相関があるのに因果がない?──ビジネス・アナリティクスDay3で学んだ、回帰分析とモデル化の使い分け

相関があるのに因果がない?──ビジネス・アナリティクスDay3で学んだ、回帰分析とモデル化の使い分け

「相関がある=原因である」は本当か?

アイスクリームの売上と水難事故の件数には、統計的に正の相関があります。アイスが売れるほど水難事故が増える。

では、アイスの販売を禁止すれば水難事故は減るでしょうか?

もちろん、そんなことはありません。両者に共通する「気温の上昇」という第三の変数が、それぞれに影響を与えているだけです。相関関係は因果関係を意味しない──Day3は、この有名な原則を実際のデータ分析で体感する回でした。

Day3のテーマ:関係性を数式で捉える

Day1-2では、データを分解し可視化する手法を学びました。Day3では一歩進んで、2つ以上の変数の間にある関係性を数式で表現する手法に入ります。

ここで登場するのが2つのアプローチです。

  • 帰納的アプローチ: データ(結果)から法則を見出す → 相関、散布図、回帰分析
  • 演繹的アプローチ: 理論(仮説)からモデルを組み立てる → モデル化

Day3は、この2つを一気に学ぶ密度の濃い回でした。

帰納的アプローチ:散布図・相関・回帰分析

散布図で「目で見る」

2つの変数をX軸とY軸にプロットしたものが散布図です。

たとえば「広告費(X)」と「売上(Y)」の関係を見たいとき、各月のデータを散布図に打ってみる。右肩上がりに点が並んでいれば正の相関がありそうだし、散らばりが大きければ関係性は弱い。

散布図の良いところは、数式に頼らずに直感的にデータの関係性を把握できることです。外れ値やデータのかたまりも目で確認できるので、数値だけでは見えないパターンに気づけます。

散布図の3パターン:正の相関・負の相関・相関なし

相関係数で「強さ」を測る

散布図で「なんとなく関係がありそう」と感じたら、次は相関係数(r)で関係性の強さを数値化します。

  • r = 1 に近い → 強い正の相関
  • r = −1 に近い → 強い負の相関
  • r = 0 に近い → 相関なし

ここで授業で強調されたのが、相関係数だけを見て判断しないことの重要性です。

有名な「アンスコムの例」が紹介されました。4組のデータセットがあり、すべて相関係数はほぼ同じ値を示すのに、散布図を描くと形状がまったく異なる──直線的な関係のもの、曲線的なもの、外れ値に引っ張られているもの。数値だけを見ていると、データの実態を見誤るという好例です。

だからこそ、必ず散布図とセットで確認することが大切なのです。

回帰分析で「式にする」

相関関係を確認したら、回帰分析で関係性を数式(回帰式)に落とし込みます。

y = a + bx(単回帰の場合)

この式があると、たとえば「広告費を100万円増やしたら、売上はいくら増えるか」を定量的に予測できます。

回帰分析のイメージ:データの関係性を数式で表す

授業では、ある企業の売上データを使って実際にExcelで回帰分析を実行しました。決定係数(R²)を見ることで、「この回帰式でデータのばらつきの何%を説明できるか」がわかります。R²が高ければモデルの当てはまりが良く、低ければ他の要因が大きいことを示唆しています。

回帰分析の落とし穴

ここで再び冒頭のテーマに戻ります。回帰分析で「広告費と売上にy = 50 + 3xという関係がある」と出ても、それは「広告費を増やせば売上が上がる」ことを証明したわけではないのです。

回帰分析が示すのは統計的な関連性であり、因果関係の証明ではありません。因果の方向性やメカニズムは、ビジネスの文脈や追加の検証で判断する必要があります。

この点を常に意識しておかないと、データが言っていないことをデータが言ったかのように報告してしまう危険があります。

演繹的アプローチ:モデル化

Day3の後半では、帰納的アプローチとは逆の発想でビジネスの構造を捉えるモデル化を学びました。

モデル化とは何か

モデル化とは、ビジネスの因果構造を数式やツリーで表現することです。

モデル化:ビジネスの因果構造を数式で表す

たとえばコンビニの売上をモデル化すると:

売上 = 来店客数 × 購買率 × 客単価

さらに来店客数を分解すると:

来店客数 = 商圏人口 × 認知率 × 来店頻度

このように、「そもそも売上はどのような構造で決まるのか」を論理的に組み立てていきます。

帰納と演繹の違い

帰納的アプローチ(回帰分析)は、データから関係性を発見する方法です。データが十分にあれば、自分が想定していなかった変数間の関係に気づくことができます。

演繹的アプローチ(モデル化)は、ビジネスの仕組みから構造を組み立てる方法です。データがなくても、業界知識や論理的思考からモデルを作れます。

帰納的アプローチと演繹的アプローチの比較

どちらが優れているということではなく、両方を使い分け、往復させることで分析の精度が上がるのがポイントです。

たとえば、まずモデル化で「売上 = A × B × C」と構造を仮定し、次に回帰分析でA, B, Cの各変数が実際のデータでどれだけ売上に影響しているかを検証する。モデルの予測と実データが合わなければ、モデルに欠けている変数があるかもしれない──そうやって仮説を更新していくのです。

モデル化のビジネス活用

モデル化は単なる学術的な演習ではなく、実務で非常に強力なツールです。

  • 事業計画の策定: 「どの変数をどれだけ改善すれば、目標に到達するか」をシミュレーションできる
  • ボトルネックの特定: モデルの中で最も改善余地のある変数がどこかを見極められる
  • チーム内のコミュニケーション: 「うちのビジネスはこの構造で回っている」を可視化して共有できる

授業では、コーヒー市場のモデル化を通じて、市場規模の推定や競争環境の分析にモデルがどう役立つかを実践しました。

Day3で持ち帰った3つのこと

  1. 相関関係と因果関係は別もの。 回帰分析で関係性が見えても、それが因果を証明するわけではない。
  2. 数値だけでなく、散布図で「目」でも確認する。 アンスコムの例が教えるように、数字だけでは見えない情報がある。
  3. 帰納と演繹を往復させる。 データから法則を見出す力と、構造から仮説を組み立てる力、両方が必要。

Day3は本科目の中でも特に密度が濃く、学ぶ概念の量が多い回でした。しかし、Day1で学んだ「仮説を持ってデータを見る」、Day2で学んだ「前捌き」と「可視化」が土台としてあるから、回帰分析やモデル化の意味がスムーズに理解できたように思います。

次回のDay4は総合演習。ここまでの手法をすべて使いこなして、ひとつのケースを分析します。「知っている」と「使える」の差を、嫌というほど実感することになるのですが……それはまた次の記事で。


参考書籍
– 『定量分析の教科書:ビジネス数字力養成講座』東洋経済新報社(グロービス著、鈴木健一著)── 回帰分析とモデル化の章が本科目Day3の内容に直結

– 『統計学が最強の学問である』ダイヤモンド社(西内啓著)── 相関と因果の違い、回帰分析の「使いどころ」を豊富な事例で解説。読み物として面白い
– 『EXCELビジネス統計分析〔ビジテク〕』翔泳社(末吉正成著、末吉美喜著)── Excelで回帰分析を実行する手順を丁寧に解説。Day3の演習と併せて使える実践書
– 『データ分析の力──因果関係に迫る思考法』光文社新書(伊藤公一朗著)── 「相関はあるが因果はない」問題を深く掘り下げた新書。相関と因果の区別を鍛えたい方に