
韓国南西部の全羅南道霊岩郡(チョルラナムド・ヨンアムぐん)にあったゴルフ場、コスモスリンクスは、13回の公売を経て650億ウォン(約77億円。100ウォン=約11.8円換算)で売れた[1]。売買契約は2025年11月に結ばれ、所有権は2026年3月4日に移っている[1]。韓国の日刊紙、世界日報が2026年11月1日の記事でその経緯をまとめた[1]。最初の鑑定額2,060億ウォン(約243億円)の31.6%にあたる[1]。
コスモスリンクスは、長さ1,850m・幅100mの直線の帯を4本並べ、その上に18ホールを配したコースだ[1][2]。韓国の報道はこの形を滑走路型と呼んだ[2][3]。敷地は約340万㎡(東京ドーム約73個分)、全長は6,722mとされる[1][2]。2023年の電子新聞は6,772mと書いており、報道によって数字が割れている[3]。

運営会社のパークカウンティは、2024年3月の正式開業から2025年8月末まで、約17か月営業した[1]。その間に約600億ウォン(約71億円)のつなぎ融資を延長できず、コースは公売にかけられた[1][2]。つなぎ融資は、事業全体を担保にする本融資(PF、プロジェクトファイナンス)に切り替えるまでの短期の借入れを指す[1]。
取得そのものは、資本市場の専門紙TheBell(ザ・ベル)が2026年3月4日に、650億ウォンで手付金を払った段階で報じていた[7]。世界日報の記事は、営業期間や公売の経過、跡地の検討状況までを1本にまとめたものだ[1]。公売が鑑定額2,060億ウォンで始まったことは、2024年12月に経済誌ビズハングクも報じている[2]。
滑走路型ゴルフ場コスモスリンクスはどんなコースだったのか
コスモスリンクスは、霊岩・海南の観光レジャー型企業都市「ソラシド」の三湖(サムホ)地区に造られた18ホールのコースだ[2]。長方形の帯1本に4ホールを置き、帯から帯へ渡る部分に2ホールずつを配した[2]。2023年に紹介した電子新聞は、全ホールが平らでドッグレッグ(途中で曲がるホール)がなく、どのティーからもグリーンが見えると書いた[3]。
バンカーは噴火口のような形のものが365個あり、1ホール平均で約20個になる[2][3]。2023年9月には韓国男子ツアー、KPGA(韓国プロゴルフ協会)コリアンツアーの「Bizplay電子新聞オープン」を開いた[1][3]。正式開業はその半年後の2024年3月だ[1][2]。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 全羅南道霊岩郡三湖邑 |
| 敷地 | 約340万㎡(東京ドーム約73個分) |
| 形 | 長さ1,850m・幅100mの帯を4本並べる |
| ホール数・全長 | 18ホール・6,722m(電子新聞は6,772m) |
| バンカー | 365個 |
| 営業期間 | 2024年3月〜2025年8月31日 |
開発と運営を担ったパークカウンティは、西南海岸レジャーという会社の完全子会社だ[2]。西南海岸レジャーの出資比率は、エース投資が62.93%、韓国観光公社が19.97%、全羅南道が16.66%だった[2]。世界日報によると、正式開業前の2023年の売上は2億ウォン、純損失は76億ウォンだった[1]。

プロジェクトファイナンスの定義から、案件の組成、貸し手との交渉、完工後の管理と完済までを借り手の立場で説明する入門書だ。コスモスリンクスがつまずいた、つなぎ融資から本融資への切り替えを考える下地になる。
コスモスリンクスはなぜ開業17か月で閉鎖し公売になったのか
直接の原因は、約600億ウォンのつなぎ融資を延長できず、本融資にも切り替えられなかったことだ[1]。ビズハングクによると、融資にはソウル中央農協やKBキャピタルなどが加わり、2024年が返済期限だった[2]。返済できなかったため、貸し手の金融機関が売却を求めた[2]。世界日報は、つなぎ融資の延長と本融資への切り替えが難航し、期限の利益を失う債務不履行(EOD)に至ったと書いている[1]。
土地と建物は不動産信託の仕組みで信託会社に預けられていた[2]。この契約では、借り手が約束どおり返済しない場合、貸し手の求めに応じて信託会社が不動産を処分できる[2]。信託会社のウリ資産信託は2024年11月27日に公売を公告し、最低入札価格を鑑定額どおり2,060億ウォンとした[2]。
1回目の公売は2024年12月9日に予定された[2]。コースはその後も2025年8月末まで営業を続けており、公売の手続きと営業が9か月ほど並行していたことになる[1][2]。

世界日報によると、未払いの工事代金は約200億ウォン(約24億円)とされ、現地には留置権を主張する掲示があった[1]。売却代金の配分や留置権の扱いは、記事の時点では確定していない[1]。パークカウンティと西南海岸レジャーは、ビズハングクの取材に応じなかった[2]。

公売は13回まで続いた[1]。売買契約は2025年11月に結ばれ、所有権は2026年3月4日にBSグループ系列の大信ピープル・アンド・ピープルへ移った[1]。
経営破綻した太平洋クラブをマルハンが買収し、立て直すまでを追ったノンフィクションだ。売れたあとのゴルフ場がどう再生されるのかを、日本の実例で読める。
鑑定額の3割という落札額は韓国のゴルフ場市場で何を意味するのか
650億ウォンは、鑑定額2,060億ウォンより1,410億ウォン(約166億円)、率にして68.4%低い[1]。敷地1坪(約3.3㎡)あたりでは約6万3,000ウォンになる[1]。

韓国のゴルフ場の取引価格は、2024年に下がり始めていた[2]。韓国レジャー産業研究所の集計では、1ホールあたりの取引価格は2019年の43.9億ウォンから2023年の84.9億ウォンまで上がり、2024年は76.9億ウォンと約9%下がった[2]。5年ぶりの下落で、同研究所のソ・チョンボム所長は今後も年5%ほど下がると見ている[2]。

コスモスリンクスの650億ウォンを18ホールで割ると、1ホールあたり約36億ウォンになる(筆者計算)。2024年の平均76.9億ウォンの半分に届かない。営業中のコースの取引と、閉鎖したコースの公売とは条件が違うため、筆者の見立てとしては、市場の下落に加えて閉鎖と信託処分が値段を押し下げたと読む。
需要の側も伸びていない。世界日報によると、韓国のゴルフ場の利用者は2022年の約5,058万人から3年続けて減り、2025年は約4,641万人だった[1]。
2026年1月1日時点のゴルフ場は546か所で、うち527か所が営業している[1]。2025年の1ホールあたり利用者は4,430人で、前年より127人減った[1]。
2026年上半期の大衆型(非会員制)コースの利用者は前年同期より約10%増えたが、2025年の天候不順の反動とされ、全国的な回復は確認しにくいと同紙は書く[1]。
買い手のBSグループは、ソラシドへの先端産業の誘致とあわせて、太陽光など再生可能エネルギーへの転用を検討している[1]。具体的な計画と許認可の時期は決まっていない[1]。太陽光事業向けには別に総額500億ウォンの融資枠が組まれ、うち優先部分の300億ウォンが所有権移転と同じ2026年3月4日に実行された[1]。
韓国の首都ソウルの南東、京畿道(キョンギド)利川(イチョン)市にあるシルクバレーゴルフクラブ(シルクバレーGC)が売りに出た[1][2]。2013年に開業した27ホールのパブリックコースで、韓国では会員権を売らずに一般客へ開放するこの形を[…]
日本のゴルフ場の倒産はどれくらい起きているのか
日本のゴルフ場の倒産は2002年の108件が最も多く、その後は大きく減った[4]。帝国データバンクによると、2018年は20件で前年の12件から増え、負債の合計は923億1,800万円だった[5]。東京商工リサーチによると、2019年以降は1けたで推移したが、2022年は10件と4年ぶりに2けたに戻った[8]。同社は、預託金の償還問題をまだ抱えるゴルフ場があるとも書いている[8]。
倒産そのものは日本でも続いているが、原因はコスモスリンクスとは違う。日本では、会員が入会時に預ける預託金の返還期限が倒産の引き金になってきた[5]。帝国データバンクは2019年の調査で、2000年代前半に期限を迎えたコースの多くが15〜20年延ばしており、その期限が再び近づいていると指摘した[5]。
| 項目 | 韓国・コスモスリンクス | 日本・東京グリーン |
|---|---|---|
| 開業・設立 | 2024年3月に正式開業 | 1981年6月設立 |
| 行き詰まった理由 | つなぎ融資の延長と本融資への切り替えに失敗 | バブル崩壊後の経営悪化と預託金の償還問題。2008年に運営を別会社へ譲渡 |
| 手続き | 信託会社による公売(13回) | 東京地裁で破産手続き開始 |
| 金額 | 落札額650億ウォン | 負債約155億円(債権者約1名) |
東京グリーン(東京都千代田区)は、かつて千葉県の富里ゴルフ倶楽部とカレドニアン・ゴルフクラブを運営していた会社だ[6]。帝国データバンクによると、バブル崩壊後の経営悪化で預託金の償還問題を抱え、ゴルフ場ごとに中間法人を設けて預託金を譲渡し、2008年にはコースの運営も別会社に譲っていた[6]。その後は金融債務の整理を進めていたが、富里ゴルフ倶楽部が成田空港の工事に伴う用地買収で2023年12月に閉場したのを機に、残る債務を処理するため8月19日に東京地裁から破産手続きの開始決定を受けた(帝国データバンクの2026年8月26日の速報)[6]。負債は債権者約1名に対する約155億円だ[6]。
韓国の民間シンクタンクである韓国レジャー産業研究所が、同国の会員制ゴルフ場の税負担をまとめた報告書を出した。ソウル経済新聞(韓国の経済紙)の英語版が2026年10月1日に伝えたところでは、会員制ゴルフ場が2025年に納めた税金は合計5,9[…]
よくある質問(FAQ)
コスモスリンクスは今もプレーできるのか
できない。2025年8月31日で営業を終え、2026年3月に所有権がBSグループ系の会社に移った[1]。跡地の使い道はまだ決まっていない[1]。
韓国のゴルフ場の値段は下がっているのか
韓国レジャー産業研究所の集計では、2024年の1ホールあたり取引価格は76.9億ウォンで、前年より約9%下がった[2]。5年ぶりの下落だった[2]。
日本のゴルフ場でも同じことが起きるのか
日本でもゴルフ場の倒産は続いているが、背景には会員から預かった預託金の償還問題が多い[5][8]。開業直後に融資の借り換えに失敗した今回の例とは事情が違う。
韓国の鉄鋼最大手POSCO(ポスコ)グループが、仁川(インチョン)市の松島(ソンド)国際都市にある会員制ゴルフ場「ジャック・ニクラウス・ゴルフクラブ(GC)コリア」の売却に乗り出した[1][2]。男子メジャー4大会をすべて制した米国のジャ[…]
まとめ
韓国・全羅南道の滑走路型ゴルフ場コスモスリンクスは、約17か月の営業で閉鎖し、13回の公売を経て650億ウォンで売れた[1]。鑑定額2,060億ウォンの31.6%で、1ホールあたりでは2024年の市場平均の半分に届かない[1][2]。つまずいたのは、開業直後に約600億ウォンのつなぎ融資を延長できなかったことだった[1][2]。
韓国のゴルフ場は利用者が3年続けて減り、取引価格も2024年に下がり始めている[1][2]。取得は2026年3月にTheBellが報じ[7]、世界日報が11月に経緯をまとめた[1]。次に見るのは、BSグループが太陽光などへの転用をいつ、どの許認可で進めるかと、未払いの工事代金約200億ウォンがどう処理されるかだ[1]。
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出典
- 世界日報「旧コスモスリンクスCC」関連記事(2026年11月1日) https://www.segye.com/newsView/20261101500231
- ビズハングク「『国内初の滑走路型ゴルフ場』霊岩コスモスリンクス、公売に」(2024年12月3日) https://bizhankook.com/articles/28685.html
- 電子新聞(2023年8月20日) https://m.etnews.com/20230818000164
- 東京商工リサーチ「ゴルフ場はコロナ禍を乗り越えた?倒産が今年まだ1件」(2020年10月7日) https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1190199_1527.html
- 帝国データバンク「ゴルフ場経営業者の倒産動向調査(2018年)」(2019年2月8日) https://www.tdb.co.jp/report/industry/fjjkj676lfi4/
- 帝国データバンク 倒産速報「東京グリーン株式会社」(2026年8月26日) https://www.tdb.co.jp/report/bankruptcy/flash/5254/
- TheBell「BS그룹, 영암 골프장 부지 솔라시도와 연계 개발 추진」(2026年3月4日) https://www.thebell.co.kr/front/newsview.asp?key=202603041405504720101628
- 東京商工リサーチ「売上高はコロナ前に近づく、利益は8割が黒字に ~2021年度全国『ゴルフ場経営会社』業績調査~」(2022年12月20日) https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1197113_1527.html
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