
従業員数千人規模で、稟議システムや基幹系のWeb画面、複合機やネットワーク機器の管理画面をいまもIE前提のまま使っている企業の情報システム部門担当者に向けた記事です。EdgeのIEモードで延命してきたそれらのシステムを、いつ、どの順番で改修・置換し、いつ予算を取るかを決めるための材料をまとめます。
対象はWindows端末上のブラウザー層です。Microsoft Edge(Windows標準のChromiumベースのブラウザー)のIEモードは、IE11のTridentエンジン(MSHTML、IE固有の描画エンジン)を使って古いサイトを表示する互換機能です[5]。2026年9月16日、MicrosoftはMicrosoft 365管理センターのメッセージセンターでMC1473151を公開しました[1]。メッセージセンターは管理者しか読めないため、本稿では本文を第三者のアーカイブ(Message Center Archive)で確認しています[1]。
内容は、IEモードを少なくとも2029年末までサポートし、終了の1年以上前に告知するというものです[1]。ただしこの約束自体は2021年から示されており、今回は延長ではなく再告知です[2][3]。新しいのは、移行計画を立てるよう管理者に明示的に促した点にあります。
本稿の結論は、計画上の期限はOSのサポートにも縛られること、棚卸しはEnterprise Mode Site Listを起点にすること、改修費は2027年度予算から計上することの3つです。
予備知識
- Enterprise Mode Site List:IEモードで開くサイトを列挙したXMLファイル。ポリシーでEdgeに配布する
- App Assure:Microsoftの無償のアプリ互換性支援サービス
- ESU:サポート終了後のOSに有償でセキュリティ更新を提供する延長プログラム
- MC(メッセージセンター):Microsoft 365管理センターで管理者に届く変更通知。MC1473151のようにIDが付く
古い業務システムを作り直すか手を入れて使い続けるかの判断材料を整理でき、IE依存システムの改修方針を決める際の土台になる
MC1473151で何が変わった?IEモードの期限は延長されたのか
結論として、期限は延長されておらず、2021年以来の約束が改めて示されただけです。
MC1473151の題名は「IE mode is supported through at least the end of 2029, plan your migration」で、9月17日に更新されています[1]。メッセージ自体は既存のIEモード設定を変えず、即時の無効化も求めていません[1]。
Microsoftのライフサイクル FAQは、2024年2月の更新時点ですでに「少なくとも2029年まで」と「終了の1年以上前の告知」を記載していました[2]。IE11アプリの引退は2021年5月に発表済みです[4]。TechSpotも今回を2021年の計画の再確認と報じています[3]。ただしTechSpotは2029年末に終了すると書いており、一次情報の「少なくとも」とは表現が異なります[1][3]。
変化は文言の具体化にあります。FAQの「through at least 2029」に対し、MCは「end of 2029」と年末まで明記しました[1][2]。さらに管理者の対応として、依存サイトの棚卸し、改修方針の評価、App Assureへの相談の3点を挙げています[1]。

企画からPoC、設計・移行、運用までの段取りを追えるため、IE依存システムを置き換える移行計画の骨組みづくりに使える
IEモードはいつまで使える?期限を決めるのはOSのサポート
確約されているのは2029年末までです。計画上は、2029年末と端末OSのサポート終了日の早いほうを期限とみなすのが安全です。
ライフサイクル FAQは、IEモードのサポートを「サポート対象のOS上で」と限定しています[2]。Windows 10は2025年10月14日にサポートが終了しました[10]。企業の端末は、ESUを契約すればサポート終了から最長3年間セキュリティ更新を受けられます[10]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ESU対象 | Windows 10 バージョン22H2 |
| 1年目の開始 | 2025年11月 |
| 1年目の価格 | 1台61ドル(約9,455円)(1ドル=155円換算) |
| 2年目以降 | 毎年倍額、最長3年 |
| 途中加入 | 2年目から加入しても1年目分の支払いが必要 |
倍額の規定から計算すると[10]、2年目は122ドル(約18,910円)、3年目は244ドル(約37,820円)です。3年間では1台427ドル(約66,185円)になります。

IE依存システムのためにWindows 10端末を残すと、2028年ごろにはESUも終わり、2029年末より先に行き止まります。つまりIE依存の解消とWindows 11移行は、同じ予算計画で扱う必要があります。
コンテナ基盤としてEKS(Amazon Elastic Kubernetes Service、AWSのマネージドKubernetesサービス)を採用し、複数の事業部でクラスタを分散運用する数千人規模の企業では、情報システム部門やSRE(シ[…]
IE依存システムの棚卸しはEnterprise Mode Site Listから始める
棚卸しの起点は、すでにIEモードに登録しているEnterprise Mode Site Listです。
IEモードで開くサイトは、ポリシーで指定したサイトリストか、イントラネットの全サイトをIEモードで開く設定で決まります[5]。サイトリストがない場合、Enterprise Site Discovery(Configuration Managerで端末の閲覧履歴を集める仕組み)で古いドキュメントモードやActiveXを使うサイトを洗い出せます[8]。収集結果は既定では7日ごとのハードウェアインベントリで報告されます[8]。
Microsoft 365管理センターのクラウドサイトリスト管理も使えます[7]。
| 項目 | 要件・仕様 |
|---|---|
| 必要なEdge | バージョン93以上 |
| 必要な権限 | Edge管理者ロール |
| 更新間隔 | 既定2時間、最短30分 |
| 保持される版 | 直近3版まで |
| 利用者の追加サイト | Edge 99以上でサイトフィードバックとして集約 |
サイトフィードバックには、利用者が自分でIEモードに追加したサイトが利用人数付きで集まります[7]。情報システム部門が把握していない機器管理画面などを見つける手がかりになります。認証サーバーは中立サイトとして登録しないと、IEモードのページで認証が失敗します[6]。

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改修か置換か、2029年から逆算する優先順位と予算化の時期
MC1473151は改修方針を、改修、再ホスト、置換、再構築の4つで評価するよう求めています[1]。順番は、改修に時間がかかるものから手を付けるのが原則です。
App Assureは無償ですが、支援範囲は限られます。IEモードの設定支援は対象で、IE向けサイトをChromium上で動くように作り直す開発は対象外です[9]。アプリの棚卸しと検証は顧客側の責任で、Microsoftはソースコードを変更しません[9]。改修の実作業は自社か保守ベンダーが担います。
| 区分 | 典型例 | 着手の目安 |
|---|---|---|
| ActiveX依存の基幹系 | 帳票出力、電子証明書連携 | 2027年度 |
| 製品版の更新で解消 | パッケージ製品のWeb画面 | 更新計画に合わせる |
| 機器の管理画面 | 複合機、ネットワーク機器 | 機器更改時 |
| ドキュメントモードのみ依存 | 社内ワークフロー | 改修で短期解消 |
着手の目安は、改修に1〜2年を見込んだ本稿の提案です。2029年末から逆算すると、2028年度には切り替えと並行稼働が必要です。要件定義と見積もりを2026年度下期に済ませ、2027年度予算に計上する流れが現実的です。

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脱IEが終わらない日本企業、SIer保守契約と稟議が移行を遅らせる
日本企業でも同じ状況は起きており、IE依存の解消は長く後回しにされてきました。
ITmediaが報じたバルテスの2021年9月の調査では、IEサポート終了への対応を完了した企業は16%でした[11]。対応中が42%、未着手が15%、わからないが19%です。日経クロステックが2021年8月に国内大手ITベンダー12社に聞いた調査でも、社内の脱IEを完了していたのは1社でした[12]。

4区分の合計は92%で、残り8%の内訳は記事に記載がありません[11]。この調査は2021年時点のもので、現在の比率は一次情報では確認できませんでした。日本で移行が遅れやすい理由は、次の構造の違いにあります。
| 観点 | 日本企業で起きやすいこと | 移行への影響 |
|---|---|---|
| 保守契約 | 改修はSIerへの個別発注 | 見積もりと契約に時間がかかる |
| 稟議 | 年度予算に計上しないと着手できない | 着手が1年単位で遅れる |
| システムの年数 | 長年動き続ける業務システムが多い | 開発元の体制が残っていない |
| 体制 | 情報システム部門が少人数 | 棚卸しの工数が取れない |
IT部門の判断は、2026年度中に台帳と保守ベンダーの見積もりをそろえることです。決裁側の判断は、脱IE費用をWindows 11移行と合わせた複数年度の予算枠として承認することです。
まとめ
MC1473151は期限の延長ではなく、2021年からの約束を年末まで具体化した再告知です。確約されているのは2029年末までで、計画上は2029年末と端末OSのサポート終了の早いほうを期限とみなします。App Assureは設定支援に限られ、改修の実作業は自社と保守ベンダーが担います。
- IT部門担当者の次の一手:Enterprise Mode Site Listとサイトフィードバックから依存サイトの台帳を作り、所管部門と保守契約を書き込みます。
- 決裁側の判断材料:ActiveX依存の基幹系の置換に1〜2年を見込み、2027年度予算で改修費を確保するかを決めます。
終了の告知は1年以上前に届く約束ですが、改修に1〜2年かかるシステムには足りません。告知を待たずに早く始めるほど、並行稼働と予算確保の余裕が大きくなります。
よくある質問(FAQ)
IEモードは2029年12月31日に確実に終わるのですか?
いいえ、2029年末はサポートの下限です[1]。終了日は決まっておらず、終了の1年以上前に告知されます[2]。
Windows 11でもIEモードは使えますか?
使えます。Microsoftの前提条件の表にWindows 11が含まれています[5]。
App Assureに頼めば改修してもらえますか?
いいえ。IEモードの設定支援は対象ですが、Chromiumで動くように作り直す開発は対象外です[9]。
出典
- https://mc.merill.net/message/MC1473151
- https://learn.microsoft.com/en-us/lifecycle/faq/internet-explorer-microsoft-edge
- https://www.techspot.com/news/113924-internet-explorer-finally-truly-dying-microsoft-wants-you.html
- https://blogs.windows.com/windowsexperience/2021/05/19/the-future-of-internet-explorer-on-windows-10-is-in-microsoft-edge/
- https://learn.microsoft.com/en-us/deployedge/edge-ie-mode
- https://learn.microsoft.com/en-us/deployedge/edge-ie-mode-sitelist
- https://learn.microsoft.com/en-us/deployedge/edge-ie-mode-cloud-site-list-mgmt
- https://learn.microsoft.com/en-us/deployedge/edge-ie-mode-site-discovery
- https://learn.microsoft.com/en-us/microsoft-365/fasttrack/windows-365-and-app-assure
- https://learn.microsoft.com/en-us/windows/whats-new/extended-security-updates
- https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2206/16/news102.html
- https://active.nikkeibp.co.jp/atcl/act/19/00328/101800001/


