米国でゴルフ場の新設が13年ぶりの活況、集中する3つの州とは

米国のゴルフ場開発が、13年ぶりの活発な水準に達している。業界団体National Golf Foundation(NGF、米国のゴルフ産業データを長年追跡する非営利調査団体)が2026年7月末に公表した中間更新によると、新規の開発プロジェクトは2013年以来の高水準にあり、32州で進行中だという。中でもフロリダ・テキサス・サウスカロライナの3州に開発が集中している点が際立つ。

フロリダやテキサスは、日本のゴルファーが冬場のゴルフ旅行先として選ぶことも多いエリアであり、新しいコースが増えれば行き先の選択肢が広がる可能性がある。一方でIT・ビジネス分野の読者にとっては、この供給側のデータそのものが、米国ゴルフ産業がどの地域にどれだけ資本を投じているかを示す指標として読み解く価値を持つ。本稿ではNGFのデータをもとに、開発の規模、集中する州の背景、供給の中身(プライベートクラブ主導という特徴)を順に見ていく。

米国のゴルフ場開発、「2013年以来の活況」の中身とは

NGFの中間更新は、米国内の新規ゴルフ場開発(新設および既存施設での増設)の進捗を年央時点でまとめたレポートである。2026年7月末公表のデータによれば、現在進行中のプロジェクト数はコロナ禍前3年平均のほぼ倍に達し、活動の活発さは2013年以来の水準だという[1]。開発は32州にまたがって進んでいる[1]。

同財団の別レポートをたどると、件数の推移が見えてくる。2023年末時点では建設中69件・計画中47件、合計116件のプロジェクトが動いていた[2]。これが2026年初めには140件超まで積み上がり[3]、同年6月時点では「150件弱」と報告されている[4]。3つの時点を並べると、件数はほぼ一貫して右肩上がりで推移してきたことが分かる。

2026年に入ってからは、リゾートやプライベートクラブの開業を含め20コース以上が既にオープンし、今後さらに25件前後の開業が見込まれている[1]。NGFはこの供給拡大について、土地と建設コストの高さが歯止めとなり、1990年代〜2000年代のような供給過多には至りにくいとの見方を示している[1]。

米国のゴルフ場開発プロジェクト数は増加基調

日本のゴルフ場が人口減少のもとでどれだけ余剰になりうるのか、閉鎖後の転用や再編まで含めて考えたい読者には、ゴルフ場の持続可能性を10章で論じたこの一冊が参考になる。

なぜ開発はフロリダ・テキサス・サウスカロライナに集中するのか

NGFのデータでは、フロリダ・テキサス・サウスカロライナの3州が現在進行中の開発プロジェクトの4割を占めるという[1][4]。

NGFが挙げる集中の理由は主に4つある。温暖な気候、開発に使える土地が比較的豊富なこと、人口が着実に増えていること、そして観光客や州外からの来訪者が多いことだ[1]。業界誌の取材に対しNGFのグレッグ・ネイサンCEOは「多くのゴルファーがより多くラウンドし、そのグリーンフィー収入がコースへの再投資を支える好循環が生まれている」と説明し、市場調査会社Pellucid Corpのジム・コッペンヘイバー氏も、人口流入自体が需要を押し上げる「フライホイール」になっていると指摘する[6]。

つまり集中の背景にあるのは、気候や土地条件といった立地要因と、人口動態・観光需要という需要側の要因が重なっている点だ。単発の開発ラッシュではなく、複数の追い風が同じ3州に集中して吹いている構図といえる。

温暖な気候と開発に使える土地の豊富さという立地要因、人口の着実な増加と観光客・州外からの来訪者という需要要因が重なり、フロリダ、テキサス、サウスカロライナに開発の4割が集中する図
フロリダ・テキサス・サウスカロライナに開発が集中する4つの要因(出典: NGF「U.S. Golf Course Development – Mid-Year Update」2026/7/31)

新設ゴルフ場の半数超はなぜプライベートクラブなのか

NGFの集計では、建設中または具体的な計画段階にある150件弱のプロジェクトのうち、半数超がプライベート(会員制)クラブだという[4]。これは米国の既存コース全体に占めるプライベートクラブの比率(約28%)と比べて大きく高い[4]。つまり新設段階だけを見ると、供給の構成そのものが既存ストックより私有クラブ寄りに傾いている。

この傾向はフロリダ・テキサス・サウスカロライナでさらに際立つ。サウスカロライナでは、パイプラインに入っている9施設のうち8施設がプライベートで、公共として計画されているのは1施設のみ。比率にして89%に達する[5]。フロリダは新設プロジェクトの70%超、テキサスは約3分の2がプライベートクラブだという[5]。

プライベートクラブ比率(開発中案件)備考
サウスカロライナ89%9施設中8施設。公共は1施設のみ
フロリダ70%超
テキサス約66%
全米平均(開発中案件)50%超既存供給全体では約28%

(表内の「—」は本稿で追加の内訳を確認していないことを示す)

サウスカロライナは新設の9割がプライベートクラブ

サウスカロライナで唯一の公共施設として計画されているのが、同州サンドヒルズ地域のCandyroot(キャンディルート)だ[5]。4つのチャンピオンシップコースと夜間照明付きのパー3コース、宿泊施設などを備える計画で、1コース目は2026年11月にプレビュー営業を始め、2027年春に一般開業する予定だという[5]。LINKS Magazineの紹介投稿には、現地の写真と完成予想図が添えられている。

参加人口の増加は開発ブームとどうつながっているのか

NGFは今回の開発ブームについて、ラウンド数を支えるオンコース参加人口の増加が土台にあると位置づけている。過去5年間で、米国のオンコース参加人口は400万人以上増えたという[1]。本ブログで以前取り上げた「米国ゴルフ人口4,810万人」という数字も、この参加人口拡大の流れの一部として理解できる。

需要が増えれば既存コースの稼働率とグリーンフィー収入が上がり、その収益が新規開発への投資余力を生む。NGFは、地価や建設コストの高さが歯止めとして働くため、1990年代〜2000年代に起きたような供給過多の再来には慎重な見方を示す[1][3]。実際、米国の総コース数(約1万6千、施設数では約1万4千)はここ5年ほぼ横ばいで推移しており[3]、開発の中身は「量の拡大」というより「立地の再配分」に近い。

参加人口増から稼働率上昇、グリーンフィー収入増、新規開発投資へとつながり、地価・建設費の高さが供給過多を抑える構造図
参加人口の増加が新規開発を支え、コスト高が供給過多を抑える循環(出典: NGF「U.S. Golf Course Development – Mid-Year Update」2026/7/31、Golf Inc.誌)

日本でゴルフ場の新設は増えているのか

日本では増えていない。一季出版の調査(「ゴルフ特信」第7220号)によれば、2025年4月中旬時点の全国営業中ゴルフ場は2,110コースで、前年から11コース減少した[7]。ピークだった2004年の2,356コースと比べると246コース、10.4%少なく、減少は18年連続となっている[7]。同じ調査では、建設中の19カ所と、認可済みで未着工の計画20カ所にも動きがなかった[7]。東京建物グループが17年ぶりに新規取得したという「小山ゴルフクラブ」の運営引き継ぎが話題になる程度で[9]、米国のような新設ラッシュは起きていない。

背景には、土地取得コストの高さ、ゴルフ人口自体の減少傾向(レジャー白書2025によると2024年のゴルフ場参加人口は480万人、前年比9.4%減[8])、新規開発に対する規制や合意形成の重さといった構造の違いがある。米国では人口流入が続く州に開発が向かうのに対し、日本は人口減少局面にあり、新設より既存コースの統廃合が合理的な選択になりやすい。

ビジネス的には、日本のゴルフ場業界は新設ではなく既存資産の再生・転用(運営引き継ぎ、メガソーラーへの転用など)が主戦場だといえる。ゴルファーにとっては、コース数が減る中で会員権や予約の希少性が今後も続く可能性がある。

項目米国日本
コース数の方向性増加基調(開発中150件弱、32州)減少基調(18年連続)
直近の総数約1.6万コース(ほぼ横ばい)2,110コース(2025年4月)
直近のピーク比較2013年以来の開発活況2004年比▲10.4%
主な動き新設・増設統廃合・用途転換

まとめ

米国のゴルフ場開発は2013年以来の高水準にあり、フロリダ・テキサス・サウスカロライナへの集中とプライベートクラブ主導という2つの特徴を伴って進んでいる。背景にあるのは参加人口の回復であり、土地・建設コストの高さが過去のような供給過多を抑える歯止めにもなっている。ゴルファーにとっては、渡米してのゴルフ旅行先の選択肢が今後さらに広がる可能性がある。ビジネス読者にとっては、需要データと供給データが同じ方向を向いている数少ない局面として、この3州の動きを注視する価値がある。日本の市場とは構造がまったく異なる点も踏まえておきたい。

よくある質問(FAQ)

Q. NGFとは何の略ですか。
A. National Golf Foundationの略で、米国のゴルフ産業データを長年追跡している調査団体を指す。

Q. 米国で今、新設ゴルフ場が最も多い州はどこですか。
A. フロリダ・テキサス・サウスカロライナの3州で、現在進行中の開発プロジェクトの4割を占める。

Q. 米国の新設ラッシュは日本にも波及していますか。
A. 波及していない。日本は2025年時点でコース数の減少が18年連続で続いており、状況は正反対である。

出典

  1. NGF「U.S. Golf Course Development – Mid-Year Update」(2026/7/31)
  2. NGF「A Developing Situation」(2023/12/28)
  3. NGF「America’s Course Supply – Quantity, Quality & Stability」(2026/2/20)
  4. NGF「New Courses From Tiger Woods, Coore-Crenshaw Continue Private Growth Trend」(2026/6/24)
  5. NGF「New South Carolina Golf Project Bucks Course Development Trend」(2026/3/12)
  6. Golf Inc. Magazine「Inside the next wave of golf course development」
  7. 一季出版「全国営業中ゴルフ場数、昨年比11件減の2110コース」(2025/8/7)
  8. クオリティーゴルフ「24年ゴルフ人口480万人…『レジャー白書2025』」
  9. 東京建物「東京建物グループとして17年ぶりのゴルフ場新規取得」(2025/3/31)