高層階で5Gが入らない。マンションのネット事情

13階建てマンションの最上階に引っ越した。内見の時点で5Gの電波が入ったり入らなかったりしていたのは気づいていた。当然確認するだろう。ただ、「まあどうにかなるだろう」と甘く見ていた。

結果、どうにかはなったが、想定以上に面倒だった。

IT業界で30年働いてきた人間でも、マンションのインターネット事情は入居してみないとわからないことだらけだった。分譲マンションに18年住んでいた感覚とはまるで違う。賃貸マンションのネット環境の現実を、体験ベースで記録する。

この記事でわかること

  • 高層階で5G・4Gの電波が悪くなる技術的な理由
  • 内見で電波を確認していたのに甘く見た反省
  • 賃貸マンションと分譲マンションのネット環境の違い
  • 大手賃貸会社のネット接続窓口の対応実態
  • ソフトバンクAirが10階以上で使えない問題とドコモ5Gルーターへの切り替え
  • 高層階を選ぶ前に確認すべきネット環境チェックリスト

高層階は何階から電波が悪くなるのか — 5G・4Gが届かない理由

「高いところのほうが電波は良いはず」と思っている人は多い。実際は逆だ。高層階は電波が悪くなりやすい。これには明確な技術的理由がある。

基地局のアンテナは「下向き」に設置されている

携帯電話の基地局アンテナは、地上約40メートルの高さに設置されるのが一般的だ(NTTドコモの場合)。そして、アンテナの電波は下方向に向けて放射されている。地上にいる多くのユーザーに効率よく電波を届けるためだ。

つまり、基地局のアンテナよりも高い位置にいると、電波が届きにくくなる。40メートルはおおむね13階相当。10階以上の高層階に住む場合、基地局の電波の主要な照射範囲から外れるリスクがある。

まさに、私が引っ越した最上階はこの境界線上だった。

高層階特有の「電波干渉」問題

高層階にはもう一つ厄介な問題がある。複数の基地局からの電波が同時に届いてしまうことだ。

低層階や地上では、建物や地形が自然な遮蔽物になり、通常は最も近い基地局の電波を安定して受信する。ところが高層階は周囲に遮るものがない。遠方の基地局からの電波も含めて複数の信号が同時に端末に到達し、互いに干渉し合って通信品質が低下する。

電波が「強すぎて」問題になるという、直感に反する現象だ。

Low-Eガラスと5Gミリ波 — 窓ガラスが電波を遮断する

5G通信で使われるミリ波帯(28GHz帯など)は、高速・大容量の通信が可能な反面、障害物に非常に弱い。壁一枚、窓ガラス一枚で大幅に減衰する。

特に注意が必要なのがLow-Eガラスだ。断熱・遮熱性能を高めるために金属膜をコーティングした窓ガラスで、近年の新築マンションでは広く採用されている。省エネ性能は優秀だが、電波を通しにくいという副作用がある。

内見で確認していたのに甘く見た

内見の時点で、スマホの5G電波が入ったり入らなかったりするのは確認していた。IT業界に30年いて、通信環境のチェックは当然やる。

しかし、「5Gが不安定でも4Gは入るし、固定回線もあるだろう」と楽観していた。これが甘かった。固定回線の実態は、入居してから初めてわかることだった。

賃貸マンションと分譲マンションのネット環境はまるで違う

18年住んだ分譲マンションでは、光回線を自分で契約し、自分で選んだルーターを使っていた。回線速度で困ったことは一度もない。

賃貸マンションに引っ越して、初めて「分譲と賃貸のインフラの差」を体感した。

光は引いているが、居室向けは光じゃない

新居のマンションは建物まで光回線が来ている。しかし、共用部から各戸への配線は光ではなかった。管理会社に確認したところ、各戸の最大速度は100Mbpsと言われた。

2026年に100Mbps。正直がっかりした。リモートワークでビデオ会議を日常的に使う環境で、100Mbpsは心もとない。実効速度はさらに落ちるからだ。

分譲マンションなら管理組合の判断で設備を更新できるが、賃貸ではオーナー任せ。建物のインフラに口を出す権限がない。これが賃貸と分譲の決定的な違いだった。

比較項目 旧居(分譲・5階) 新居(賃貸・13階最上階)
回線方式 個別契約の光回線 マンション共用(各戸100Mbps)
回線選択の自由 自分で選べる 管理会社経由のみ
5G電波 安定 不安定(入ったり入らなかったり)
設備更新 管理組合で決定可能 オーナー任せ

大手賃貸会社のインターネット受付センターが面倒だった

インターネット接続について管理会社に問い合わせようとした。ここでまた壁にぶつかった。

この賃貸会社(大手系列)の場合、インターネットの問い合わせは「インターネット受付センター」という専門組織のみの対応とのことだった。仲介店舗の担当者では対応できないという。

受付センターに電話すると、まず現在の住所や今持っている通信キャリアをひとつひとつ確認される。そのうえで、マンションの設備に応じた制約を説明され、引けるサービスを案内してくれる——という仕組みだ。

仕組み自体は悪くない。ただ、対応する人がネットワークの専門家ではないので、こちらが技術的な質問をしても的確な回答が返ってこない。IT歴30年の人間としては、もどかしさがあった。

そして問題が起きた。

ソフトバンクAirが10階以上で使えない

旧居ではソフトバンクの5Gルーター(SoftBank Air)を使っていた。引越し先でも継続利用するつもりだったが、ソフトバンクAirは10階以上の住居では利用場所の変更すらできないことが判明した。

契約上の制約で、高層階への移設が不可。やむなくソフトバンクAirは解約することになった。

受付センターからはソフトバンクのマンションタイプの光回線を勧められたが、各戸100Mbpsの制約がある以上、わざわざ光を引いても速度は変わらない。めちゃくちゃ面倒なやり取りだった。

home 5Gは高層階でも使えるか — ドコモを選んだ理由

検討した結果、ドコモのhome 5Gに切り替えた。

ドコモの場合、13階までは契約が可能だった。ソフトバンクは10階以上NGだが、ドコモは13階まで対応している。キャリアによって高層階の対応ポリシーが異なることを、この時初めて知った。

正直なところ、13階で5Gの電波がフルに入るとは思っていない。内見時に電波が不安定だったのは確認済みだ。しかし、100Mbpsの固定回線よりは、5Gの可能性に賭けたほうがマシだと判断した。実際、窓際に置けば5Gを掴む時間帯もあり、4Gでも旧来の固定回線より速い場面がある。

選択肢 最大速度 高層階対応 結果
マンション共用回線 100Mbps 制約なし 遅すぎて不採用
ソフトバンクAir 5G対応 10階以上NG 契約不可
ソフトバンク光(マンションタイプ) 100Mbps 制約なし 共用回線と変わらず
ドコモ home 5G 5G対応 13階まで可 採用

もともと使っていたソフトバンクAirは10階以上の制約さえなければ継続したかった。結果的に契約したのはドコモのhome 5Gだ。高層階で固定回線が100Mbps制限という状況なら、検討する価値はある。

物件選びの段階で確認すべきネット環境チェックリスト

通信環境の問題は、入居後に気づいても選択肢が限られる。物件を決める前に確認しておくべき項目をまとめた。

確認項目 確認方法 注意点
携帯電波の受信状況 内見時にスマホで電波強度を確認 5Gと4G両方を確認。「入ったり入らなかったり」は要注意
固定回線の方式と速度 管理会社に確認 「光が来ている」でも各戸100Mbpsの場合あり
個別に光回線を引けるか 管理規約を確認 賃貸は大家の許可が必要。構造上不可の場合もある
何階建ての何階か 物件情報で確認 10階以上は携帯電波・ホームルーターに制約が出る
ホームルーターの高層階対応 各キャリアに確認 ソフトバンクAirは10階以上NG。ドコモは13階まで
窓ガラスの種類 内見時確認 or 管理会社に確認 Low-Eガラスは5Gミリ波を大幅に減衰させる

結論として、高層階はネットを気にする人には積極的にはおすすめしない。 リモートワークが前提の働き方なら、10階未満の物件のほうが通信環境のリスクが小さい。どうしても高層階を選ぶなら、上記のチェックリストを入居前に全て確認してから判断してほしい。

よくある質問(FAQ)

Q. 高層階でも5Gが安定して入るマンションはある?

ある。基地局との位置関係や、屋内用の小型基地局(フェムトセル)が設置されているマンションでは、高層階でも安定した通信が可能だ。ただし物件情報には記載されないので、内見時にスマホで実際に確認するのが確実だ。

Q. 何階以上だと電波が悪くなる?

基地局アンテナの設置高さ(約40メートル)を超える10階以上が目安だ。さらにホームルーターのキャリア制約もあり、ソフトバンクAirは10階以上NG、ドコモhome 5Gは13階まで対応と差がある。

Q. ホームルーターと光回線、高層階ではどちらがいい?

高層階でも各戸まで光配線方式で来ているなら光回線一択だ。しかしVDSLやLAN配線で100Mbpsに制限される場合、5G対応のホームルーターのほうが実効速度で上回る可能性がある。物件の配線方式を確認してから判断すべきだ。

Q. 賃貸マンションで個別に光回線を引ける?

管理規約と大家の許可次第だ。建物の構造上、新たな配管工事ができない場合もある。契約前に管理会社へ確認しておくことを強くお勧めする。

Q. メッシュWiFiは必要?

間取りや壁の構造による。3LDKでもルーターの設置場所次第では1台で全室カバーできることもある。私の場合は不要だった。

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