分譲マンションから賃貸へ。私が引越しを決めた3つの判断軸

今、私は分譲マンションを賃貸に出す準備を進めている。管理会社の選定が佳境に入り、引越しと貸し出し開始に向けて動いている段階だ。

すべてが決まったわけではない。定期借家で貸す方向で考えているが、まだ確定ではない。管理をどこまで委託するかも、これから詰めていく。この記事は、そういう「途中」の話だ。

なぜ引越しを決めたのか。なぜ売らなかったのか。どういう軸で考えているのか。完成した答えではなく、判断の過程をそのまま書いておく。同じような状況で考えている人の参考になれば、それでいい。

当時の状況——持ち家の何が「合わなくなっていた」か

物件スペックと生活実態のズレ

購入したときの判断は、その時点では合理的だった。23区住宅街・駅徒歩8分・1LDK42平米。車を持たない当時の生活と、職場へのアクセスを考えれば、妥当な選択だったと思っている。

問題は、生活が変わったことだ。仕事場が変わり、乗り換え2〜3回・1時間超の通勤が日常になった。趣味のゴルフ場へのアクセスも首都高を通るルートになり、「便利な立地」という購入時の前提は、ほぼ崩れていた。

さらに、個人事業を始めたことで別の問題が浮かんだ——住居費の事業按分だ。ローン返済は元本部分が按分の対象にならないが、賃貸であれば家賃全体を経費として処理できる。コスト面だけでなく、事業管理の面でも「賃貸のほうが合理的」という考えが強まっていった。

見えにくいランニングコストの実態

分譲マンションの住居費は、ローン返済額だけではない。私の場合、コロナ初期に将来への不安感から返済期間を短縮したことで、月々の返済額が大きく跳ね上がった。

実際の月次コストはこうなる:

費用項目月額(概算)
ローン返済18万円
管理費・修繕積立金2万円
固定資産税(月割)約9千円
合計約21万円

42平米・1LDKに月21万円。この数字を並べたとき、「住み続ける理由」をコストの観点からも問い直す必要があると感じた。

「住み続けることへの惰性」に気づいた瞬間

あるとき、「なぜ今の家に住んでいるのか」と自分に問うてみた。出てきた答えは「ローンがまだあるから、引っ越せないんじゃないか」というものだった。

だが実際に調べ始めると、ローンの残債があっても対応方法はあり、「ローンがあるから動けない」は事実ではなかった。問題の本質は「ローン」ではなく「変化への抵抗」と「考えないことの楽さ」を選んでいたことだった、と動き出してから気づいた。

なぜ「売る」を選ばなかったのか

引越しを決めたとき、売却という選択肢は当然検討した。市場的には悪いタイミングではないかもしれなかった。それでも売らなかった。理由は将来の住まいリスクだ。

単身高齢者は賃貸を借りにくい——これは現実だ

日本の賃貸市場では、高齢者、特に単身の高齢者は入居審査で断られやすい。孤独死リスクを嫌がる家主、収入の安定性への懸念、保証人を立てにくいこと。制度的に禁止されているわけではないが、慣行として存在するのが実情だ。

60代で審査が通りにくくなり始め、70代では選べる物件の幅が狭まる傾向がある。今は問題なく賃貸を選べる状況でも、20年後・30年後も同じ条件で借りられる保証はない。

売却は「不可逆的な決断」だ

売ったら戻れない。これが最も大きかった。

分譲マンションのオーナーシップを持ち続けることは、「将来そこに戻れる権利」を保持することでもある。賃貸に出しながら所有を続ければ、ライフステージが変わったときに戻る選択肢が残る。売却してしまうと、その選択肢は永久に消える。

市場タイミングとして「今が売り時」という見方もあり得た。それでも、短期的な売却益より長期的な住まいの選択肢を残すことを優先した。損得の問題ではなく、将来のリスクをどこに置くかという判断だ。

「賃貸に出す」という方向と、いまの検討内容

「住む・売る・貸す」の3択を自分の条件で並べると、こうなった。

比較軸住み続ける売却する賃貸に出す
生活との適合性低い(立地・コストのズレ)改善可能(自分が移る)
将来の住まい確保○(住み続ける)×(手放す)○(所有継続)
60代以降のリスク対応×(対応不可)
月次キャッシュフロー支出21万円一時収入(以降なし)家賃収入−経費
柔軟性・可逆性低い低い(不可逆)高い(定期借家なら特に)
管理の手間なしなしあり(設計次第)

「売却」の列だけが「将来の住まい確保」と「60代以降のリスク対応」でバツがつく。この2点が自分の優先順位において最も重かったため、方向としては「賃貸に出す」が残った。

普通借家か定期借家か——いまここを検討している

賃貸に出す方向で考えているが、契約形態はまだ確定していない。ただ、定期借家の方向で進める可能性が高い。その理由を整理しておく。

普通借家契約:借主の権利が強く保護される。貸主側から契約を終了させるには「正当事由」が必要で、実質的に貸し続けることが前提になる。

定期借家契約:契約期間が満了すれば確実に終了する。再契約には双方の合意が必要で、貸主が「戻りたい」と判断したときに柔軟に対応できる。

将来自分がその物件に戻る可能性を残しておきたいと考えると、普通借家で貸してしまうと戻りたくなっても退去させることが事実上難しくなる。定期借家であれば、契約期間を設計することで選択肢が残る。この点が、定期借家に傾いている主な理由だ。

なお、定期借家は借り手にとって「更新できない可能性がある」という制約があるため、入居者の探しやすさや家賃水準に影響することもある。管理会社との話の中でも、この点は引き続き確認している。

管理会社の選定中——いまここにいる

現在、賃貸管理会社を選んでいる最中だ。複数社と話をしながら、委託範囲・費用・定期借家への対応・入居者審査の基準などを比較検討している段階にある。

この先、引越しを終えて貸し出しを始めるまでの過程で、何を考え、何を決め、何に迷ったかを記事にしていく予定だ。管理の手間をどこまで省けるか、定期借家の実務はどうなるか——この「運用設計」の部分は、実際にやってみなければわからないことも多い。

ドキュメンタリーとして、続きはここに積み上げていく。

いまの自分への問い——同じ状況の方へも

「今の家を手放すかどうか」を考えている方と、自分自身への整理として、問いを置いておく。

  • 単身で60代・70代になったとき、賃貸を借りられると思っているか?その根拠はあるか?
  • 売却が「不可逆的な決断」であることを、具体的にイメージできているか?
  • 住む・売る・貸すの3択を、将来の住まいリスクも軸に入れて比較したことがあるか?
  • 賃貸に出す場合、普通借家と定期借家の違いと、それぞれ自分への影響を理解しているか?
  • 管理の手間を「大変そう」で止めず、設計できる問題として考えたことがあるか?

自分もまだすべてに答えられているわけではない。ただ、問いが明確になるだけで、判断の質は変わると感じている。

まず手をつけるとすれば、月々の総住居コストを正確に出してみることだ。その数字が、感情論から抜け出す入り口になる。

現時点の整理

完結した話ではないので、「まとめ」ではなく現時点の整理として書いておく。

  1. 引越しと売却は別の決断だ——今の家が合わなくなっても、手放すかどうかは切り離して考える必要がある。
  2. 単身高齢者の賃貸リスクは、今から考えるべき問題だ——60代・70代での賃貸審査の現実を知ると、オーナーシップの意味が変わる。
  3. 定期借家は「戻る選択肢」を残す設計になりうる——まだ確定ではないが、この方向で進めている理由はここにある。

住み替えの意思決定の最新記事8件