
スウェーデンの首都ストックホルムの西にあるゴルフクラブ、Strängnäs GK(ストレングネース・ゴルフクラブ)が、27ホールのうち1つの9ホールのループを手放し、18ホールに絞る案を検討している[1][2]。対象は2004年開場のBeijerslingan(ベイヤーシュリンガン)で、地元紙は跡地に350〜400戸の住宅を建てる構想を伝えた[1][2]。クラブは10月12日に臨時総会を開き、会員が今後の進め方を採決する予定だった[1]。
今この話が出ているのは、クラブと建設会社の共同出資会社が、すでに市へ計画審査を申請しているからだ[2]。会長は、売却が実現しても、その前の詳細計画の手続きに5〜7年かかると見ている[1]。
売却の対象は、このクラブで一番安く回れるコースでもある。Beijerslingan は今季から7ホールのpay & play(会員でなくても予約して回れる形)になっており、週末でも250クローナ(約4,000円。1クローナ=16円換算)で回れる[1][4]。
本稿では、ループの中身、売却までの手続き、市の住宅需要との比較を順に整理し、日本のゴルフ場の転用と比べる。
Strängnäs GKがBeijerslingan9ホールの売却を検討するのはなぜか
売却を検討する理由について、会長のペーテル・イェダル氏は、長い目で見れば18ホールで足りると説明している[1]。Strängnäs GKは3つのループ、計27ホールを持つが、売却案の対象は赤のループとも呼ばれるBeijerslingan だけだ[1][2]。
Beijerslingan は2004年に開場し、建設費は約1,500万クローナ(約2.4億円)だった[1]。今季が始まる前に6番と7番を永久に閉じ、9ホールから7ホールに減らしてpay & playのコースに変えた[1]。距離はフルレングスのままで、通常のグリーンとティーを使う[1][3]。

料金と会員区分を見ると、Beijerslingan がクラブの中でどんな位置にあるかがわかる。
| 項目 | 18ホールのコース | Beijerslingan(7ホール) |
|---|---|---|
| プレー料金(平日・大人) | 650〜750クローナ(約10,400〜12,000円)[4] | 200クローナ(約3,200円)[4] |
| プレー料金(週末・大人) | 650〜800クローナ(約10,400〜12,800円)[4] | 250クローナ(約4,000円)[4] |
| 2027年の年会費(大人) | 7,800クローナ(約12.5万円。両コース利用可)[5] | 1,500クローナ(約2.4万円。このコースのみ)[5] |
| 開場 | — | 2004年[1] |
※「—」は本稿で確認していない項目。
18ホールの年会費は、Beijerslingan だけの会員の約5倍になる。クラブにとって収入の柱は18ホール側にあり、Beijerslingan は安く気軽に回れる入口の役割を担ってきたというのが筆者の見立てだ。
ただし、Beijerslingan の利用人数や収支は公開されていない。売却でクラブの収入がどれだけ減るのかは、公開情報からは計算できない。
バブル期に開業した日本のゴルフ場がその後どう行き詰まったのかを、記録として追いたい読者向けの一冊。
ゴルフ場の跡地に住宅を建てるまでに何年かかるのか
会長の見立てでは、売却までに少なくとも5〜7年かかる[1]。スウェーデンでは住宅を建てる前に、市が詳細計画(detaljplan。土地の使い方を区画ごとに定める計画)をまとめる必要があり、その手続きに時間がかかるためだ[1]。
クラブはこの準備を、建設会社Tuna entreprenad(トゥーナ・エントレプレナード)と共同で持つ会社を通じて進めている[1][2]。市とも協議しており、市の都市計画担当のアンデシュ・ヨンソン氏は、この共同会社が計画審査(planbesked。市が計画づくりに着手するかどうかの判断)を申請したと認めた[2]。

売却が実現した場合、残っている借入を返し、新しい練習エリアと新しい施設を整える資金に充てる考えだ[1]。借入の残高や、売却額の見込みは記事に書かれていない[1][2]。共同会社の出資の割合や、最終的な買い手が誰になるのかも明らかにされていない。
地元紙によれば、Beijerslingan の中にある人工の池は、湖岸の開発を制限する規制の対象外だという[2]。住宅地にするうえで、この点は障害が1つ少ないというのが筆者の見立てだ。
10月12日の臨時総会では、会員がこの計画をどう進めるかを採決する予定だった[1]。その結果は、2026年10月18日の執筆時点で、クラブの公式サイトや地元紙、Svensk Golfの公開情報では確認できなかった。クラブの公式サイトのニュース欄にも、総会に関する告知は見当たらない[3]。
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350〜400戸の住宅構想はストレングネース市の需要とどう比べられるか
350〜400戸という規模は、市が掲げる1年分の住宅完成目標を上回る。ストレングネース市が2026年4月に示した住宅供給の行動計画の案は、年に250〜310戸の住宅を完成させるべきだとしている[6]。これは人口を年1.0〜1.5%伸ばす前提の数字だ[6]。350〜400戸を目標の上限310戸で割ると、約1.1〜1.3年分にあたる。
同じ計画案は、市の人口を今の3万9,000人から2040年に約5万人へ増やす方針を引いている[6]。増加分の50%は、クラブのあるストレングネース市街地で受け止める計画だ[6]。ただし、350〜400戸はあくまで地元紙が伝えた構想で、クラブや市の資料では確認できなかった。
ホールを減らして別の用途に回す動きは、Strängnäs GKだけではない。同じ日にSvensk Golfは、ストックホルムの南にあるFors Golf(フォシュ・ゴルフ)が2027年シーズンから18ホールを12ホールに減らすと伝えた[7]。

Fors Golfは今の14番を練習エリアに変え、全打席にTrackMan Rangeを入れた新しいレンジとスタジオを2027年春までに作る[7]。縮小の理由は記事に書かれていない[7]。減らしたホールの一部を練習施設に回す点は、Strängnäs GKの案と重なる。ただしFors Golfは、新しい18ホールのコースの計画も並行して進めており、記事の見出しも「再び18ホールを目指す」としている[7]。18ホールに絞ったままにするSträngnäs GKの案とは、行き先が違う[1][7]。
スウェーデンゴルフ連盟によれば、国内には2025年に約450のクラブがあり、会員は約59万人だった[8]。
スコットランド東部、エディンバラの東にあるイースト・ロージアン地方の町ノースバーウィックで、ゴルフ場「The Glen Golf Club(ザ・グレン)」の会員が米国資本の投資会社との交渉を打ち切った[1][2]。相手はThe Ancie[…]
日本のゴルフ場でも9ホールを減らして跡地を売る例はあるのか
日本でも、閉じた9ホールのコースを別の用途に回す計画の例はあるが、住宅地への転用を確かめられる公開データは乏しい。確認できたのは、運営会社が営業を終えた9ホールのコースの跡地を、太陽光発電所に転用する計画を2016年に発表した例だ。
オリックス・ゴルフ・マネジメントは2016年7月、島根県出雲市のいづも大社カントリークラブで、2015年11月まで営業していた華蔵コース(9ホール)の跡地に太陽光発電所を作ると発表した[9]。設置面積は約565,700㎡(東京ドーム約12個分)、最大出力は約14MWで、2017年12月に売電を始める計画だった[9]。同社にとって3か所目の太陽光発電事業になる[9]。
| 比較軸 | Strängnäs GK(スウェーデン) | いづも大社CC(日本) |
|---|---|---|
| 減らすホール | 9ホールのループ[1] | 9ホールの華蔵コース[9] |
| 跡地の使い道 | 住宅350〜400戸の構想(地元紙の報道)[1][2] | 太陽光発電所への転用計画(約14MW、2016年発表)[9] |
| 決める主体 | 臨時総会で会員が採決(結果は未公表)[1] | 運営会社が発表[9] |
| 手続きの期間 | 詳細計画に5〜7年(会長の見立て)[1] | 閉鎖から売電開始の予定まで約2年[9] |
| 売却益・収益の使い道 | 借入返済、練習エリア、新施設[1] | 非公表 |
※「非公表」は公開されていない項目。
2つの例の違いは、決める主体と跡地の使い道にある。スウェーデンでは会員の採決と市の詳細計画を経る住宅地化が検討され、日本の例では運営会社の判断で発電所への転用を計画した(2016年発表)。
米国のゴルフ場開発・運営専門誌ゴルフ・インク(Golf Inc)が発表した「2026年ベスト新規開発(Development of the Year 2026)」の総合1位に、スウェーデン南部エンゲルホルムに新設された会員制ゴルフクラブ「[…]
よくある質問(FAQ)
Strängnäs GKの9ホールはもう売られたのか
売られていない。売却には市の詳細計画が必要で、会長はそれに5〜7年かかると見ている。
臨時総会では何が決まったのか
10月12日の臨時総会で会員が進め方を採決する予定だったが、その結果は執筆時点の公開情報では確認できなかった。
日本のゴルフ場でも同じことは起きるのか
閉じた9ホールのコースを別の用途に回す計画の例は日本にもある。島根県のいづも大社カントリークラブでは、運営会社が華蔵コース(9ホール)の跡地を太陽光発電所に転用する計画を発表した(2016年発表)。住宅地にした例は、公開情報では確認できなかった。
テーラーメイド(TaylorMade、米国発の大手ゴルフクラブブランド)の経営権を巡る売却劇が、2026年に入って波乱含みの展開を見せている。現オーナーである韓国の未上場投資ファンドCentroid Investment Partners[…]
まとめ
Strängnäs GKの案は、2004年に約2.4億円をかけて作った9ホールのループを手放し、住宅用地として売る可能性を探るものだ。売却は市の詳細計画を待つ必要があり、実現しても5〜7年先になる。臨時総会の結果は、執筆時点では確認できなかった。
次に確かめる点は2つある。10月12日の臨時総会で会員がどう採決したかと、共同会社の計画審査の申請に市がどう答えるかだ。
同じ日に報じられたFors Golfも、2027年から18ホールを12ホールに減らして練習施設を整える。ただし、こちらは新しい18ホールのコースを並行して計画しており、18ホールに絞るSträngnäs GKの案とは向きが違う。
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出典
- Svensk Golf「Golfklubb överväger att sälja nio hål – 400 bostäder」(2026年10月6日) https://www.svenskgolf.se/nyheter/golfklubb-overvager-att-salja-nio-hal-400-bostader/
- Eskilstuna-Kuriren「Strängnäs GK röstar om försäljning av Beijerslingan」(2026年10月6日) https://www.ekuriren.se/nyheter/strangnas/artikel/strangnas-gk-rostar-om-forsaljning-av-beijerslingan/rxqmkkgj
- Strängnäs Golfklubb公式サイト https://www.strangnasgk.se/
- Strängnäs Golfklubb「Greenfee」 https://strangnasgk.se/gast/greenfee/
- Strängnäs Golfklubb「Bli medlem」 https://strangnasgk.se/medlem/bli-medlem/
- ストレングネース市「Handlingsplan för bostadsförsörjningen i Strängnäs kommun 2026–2030, utblick till 2034, förslag」(2026年4月22日) https://www.strangnas.se/download/18.7e34ed9719dcdc04dc654806/1778072503613/F%C3%B6rslag%20till%20Handlingsplan%20f%C3%B6r%20bostadsf%C3%B6rs%C3%B6rjning%20i%20Str%C3%A4ngn%C3%A4s%20kommun.pdf
- Svensk Golf「Går från 18 till 12 hål – siktar på 18 igen」(2026年10月6日) https://www.svenskgolf.se/nyheter/gar-fran-18-till-12-hal-siktar-pa-18-igen/
- Gröna arbetsgivare「Branschfakta – Golf」 https://www.grona.org/filer/lista/q1piao7m59ye68et2v0qfv6h/Branschfakta_-_Golf.pdf
- オリックス株式会社「オリックス・ゴルフ・マネジメント、いづも大社カントリークラブ(島根)でメガソーラー発電事業に着手」(2016年7月6日) https://digitalpr.jp/r/17353
- exchange-rates.org「SEK to JPY」(2026年10月14日の値を参照) https://www.exchange-rates.org/converter/sek-jpy


