
米国カリフォルニア州で、市や郡などが所有する公営ゴルフ場の予約枠を、無断で転売することを禁じる州法が成立した。ギャビン・ニューサム州知事が2026年9月27日、州下院議員クリス・ウォード氏(民主党、サンディエゴ選出)が提出した州下院法案AB 1954(通称PAR法)に署名した[1]。対象は市・郡など地方の自治体が所有する公営コースで、運営者と書面で契約していない第三者が予約枠を掲載・販売することを禁じる[8]。条文は州内の公営コースを「200超」としている[8]。報道では「220超」とされるが、この数には州が所有するコースも含まれる[1]。
背景には、ロサンゼルス周辺の人気コースで早朝の枠を押さえ、SNSやメッセージアプリで手数料を上乗せして売るブローカー(予約仲介業者)の広がりがある[1]。2025年には、転売で約70万ドルを得ていた双子の兄弟が所得の無申告で起訴され、2026年9月に2人とも有罪を認めた[4][11]。
ゴルフをする側では、カリフォルニアの公営コースを旅行で予約するとき、第三者サイトがコースと正式に契約した予約パートナーかどうかを確かめる必要が出てくる[1]。ビジネスやITの側から見ると、安い公定料金で一般に開いた予約システムを、自動予約と二次流通からどう守るかという設計の問題でもある。本稿では、法律の中身、転売の仕組み、罰則と対象外の施設を順に整理し、日本の制度とも比べる。
カリフォルニア州の予約転売禁止法(AB 1954)は何を決めたのか
AB 1954は、公営ゴルフ場の予約を第三者が無断で売ることを禁じた法律だ[8]。正式名称は「予約へのアクセスを守る法律(Protecting Access to Reservations Act)」で、PARはその頭文字にあたる[8]。
成立版の条文によると、禁止されるのは、ゴルフ場の運営者と書面で契約していない人や予約サイトが、公営コースの予約を掲載・宣伝・販売・譲渡することだ[8]。ここでいう運営者には、自治体自身のほか、自治体からリースや管理委託を受けてコースを運営する民間会社も含まれる[8]。クラブハウスや練習場も、ゴルフ場の付属施設として対象に入る[1][8]。
所有者の範囲は、郡、市郡(サンフランシスコのような市と郡の一体型)、市、憲章市に、特別区(水道や公園など特定の公共サービスを担う地方団体)と複数の自治体でつくる共同組織を加えたものだ[8]。州が所有するコースは、条文の定義には入っていない[8]。

書面契約で認められた権限は、契約に明記がない限り、関連会社や別のサイトには及ばない[8]。南カリフォルニアゴルフ協会(SCGA)は、運営者と業者の正規の契約は守りつつ、契約のない取り扱いだけを止める点を法案の狙いとして説明している[3]。法案はカリフォルニア・ゴルフ連盟(California Alliance for Golf)が提案し、州下院本会議では賛成70、反対0で可決された[2]。
法案は緊急法案(Urgency)の扱いではない[9]。州憲法第4条8項(c)は、緊急法案でない法律を成立した翌年の1月1日に施行すると定めているため、AB 1954は原則として2027年1月1日に施行される。
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公営コースのティータイム転売はどんな仕組みで広がったのか
転売は、公営コースの安い料金と人気枠の不足の差を利用する商売だった。州議会の認定によると、州内の公営コースは住民やシニア、ジュニア、学校の部活動が使いやすい料金で運営されており、都市部のティータイム(スタート枠)の需要は全米でも最も高い水準にある[2]。
ブローカーは人気の時間帯をまとめて予約し、SNSやメッセージアプリで手数料を上乗せして売っていた[1]。手数料は1枠あたり最大40ドル(約6,200円。1ドル=155円換算)に達したと報じられている[1]。法案を提出した議員と提案団体は、ブローカーが自動予約プログラム(ボット)を使って人気枠を買い占めていると指摘している[2]。

この問題が広く知られたのは2024年で、ゴルフ系のコンテンツ制作者デイブ・フィンク氏がロサンゼルスのブローカー網を取り上げたことがきっかけだった[1]。2025年9月には、米連邦検察が、ロサンゼルス近郊に住む双子の兄弟を所得の無申告などの罪で起訴した[4]。
起訴内容によると、兄弟は2021〜2023年に予約の仲介業を営み、南カリフォルニアの少なくとも17の公営コースを含む全米各地で数千件の予約を押さえた[4]。枠の公開から数秒で早朝の人気枠を確保し、メッセージアプリのKakaoTalk(カカオトーク)などで客を集めていた[4]。
転売で得た収入は3年間で約70万ドル(約1億850万円)で、無申告とされた所得は全体で110万ドル超(約1億7050万円)にのぼる[4]。兄弟は2026年9月29日に有罪を認めた[11]。司法取引の内容によると、兄のスティーブ・キム氏は虚偽の納税申告書への署名1件、弟のテッド・キム氏は脱税1件の罪を認めている[11]。判決は2027年1月12日に言い渡される予定だ[11]。
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予約転売禁止法の罰則と対象外の施設はどうなっているのか
成立版の条文には、罰則や州の不正競争防止法(UCL)を適用する条項は見当たらない[8]。上院司法委員会の分析は、違反をUCL上の違法行為とする規定を含んでいた6月4日版の法案を対象にしたものだ[2]。成立前の8月18日に出た州下院本会議向けの分析は、違反にはUCLが適用されると説明している[10]。報道によると、UCLでは1件につき最大2,500ドル(約38万7500円)の民事制裁金が科されうる[1]。制裁金を求める訴えは、州司法長官や地方検事、大都市の市検事などが州民の名で起こす仕組みだ[2]。amateurgolf.comの報道では、コースの運営者も訴訟を起こせると説明されている[1]。
対象になるのは公営コースだけで、民間のコースには及ばない[1]。対象と対象外を整理すると次のようになる。
| 区分 | 施設・行為 | 扱い |
|---|---|---|
| 対象 | 市・郡など地方の自治体が所有する公営コース | 書面契約のない第三者の掲載・販売・譲渡を禁止[8] |
| 対象 | 公営コースのクラブハウス・練習場など付属施設 | 同上[1][8] |
| 対象外 | 会員制のプライベートクラブ | 規制なし[1] |
| 対象外 | リゾートコース | 規制なし[1] |
| 対象外 | 公営でないデイリーフィー(一般利用型)コース | 規制なし[1] |
| 例外 | 運営者と契約済みの予約パートナー | 営業を継続できる[1] |
| 例外 | キャンセル規定が予約画面に示されていない場合の個人 | 支払った額以下なら譲渡・売却できる[1][8] |
最後の例外は、行けなくなったゴルファーが予約を捨てずに済むようにする規定だ[1]。運営者がキャンセル規定を予約サイトに載せていない場合に限り、個人は自分が払った額を上限に予約を譲れる[8]。
制裁金の上限は、報じられた上乗せ手数料の最大額の60倍を超える。ただし、どの単位を違反1件と数えるかは、確認した資料では説明されていない。罰則がブローカーの採算をどこまで崩せるかは、今後の適用事例を見て判断する必要がある、というのが筆者の見立てだ。
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日本のゴルフ場予約もチケット不正転売禁止法で規制されるのか
日本のチケット不正転売禁止法がゴルフ場の予約に及ぶかは、所管官庁の公表資料では示されていない。2019年6月14日に施行された同法は、芸術・芸能やスポーツの興行の入場券のうち、条件を満たすものの高額転売を禁じる法律だ[5][6]。
消費者庁の消費者白書によると、対象の入場券は3つの条件をすべて満たす必要がある[5]。興行主の同意のない有償譲渡の禁止が券面に明示されていること、日時・場所と座席や入場資格者が指定されていること、購入者の氏名と連絡先の確認が券面に記載されていることだ[5]。違反した場合は、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科される[12]。2025年6月1日施行の刑法改正で、懲役は拘禁刑に改められた。
ゴルフ場側では、利用約款(利用者との取り決め)で仲介を排除する例がある。プリンスホテルが運営する神奈川県大磯町の大磯ゴルフ場の約款は、ゴルフ場と契約していない予約代行業者を経由した申し込みを、利用を断る場合の一つに挙げている[7]。同じ約款は、予約時に氏名・住所・人数・電話番号を確認し、当日もフロントで氏名や住所を記入する手続きを定めている[7]。
| 比較軸 | カリフォルニア州 AB 1954 | 日本(チケット不正転売禁止法・ゴルフ場約款) |
|---|---|---|
| 根拠 | 州法[8] | 法律は興行の入場券が対象[5]。ゴルフ場は各施設の利用約款[7] |
| 対象 | 市・郡など地方の自治体が所有する公営コースの予約[8] | 条件を満たす興行の入場券[5] |
| 禁止の基準 | 運営者との書面契約がない第三者の掲載・販売[8] | 興行主の同意なく、反復継続の意思で販売価格を超えて転売[5] |
| 罰則 | 不正競争防止法の適用で1件最大2,500ドルの民事制裁金[1][10] | 1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、または併科[12] |
| 本人の確認 | — | 約款で予約時と当日に氏名などを確認[7] |
※「—」は本稿で確認していない項目、「非公表」は公開されていない項目。
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まとめ
AB 1954は、公営コースの予約を売る資格を、運営者との書面契約の有無で線引きした。転売そのものを細かく定義するのではなく、正規の販売経路を運営者が決める形にした点に特徴がある。違反には州の不正競争防止法が適用され、1件最大2,500ドルの民事制裁金の対象になると説明されている。施行は原則2027年1月1日で、私営クラブやリゾート、公営でないデイリーフィーのコースは対象外だ。
カリフォルニアの公営コースで予約を取るゴルファーは、第三者サイトがコースの正規パートナーかどうかで、その予約が合法かどうかが変わる。予約サービスを手がける企業にとっては、運営者との契約の有無が、在庫を扱えるかどうかを分ける条件になる。
日本では、ゴルフ場ごとの約款が契約外の予約代行業者を断る役割を担っている。安い料金で開かれた予約を誰に届けるかという課題に、カリフォルニアは州法で答えた。
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よくある質問(FAQ)
Q. カリフォルニアの全てのゴルフ場で予約の転売が禁止されたのか。
A. 禁止されたのは、市・郡など地方の自治体が所有する公営コースの予約だけだ[8]。会員制クラブ、リゾート、公営でないデイリーフィーのコースは対象外になっている[1]。
Q. 行けなくなった予約を友人に譲ってもよいのか。
A. 運営者がキャンセル規定を予約サイトに示していない場合、個人は自分が払った額以下で予約を譲れる[1][8]。上乗せして売ることは認められていない[8]。
Q. 違反するとどんな罰則があるのか。
A. 成立版の条文自体に罰則の条項はないが、州下院の分析は違反に州の不正競争防止法が適用されると説明している[8][10]。同法では1件につき最大2,500ドル(約38万7500円)の民事制裁金が科されうる[1]。
2026年5月、Googleは予約という行為を変える機能を静かに発表した[1]。 「Search Agents(サーチエージェント)」と呼ぶAIエージェントが、ゴルフ場のティータイムを探し、空き枠を評価し、設定した決済上限の範囲で予約を完[…]
出典
- California Signs AB 1954 Into Law, Banning Unauthorized Tee-Time Brokering at Public Courses, AmateurGolf.com, 2026-09. https://www.amateurgolf.com/golf-tournament-news/california-ab-1954-tee-time-brokering-ban-signed
- AB 1954 (Ward) Analysis(2026年6月4日修正版が対象), Senate Judiciary Committee, California State Senate, 2026-06-16 hearing. https://sjud.senate.ca.gov/media/2197
- New Bill Takes Aim at Illegitimate Tee Time Brokering, Southern California Golf Association, 2026-03-10. https://news.scga.org/new-bill-takes-aim-at-illegitimate-tee-time-brokering
- Identical Twins Who Moonlighted as Golf Tee-Time Brokers Charged with Failing to Report More Than $1.1 Million in Income to IRS, IRS Criminal Investigation(米連邦検察カリフォルニア中部地区の発表の転載), 2025-09-12. https://www.irs.gov/compliance/criminal-investigation/identical-twins-who-moonlighted-as-golf-tee-time-brokers-charged-with-failing-to-report-more-than-1-point-1-million-in-income-to-irs
- 令和2年版消費者白書 コラム11 チケット不正転売禁止法, 消費者庁. https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2020/white_paper_column_11.html
- チケット不正転売禁止法について, 文化庁. https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/ticket_resale_ban/
- 大磯ゴルフ場 利用規則・利用約款, プリンスホテル, 2026-04-01改定. https://www.princehotels.co.jp/golf/oiso/files/202604_riyoukiyaku.pdf
- AB-1954 Municipal golf courses: reservations, Chapter 476, Statutes of 2026(成立版の条文), California Legislative Information. https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billTextClient.xhtml?bill_id=202520260AB1954
- AB-1954 Status, California Legislative Information. https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billStatusClient.xhtml?bill_id=202520260AB1954
- AB 1954 Assembly Floor Analysis, 2026-08-18, California Legislative Information. https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billAnalysisClient.xhtml?bill_id=202520260AB1954
- Twin Brothers Plead Guilty to Tax Crimes from Their MRI Technician Jobs and Their Golf Tee-Time Brokering Side Hustle, IRS Criminal Investigation, 2026-09-29. https://www.irs.gov/compliance/criminal-investigation/twin-brothers-plead-guilty-to-tax-crimes-from-their-mri-technician-jobs-and-their-golf-tee-time-brokering-side-hustle
- 特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(平成30年法律第103号)第9条, e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC1000000103


