STP分析とは?セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの実践ガイド

目次

この記事でわかること

  • STP分析の全体像とマーケティング戦略における位置づけ
  • セグメンテーションの4つの変数と使い分け
  • ターゲティングの判断基準「6R」
  • ポジショニングマップの作り方と良い軸の選び方
  • STP分析でよくある3つの失敗パターン
  • ポジショニングマップとパーセプションマップの違い

「良い製品なのに売れない」「広告を打っても反応が薄い」

こうした問題の多くは、4P(Product・Price・Place・Promotion)の前段階であるSTPが曖昧なまま施策を打っていることに原因があります。

マーケティング戦略は「誰に(S・T)」「どんな価値を(P)」届けるかを決めてから、「どう届けるか(4P)」を設計するもの。この順序を守らないと、的外れな施策を打ち続けることになります。

この記事では、STP分析の3ステップを図表を交えて実践的に解説します。

STP分析とは? ── マーケティング戦略の「設計図」

STP分析とは、Segmentation(市場細分化)・Targeting(標的市場の選定)・Positioning(差別化の設計)の3ステップで構成されるマーケティング戦略の立案フレームワークです。

環境分析

STP分析

Sセグメン
テーション

Tターゲ
ティング

Pポジショ
ニング

4Pマーケティング
・ミックス

図C-1:STPマーケティングのプロセス全体像

マーケティング戦略の全体プロセスにおけるSTPの位置

ステップ 内容 主な問い
環境分析 外部・内部環境を分析し市場機会を特定 どこにチャンスがあるか?
S:セグメンテーション 市場を同質のニーズごとに分類 顧客をどう分けるか?
T:ターゲティング 狙う市場を絞り込む どの顧客群を攻めるか?
P:ポジショニング 競合との差別化を設計 顧客にどんな価値を訴求するか?
4P 具体的な施策を設計・実行 製品・価格・流通・宣伝をどうするか?

STPが決まるからこそ4Pに一貫性が生まれます。 たとえば「20代女性向けのおしゃれな製品」というSTPが明確なら、パッケージデザインも価格帯も販路も広告媒体も、すべてそのターゲットに合わせて設計できます。

STPの前段階となる環境分析については「戦略策定プロセスとは?5つのステップで経営課題を見つけて最適な打ち手を選ぶ方法」で詳しく解説しています。

ステップ1:セグメンテーション ── 市場を「意味のある塊」に分ける

セグメンテーションとは

セグメンテーションとは、不特定多数の顧客を、同じニーズを持つグループ(セグメント)に分けることです。

ポイントは「単に分類する」のではなく、ニーズの違いに基づいて分けること。年齢や性別で分けても、ニーズが同じなら意味がありません。逆に、同じ年齢でもニーズが異なるなら別セグメントです。

セグメンテーションの4つの変数

変数 切り口 適する場面
地理的変数 地域・気候・人口密度 関東/関西、都市部/郊外 エリア戦略、店舗出店
人口動態変数 年齢・性別・所得・職業・家族構成 20代女性、共働き世帯 基本的な顧客像の把握
心理的変数 ライフスタイル・価値観・パーソナリティ 環境志向、新しもの好き 差別化ポイントの発見
行動変数 使用頻度・求めるベネフィット・購買タイミング ヘビーユーザー、週末利用者 購買行動に直結した分析

BtoB市場のセグメンテーション

BtoB市場では消費者向けとは異なる切り口が有効です。

切り口 狙い 主な指標
業績・規模 顧客企業の戦略課題を推定 売上、利益率、顧客数
投資力 「お金を使える顧客か」を判断 FCF、自己資本比率
成長性 今後の投資余力を予測 売上成長率
競争状況 顧客の戦略的な悩みを推定 シェア、競合数
環境の変化 課題の緊急度を推定 新規参入・再編の動き
企業の特徴 攻略可能性・横展開の影響力 新規案件への姿勢

良いセグメンテーションのチェックポイント

  • セグメント内のニーズが均質か?(同じグループ内の顧客が同じことを求めているか)
  • セグメント間のニーズが異質か?(グループごとに明確な違いがあるか)
  • この後のポジショニング→4Pの打ち手がクリアになるか?(実務で使える分け方か)

ステップ2:ターゲティング ── 「どこを攻めるか」を判断基準で選ぶ

ターゲティングとは

ターゲティングとは、セグメンテーションで分けた複数のグループの中から、自社が狙うべき標的市場を判断基準に基づいて絞り込むことです。

ターゲティングの判断基準「6R」

基準 問い 重要度
Realistic Scale(規模) 市場規模は十分か? ★★★
Rate of Growth(成長性) 今後伸びる市場か? ★★★
Rival(競合) 競合状況は?優位性を築けるか? ★★★
Rank / Ripple Effect(優先順位/波及効果) 他ターゲットへの良い影響はあるか? ★★
Reach(到達可能性) そのターゲットにアクセスできるか? ★★
Response(測定可能性) 効果を測定できるか?

実務では「魅力的か?(規模・成長性)」と「勝てそうか?(競合状況)」の2軸を押さえればOKです。

ターゲティングの3パターン

パターン 内容 適する場面
無差別型 全市場に同一の施策 日用品など差別化が難しい市場
差別型 複数セグメントに個別の施策 経営資源が豊富な大企業
集中型 1つのセグメントに資源を集中 中小企業、ニッチ市場

ステップ3:ポジショニング ── 顧客の頭の中に「指定席」を作る

ポジショニングとは

ポジショニングとは、ターゲット顧客の頭の中に、競合とは異なる明確で価値ある製品イメージを作り出す活動です。

重要なのは、ポジショニングは「企業が決めるもの」ではなく、「顧客の認知の中に作るもの」だということ。企業がいくら「高品質」と主張しても、顧客がそう認識しなければポジショニングは成立しません。

ポジショニングマップの作り方

ポジショニングマップは、2つの価値軸で平面を作り、自社と競合の位置関係を可視化するツールです。

なぜ2軸なのか? 人間は通常2つ、最大3つまでしか要点を覚えられないからです。伝えたいことを2つに絞り、徹底的に訴求することが効果的です。

高価格
低価格
手軽
手間がかかる

価格↑ / 手軽さ→

自社

競合A

競合B

競合C

空白地帯
(チャンス)

図C-2:ポジショニングマップの例

良いポジショニングの3条件

条件 チェックポイント
1. ターゲットが明確 顧客像だけでなく、利用シーンまでイメージできるか?
2. 提供価値が具体的 ターゲットに「刺さる」訴求軸を選んでいるか?「○○できる」と言い切れるか?
3. 競合と差別化されている 競合と重ならないポジションを取れているか?

ポジショニングマップの軸選びでやりがちな失敗

失敗パターン なぜダメか
セグメンテーション軸との混同 軸に「年齢」「性別」を取る ターゲットの属性であって製品の価値ではない
差別化できない軸 「高品質 vs 低品質」 全社が「高品質」側に集まり差別化にならない
解釈が多様すぎる軸 「高機能 vs 低機能」 何の機能か不明。具体性が足りない
顧客に響かない軸 技術スペックの比較 顧客が求めるベネフィットと乖離

良い軸の例: 「○○できる / できない」という動詞形で表現すると、顧客にとっての具体的なベネフィットが明確になります。

ポジショニングマップとパーセプションマップの違い

マーケティングでは、企業の意図(ポジショニング)と顧客の認識(パーセプション)のズレを把握することが極めて重要です。

ポジショニングマップ パーセプションマップ
作る主体 企業(自社の意思で設計) 調査で作成(顧客の認識を可視化)
目的 競合との差別化ポイントを設計 顧客が実際にどう認識しているか確認
活用場面 戦略立案時 戦略検証・修正時

企業が「高品質・高付加価値」と訴求していても、顧客の頭の中では「古くて面倒」と認識されているかもしれない。このズレに気づかないまま施策を打ち続けても、成果は出ません。

定期的にパーセプションを調査し、ポジショニングとのギャップを確認・修正していくことが、マーケティングの精度を高める鍵です。

リポジショニング ── いつ「売り方」を変えるべきか

環境変化によって既存のポジショニングが機能しなくなることがあります。リポジショニングを検討すべきタイミングは以下の通りです。

タイミング 状況
代替品の出現 自社が訴求していた価値を、別の製品がより手軽に実現
顧客ニーズの変化 技術革新や社会変化で優先するKBFが変わった
新しい用途・市場の出現 想定外の使い方やユーザー層が見つかった
製品ラインの拡大 自社内の製品同士でカニバリゼーションが発生

リポジショニングの際に重要なのは、製品の核となる価値はぶらさず、訴求の切り口やターゲットを時代に合わせて再設計すること。核を見失うとブランドが崩壊します。

SWOT分析・クロスSWOTで市場機会を見つける

STPの前提となる市場機会の特定には、SWOT分析とクロスSWOT分析が有効です。

SWOT分析の構造

ポジティブ ネガティブ
外部環境 Opportunities(機会) Threats(脅威)
内部環境 Strengths(強み) Weaknesses(弱み)

クロスSWOT分析:4つの組み合わせで示唆を出す

機会(O) 脅威(T)
強み(S) S×O:強みで機会を活かすには? S×T:強みで脅威を克服するには?
弱み(W) W×O:弱みを克服して機会を逃さないためには? W×T:脅威で弱みを突かれないためには?

機会(O) 脅威(T)
強み(S) S × O 戦略
強みで機会を活かす
S × T 戦略
強みで脅威を克服
弱み(W) W × O 戦略
弱みを克服し
機会を逃さない
W × T 戦略
脅威で弱みを
突かれない対策

図C-3:クロスSWOT分析マトリクス

SWOT分析のコツ:

  1. いきなり4象限に当てはめない。まず事実(ファクト)を書き出す
  2. 事実をポジティブ・ネガティブの両面で解釈する
  3. 結果ではなくプロセスに価値がある。「何が言えるか?」を議論する中で市場機会が見える

IT業界で実践してみて

私はITインフラ領域で複数のサービスを提供していますが、STP分析を意識するようになって変わったことがあります。

以前は「良いサービスを作れば売れる」と思っていました。しかし実際には、同じサービスでも顧客によって求めるベネフィットが全然違う。ある顧客は「安定稼働」を最優先し、別の顧客は「導入スピード」を重視する。

この違いを意識してセグメントを分け、それぞれに合った訴求をするだけで、提案の通り方が変わりました。STPは消費財だけのものではなく、BtoBのIT業界でも十分に使えるフレームワークです。

まとめ

  1. セグメンテーション:ニーズの違いに基づいて市場を分ける。4つの変数を組み合わせて「意味のある塊」を作る
  2. ターゲティング:「魅力的か?」「勝てそうか?」の判断基準で狙う市場を絞る
  3. ポジショニング:顧客の頭の中に競合とは異なる「指定席」を作る。軸は顧客のベネフィットで選ぶ
  4. STPが決まってから4Pに落とし込む。この順序が一貫性のあるマーケティング戦略を生む

STPで設計した戦略を具体的な施策に落とし込む方法は「マーケティング・ミックス(4P)とは?施策設計の実践ガイド」で解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. STP分析はBtoB企業でも使えますか?

はい。セグメンテーションの変数がBtoCとは異なりますが(業績・投資力・成長性など)、「ニーズでグループ分けし、狙う市場を選び、差別化する」という基本構造は同じです。

Q2. ポジショニングマップの軸は何を基準に選べばよいですか?

ターゲット顧客が購買を決める際に重視するポイント(KBF)の中から、競合と差別化できる2軸を選びます。「○○できる / できない」と動詞で表現できる軸が効果的です。

Q3. STP分析はどのくらいの頻度で見直すべきですか?

市場環境に大きな変化があったとき(代替品の登場、技術革新、規制変更など)は必ず見直します。定期的には年1回程度のレビューが望ましいです。

Q4. セグメンテーションとポジショニングの違いがよくわかりません。

セグメンテーションは「誰に売るか」を人の属性・ニーズで決めるもの。ポジショニングは「その人に何と言って魅力を伝えるか」を製品の価値で決めるもの。前者は「人軸」、後者は「価値軸」です。

Q5. ターゲットを絞ると売上が減りませんか?

短期的には対象が狭まりますが、訴求が鋭くなるため成約率が上がります。経営資源が限られる中小企業ほど、絞ることで効率的に成果を出せます。


この記事は、グロービス経営大学院で学んだマーケティング戦略の考え方をもとに、筆者の理解と実務経験を交えて執筆しています。

MBAの学びをストーリーで読みたい方は、noteのマーケティング・経営基礎シリーズ(全6回)もあわせてどうぞ。

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