RDS Performance Insights廃止:移行とコスト変化の要点

AWSのデータベース性能監視機能であるRDS Performance Insights(PI)が、2026年6月30日で実質的に廃止される[1]。当初2025年11月30日とされた期限が延長された経緯はあるが、もう延びる前提では動けない時期に入った。後継はCloudWatch Database Insights(DBI)で、Amazon RDSとAuroraのデータベース監視はこちらに集約される[1][2]。

注意したいのは、これが単なる画面の引っ越しではない点だ。課金モデルが変わり、構成によっては月額コストが数倍になる。一方で何もしなければ自動的に無償のStandardモードへ移行し、7日を超える性能履歴と一部の分析機能を失う[1]。つまり「放置」と「全台Advanced化」のどちらにも落とし穴がある。

本稿では期限までに何が変わるか、コストがどう動くか、インスタンスごとの判断基準を整理する。RDS/Auroraを運用するエンジニアと、監視費用の予算を握る管理職の双方に関わる移行である。

RDS Performance Insights廃止で何が変わる?──放置すると失うもの

6月30日以降、PIを使っていたDBインスタンスはDBIのStandardモード(無償)に既定で移行する[1]。Standardでも7日分の性能データは見られるため、直近のトラブルシューティングは引き続き可能だ。

失うのは過去比較と深掘りである。7日を超える履歴、実行計画の参照、RDSコンソールでのオンデマンド分析が使えなくなる[1]。月次の性能レビューや「先月の同時間帯と比べる」運用をしている組織には実害が出る。

項目DBI Standard(無償)DBI Advanced(有償)
データ保持7日15カ月
実行計画・オンデマンド分析不可
料金(プロビジョンド)00.0125ドル/vCPU時(月約9ドル/vCPU)
料金(Aurora Serverless v2)00.003125ドル/ACU時(ACU=Aurora Serverlessの処理能力の単位。おおむねメモリ2GiB相当)

なお過去のPI履歴データを残したい場合は、期限前にPIのAPI(DescribeDimensionKeys、GetResourceMetrics)でエクスポートしておく必要がある[1]。API自体は7月以降も動くが、Advancedにしない限り返るデータは7日分に縮む。性能の長期トレンドを容量計画や監査に使っている組織は、エクスポートの要否を最初に判断したい。

コストの変化:旧有償版の3.8〜6倍になるケース

旧PIの有償オプションは保持1カ月分が1vCPUあたり月1.50ドル、追加1カ月ごとに0.0631ドルという価格だった[3]。DBI Advancedは月額に換算すると1vCPUあたり約9.1ドル(約1,410円。以下1ドル=155円換算)で、単価の桁が変わる。

2vCPUの小型インスタンスで試算すると、DBI Advancedは月18.25ドル(約2,830円)。旧PI有償版は15カ月保持でも4.76ドル、1カ月保持なら3.00ドルだったので、3.8〜6.1倍の値上がりになる[3]。大型機ではより顕著で、db.r7g.8xlarge(32vCPU)にAdvancedとログ出力を有効化したところ、DBI本体292ドル(約4.5万円)を含む月490ドル(約7.6万円)が計上されたという検証報告もある[2]。

逆に言えば、これまで「とりあえず全台で有償PI」だった構成をそのままAdvancedへ置き換えると、監視費が突然数倍になる。移行は監視レベルの棚卸しの機会と捉えるのが正しい。

RDS監視はどう選ぶ?──全台一律をやめる判断基準

実務的には、インスタンスを3つに分けるのが現実的だ。

RDS監視の3振り分け(本番Advanced/開発検証Standard/中間層)
PI→DBI移行は全台一律をやめ、用途で3つに振り分けるのが現実的(図:本稿作成)

第一に、本番の主要DB。障害分析と性能トレンドが事業に直結するため、Advancedの対象とする。その上で15カ月保持が本当に必要か、保持要件を監査・容量計画の実態から確認する。

第二に、開発・検証環境。Standardの7日で足りる場合がほとんどで、ここをAdvanced化しない判断だけで増額の大半は防げる。

第三に、中間層。普段はStandardで運用し、性能問題の調査期間だけAdvancedを有効化する運用も選べる。また実行計画の分析が主目的なら、サードパーティの監視ツールや、データベース側の標準機能(PostgreSQLのpg_stat_statements等)で代替する道もある[2]。

予算側の説明としては、「監視SaaSの価格改定」と同じ構図で扱える。値上げ分を一律で飲むのではなく、保護レベルの定義(どのDBにどこまでの可観測性が必要か)を先に決め、そこから費用を導く順序にすると、増額の根拠が説明可能になる。

よくある質問(FAQ)

Q. 何もしないとどうなる?
A. 2026年6月30日以降は無償のDBI Standardへ自動移行し、7日を超える履歴・実行計画・オンデマンド分析を失う。

Q. 全台をAdvancedにすべき?
A. 監視費が旧有償版の3.8〜6倍になり得る。本番の主要DBのみAdvanced、開発・検証はStandard、中間層は調査時だけAdvancedが現実的。

Q. 過去の性能履歴を残すには?
A. 期限前にPIのAPI(DescribeDimensionKeys/GetResourceMetrics)でエクスポートしておく。Advancedにしない限り7月以降は7日分しか返らない。

まとめ

PIからDBIへの移行は、期限のある強制イベントであると同時に、データベース監視の要件を見直す機会でもある。放置すればStandardに落ちて履歴と分析機能を失い、無策で全台Advanced化すれば監視費が数倍になる。どちらも避けるには、インスタンスごとの監視要件を明文化した上で配分を決めるしかない。

6月30日まで残り3週間である。今週中にPI有効なインスタンスの一覧と現行の監視費を出し、Advanced対象の選定と履歴データのエクスポート要否を決めることを勧める。期限付きの移行は、着手が1週間遅れるだけで選択肢が一つずつ消えていく。

出典

[1] AWS re:Post: Transitioning from RDS Performance Insights to CloudWatch Database Insights — https://repost.aws/articles/AR6gPnT__dQdq81Md6Q_A1mA/transitioning-from-rds-performance-insights-to-cloudwatch-database-insights
[2] pganalyze: AWS Performance Insights has been deprecated: What to know about CloudWatch Database Insights — https://pganalyze.com/blog/aws-performance-insights-deprecation-database-insights-comparison
[3] Usage.ai: RDS Performance Insights Cost: Free vs Paid vs CloudWatch Database Insights in 2026 — https://www.usage.ai/blogs/aws/reserved-instances/rds/mysql/performance-insights-cost/
[4] AWS: Amazon RDS Performance Insights pricing — https://aws.amazon.com/rds/performance-insights/pricing/