スペインの市営コース運営を15年で入札、改修100万ユーロ超は受託者が負担

スペイン北西部ガリシア州の港町ア・コルーニャ市が、市営ゴルフ場トーレ・デ・エルクレスの運営を民間に任せる入札を決めた。市の執行機関である地方政府委員会が2026年9月30日に承認し、契約期間は15年、見込み額は9,207,850.96ユーロ(約920.8万ユーロ、約16.4億円。1ユーロ=178円換算)だ[1][2]。受託者には100万ユーロ(約1.8億円)を超える改修を、契約開始から18か月以内に終えることを求める[1]。

コースは市のスポーツ施設の中にある9ホールのピッチ・アンド・パット(全ホールが短いパー3の小さなコース)で、バスや徒歩で通える[3]。嵐と経年で周りのネットやコースの一部が傷み、改修が課題になっていた[3]。

料金は市が低めに定め、将来の値上げには市の承認と、仕様書に書かれた品質目標の達成が必要になる[1]。改修の費用を受託者が負っても、市の承認なしに料金を上げて回収することはできない。

15年の運営期間のうち、100万ユーロ超の改修は最初の18か月に集中する[1]。本稿は契約の中身を確かめ、同じスペインのサラゴサ市の別の方式、日本の公営コースの指定管理者制度と比べる。

ア・コルーニャ市営ゴルフ場の15年契約には何が書かれているのか

この契約は、コースの運営、管理、維持をまとめて15年間任せる運営委託で、延長はできない[1][2]。見込み額は2026年2月に市が事前の告知で示した8,032,622ユーロ(約803.3万ユーロ、約14.3億円)から、9月の承認時点で9,207,850.96ユーロ(約920.8万ユーロ)に引き上げられた[2]。

増額分は約117万ユーロ(約2.1億円)で、率にすると約15%だ。El Ideal Gallegoは、市のごみ処理施設の入札と同じく、告知のあとで価格を上げる必要があったと伝えている[2]。同紙は契約の算定に使う割引率が5.22%になるとも報じた[2]。イネス・レイ市長は2月の時点で、専門的で近代的、持続可能な運営の形を目指すと述べていた[2]。

15年の見込み額を年数で割ると年約61万ユーロ(約1.1億円)になる。これは筆者の単純計算で、年ごとの売上や市への支払いの見込みではない。市に払う使用料(カノン)の額は、取得した記事には書かれていない[1][2]。

このコースの運営委託では、2001年に市が出した公告が確認できる[5]。このときは年額の最低使用料を3,005.06ユーロ(約53万円)とし、提出期限は公告の翌日から15日間だった[5]。その後の契約がいつ満了したか、誰が運営してきたかは、取得した資料では確認できなかった。

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受託者が負担する100万ユーロ超の改修はどこに使われるのか

改修は、コース、建物、管理設備の3つにまたがる[1]。どれも18か月以内に終える必要があり、15年の契約期間のうち最初の1年半に投資が集中する[1]。

対象主な工事[1]
コース排水の改善、芝の張り替え、グリーンと通路の整地、ティーの改修
本館バリアフリー化、省エネ化、照明のLED化
管理設備整備・清掃機械の更新、管理用倉庫の新設

2026年5月の記事によれば、市は入札の手続きを長期契約として始めていた[3]。同じ記事は、計画にバンカーの作り直し、大西洋側の気候に合う芝への張り替え、太陽光発電、水の効率的な管理、電動やハイブリッドの機械も挙げていた[3]。項目ごとの金額は、取得した記事では公表されていない。

市が受託者に15年の運営権を与え、受託者は18か月以内に100万ユーロ超の改修を行い、料金は市が低めに定め値上げには市の承認が必要
ア・コルーニャ市営ゴルフ場の運営委託の仕組み

料金の歯止めは、市のゴルフ教室にも関わる。市は子ども、大人、高齢者が通える教室を強める方針を掲げている[1]。2026年4〜6月の入門教室は136人分で、8人ずつの班に分かれ、受講料は大人49.67ユーロ(約8,800円)、子どもと少年は29.81ユーロ(約5,300円)だった[4]。

投資を先に負わせ、料金の値上げに条件を付ける組み方では、受託者は回収を値上げより利用者の数で賄うことになる、というのが筆者の推測だ。契約には職員の労働条件を守る条項も入っている[1]。

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サラゴサ市の州ゴルフ連盟への直接委託とはどう違うのか

同じスペインでも、内陸のアラゴン州の州都サラゴサ市は、市のゴルフ施設を入札にかけず、州のゴルフ連盟に直接任せる手続きを進めている[6]。市は2026年7月17日、アルコスル地区の練習場とピッチ・アンド・パットを、アラゴン州ゴルフ連盟に17年間使わせる計画を承認した[6]。

この方式は入札ではなく、市の土地の使用権を直接、無償で与える[6]。期間の17年は、今の使用許可が終わった時点から数える[6]。市は理由として、連盟が公益目的の非営利団体で、この施設から利益を得ないことを挙げた[6]。それでも、施設の近代化と改良に必要な投資は連盟の負担とされる[6]。計画は20日間の意見募集を経て、寄せられた意見に答えたうえで正式に決まる[6]。

ア・コルーニャ市は入札で受託者を選び15年延長なしで改修は受託者が負担、サラゴサ市は州ゴルフ連盟に直接・無償で17年任せ投資は連盟が負担
ア・コルーニャ市とサラゴサ市の市営ゴルフ施設の任せ方
比較軸ア・コルーニャ市サラゴサ市
施設9ホールのピッチ・アンド・パット[3]練習場とピッチ・アンド・パット[6]
相手の選び方入札[1]州ゴルフ連盟に直接[6]
期間15年、延長なし[1]17年(今の使用許可の終了後から)[6]
市への対価非公表無償[6]
改修投資受託者が18か月以内に100万ユーロ超[1]連盟が負担、金額の記載なし[6]

※「非公表」は公開されていない項目。

2つの市は、設備投資を運営する側に負わせる点では同じだ。施設の形もピッチ・アンド・パットを含む小規模なもので共通する[3][6]。違うのは相手を競争で選ぶか、公益団体に絞るかで、ア・コルーニャ市は入札で約920万ユーロの契約を組み、サラゴサ市は金額を伴わない形を選んだ[1][6]。

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日本の公営ゴルフ場の指定管理者制度は何が違うのか

日本でも公営コースの運営を民間に任せる仕組みはあり、指定管理者制度が使われている。ただし群馬県営の例では期間が5年と短く、運営者が県に納付金を払う形をとる[7]。

群馬県は4つの県営コース(いずれも18ホール)に2006年度から指定管理者制度を入れ、2025年4月からの5年間も同じ制度で運営者を公募した[7]。利用料金をそのまま運営者の収入にする利用料金制を採用し、運営者には年度ごとの納付金の下限を定めている[7]。利益が一定の割合を超えた場合は、その一部を納付金に上乗せする[7]。

群馬県営ゴルフ場の年度ごとの納付金の下限。板倉1億9,100万円、玉村1億3,800万円、新玉村1億3,100万円、前橋1億500万円(2025年4月〜2030年3月、税抜)
群馬県営ゴルフ場の年度ごとの納付金の下限(2025年4月〜2030年3月の予定額、税抜)

玉村ゴルフ場の2022年度の実績は、利用料収入が約4.3億円、県への納付額が1.6億円、利用者が58,197人だった[7]。県は次の期間の成果目標を利用者45,000人としている[7]。

前橋と新玉村ではクラブハウスの改修工事が予定されており、営業が制限される年度の納付金は別途協議するとされた[7]。千葉市民ゴルフ場は2008年4月から指定管理者制度を採り、今の指定期間は2018年4月から2028年3月までの10年間だ[8]。

比較軸ア・コルーニャ市(スペイン)群馬県営(日本)
仕組み運営委託の入札[1]指定管理者の公募[7]
期間15年、延長なし[1]5年[7]
料金市が設定、値上げは市の承認が必要[1]利用料金制[7]
運営者からの支払い非公表納付金の下限を設定[7]
改修工事受託者が18か月以内に実施[1]クラブハウス改修を予定、費用負担は資料に記載なし[7]

※「非公表」は公開されていない項目。

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よくある質問(FAQ)

プレー料金は上がるのか

すぐには上がりにくい。料金は市が低めに定め、値上げには市の承認と、仕様書の品質目標の達成が必要とされている。

どんなゴルフ場なのか

ア・コルーニャ市のスポーツ施設の中にある、9ホールのピッチ・アンド・パットだ。市のゴルフ教室もここで開かれている。

日本の公営コースでも民間が改修費を負担するのか

群馬県営の例では、改修工事は県の実施方針に予定として書かれ、費用の負担者は示されていない。運営者は改修ではなく、毎年の納付金で県に支払う形だ。

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まとめ

ア・コルーニャ市の入札は、15年・約920万ユーロの運営権と引き換えに、100万ユーロ超の改修を最初の18か月で受託者に負わせる。料金は市が握り、値上げには承認と品質目標の達成が要る。

同じスペインのサラゴサ市は公益団体に直接任せ、日本の群馬県は5年ごとに公募して納付金を受け取る。公営コースを民間に任せる契約は、国や自治体ごとに、誰が投資し誰が料金を決めるかの組み方が大きく違う。

出典

  1. El Español(Quincemil)トーレ・デ・エルクレス市営ゴルフ場の15年運営委託入札の記事(2026年9月30日) https://www.elespanol.com/quincemil/a-coruna/20260930/coruna-licita-millones-gestion-campo-golf-torre-hercules-anos/1003744403096_0.html
  2. El Ideal Gallego ア・コルーニャ市の市営ゴルフ場運営の入札額に関する記事(2026年9月29日) https://www.elidealgallego.com/a-coruna/2026-09-29/el-ayuntamiento-de-a-coruna-licita-la-gestion-del-campo-de-golf-por-mas-de-9-2-millones-de-euros-882102.html
  3. El Español(Quincemil)トーレの市営コースと改修計画を紹介した記事(2026年5月19日) https://www.elespanol.com/quincemil/deporte/otros-deportes/20260519/campo-torre-convierte-puerta-entrada-golf-urbano-coruna/1003744241758_0.amp.html
  4. El Español(Quincemil)市のゴルフ入門教室の募集に関する記事(2026年2月23日) https://www.elespanol.com/quincemil/deporte/otros-deportes/20260223/coruna-abre-marzo-plazo-plazas-cursos-golf-municipales/1003744141180_0.html
  5. ガリシア州官報(Diario Oficial de Galicia)ア・コルーニャ市のゴルフ場運営委託の公告(2001年5月15日) https://www.xunta.gal/dog/Publicados/2001/20010515/Anuncio6B16_es.html
  6. サラゴサ市(Ayuntamiento de Zaragoza)公告 Expte. 91.087/25(2026年7月30日掲載) https://www.zaragoza.es/ciudad/gestionmunicipal/detalle_Tablon?id=72862
  7. 群馬県「県営ゴルフ場の管理における指定管理者制度活用の実施方針」(令和6年6月) https://www.pref.gunma.jp/uploaded/attachment/630550.pdf
  8. 千葉市 千葉市民ゴルフ場の指定管理者に関するページ https://www.city.chiba.jp/shimin/seikatsubunka/sports/siteikanri-simin-golf.html
  9. 欧州中央銀行「Euro foreign exchange reference rates」(2026年10月16日の値を参照) https://www.ecb.europa.eu/stats/eurofxref/eurofxref-daily.xml