練習場の球拾いも無人化 欧州独占契約が示す自動化の裾野

スウェーデンの大手アウトドア電動工具メーカー、ハスクバーナ(Husqvarna Group)が、ゴルフ練習場向けの自律型ボール回収ロボット「Range Picker(レンジピッカー)」を手がけるスウェーデンのスタートアップ、レロックス・ロボティクス(Relox Robotics)と、欧州における独占販売契約を締結した。2026年第1四半期に、欧州の選定練習場へ初納入する計画だ。ハスクバーナは自律走行モアー「Automower」や大型モアー「CEORA」で、すでにフェアウェイ整備の自動化を主導してきた企業である。今回の提携は、コース整備の自動化がフェアウェイからドライビングレンジの運営そのものへ広がる動きを示す。単一製品の自動化にとどまらず、周辺業務まで含めた運営全体の無人化へ移行する構図は、IT・経営分野で自動化戦略を考える読者にとっても参考になる事例である。なぜ今、レンジという周辺業務にまで自動化が及ぶのか、その背景を数字で追う。

Range Pickerとは何か 球拾いロボットの仕組み

Range Pickerは、GPS(衛星測位システム)誘導で自律走行しながら、ドライビングレンジに散らばったゴルフボールを回収する無人ロボットである。開発元のレロックス・ロボティクスは、スウェーデンの首都ストックホルムを拠点に、マーカス・オルソン氏とフレドリック・クリングバリ氏が2018年に設立したスタートアップである。同社によると、Range Pickerは高精度GPSにより最大1インチ(約2.5センチメートル)の誤差で走行位置を把握し、物理的な境界線や埋め込みワイヤーを使わずに回収エリアを設定できる[1][2]。1日あたり最大6万個のボールを回収できる能力を持ち、バッテリー駆動で、稼働中に充電が必要になれば自ら充電ステーションへ戻る。回収したボールは自動でダンプ排出され、専用アプリを通じた遠隔監視にも対応する[1]。すでに米国・オーストラリア・欧州各国のレンジに導入実績があり、今回の契約はその欧州展開を一段加速させる位置づけになる[2]。

芝の上を走行する自律型ボール回収ロボットRange Picker
GPS誘導で自律走行しボールを回収するRange Picker(画像:Relox Robotics公式サイトより)
オペレーション/製品戦略

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なぜハスクバーナが欧州独占契約を選んだのか

今回の契約により、ハスクバーナはレロックス・ロボティクス製Range Pickerの欧州域内における唯一の販売代理店となる。ハスクバーナ・グループは1689年創業、60カ国以上でチェーンソーや芝刈り機を販売する大手メーカーで、2025年のグループ売上高は466億スウェーデンクローナ(約6,834億円)に達する[3]。ハスクバーナ・グループでロボティクス部門シニアディレクターを務めるオーレ・マルクソン氏は「ロボティクスはコース整備からレンジ運営まで、ゴルフ施設の運営方法そのものを変えつつある」と述べた。同氏は続けて「レロックス・ロボティクスとの提携により、当社の主力である自律走行モアー群を補完する、実績あるボール回収ソリューションを提供できる」とコメントしている[1]。ハスクバーナはすでに、衛星測位技術RTK GNSSを使った「EPOS」搭載のAutomower 580L EPOSなどでフェアウェイ整備を自動化してきた実績を持つ。自社で新製品を一から開発するのではなく、専業スタートアップの製品を自社の販売網に載せる選択は、開発リスクを避けつつラインナップを広げる現実的な判断といえる。

レロックス・ロボティクスが開発するRange Pickerを、ハスクバーナが自社開発のAutomower・CEORAと合わせて欧州のゴルフ施設・練習場へ供給する構造図
欧州独占契約による開発と販売の分業構造
製品戦略

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価格と運営コストへの影響 練習場経営はどう変わるか

Range Pickerの想定小売価格は、税抜き3万9500ユーロ(約671.5万円。1ユーロ=170円換算)とされ、最終価格は確定前の参考値である[1]。1日6万個という回収能力は、一般的な練習場が1日に打ち出すボール数を大きく上回る水準であり、繁忙期の複数時間帯をまとめてカバーできる計算になる。人件費や早朝シフトの調整といった間接コストを、初期投資と保守費に置き換える発想は、フェアウェイの自律モアー導入時の判断とほぼ同じ構造である。下表に、ハスクバーナが欧州で扱う主要な自律ロボット群を整理する。

製品名対象領域主な特徴
CEORAフェアウェイ等広域1日あたり最大5万平方メートルを隔日で整備
Automower 580L EPOSラフ・法面等傾斜45度まで対応、刈高10〜50mm
Range Pickerドライビングレンジ1日最大6万個のボールを自律回収

この一覧を見ると、ハスクバーナはコース各所を守備範囲の異なるロボット群でカバーしつつあることが分かる。芝刈りとボール回収を同じ販売網・同じ保守体制で提供できれば、練習場運営者にとっては発注窓口を一本化できる利点も生まれる。

人手による球拾いの人件費・早朝シフト・安全確保を、Range Pickerの初期投資と保守費に置き換えるコスト構造の比較図
球拾い業務のコスト構造の置き換え
製品戦略

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フェアウェイからレンジへ 自動化の裾野はどこまで広がるか

ゴルフ場の自動化は近年、フェアウェイ整備という主戦場から、レンジ運営という第二のフロンティアへと広がっている。ハスクバーナの事例は、単一メーカーが芝刈りからボール回収まで、施設運営に関わる複数業務を自律ロボットで束ねようとする戦略を示す。自社開発ではなく、レロックス・ロボティクスという専業スタートアップとの独占販売契約という形を選んだ点も注目に値する。製品開発を外部に委ね、自社の販売網と顧客基盤を強みとして提供する分業モデルは、他業界のロボティクス普及でも繰り返し見られるパターンである。ゴルフ場運営という一業種の中でさえ、自動化の対象は一つの工程にとどまらず、隣接する周辺業務へ次々と広がっていく。フェアウェイの芝刈りは天候に左右されにくい定型作業だが、レンジの球拾いは営業時間中に人が入れない安全確保の手間も伴う工程である。その手間のかかる工程こそ、自律ロボットが人の代わりを担いやすい領域といえる。この裾野の広がり方は、自社の業務プロセスのどこに定型作業が眠っているかを見直す際にも参考になる視点である。

フェアウェイ整備の自動化からレンジ運営の自動化を経て、施設運営全体の無人化へ進む流れ図
フェアウェイからレンジへ広がる自動化の裾野

よくある質問(FAQ)

Q1. Range Pickerとは、どのようなロボットですか。
A. GPS誘導で自律走行し、ドライビングレンジに散らばったゴルフボールを1日最大6万個回収できる無人ロボットである。バッテリー駆動で自動充電し、専用アプリで遠隔監視できる[1][2]。

Q2. 導入価格はどれくらいですか。
A. 想定小売価格は税抜き3万9500ユーロ(約671.5万円。1ユーロ=170円換算)とされる。ただし最終価格は確定前の参考値であり、地域や設置条件によって変動しうる[1]。

Q3. この提携はゴルフ場運営にどのような意味を持ちますか。
A. フェアウェイ整備に続き、レンジ運営という周辺業務まで自律ロボットで担う流れを示す。単一機能の自動化から、施設運営全体の無人化へ移行する経営判断の一例といえる。

まとめ

ハスクバーナとレロックス・ロボティクスの欧州独占契約は、ゴルフ場の自動化がフェアウェイ整備からレンジ運営へと裾野を広げつつある実例である。1日6万個という回収能力と、税抜き3万9500ユーロ(約671.5万円)という価格は、練習場運営における人件費と設備投資の再配分を促す材料になる。IT・経営分野の読者は、自社開発に頼らず専業スタートアップとの独占販売契約で機能を補完するハスクバーナの選択に、事業拡張の一手法を読み取れる。周辺業務まで含めた自動化の広がり方は、業界を問わず参考になる視点である。

出典

[1] Golf Business News「Husqvarna partners with Relox Robotics to expand autonomous golf range solutions」https://golfbusinessnews.com/news/greenkeeping/husqvarna-partners-with-relox-robotics-to-expand-autonomous-golf-range-solutions/
[2] Relox Robotics「Range Picker™」https://reloxrobotics.com/range-picker/
[3] Husqvarna Japan「会社概要」https://www.husqvarna.com/jp/company-profile/