フィリピンのゴルフ予約が一本化、外国人プレーヤーはどう変わる

フィリピンで2026年8月、ゴルフ場の予約窓口を一本化する動きが始まった。開発したのは韓国系企業PGRR(フィリピン・ゴルフ・リゾート・リザベーションズ、Philippine Golf Resort Reservations)。同社の予約アプリ「Golaman(ゴラマン)」は、マニラ首都圏やセブ、ダバオなど全国79のゴルフ場のティータイムをまとめて予約できる仕組みで、フィリピン観光振興局(TPB)とフィリピンスポーツ委員会(PSC)が公式に後押ししている。

海外渡航先としてフィリピンのゴルフ場を選ぶ日本人ゴルファーは多くなく、今回の動きが日本の予約先やプレー料金に直接及ぶ場面は当面考えにくい。一方でビジネス・IT視点では見過ごせない論点がある。

観光立国を目指す新興国が、予約という顧客接点のデジタル基盤を海外企業に委ねる構図が東南アジア各地で広がっているためだ。本稿はGolamanの仕組みと、その背後にある予約インフラの主導権争いを整理する。

「Golaman」とは何か 韓国系企業が開発したフィリピンの予約アプリ

Golamanは、韓国系企業PGRRが約1年かけて開発した、フィリピン初の全国区ゴルフ場予約アプリである。2026年8月8日にAndroid版がGoogle Playで先行公開され、9月15日の全機能稼働を予定する[1][3]。

対象はマニラ首都圏、タガイタイ、クラーク、スービック、バタンガス、セブ、ダバオの主要ゴルフ観光地に広がる79コース。リアルタイムのティータイム予約と、提携コース限定のグリーンフィー優待が柱の機能だ[1]。

PGRR・PSC・NGAP・TPBによるGolaman支援体制の図
Golamanを支える官民連携の構図

PGRRの最高経営責任者アーロン・キム氏は、地元・海外双方のゴルファーがプレーしやすくすることが狙いと説明する。ベトナムやタイ、日本、韓国、シンガポールと並ぶゴルフ先進国にフィリピンを押し上げたい考えだ[1]。

訪日客受け入れの基礎理論は、フィリピンが今まさに直面する外国人ゴルファー誘致の座組を読む補助線にもなる。

なぜフィリピン政府はGolamanを観光振興策として後押しするのか

フィリピン政府がGolamanを後押しするのは、民間だけでは築けない全国横断の予約基盤を、公的機関の関与で一気に整えられるからだ。開発元PGRRに加え、PSC、競技団体のNGAP(フィリピンゴルフ協会)、海外プロモーションを担うTPBが役割を分担する枠組みが組まれた[1][2]。

開発開始から本格稼働までのGolamanのタイムライン
Golaman始動までのロードマップ

運営元のPGRRは、収益の一部をフィリピン・スポーツ委員会(PSC)とフィリピンゴルフ協会(NGAP)へ分配し、ジュニア育成の原資に充てると表明している[1]。TPBは8月11日、Golamanを自局の海外向けプロモーションに組み込むと発表し、国の観光戦略に正式に位置付けた[2]。立ち上げ期のアプリに、政府が信用を後押しした格好だ。

観光を成長エンジンに据えた国が直面する強みと脆さを、日本の実例から先取りして理解できる。

Golamanは何コースを対象にどんな予約体験を提供するのか

Golamanが現時点で押さえるのは、フィリピン全土に推定175コースある中の79コースで、全体の4割強にあたる(不動産系データベースrentechdigital調べ、2026年4月時点)[4]。マニラ近郊やセブといった外国人ゴルファーの来訪が多い観光地に対象を絞り込んでいるのが特徴だ。

Golamanはフィリピン全ゴルフ場の4割強を先行網羅

機能面では各コースとの直接提携によるリアルタイム空き状況表示と優待グリーンフィーが柱で、旅行代理店を介さず個人でティータイムを確保できる[1]。フィリピンの外国人旅行者受け入れは2024年に595万人で、政府目標の770万人には届かなかった。国籍別では韓国が約157万人(構成比26.46%)で最多だった[5]。高単価消費を伴うゴルフ客をどう囲い込むかは、TPBの観光目標達成にも直結する。

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東南アジアのゴルフ予約プラットフォームでなぜ韓国系企業が先行するのか

東南アジアのゴルフ予約市場では、Golaman以前から韓国資本の存在感が際立つ。タイでは韓国系旅行代理店トト・ブッキングが運営する「Golf Thai」が、タイ国内300以上のコースを束ね、タイ・フィリピン・台湾・ベトナムなど渡航先をまたいで韓国人ゴルファーを送客する仕組みを22年かけて築いた[6]。

域内最大級のBaiGolfに対し、Golamanはフィリピン特化で先行

中国・日本・韓国を含むアジア主要国1,000コース超をリアルタイム連携する「BaiGolf」のような広域プラットフォームも育っている[7]。共通するのは、現地ゴルフ場が個別に予約投資をするより、韓国発の送客力と技術をまとめて受け入れる方が早いという構図だ。Golamanはこの延長線上にあり、フィリピン版として国と組んだ点が新しい。

海外展開

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日本のゴルフ場予約は一つのアプリに集約されているのか

集約されていない。日本には「GDOゴルフ場予約」(掲載約2,000コース超)と「楽天GORA」(掲載約1,900〜2,000コース)という二大民間プラットフォームが競合し、いずれも国が主導した統合基盤ではない[8][9]。

フィリピンとの違いは市場の成熟度にある。日本の登録ゴルフ場はほぼ全てが何らかの予約サイトに掲載済みで、Golamanのように初のデジタル窓口を作る段階はとうに終えている。訪日ゴルファー向けには、日本ゴルフ場経営者協会(NGK)が受け入れ調査を進め、リソルホールディングスが併設宿泊施設を2030年までに約60億円で5倍に増やす計画を進めるなど、個社対応が中心だ[10][11]。

項目フィリピン(Golaman)日本
運営主体官民連携(PGRR・PSC・NGAP・TPB)GDO・楽天GORA等の民間各社が競合
掲載コース数79(全国推定175の一部)GDO約2,000超/楽天GORA約1,900〜2,000
政府の関与観光振興策として公式に後押し予約統合を主導する政府施策なし
訪日客対応アプリ内で窓口の一本化を志向OTAや宿泊施設投資など個社対応が中心

ビジネス側への含意は、日本では新規の予約基盤構築より既存2強への相乗りが現実的ということ。ゴルファー側への含意は、訪日外国人の窓口は今後もGDO・楽天GORAかOTA経由が主流で、Golaman型の政府一元アプリが日本で生まれる可能性は低い点だ。

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まとめ

Golamanは、新興ゴルフツーリズム国フィリピンが、韓国系企業の技術力と自国政府の信用付与を組み合わせて予約基盤を一気に整えた事例だ。ゴルフをする読者にとっては、フィリピンでのプレーがスマホ一つで完結しやすくなる変化であり、渡航先を選ぶ際に現地の予約環境まで見る視点が増える。

ビジネス読者にとっては、観光インフラのデジタル化を自国資本だけで担わない選択肢が東南アジアで広がる実例として、投資や提携の判断材料になる。日本は予約の民主化こそ完了しているが、政府主導で基盤を再編する動きは見られない。両者の違いは、市場の成熟段階が生む戦略の差として捉えるとわかりやすい。

よくある質問(FAQ)

Golamanはいつから誰でも使えますか?

Android版はGoogle Playで2026年8月8日から公開されており、全機能の稼働は2026年9月15日を予定している[1][3]。

Golamanで日本のゴルフ場も予約できますか?

できない。対象はフィリピン国内の79コースに限られ、日本国内のゴルフ場は含まれていない[1]。

PGRRの資本構成はどこまで分かっていますか?

公開資料からは「韓国系企業」という情報にとどまり、出資構成の詳細までは確認できていない[1][2]。

出典

  1. Manila Times(2026/8/8) https://www.manilatimes.net/2026/08/08/sports/golaman-to-drive-ph-golf-tourism-attract-more-foreign-players/2401335
  2. PR Newswire(2026/8/11、TPB発表) https://www.prnewswire.com/news-releases/tpb-supports-launch-of-golaman-as-a-digital-gateway-to-philippine-golf-tourism-302848160.html
  3. Philstar.com(2026/8/8) https://www.philstar.com/sports/2026/08/08/2547894/first-ever-golf-booking-app-launched-philippines
  4. Rentechdigital(2026年4月時点、フィリピン全国コース数) https://rentechdigital.com/smartscraper/business-report-details/list-of-golf-courses-in-philippines
  5. BusinessMirror「Missed goal: 5.95-M foreign tourists visited PHL in 2024」 https://businessmirror.com.ph/2025/01/06/missed-goal-5-95-m-foreign-tourists-visited-phl-in-2024/
  6. Khaosod English(2024/4/10、Golf Thai紹介) https://www.khaosodenglish.com/sponsored/2024/04/10/what-is-golf-thai/
  7. BaiGolf公式サイト https://www.baigolf.com/news.php?act=news_detail&news_id=5076
  8. GDOゴルフ場予約 公式サイト https://reserve.golfdigest.co.jp/
  9. 楽天GORA 公式サイト https://gora.golf.rakuten.co.jp/
  10. 日本経済新聞(ゴルフ場の訪日客対応) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC14AYY0U4A810C2000000/
  11. 日本ゴルフ場経営者協会(NGK)公式サイト https://www.golf-ngk.or.jp/