韓国の27ホールが売りに、想定価格は1ホール約90億ウォン

韓国の首都ソウルの南東、京畿道(キョンギド)利川(イチョン)市にあるシルクバレーゴルフクラブ(シルクバレーGC)が売りに出た[1][2]。2013年に開業した27ホールのパブリックコースで、韓国では会員権を売らずに一般客へ開放するこの形を「大衆制」と呼ぶ[1]。

売りに出たのは、コースを運営するイチョン・シルクバレー社の株式100%だ[1][2]。持ち主は韓国の中堅ゼネコン、シナン建設産業(신안건설산업)のウ・ギョンソン会長らオーナー一家で、国内の大手会計事務所を売却の助言役に選んだ[1][2]。市場で言われている価格は1ホール90億ウォン(約10.7億円。100ウォン=約11.8円、欧州中央銀行の参照レートによる2026年10月23日時点の換算)で、総額は2,500億ウォン(約296億円)前後になる見通しだ[1][2]。

なぜ今なのか。シナン建設産業は、不動産市況の悪化で工事代金の未回収が積み上がり、2026年5月末に裁判所へ回生手続きを申し立てた[1][2]。回生手続きは、裁判所の監督の下で会社を立て直す韓国の再建型の手続きだ。ゴルフ場とシナン建設産業のあいだに直接の資本関係はなく、オーナー一家が個人で持つ資産を売って、本業の資金繰りを支える形になる[1][2]。

シルクバレーGCのコース。手前にフェアウェイとバンカー、中央に噴水のある池、奥の丘の上にクラブハウスが見える
シルクバレーGCのコース。噴水のある池の奥に、白い外壁のクラブハウスが建つ(画像:シルクバレーゴルフクラブ公式サイトより)

シルクバレーGCの売却は、オーナーの建設会社の回生手続きとどうつながるのか

シルクバレーGCの売却は、資金繰りに詰まった建設会社を、同じオーナーが持つ黒字のゴルフ場の売却代金で支えるための動きだ[1][2]。ソウル経済新聞は、大株主側が持つ別の系列会社であるシナン建設産業の財務を立て直すための資産の現金化だと書いた[1]。

不動産専門メディアの땅집고(タンジプコ。朝鮮日報系)は、売れ残りの住宅と工事代金の未回収が重なって財務の負担が増えたことを、回生手続きの理由に挙げた[2]。ゴルフ場は建設会社の子会社ではなく、株式の売り手もシナン建設産業ではなくオーナー一家だ[1][2]。それでも両紙とも、オーナー一家が本業ではないゴルフ場を手放して建設会社の問題を片付ける方針だと伝えている[1][2]。

オーナー一家がイチョン・シルクバレー社の株式100%を買い手に売り、代金を回生手続き中のシナン建設産業の財務の立て直しに充てる流れ。ゴルフ場と建設会社に直接の資本関係はない
シルクバレーGCの売却代金がシナン建設産業の立て直しに回る流れ

買い手として名前が挙がるのは、共済会などの財務的投資家だ[2]。ソウル経済新聞によると、複数の買い手候補が関心を示し、業界では地方行政共済会や科学技術人共済会がゴルフ場投資に関心を持っているとみられている[1]。地方行政共済会は2026年に入って、ゴルフ場に投資するファンドの運用会社としてイージス資産運用を選んだ[1]。

ソウル経済新聞は、首都圏にあって行きやすいパブリックコースは珍しい物件だと評価している[1]。所在地は利川市の栗面(ユルミョン)だ[1]。

買い手の顔ぶれは、まだ観測の段階にとどまる。入札の日程や締め切りは、両紙とも報じていない[1][2]。

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シルクバレーGCの売上と営業利益は、2022年からどれだけ減ったのか

シルクバレーGCの業績は、2022年を頂点に大きく下がったが、利益率はなお高い[1][2]。運営会社イチョン・シルクバレー社の2025年の売上は196億ウォン(約23.2億円)、営業利益は79億ウォン(約9.4億円)だった[1][2]。

頂点はコロナ禍でゴルフ需要が膨らんだ2022年だ。売上308億ウォン(約36.5億円)、営業利益185億ウォン(約21.9億円)を上げていた[1][2]。3年で売上は約36%、営業利益は約57%減った計算になる(筆者の計算)。

ソウル経済新聞は、償却前の営業利益であるEBITDAも伝えた[1]。EBITDAは営業利益に減価償却費を足し戻した数字で、設備にかかったお金を除いた稼ぐ力を見るのに使う。2025年は87億ウォン(約10.3億円)で、売上に対する比率は約45%に上る[1]。

項目2022年2025年増減
売上308億ウォン[1][2]196億ウォン[1][2]約36%減
営業利益185億ウォン[1][2]79億ウォン[1][2]約57%減
EBITDA196億ウォン[1]87億ウォン[1]約56%減
営業利益率約60%約40%約20ポイント低下

※増減と営業利益率は報道の数値をもとにした筆者の計算。

想定総額2,500億ウォンを2025年のEBITDA 87億ウォンで割ると、約29倍になる(筆者の計算)。ソウル経済新聞が引いた投資銀行の関係者は、コロナ禍の好況期より売り手の言い値が上がり、買い手が物件の価値を厳しく見る空気だと話した[1]。同じ関係者は、首都圏の立地があり、大株主が代わって投資の余力が戻れば業績も持ち直す可能性が高いとも述べている[1]。

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韓国のゴルフ場の1ホール単価は、過去の取引と比べて高いのか

シルクバレーGCの1ホール約90億ウォンは、最近の韓国の首都圏の案件と比べると低めに置かれている[1][2]。韓国の報道は、ゴルフ場の売値を総額だけでなく1ホールあたりの価格で比べることが多く、今回の両紙もそうしている。

比べる相手として両紙が挙げたのは、前年に売れた中部CC(チュンブCC)だ。韓国の企業グループ、エギョン・グループが手放し、1ホール約110億ウォン(約13.0億円)で売却したと報じられた[1][2]。韓経ビジネスによると、中部CCは京畿道広州(クァンジュ)市の昆池岩(コンジアム)にある18ホールの会員制コースで、買い手の優先交渉者にザ・シエナ・グループが選ばれ、金額は約2,000億ウォン(約237億円)と報じられた[3]。

シルクバレーGCの想定単価は、比べた4コースの中で最も低い

ほかの2件は、まだ売れていない案件の言い値だ。ソウル経済新聞によると、ウンジン・グループが売却を進めるレックスフィールドCCは売り手の希望で1ホール130億ウォン以上、ポスコ・グループが売却を進めるジャックニクラウスGCは200億ウォン近くになるとの観測がある[1]。땅집고は、首都圏で最近売りに出たコースの希望額を1ホール100億〜200億ウォンとまとめた[2]。

コースホール数1ホールあたり総額段階
シルクバレーGC27[1]約90億ウォン[1][2]約2,500億ウォン[1][2]想定額
中部CC18[3]約110億ウォン[1][2]約2,000億ウォン[3]2025年に売却
レックスフィールドCC—130億ウォン以上[1]—売り手の希望額
ジャックニクラウスGC—200億ウォン近く[1]—業界の観測

※「—」は本稿で確認していない項目。

1ホール単価には、会員制か大衆制か、利益がいくらかといった違いは入っていない。땅집고が引いた投資銀行の関係者は、コロナ後にゴルフ場の値段が高すぎるという議論が出て、売り手と買い手の見方の差が大きく、取引が成立しにくいと話している[2]。

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日本のゴルフ場売却も、オーナー側の資金繰りから起きているのか

日本の2026年の事例を2件見ると、どちらも売られる側のゴルフ場そのものが資金繰りに詰まり、再建手続きの中で新しい持ち主を迎える形だった。黒字のコースをオーナーの別会社の救済のために売る韓国の今回の形とは、出発点が違う。

東京商工リサーチによると、三重県いなべ市の六石ゴルフ倶楽部の運営会社は、2026年9月1日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した[4]。負債総額は債権者約1,900名に対して約56億円で、預託金の返還問題に加え、元支配人の不正事件に伴う修正申告の税負担で資金繰りが悪化した[4]。スポンサーは東証プライム上場のリソルホールディングスで、2027年1月中旬ごろに既存株式を100%減資し、スポンサーが新株を引き受ける予定だ[4]。

帝国データバンクによると、愛知県新城市の三河カントリークラブ(18ホール)の運営会社は、2026年3月31日に大阪地裁へ民事再生法の適用を申請した[5]。負債は債権者約1,400名に対して約120億円で、預託金の返還負担などが重荷になった[5]。

比較軸韓国:シルクバレーGC日本:六石ゴルフ倶楽部日本:三河カントリークラブ
資金に詰まった会社オーナー一家の別会社、シナン建設産業[1][2]ゴルフ場の運営会社[4]ゴルフ場の運営会社[5]
ゴルフ場の業績2025年営業利益79億ウォン[1][2]——
主な理由売れ残りの住宅と工事代金の未回収[2]預託金の返還問題と税負担[4]預託金の返還負担など[5]
新しい持ち主の決まり方株式100%の売却[1][2]民事再生のスポンサーが新株を引き受ける予定[4]申請時点(2026年3月)でスポンサーを探していた。その後の選定は報じられていない[5]

※「—」は本稿で確認していない項目。

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よくある質問(FAQ)

シルクバレーGCはいくらで売られるのか

市場で言われている価格は1ホール90億ウォン、総額で2,500億ウォン(約296億円)前後だ。成約した額ではなく、2026年10月時点の想定額にとどまる。

なぜ利益の出ているゴルフ場を売るのか

オーナー一家が持つ別の会社、シナン建設産業が2026年5月末に回生手続きを申し立てたためだ。ゴルフ場を売った資金で建設会社の財務の問題を片付ける方針と報じられている。

韓国のゴルフ場はなぜ1ホールあたりの値段で比べるのか

ホール数の違うコースを同じ物差しで比べるためだ。27ホールのシルクバレーGCと18ホールの中部CCも、1ホールあたりなら約90億ウォンと約110億ウォンで並べられる。

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まとめ

韓国・京畿道利川市のシルクバレーGC(27ホール)は、回生手続き中のシナン建設産業を支えるため、オーナー一家が運営会社の株式100%を売りに出した。想定価格は1ホール90億ウォン、総額約2,500億ウォン(約296億円)で、前年に売れた中部CCの約110億ウォンより低い。

コースの営業利益は2022年の185億ウォンから2025年の79億ウォンへ半分以下になった。それでもEBITDAの売上比は約45%あり、買い手候補には共済会の名前が挙がる。

まだ分からないのは、誰がいくらで買うかだ。入札の日程は報じられておらず、成約額が1ホール90億ウォンを上回るか下回るかが次の焦点になる。レックスフィールドCCとジャックニクラウスGCの売却がどの単価で決まるかも、韓国のゴルフ場の値付けを測る材料になる。

出典

  1. 서울경제(ソウル経済新聞)「[단독] 경기 이천 ‘실크밸리GC’ 매물로… 몸값 2500억 [시그널]」(2026年10月20日) https://www.sedaily.com/article/20103724
  2. 땅집고(タンジプコ)「건설업 한파에 골프장까지 매각…신안건설, 실크밸리GC 매각 추진」(2026年10月22日) https://realty.chosun.com/site/data/html_dir/2026/10/22/2026102201986.html
  3. 한경비즈니스(韓経ビジネス)「2,000억 베팅한 더시에나, 중부CC 인수로 골프장 자산 확대」(2025年6月2日) https://magazine.hankyung.com/business/article/202506020041b
  4. 東京商工リサーチ「(株)六石ゴルフ倶楽部(三重)が民事再生法の適用を申請」(2026年9月1日) https://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/detail/1203201_1521.html
  5. 帝国データバンク「株式会社三河カントリークラブ」倒産速報(2026年3月31日) https://www.tdb.co.jp/report/bankruptcy/flash/5214/