飛ばし屋が有利な大会はどこか?女子プロツアー39大会とコースの長さを分析

生成り地のアイキャッチ。全5回シリーズ第4回とJLPGAツアー39大会・1,134ラウンドのバッジ、シリーズ名の女子プロの飛距離とスコアという小見出し、飛ばし屋が有利な大会はどこかという大見出し。下部に4枚のカードがあり、飛ぶ選手の有利さは大会により1ラウンド0.5〜1.5打、最大はCAT Ladiesの1.47打、最小は伊藤園レディスの0.46打、390yd以上のパー4では10ヤードあたり1ホール約0.04打と並ぶ
どの大会でも飛ぶ選手が有利。有利の大きさは大会によって約0.5〜1.5打

シリーズ「女子プロの飛距離とスコア」全5回の第4回

  1. 第1回 入門:飛距離はスコアにどれだけ効く?
    結論だけを、統計の用語なしで8つの問いにまとめた
  2. 第2回 10ヤードは何打の価値か
    曲げなければ0.81打、実際は0.37打。差を生むのはフェアウェイを外す損
  3. 第3回 飛ぶ選手・飛ばない選手の勝ち筋
    スコア上位を分ける技術と、約242ヤードで効きが鈍る理由。代表選手の実名入り
  4. 第4回 飛ばし屋が有利な大会・コース(この記事)
    39大会で有利の大きさは約0.5〜1.5打。効くのはパー4の長さ
  5. 第5回 データ編:分析の方法と全結果の要約
    使ったデータ、分析の方法、結論が見かけの関係でないかの検証

飛ばし屋が特に有利な大会、飛ばない選手でも戦える大会はあるのか。コースが長くなると、飛ぶ選手はもっと有利になるのか。女子プロツアー(JLPGAツアー)の大会ごとのホール別成績(1,134ラウンド、約180万ホール)で確かめた。どの大会でも飛ぶ選手が有利で、有利の大きさは大会によって約0.5〜1.5打。コースが長いほど有利になるわけではなく、ホール単位で効くのはパー4の長さだった。

本記事は、統計の用語なしで結論だけをまとめた「女子プロの飛距離はスコアにどれだけ効く?10年分の公式記録で検証」の詳しい版。選手ごとの分析は「飛距離10ヤードは何打の価値か?女子プロ9シーズンの公式記録で分析」「飛ぶ選手と飛ばない選手、スコア上位に入る条件は何が違う?女子プロ9シーズンで分析」、データと分析の方法は「【データ編】女子プロの飛距離とスコア 分析の方法と全結果の要約」にまとめた。

この記事の前提

  • 選手単位の数値の対象:JLPGAツアーの2017〜2026年(9シーズン)に、規定ラウンド数に到達した選手。延べ837人
  • 「飛ぶ選手」「飛ばない選手」:各シーズンの飛距離で4等分し、上位25%を「飛ぶ選手」、下位25%を「飛ばない選手」と呼ぶ
  • 数字の向き:スコア(平均ストローク)は小さいほど良い。「0.8打良い」は1ラウンドあたり0.8打少ないこと。相関係数 r がマイナスなら「その指標が高いほどスコアが良い」
  • 大会・ラウンド単位の分析:その年の飛距離の計測が20ホール以上ある全選手が対象。スコアは「そのラウンドの出場選手平均との差」に直し、天候やピン位置の影響を除いている。飛ぶ・飛ばないの境目は、規定ラウンド到達者の四分位をそのまま使う

飛ばし屋が特に有利な大会はあるのか

結論:どの大会でも飛ぶ選手が有利で、その度合いが大会によって約0.5〜1.5打違う。CAT Ladiesは毎年大きい。この差はコース全長や風では説明できない。大会の平均で見ると、出場選手のパーオン率が高い大会ほど不利は小さい。

大会ごと・年ごとに、飛ばない選手と飛ぶ選手の「ラウンド平均との差」を計算し、その差を「飛ばない選手の不利」とした。対象は3年以上開催された39大会(大会×年で315件)、パー72のラウンドに限っている。

1年分の値は大きくぶれる。同じ大会でも年ごとの標準偏差は約0.54打あり、大会そのものの差(約0.23打)の2倍以上になる。そこで、開催年数に応じて、各大会の平均を全体平均の方向に割り引いた推定値(縮小推定)を使った。年数が少ない大会ほど全体平均に近づく。

39大会それぞれの、飛ばない選手の不利を1ラウンドあたりの打数差で並べた図。最も小さい伊藤園レディスが0.46打、全体平均が約1.0打、最も大きいCAT Ladiesが1.47打。すべての大会でプラス
  • CAT Ladies:対象の6年(2021〜2026年。2017〜2019年はパー73のため対象外)はすべて大箱根CCで、不利は2.15、2.47、1.90、1.78、1.54、1.58打と毎年1.5打を超える。割り引いた推定でも1.47打(95%区間 1.15〜1.78)で、2番目の大会(1.21打)を0.26打上回る。ただし両者の95%区間は重なる
  • 伊藤園レディス:不利が最も小さいが、年別の値は−0.55〜0.86打と振れ幅が大きく、飛ばない選手が上回った年もある。割り引いた推定は0.46打(95%区間 0.18〜0.73)

同じ大会で奇数年と偶数年を比べると r = 0.49 で、大会ごとの傾向は別の年でも中程度に再現する。

大会の差は、何で説明できるか

候補大会×年の不利との相関p値大会の平均との相関p値
コース全長0.100.0700.090.587
パー4の平均の長さ0.160.0050.270.093
パー3の平均の長さ−0.180.001−0.440.005
パー5の平均の長さ0.070.241−0.020.914
390yd以上のパー4の本数0.070.2230.090.595
風速0.000.9370.090.580
大会の難しさ(出場選手平均のオーバーパー)0.100.0720.220.182
出場選手のFWキープ率0.110.0580.100.537
出場選手のパーオン率−0.19< 0.001−0.500.001
全候補(全長と390yd本数を除く)を合わせたモデルR² = 11.4%—

「大会×年」は、3年未満しか開催されていない大会も含めた全319件のうち、欠けた値のない313件で、各年の値の精度で重み付けして計算した。「大会の平均」は39大会の縮小推定値で計算した。

大会×年の値では、パー4の平均の長さ、パー3の平均の長さ、出場選手のパーオン率に弱いが有意な関係がある。ただし候補を合わせたモデル(全長と長いパー4の本数は、パー4の長さと重なるため除く)でも、大会×年の値のばらつき(大半は年ごとのぶれ)の約11%しか説明できない。39大会の平均で見ると、出場選手のパーオン率(r = −0.50)とパー3の平均の長さ(r = −0.44)に関係があり、パーオンしやすい大会ほど、パー3が長い大会ほど、飛ばない選手の不利は小さい(9候補の多重比較を補正しても5%水準を下回るが、パー3は境界に近い。長いパー3で不利が小さくなる理由は、このデータでは分からない)。コース全長、長いパー4の本数、風速とは関係が見られない。CAT Ladiesのように毎年再現する差には、起伏、打ち上げ・打ち下ろし、キャリーが必要なハザード、ドッグレッグの形、ラフやグリーンの状態など、今回のデータにないコースの特徴が関係している可能性がある。どの特徴が効いているかは、このデータでは確かめられない。

コースが長くなると、飛ばし屋はもっと有利になるのか

結論:コース全長は、飛距離の効き方をほとんど左右しない。効くのはパー4の長さ。

ラウンドごとのヤーデージと各選手のスコアを結びつけた。コース全長が100yd長いときの10ydの価値の変化は+0.002打で、有意差はない。全長別に見ても、10ydの価値は0.36〜0.49打の範囲に収まる(ラウンド単位のモデルの値で、「10ヤードの価値」で見たシーズン単位の0.37打とは別の推定)。

コース全長ラウンド数10ydの価値飛ばない選手の不利
〜6,399yd79−0.44打0.95打
6,400〜6,549yd324−0.48打0.96打
6,550〜6,699yd539−0.49打1.08打
6,700yd〜119−0.36打0.87打

ホール単位に分けると傾向ははっきりする。パー4は長いホールほど飛距離の価値が大きく、330yd未満のパー4では有意な効果がなく、390yd以上では1ホールあたり0.037打になる。パー5は499yd以下で1ホールあたり約0.06打、500yd以上で約0.04打と、どの長さでも大きい(469yd以下は27ホールと少なく、推定は粗い)。パー3では飛距離の影響はほぼない。

ホールの長さ別に、飛距離10ydあたりの打数差を1ホールあたりで示した図。パー3はほぼ0、パー4は長いほど大きく390yd以上で0.037打、パー5は499yd以下で約0.06打、500yd以上で約0.04打

ホールも長くなっている。パー72のラウンドで、390yd以上のパー4は1ラウンドあたり3.8本(2017年)から4.9本(2026年)に増えた。ただし、この変化だけで見積もった飛ばない選手の不利は、1.01打から1.03打へ約0.03打増えた程度にとどまる。長いパー4が1本増えても、1本あたりの差は0.02打弱しか広がらないためである。

項目2017年2026年
コース全長(パー72平均)6,520yd6,619yd
パー4の平均379.4yd385.9yd
390yd以上のパー4(本/ラウンド)3.84.9
ホール構成から見た飛ばない選手の不利1.005打1.034打

この記事のまとめ

  • どの大会でも飛ぶ選手が有利で、有利の大きさは大会によって約0.5〜1.5打。CAT Ladiesは毎年大きく、伊藤園レディスは最も小さいが年ごとのぶれが大きい
  • 大会の差は、コース全長や風では説明できない。大会の平均で見ると、出場選手のパーオン率が高い大会ほど不利は小さい
  • 効くのはパー4の長さ。330ヤード未満のパー4では効果がなく、390ヤード以上では1ホールあたり約0.04打。長いパー4は2017年から2026年で1ラウンドに約1本増えたが、飛ばない選手の不利は約0.03打増えた程度

2打目の残り距離を正確に知るには、レーザー距離計を使う。

次に読む:第5回 データ編:分析の方法と全結果の要約
使ったデータ、分析の方法、結論が見かけの関係でないかの検証

シリーズ「女子プロの飛距離とスコア」の全5回

  1. 第1回 入門:飛距離はスコアにどれだけ効く?
    結論だけを、統計の用語なしで8つの問いにまとめた
  2. 第2回 10ヤードは何打の価値か
    曲げなければ0.81打、実際は0.37打。差を生むのはフェアウェイを外す損
  3. 第3回 飛ぶ選手・飛ばない選手の勝ち筋
    スコア上位を分ける技術と、約242ヤードで効きが鈍る理由。代表選手の実名入り
  4. 第4回 飛ばし屋が有利な大会・コース(この記事)
    39大会で有利の大きさは約0.5〜1.5打。効くのはパー4の長さ
  5. 第5回 データ編:分析の方法と全結果の要約
    使ったデータ、分析の方法、結論が見かけの関係でないかの検証

データについて

日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)公式サイトで公開されている記録(2017〜2026年のJLPGAツアー、各シーズンの規定ラウンド到達者 延べ837人、大会ごとのホール別成績 1,134ラウンド)を2026年9月25日に取得して分析した。2017〜2025年は最終戦終了時、2026年は9月20日更新時点の値。分析にはPython(pandas / statsmodels)を使った。個人による分析で、JLPGAおよび大会関係者とは関係がなく、JLPGAの公式見解ではない。記録そのものの転載や元データの配布は行っていない。記録の著作権等の権利は、JLPGAおよび関連団体・企業に帰属する。数値の正確性は保証できないため、正式な記録はJLPGA公式サイトで確認してほしい。権利者から正当な要請があった場合は、内容を確認のうえ、修正または公開停止を含めて速やかに対応する。

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