同じ物件に5社が査定。13万台から17万円、差が出た理由

同じ42平米・1LDKの分譲マンション。5社に賃貸管理の査定を依頼したら、最低13万円台から最高17万2千円まで差が出た。月額で約4万円、年間に換算すると約48万円の差だ。

さらに管理手数料を含めた8年間のトータルコストを試算したら、最安と最高で約92万円もの差になった。

この記事は、都内23区・山手線の外側にある分譲マンションを、個人オーナーとして初めて賃貸に出す過程で、5社の管理会社を比較した記録だ。最終的にどこを選び、なぜその判断に至ったかまで書いている。

この記事でわかること

  • 賃貸管理会社5社(建物管理会社・大手仲介2社・地元大手・借り先の会社)に査定を依頼した結果と各社の違い
  • 管理手数料の比較だけではわからない、8年間のトータルコスト試算
  • 定期借家という選択肢を知ったきっかけと、その裏にある管理会社の論理
  • 最終的にどの会社を選び、何が決め手になったか
  • 査定訪問で失敗した点と、次にやるならこうするという反省

賃貸管理会社の査定を5社に依頼した理由

1社の査定だけでは、その価格が相場なのか強気なのか弱気なのか判断できない。比較する軸がなければ、査定価格は「数字」でしかなく「判断材料」にはならない。

依頼した5社の組み合わせはこうだ:

  • 建物管理会社:現在このマンションの管理を担っている会社
  • 借り先の会社:自分が新居を借りる予定の会社(スターツ系)
  • 全国大手A(三井系):仲介最大手の一角
  • 全国大手B(東急系):もう一つの仲介大手
  • 地元大手:自宅近くに営業所がある賃貸管理専門会社(リロ系)

全国大手2社は広い相場観を持っているはずという仮説。建物管理会社は物件を一番よく知っているはず。借り先の会社は、管理と借り先を一本化するメリットがあるかもしれない。地元大手は、何かあったときに近くにいる安心感を期待した。

結果として、この5社の組み合わせは正解だった。それぞれ違う「色」が見えた。

賃貸管理会社5社の査定結果と訪問記録

建物管理会社——物件を一番知っているはずが

現在もこのマンションの共用部管理を担っている。誰より物件を知っているはずだった。

査定は13万円台。やる気も頑張る姿勢も、特に感じられなかった。

特に引っかかったのが駐車場への理解の低さだ。この物件には、建物1階の屋根付き平置き駐車場がある。高さ2.1mでハイルーフ車も入る。エリア最安の月額25,000円で、待ち無しで出し入れできる。近隣で月極駐車場を借りると、機械式・高さ制限ありで3万円を超える。都内23区でこの条件の駐車場が付いている賃貸物件がどれだけ希少か、自分が新居を探す側で身に沁みてわかっていた。

にもかかわらず、「駐車場なしの前提で募集したい」という消極的なスタンス。駐車場を確約できないのは管理上の都合として理解できるが、せめて「付いている」ことをアピールする姿勢は見せてほしかった。

「建物管理部門と同じフロアなので連携できます」とのことだったが、実際には電話ベースの連携だと聞き、具体的なメリットがイメージできなかった。設備修理サポートは「現場確認は無償、交換できないものはない」と手厚い面もあったが、全体的な提案力に物足りなさを感じた。最初に断った会社だ。

なお、駐車場の扱いについてはこの会社だけの問題ではなかった。5社すべてに共通して言えるのは、駐車場の価値を積極的に評価した会社がほとんどなかったということだ。ただし結局のところ、物件情報がユーザーの目に触れるかどうかはSUUMOなどのポータルサイト次第であり、管理会社の募集ページ自体のリーチは限定的だということも後から理解した。

借り先の会社(スターツ系)——3人訪問、返事は曖昧

自分が新居の賃貸契約を結んだ会社でもある。管理と借り先を一本化できればメリットがあるかもと期待した。

3人で訪問してきた。設備担当、賃料担当と役割分担制で、ザ・大手という印象。担当外のことを聞くと返事が曖昧になった。ITベンダーで働く自分の会社のタテ割り感を見ているようで、思わず苦笑してしまった。24時間365日の受付体制や家賃精算業務の仕組みは整っていたが、賃貸管理担当者の食いつきはイマイチで、「会社としてどうなんだろう」という疑問が残った。

管理手数料は賃料の5%。リーシング報酬(入居者が決まった際の成功報酬)として賃料1ヶ月分が別途発生する。

全国大手A(三井系)——知識は豊富。ただし2時間20分

担当者が一人で来て、2時間20分話し続けた。

知識量は5社の中で一番だったと思う。特に定期借家について、詳細かつ熱量のある説明があった。この訪問で初めて、定期借家を真剣に検討するようになった(後述する)。Webの管理サイトも用意されており、IT対応は進んでいた。

ただ、話が長かった。疲れていることに気づいていなかったのか、あるいは気づいていても止められなかったのか。「この人に長期で担当してもらうのか」という問いが頭の片隅に残った。

管理手数料は7.7%(訪問時の3月中に契約すれば6.6%)。5社の中で最も高い。ただしフリーメンテナンス(設備保証)込みの料率だ。

全国大手B(東急系)——誠実だが、査定は保守的

対応は誠実な印象だった。電話での初期対応もしっかり聞いてくれて、重視ポイントの確認もあった。物件の特徴を前向きに理解してくれた点は好感が持てた。

ただ、AI予想家賃として提示されたのは14万円程度。駐車場付きという条件を十分に反映していない印象だった。比較対象として出してきたのが40平米未満・駐車場なしの物件で、この時点で保守的な査定だと感じた。駐車場を踏まえた再提案を依頼した。

管理手数料は5.5%または0%(スマートプランの場合)。プランが複数あり、手数料体系が他社より複雑だった。

地元大手(リロ系)——営業は泥臭い、でも一番信頼できた

査定は17万2千円。5社の中で最高値だ。

営業スタイルは一番「昔ながら」で、いかにもな不動産営業のイメージだった。査定価格が高い分、オーナーを喜ばせているだけかもしれないという警戒はあった。管理会社は査定価格に責任を持たない。最終的にいくらで契約できるかは別の話だ。

それでも「高く契約できるように頑張ります」という気概が、他の4社にはなかった。

管理手数料は4.4%。5社の中で最も低い。営業所が自宅近くにある。「何かあれば駆けつける」という担当者の顔が見えた。これが意外と大きかった。

賃貸管理会社の査定価格と管理手数料を一覧比較

会社査定賃料管理手数料設備メンテナンス
建物管理会社13万円台5.5%あり
全国大手B(東急系)14万円程度5.5% or 0%プランによる
全国大手A(三井系)15万2千円7.7%(6.6%)込み
借り先の会社(スターツ系)16万5千円5.5%あり
地元大手(リロ系)17万2千円4.4%あり

最高と最低の差は月4万円弱、年間換算で約48万円。ただし査定価格に管理会社は責任を持たない。この数字はあくまで「その会社が見た相場感」だ。

賃貸管理の手数料を8年間のトータルコストで比較する

査定賃料だけを比べても判断はできない。実際に手元に残る金額を知りたくて、8年間(初回5年契約+再契約3年)のトータルコストを試算した。月額賃料15万円を前提に、初期費用・月額管理料・再契約費用・解約費用をすべて積み上げた結果がこれだ。

費用項目全国大手A(三井系・6.6%案)全国大手B(東急系・スマートプラン)全国大手B(東急系・5.5%案)全国大手B(東急系・7.7%案)
初期費用19万2千円24万8千円16万5千円22万6千円
月額費用(5年間)62万円0円51万5千円71万3千円
再契約費用8万3千円24万8千円8万3千円8万3千円
月額費用(3年間)37万2千円0円30万9千円42万8千円
解約費用0円3万3千円0円0円
8年間合計126万7千円52万8千円107万2千円144万8千円

8年間の賃料収入が1,455万円とすると:

8年間コスト手残り月平均手残り
全国大手A(三井系)126万7千円1,328万3千円約13万8千円
全国大手B(東急系・スマート)52万8千円1,402万2千円約14万6千円
全国大手B(東急系・5.5%)107万2千円1,347万8千円約14万円
全国大手B(東急系・7.7%)144万8千円1,310万2千円約13万6千円

一見すると月額管理料0円のスマートプランが圧倒的に安く見えるが、初期費用と再契約費用が高く、しかも管理の手厚さが異なる。数字だけで選ぶのは危険だということが、この試算で逆に明確になった。

なお、実際の投資判断ではこの試算だけでは不十分だ。MBAで学んだ割引率やNPV(正味現在価値)を使って、リフォーム投資も含めたキャッシュフロー分析をやってみた。その話は別の記事で書く。

定期借家と普通借家の違い——管理会社の査定で初めて知った選択肢

5社に査定を依頼するまで、定期借家はほとんど考えていなかった。「家賃が安くなるし、短期間のためのもの」というイメージで、最初から選択肢の外だった。

全国大手A(三井系)の担当者が、2時間20分の中でこのテーマに最も時間を割いていた。普通借家と定期借家の違い、借主保護の強さ、オーナー側が持てる柔軟性。話を聞いて、自分の理解が間違っていたことがわかった。5年定期であれば家賃は普通借家と同等というデータも示された。

ただし、全国大手A(三井系)が定期借家を強く薦める背景には別の論理がある。定期借家で数年貸す→契約満了で退去→売却、という出口戦略だ。管理手数料より売却仲介が収益になる会社として、定期借家は都合がいい。

動機は透けて見えたが、情報として得られたことは本物だった。定期借家の理解が深まったのは、この査定プロセスの大きな副産物だ。

賃貸管理会社を選んだ決め手——地元大手を選んだ3つの理由

最終的に選んだのは、査定17万2千円・管理手数料4.4%の地元大手だった。

決め手は3つ。

1. チャレンジする姿勢

査定17万2千円は5社で最高値。正直、最終的にはそこまでの賃料では決まらないだろうとは思っている。それでも「高い水準でチャレンジして、そこから調整していく」という攻めの姿勢が、他の4社にはなかった。大手2社の査定は保守的で、最初から「このくらいで手堅く」という空気が漂っていた。ノーチャレンジの提案からは、オーナーとして任せたいという気持ちが湧かない。

2. 担当者の顔が見える距離感

営業所が自宅の近くにある。漏水や設備トラブルなど、緊急時に「駆けつけられる距離」に担当者がいる安心感は、数字には表れない。大手2社は担当拠点が遠く、物理的な距離に不安があった。

3. 契約書の柔軟性

契約書の内容について踏み込んだ質問をしたところ、柔軟に対応してもらえた。区分マンションの実態に合わない条項の修正や、無承諾工事の上限設定など、こちらの要望に対して「できます」と返ってくる速度が違った。

一方、選ばなかった会社にもそれぞれ良い面があった。全国大手A(三井系)からは定期借家の知識を得たし、建物管理会社は共用部との連携で唯一の強みがあった。最終判断は、「この担当者に長期で任せられるか」という一点に集約された。

賃貸管理会社の査定で失敗したこと——訪問は1〜2日に集中させるべき

今回の反省は、5社の訪問を1〜2週間かけてダラダラ進めてしまったことだ。

2月下旬から3月中旬にかけて、各社とのやり取りが断続的に続いた。1社目の記憶が薄れた頃に5社目が来る。比較しようにも、最初に聞いた話の細部が思い出せない。メモは取っていたが、温度感やニュアンスは記録しきれない。

理想は、1〜2日間に集中して全社の訪問を終わらせることだ。記憶が鮮明なうちに横並びで比較できる。各社に同じ質問をぶつけて、その場で反応の違いを感じ取れる。

引越しの繁忙期で日程調整が難しいのは事実だが、こちらから「この日に3社まとめて」と提案すればよかった。査定訪問は、短期集中が鉄則だと思う。

管理会社選びの参考になった書籍

分譲マンションを初めて賃貸に出すにあたり、管理会社の比較基準や賃貸経営の基礎知識を得るのに役立った2冊を紹介する。

不動産鑑定士が書いた入門書。物件探しから管理会社の選び方、空室対策まで体系的にまとまっている。「何を基準に管理会社を比較すればいいか」がわからなかった段階で、判断軸を整理するのに助かった。

Q&A形式で100の疑問に答える実践書。管理会社の選定ポイントや定期借家の運用についても触れられており、5社の査定を受ける前に読んでおけばもっと鋭い質問ができたと思う。

まとめ

5社を比較して見えたことを整理する。

  1. 査定価格は出発点に過ぎない——高い査定の会社が良いわけでも、低い会社が誠実なわけでもない。「なぜその価格か」を聞くことで、会社の論理が見える。
  2. 手数料率だけでは比べられない——8年間のトータルコストで比較すると、月額0%のプランが必ずしも最安ではなかった。初期費用・再契約費用・メンテナンス内容まで含めて判断すべきだ。
  3. 情報は動かないと入ってこない——定期借家のことも、1社だけに聞いていたら知らないままだった。
  4. 訪問は短期集中が鉄則——1〜2日に凝縮させて、記憶が鮮明なうちに比較する。

同じ物件でも、会社によってこれだけ見え方が違う。管理会社選びは、不動産を貸す最初の意思決定であり、最も重要な意思決定でもある。

よくある質問

賃貸管理会社の査定は何社に依頼すべき?

最低3社、できれば5社に依頼するのがおすすめだ。今回の経験では、5社に依頼したことで査定価格に月額4万円(年間48万円)の差があることがわかった。1社だけでは、その価格が適正かどうか判断する材料がない。全国大手・地元密着型・建物管理会社など、タイプの異なる会社を組み合わせると、それぞれの視点の違いが明確になる。

賃貸管理会社の手数料の相場はどのくらい?

一般的に賃料の3〜8%が相場だ。今回5社を比較した結果、最低4.4%から最高7.7%まで差があった。ただし手数料率だけで判断するのは危険で、初期費用・再契約費用・設備メンテナンスの有無を含めた8年間のトータルコストで比較すると、月額0%のプランが必ずしも最安ではなかった。

賃貸管理会社は大手と地元密着型のどちらが良い?

一概には言えないが、今回は地元密着型を選んだ。大手は知識量や仕組みが整っている一方、担当拠点が遠かったり、査定が保守的だったりする面があった。地元密着型は営業所が近く、緊急時の対応速度や契約書の柔軟性で優れていた。査定価格の積極性にも差が出た。物件の立地や自分が何を重視するかで、最適な選択は変わる。

分譲マンションを賃貸に出すとき、定期借家と普通借家のどちらがいい?

物件の用途や将来の計画による。定期借家は期間満了で確実に返還されるため、将来の売却や自己使用を見据えるオーナーに向いている。一方、家賃が普通借家より低くなる傾向がある(ただし5年定期であれば同等というデータもある)。今回の査定では、仲介系大手が定期借家を強く薦めていたが、その背景には売却仲介につなげたいという会社側の論理もあった。