女子プロの飛距離はスコアにどれだけ効く?10年分の公式記録で検証

生成り地のアイキャッチ。全5回シリーズ第1回とJLPGAツアー2017〜2026年のバッジ、女子プロ10年分・延べ837人の公式記録で検証という小見出し、飛距離は何ヤードで十分?という大見出し。下部に225〜255ヤードの定規があり、約242ヤードの位置に印があって、そこまでは飛ぶほどスコアが良くなり、そこから先はあまり変わらないと示している
約242ヤードから先は、飛んでもスコアはあまり良くならない

シリーズ「女子プロの飛距離とスコア」全5回の第1回

  1. 第1回 入門:飛距離はスコアにどれだけ効く?(この記事)
    結論だけを、統計の用語なしで8つの問いにまとめた
  2. 第2回 10ヤードは何打の価値か
    曲げなければ0.81打、実際は0.37打。差を生むのはフェアウェイを外す損
  3. 第3回 飛ぶ選手・飛ばない選手の勝ち筋
    スコア上位を分ける技術と、約242ヤードで効きが鈍る理由。代表選手の実名入り
  4. 第4回 飛ばし屋が有利な大会・コース(10/7(水)公開予定)
    39大会で有利の大きさは約0.5〜1.5打。効くのはパー4の長さ
  5. 第5回 データ編:分析の方法と全結果の要約(10/8(木)公開予定)
    使ったデータ、分析の方法、結論が見かけの関係でないかの検証

「ドライバーが飛べばスコアは良くなるのか」。ゴルフをしていれば一度は考える疑問を、女子プロツアー(JLPGAツアー)の10年分の公式記録で確かめた。対象は2017〜2026年に各シーズンの規定ラウンド数に到達した選手、延べ837人(2020年と2021年は1シーズンに統合されているため9シーズン分。2026年は9月20日時点)。統計の用語は使わず、「何打違うか」「何ヤードか」でまとめている。

結論を3行でいうと

  1. 飛ぶ選手は有利。曲げなければ、その有利さは約2倍になる。
  2. 約242ヤードを超えると、飛距離の効きは鈍る。
  3. 4つの技術で比べると、スコアの差をいちばん説明するのは飛距離よりパット。

Q1. 飛ぶ選手ほど、スコアは良いの?

良い。いちばん飛ぶグループは、いちばん飛ばないグループより1ラウンドあたり約0.85打少ない。

各シーズンの選手を飛距離で4つのグループに分けて、平均スコアを比べた。飛ぶほどスコアは良くなっている。

飛距離で4グループに分けたとき、最も飛ばないグループと比べた1ラウンドあたりのスコア差。やや飛ばない0.38打、やや飛ぶ0.61打、飛ぶ0.85打少ない

ただし、同じくらい飛ぶ選手どうしでもスコアには2打以上の差がつく。飛距離だけでスコアが決まるわけではない。

Q2. 10ヤード飛ぶと、何打得する?

曲げなければ1ラウンド約0.8打。でも飛ばす選手は曲がりやすいので、実際の得は約0.4打。

飛ぶ選手ほど、ティーショットがフェアウェイを外れやすい。10ヤード飛ぶ選手は、フェアウェイに残る割合が約4ポイント低い。その分の損が、飛距離の得を半分ほど打ち消している。

10ヤードの価値の足し算。飛距離の得0.8打から曲がりやすくなる損0.4打を引くと、実際の得は0.4打

4日間の大会なら、曲げずに10ヤード伸ばせれば約3打。優勝争いでは大きな差になる。実際に、前の年より10ヤード伸びた選手は、スコアも約0.8打良くなっていた(体調など、ほかの理由が混ざっている可能性はある)。

飛距離と方向を自分の数字で見たいなら、弾道測定器が手軽だ。

Q3. 飛距離は、どこで効いている?

パー4とパー5。飛ぶと2打目が短いクラブで打てて、グリーンに乗りやすくなる。パー3ではほとんど関係ない。

10ヤード飛ぶと1ラウンドで何打少なくなるか。パー4で約0.24打、パー5で約0.16打、パー3はほぼ0

10ヤード飛ぶと、18ホールで約0.7回多く、規定の打数でグリーンに乗せられる(パーオン)。飛距離の得の8割以上は、この「グリーンに乗る回数が増える」ことを通じたものと計算できる。

ホールが長いほど、飛距離の得は大きい。330ヤード未満の短いパー4ではほとんど効かないが、390ヤード以上の長いパー4では1ホールあたり約0.04打効く。

パーオン:パー4なら2打以内、パー5なら3打以内というように、「パーの打数−2打」以内でグリーンに乗せること。

2打目の残り距離を正確に知るには、レーザー距離計を使う。

Q4. 何ヤード飛べば十分?

目安は約242ヤード(その年のツアー平均より4ヤードほど上)。そこから先は、飛んでもスコアはあまり良くならない。

飛距離とスコアの関係。約242ヤードまでは飛ぶほどスコアが良くなり、それ以上はあまり変わらない

242ヤードを超えると、曲げなかった場合の飛距離の得そのものが小さくなる(10ヤードあたり約0.9打から約0.6打へ)。そこから、飛ぶほどフェアウェイを外す損(約0.4打)が差し引かれて、ほとんど残らない。それでも、曲げずに飛ばせる選手なら、242ヤードを超えても10ヤードで約0.6打の武器になる。

なお242ヤードは10年間をならした目安で、年によって240〜245ヤードの間で動く。はっきりした線ではなく、232〜247ヤードくらいの幅がある。

Q5. 飛ばない選手は、どうやって勝っている?

フェアウェイを外さないのは当たり前。そのうえで、グリーンを外しても拾う力とパットで勝負している。

飛ばない選手(各シーズンの飛距離下位4分の1)と、飛ぶ選手(上位4分の1)それぞれについて、スコア上位に入る選手とそうでない選手を比べた。

飛ばない選手

スコア上位4分の1に入るのは約12人に1人(8%)。

  1. フェアウェイを外さない。ただしこれは、上位に入れない選手もできている「前提」。
  2. グリーンを外しても、パーで拾う。上位との差が大きい。
  3. パットを決める。これも上位との差が大きい。

9シーズンで、飛距離が下位4分の1なのにスコアが上位4分の1に入ったのは延べ18件。申ジエ、西村優菜、堀琴音、青木瀬令奈、金澤志奈などの選手がいる。

飛ぶ選手

スコア上位4分の1に入るのは約5人に2人(42%)。

  1. 拾う力、パット、グリーンに乗せる力で差がつくのは、飛ばない選手と同じ。
  2. 違うのは曲げすぎないこと。上位の選手はフェアウェイに残る割合を平均より少し低い程度に抑え、飛距離をグリーンに乗る回数につなげている。

上位に入れない飛ぶ選手は、フェアウェイを大きく外し、拾えず、ダブルボギー以上が多い。

同じ比べ方を「翌年の成績」でも確かめたところ、同じ傾向だった。ただし、飛ばない選手で翌年に上位へ入ったのは延べ7件と少なく、こちらは目安にとどまる。

Q6. 4つの技術のうち、スコアの差をいちばん説明するのは?

パット。次がグリーンを外したときに拾う力。飛距離は3番目。

パット、グリーン周り、飛距離、フェアウェイの4つの技術で選手のスコアの差を説明したとき、それぞれがどのくらいの割合を占めるかを計算した(2年続けて規定ラウンドに到達した選手で計算)。グリーンに乗せる力(パーオン率)は、この4つには入れていない。飛距離の得の大部分はパーオンが増えることを通じて出るので(Q3)、パーオン率を一緒に入れると、飛距離の取り分がそちらに移ってしまうためだ(入れて計算すると、パット34%、パーオン率32%、拾う力23%、飛距離8%、フェアウェイ4%)。

スコアの差を4つの技術で分けたときの取り分。パット43%、グリーン周りで拾う力30%、飛距離18%、フェアウェイ9%

フェアウェイの取り分が小さく見えるのは、全員をまとめて見ているから。飛ぶ選手ほど曲がりやすいため、飛距離とフェアウェイの効果が打ち消し合っている。同じくらい飛ぶ選手どうしで比べると、フェアウェイに残す力はしっかりスコアに効いている。

スコアの差をいちばん説明するのがパットなら、練習の優先順位を考える材料になる。

Q7. 飛ばし屋が有利な大会はある?

どの大会でも飛ぶ選手が有利。その差が大きい大会と小さい大会がある。

大会ごとに、飛ぶ選手が飛ばない選手より1ラウンドで何打少ないかを比べた。平均は約1打で、大会によって0.5〜1.5打の幅がある。

飛ぶ選手が飛ばない選手より1ラウンドで何打少ないか。CAT Ladiesが約1.5打、全大会の平均が約1.0打、伊藤園レディスが約0.5打

CAT Ladies(大箱根カントリークラブ)は、対象の6年間(2021〜2026年)とも飛ぶ選手の有利さが大きい。一方で、この差はコースの全長や風ではほとんど説明できなかった。起伏やラフの深さなど、記録に残らないコースの特徴が関係している可能性はあるが、今回のデータでは確かめられない。

Q8. コースが長くなって、飛距離はもっと大事になった?

大事になったという証拠はない。コースは約100ヤード、選手の平均飛距離は約3ヤード伸びたが、飛距離がスコアに効く度合いに、はっきりした変化は見られない。

項目2017年2026年変化
コースの長さ(パー72)6,520yd6,619yd約100yd長く
選手の平均飛距離235.9yd238.5yd約3yd伸びた
390yd以上の長いパー4(1ラウンドあたり)3.8本4.9本約1本増えた
飛ばない選手の不利(ホール構成から見た値)1.01打1.03打ほぼ変わらない

長いパー4が1ラウンドに約1本増えたが、それで増えた飛ばない選手の不利は、1ラウンドあたり0.03打程度。コースの長距離化は、今のところ飛ばない選手を大きく不利にするほどではない。

ショットごとに「何打得したか」を測る考え方(ストロークス・ゲインド)で、ツアーのデータからスコアの差の出どころを分析した本がある。本記事の問いを、男子ツアーのショット単位のデータで掘り下げている。

読むときの注意

  • ここにある数字は、ツアー選手の記録から見た「平均的な傾向」。ある選手が飛距離を10ヤード伸ばしたら、必ず0.8打良くなるという保証ではない。
  • 飛ぶ選手はスコアが良い、という関係の中には、体力や練習量など、記録にない理由も混ざっている可能性がある。
  • 対象はツアーで一定以上の試合数に出た選手(規定ラウンド到達者)。アマチュアや一般のゴルファーにそのまま当てはまるとは限らない。
  • 2026年はシーズン途中(9月20日時点)の記録。

次に読む:第2回 10ヤードは何打の価値か
曲げなければ0.81打、実際は0.37打。差を生むのはフェアウェイを外す損

シリーズ「女子プロの飛距離とスコア」の全5回

  1. 第1回 入門:飛距離はスコアにどれだけ効く?(この記事)
    結論だけを、統計の用語なしで8つの問いにまとめた
  2. 第2回 10ヤードは何打の価値か
    曲げなければ0.81打、実際は0.37打。差を生むのはフェアウェイを外す損
  3. 第3回 飛ぶ選手・飛ばない選手の勝ち筋
    スコア上位を分ける技術と、約242ヤードで効きが鈍る理由。代表選手の実名入り
  4. 第4回 飛ばし屋が有利な大会・コース(10/7(水)公開予定)
    39大会で有利の大きさは約0.5〜1.5打。効くのはパー4の長さ
  5. 第5回 データ編:分析の方法と全結果の要約(10/8(木)公開予定)
    使ったデータ、分析の方法、結論が見かけの関係でないかの検証

データについて

日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)公式サイトで公開されている記録(2017〜2026年のJLPGAツアー、各シーズンの規定ラウンド到達者 延べ837人、大会ごとのホール別成績 1,134ラウンド)を2026年9月25日に取得して分析した。個人による分析で、JLPGAおよび大会関係者とは関係がない。記録そのものの転載や元データの配布は行っていない。数値の正確性は保証できないため、正式な記録はJLPGA公式サイトで確認してほしい。権利者から正当な要請があった場合は、内容を確認のうえ、修正または公開停止を含めて速やかに対応する。

※本記事はアフィリエイト広告を含みます。