が停止するリスクがあります[3]。
Q. 予約インスタンス(RI)を買っていれば何もしなくていいですか。
A. RI期間中はライセンス込みのまま使えますが、RI満了時、遅くとも2027年8月30日までにBYOLへの切り替えが必要です[3][5]。
まとめ
AVSのライセンス込み販売終了は、10月末の期限だけを見ると急な変更に映るが、実際には2025年10月から2027年8月まで段階的に進む移行である。PAYGO型を使っている企業は残り時間が少なく、RI型を使っている企業はRI満了日を起点に計画できる。対応期限を見誤ると、Broadcomのライセンス非準拠による環境停止という運用リスクに直結する。
IT部門の次の一手は、契約書でPAYGOかRIかを確認し、SIer経由の場合は対応要否を今週中に照会することにある。決裁側の判断材料は、VCFサブスクリプション費用がBroadcomへの新規支出として発生する点を前提に、9月中に稟議を起票することにある。
ライセンス変更は今後もBroadcom側の方針次第で続く可能性がある。契約形態と期限を正確に把握しておくことが、次の変更にも備える最短の道になる。
出典
[1] https://www.cloudcomputing-news.net/news/azure-vmware-solution-licensing-changes/[2] https://techcommunity.microsoft.com/blog/azuremigrationblog/updated-broadcom-vmware-licensing-changes-what-azure-vmware-solution-customers-n/4448784
[3] https://learn.microsoft.com/en-us/azure/azure-vmware/portable-vcf-licensing-reference
[4] https://petri.com/azure-vmware-solution-license-included-sales/
[5] https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/azure-vmware/vmware-cloud-foundations-license-portability

