米369自治体の議会でゴルフ場の住宅転用・売却が話題に、地元コースはどうなる

米国の自治体の議会で、ゴルフ場の住宅転用や売却が話題に上っている。会議録を集計するGatherGovの分析によると、2026年7月2日から10月2日の3か月で、50州2,805自治体の9,322会議で「golf course」が3万1,064回言及された[1]。数字は、米国の商業不動産ニュースサイトCRE Dailyが2026年10月7日に報じたものだ[1][2]。

そのうち369自治体・584会議では、住宅の話題が再開発、用途変更、売却と同じ会議で出ていた[1]。これは会議録で話題に上った自治体の数で、正式な議題になった数でも、売却が決まった数でもない。象徴的なのがバージニア州バージニアビーチ市で、市議会は市営コースを開発会社ドラガス・カンパニーズに売る案を9対2で可決した[1][4]。

コースを予約してプレーする側から見ると、変わるのは行くコースの形だ。バージニアビーチの計画では誰でもプレーできる18ホールのコースは残るが、8ホールが新設か改修になり、隣に659戸の住宅が建つ[4]。

ビジネスの側では、自治体が持つ土地を住宅不足の受け皿として売るか、公園やゴルフ場として持ち続けるかという資産判断が論点になる。CRE Dailyは、それぞれのコースが全国的な流れではなく個別の土地利用の争いになっていると分析している[1]。本稿では会議録の集計から全体像をつかみ、バージニアビーチの売却を例に、地元コースが変わる仕組みを読む。日本の公有コースの扱いとも比べる。

全米の自治体議会でゴルフ場はどれくらい話題になっているのか

3か月で全50州の2,805自治体がゴルフ場に触れており、そのうち369自治体で住宅転用や売却と結びついた議論があった[1]。言及の多い州は、フロリダ州4,774回、カリフォルニア州2,803回、テキサス州2,753回の順だ[1]。

全50州で2,805自治体・9,322会議がゴルフ場に言及し、うち369自治体・584会議で住宅と再開発・用途変更・売却が同時に議論された
GatherGovの集計範囲(2026年7月2日〜10月2日)

住宅と結びついた議論が多い州は、フロリダ州44自治体、テキサス州31自治体、ミネソタ州23自治体だ[1]。個別の自治体では、バージニアビーチ市の717回が最も多く、フロリダ州コリアー郡の523回、ノースダコタ州グランドフォークス市の478回が続く[1]。

州ゴルフ場の言及回数住宅転用・売却と結びついた自治体数
フロリダ4,774回44
カリフォルニア2,803回—
テキサス2,753回31
マサチューセッツ1,552回—
ミネソタ1,192回23

※「—」は本稿で確認していない項目、「非公表」は公開されていない項目。

全体のうち住宅転用と結びついた自治体は約13%にとどまる。多くの自治体では、ゴルフ場はまだ維持費や施設運営の文脈で話されているというのが筆者の見立てだ。

市営ゴルフ場のような公共資産を、残すか手放すかを自治体と住民がどう決めるのかを考えたい読者向けの一冊。

ゴルフ場が話題になる会議では何が争点になっているのか

CRE Dailyによると、言及の大半はルーティンの話題だ[1]。最も多いのは公園・緑地の論点で、ゴルフ場に触れた会議の51%で公園、オープンスペース、保全、散策路の話題が出た[1]。収支の話題は34%、住民の懸念は30%、住宅は27%、洪水と雨水は14%だった[1]。

ゴルフ場に触れた会議では、公園・緑地の論点が住宅の論点より多く出た

収支の面では、440自治体で補助金、赤字、一般会計の話題が出ていた[1]。一般会計は税金でまかなう自治体の基本の財布で、ゴルフ場の赤字をそこから埋めるかどうかが問われている。

具体例も各地にある。フロリダ州ハリウッド市のエメラルドヒルズ・ゴルフコースでは、166エーカー(約67万㎡、東京ドーム約14個分)を戸建てや集合住宅にする用途変更が申請され、住民は洪水を心配した[1]。ウィスコンシン州オレゴン村のフォックスボロ・ゴルフコースでは、所有者が10ホールに縮めて南側に住宅を建てる案を出し、会場は反対の声が多かった[1]。

逆に、コースを守る方向の議論もある。フロリダ州コリアー郡では、住民が「郡内に約90コースあり、誰でもプレーできるのは7つしかない」「2020年の住民投票では76.5%が土地保全事業を支持した」と指摘した[1]。同州フォートウォルトンビーチ市では、2020年のコンサルタント調査が市営コースを中核外の事業と位置づけ、ゴルフ事業を独立した会計に段階的に移す計画が進む[1]。

売却ではなく賃貸や民間運営で公有地を生かす日本の進め方を、具体例から押さえたい読者に向く。

バージニアビーチ市はなぜ市営コースを売ることにしたのか

市は、公費を投じたコースが投資額を回収できていないと判断し、住宅を含む再開発と引き換えに売る道を選んだ[1]。市議会は2026年8月11日、開発会社ドラガス・カンパニーズへの売却を9対2で可決した[4]。市有地の売却には11人中9人以上の賛成が必要で、ちょうどその数に届いた形だ[4]。

池が点在するバージニアビーチ・ナショナル・ゴルフクラブのコースとクラブハウスを上空から見た写真
池の間をフェアウェイが縫うバージニアビーチ・ナショナルのコース。右手にクラブハウスと駐車場がある(画像:Virginia Beach National Golf Club公式サイトより)

バージニアビーチ・ナショナルは、市が1999年に350万ドル(約5億4,000万円。1ドル=155円換算)の公費で建設し、2006年に完全に買い取った市営コースだ[1]。公的な投資は合計約800万ドル(約12億4,000万円)にのぼる[1]。市の職員は、19年間で税と運営からの支払いが年約22万ドル(約3,400万円)、合計約440万ドル(約6億8,000万円)にとどまり、当初の投資を取り戻せていないと説明した[1]。

売却代金1,790万ドルは市の財布に入らずコースの改修に再投資される。市は過去に約800万ドルを投じ、今回の計画でインフラ430万ドルと予備費360万ドルを負担する一方、19年間に市に入ったのは約440万ドル
バージニアビーチ・ナショナルをめぐるお金の流れ(概算)

市は2023年にコースの状態を調べ、2025年9月に事業提案を公募した[1]。応募は9件で、そのうち4件が住宅を含む案だった[1]。選ばれたドラガス案は、売却額1,790万ドル(約27億7,000万円)で、売却代金は市の一般財源には入らず、コースの改修に回す[1][4]。

計画には販売用住宅659戸、保育施設、組み替えたコースが入る[1]。住宅の半分超は、地域の世帯所得の中央値の120%以下の世帯向けの価格になる[4]。資金はほかに、市の開発公社が180万ドル(約2億8,000万円)、民間投資が1,840万ドル(約28億5,000万円)を出し、市はインフラに430万ドル(約6億7,000万円)を負担する[4]。予備費も計上され、うち360万ドル(約5億6,000万円)は市が出す[4]。売却に反対する住民団体は「市は何も得ず、350エーカーをただで渡すことになる」と批判した[4]。

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売却が可決されたら地元コースはすぐ住宅地になるのか

すぐにはならない。住宅を建てるには用途変更の承認が別に必要で、自然保護団体による連邦訴訟も続いている[1]。売却の手続き完了には約1年かかる見込みだ[4]。

1999年の市による建設から2025年9月の公募、2026年8月11日の9対2の可決を経て、用途変更の承認と連邦訴訟が残る流れ
バージニアビーチ・ナショナル売却の経緯と残る手続き

訴えたのはSFFコンサベーション・イニシアチブなどで、水質保全を定めた連邦法への違反と、コース内のワシの巣2つへの影響を主張している[4]。原告は土地の引き渡しを止める仮差し止めを求めたが、採決当日の時点で裁判所は判断を出していなかった[4]。

用途変更については、9月1日までに申請すれば、計画委員会が11月、市議会が12月に審議できる日程だった[4]。市議会は、開発会社が手頃な価格の住宅の戸数を約束してから承認手続きに進む条件も付けた[4]。申請が出されたかどうかは、記事執筆時点では確認できていない。

面積も報道によって違う。CRE DailyとWTKRは約350エーカー(約142万㎡、東京ドーム約30個分)とし、WHROは余剰地とされた面積を341エーカーと伝えた[1][3][4][5]。公聴会の告示が約300エーカーと誤って記載したため、7月の採決は延期されていた[4][5]。7月の公聴会には賛否双方の住民が数十人詰めかけたと、地元局が伝えている[10]。

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日本の公営ゴルフ場も住宅用に売られるのか

日本では、公有地のゴルフ場を住宅用に売る動きは本稿で確認した範囲では見当たらず、売らずに貸す形が目立つ。神奈川県は茅ヶ崎ゴルフ場の運営者を公募し、30年間の事業用定期借地権で貸す条件を付けた[7]。

茅ヶ崎ゴルフ場は約19.7万㎡(東京ドーム約4.2個分)で、県有地、民間所有地、市有地からなる[7]。用途地域は第一種低層住居専用地域で、住宅を建てられる土地だが、県は貸し出しを選んだ[7]。2025年11月には応募2者からゴルフダイジェスト・オンラインのグループを選び、広域避難場所としての活用も提案に入った[8]。

北海道長沼町は、無償で譲り受けた旧マオイゴルフリゾートの跡地について、転売の危険を避けるため売らずに貸す方針で事業者を公募した[9]。ゴルフ場の数は減っている。日本ゴルフ場経営者協会の速報では2026年7月のゴルフ場数は2,153で前年同月より15減ったが、総利用者数は750.8万人で1.4%増えた[6]。

比較軸米国日本
公有コースの扱い売却を可決(バージニアビーチ市)[4]30年の定期借地で貸す(茅ヶ崎)[7]、売らずに貸す(長沼町)[9]
事業者の選び方公募に9件応募[1]公募型プロポーザルに2者応募(茅ヶ崎)[8]
住宅転用の話題3か月で369自治体の会議録に登場[1]—
ゴルフ場数と需要—2,153場、利用者は前年比1.4%増(2026年7月)[6]

※「—」は本稿で確認していない項目、「非公表」は公開されていない項目。

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よくある質問(FAQ)

Q. 369自治体のゴルフ場がすべて売却されるのか。
A. そうではない。369は住宅の話題が再開発や売却と同じ会議で出た自治体の数で、売却が決まった数ではない[1]。

Q. バージニアビーチ・ナショナルではもうプレーできなくなるのか。
A. 計画では誰でもプレーできる18ホールのコースは残り、8ホールが新設か改修になる[3][4]。売却の完了には約1年かかる見込みだ[4]。

Q. 日本の自分が通うコースも住宅地になるのか。
A. 本稿で確認した日本の公有コースの事例は、売らずに貸す形だった[7][9]。

まとめ

会議録を集計すると、ゴルフ場の住宅転用は3か月で369自治体の議会で話題に上っていた。ただし会議の論点は公園・緑地が51%で最も多く、住宅の27%を上回る[1]。CRE Dailyの分析どおり、全国一律の流れというより、コースごとに用途変更や雨水対策、保全をめぐって個別に争われている[1]。

週末に通う一般開放のコースが、住宅と隣り合う形に組み替えられる可能性があると知ると、地元コースの議会資料を見る目が変わる。公共資産の判断に関わる立場なら、投資額と回収額に加え、売却代金の使い道と市の追加負担まで並べて見ることが比較の材料になる。

バージニアビーチの売却は可決されたが、用途変更と連邦訴訟が残る。日本では公有コースを売らずに貸す例が目立ち、同じ流れがそのまま届くとは言えない。12月の市議会で住宅の審議に進むかどうかが、次に見るべき点だ。

出典

  1. Golf Course Redevelopment Becomes a Local Housing Fight, CRE Daily, 2026-10-07. https://www.credaily.com/briefs/golf-course-redevelopment-debates-reach-369-jurisdictions/
  2. Golf Course Redevelopment Becomes a Local Housing Fight(CRE Daily転載), Yahoo Finance, 2026-10-07. https://finance.yahoo.com/real-estate/articles/golf-course-redevelopment-becomes-local-181206156.html
  3. Virginia Beach City Council votes 9-2 to approve golf course sale after hours of heated discussion, WTKR News 3. https://www.wtkr.com/news/in-the-community/virginia-beach/virginia-beach-city-council-votes-9-2-to-approve-golf-course-sale-after-hours-of-heated-discussion
  4. Virginia Beach City Council approves Virginia Beach National golf course sale, WHRO, 2026-08-11. https://www.whro.org/news/local-news/2026-08-11/city-council
  5. Federal lawsuit filed to block sale of Virginia Beach National Golf Course to Dragas Companies, WTKR News 3. https://www.wtkr.com/news/in-the-community/virginia-beach/federal-lawsuit-filed-to-block-sale-of-virginia-beach-national-golf-course-to-dragas-companies
  6. 2026年8月(実行月7月)ゴルフ場利用税 月別ゴルフ場数・課税者数・非課税者数【速報値】, 日本ゴルフ場経営者協会. https://www.golf-ngk.or.jp/riyousyasu/2026/2026.7.pdf
  7. 茅ヶ崎ゴルフ場の運営事業者を募集します, 神奈川県記者発表資料, 2025-04-14. https://www.pref.kanagawa.jp/docs/gh8/prs/r0725236.html
  8. 茅ヶ崎ゴルフ場利活用事業の優先交渉権者を選定しました, 神奈川県記者発表資料, 2025-11-07. https://www.pref.kanagawa.jp/docs/gh8/prs/r6053624.html
  9. 旧マオイゴルフリゾートの跡地活用(長沼町の公募型プロポーザル), みんなのゴルフダイジェスト, 2024-12-13. https://www.golfdigest-minna.jp/_ct/17738386
  10. WAVY TV 10(@WAVY_News)X投稿, 2026-07-08. https://x.com/WAVY_News/status/2074810983277629633