12か国のシミュレーター施設調査で日本が最多、通う打席の選び方は変わるか

英国やアジアのゴルフ業界メディアが2026年10月中旬、屋内のシミュレーターゴルフ施設を12か国で調べた市場レポートを一斉に報じた[1][2][3]。まとめたのは、ゴルフ向けソフトウェア会社のGolf Genius(ゴルフ・ジーニアス)だ[1]。世界展開するゴルフ事業支援のION 54と、スポーツ参加のプラットフォームを運営するplayed.coが共同で作った[1][2]。

対象は日本、北欧、英国・アイルランド、豪州・ニュージーランドの4地域で、2,683施設、9,580打席を地図上で洗い出した[1]。そのうち日本は1,033施設と最も多く、東京だけで365施設ある[1][2]。

施設の数と、客が通い続ける仕組みは別の話だった。調べた施設の73%は予約の仕組みを持つが、競技やリーグを運営する基盤を持つのは11%にとどまる[1]。日本に限ると、リーグを開く施設の割合は13.9%で、12か国全体の32%を大きく下回る[4]。

レポートは、ハードはすでに行き渡り、次の成長はソフトの統合にあると結論づけている[3]。本稿は調査の範囲、ソフト導入の遅れ、時間貸しの次の売り方を整理し、日本のリーグ普及率と国内統計を確かめる。

12か国のシミュレーターゴルフ市場調査は何を調べたのか

このレポートは、米国と韓国を除いた12か国で、シミュレーターを置く施設の数とサービス、使う技術を集計したものだ[1][2]。238都市の2,683施設が対象で、1施設あたりの打席数は平均約3.6打席になる(9,580打席÷2,683施設で計算)[1]。

調査対象は日本、北欧、英国・アイルランド、豪州・ニュージーランドの4地域12か国で、米国と韓国は対象外
シミュレーターゴルフ市場調査の対象範囲

施設の43%は2020年以降に開業した[1][2]。レポートは、世界のシミュレーターゴルフ市場が2030年まで年8〜10%伸びると見込む[1][2]。世界の施設数は約1万5,000、コース以外でゴルフをする人は約1億200万人と推計している[1][2]。いずれも推計値で、実数ではない。

調査した12か国2,683施設の帯のうち、日本が1,033施設で約39%を占め、その中の東京が365施設で日本の約35%にあたる入れ子の関係
全体・日本・東京の施設数(入れ子の関係)

日本は施設数で最大の市場だ。東京の365施設は、豪州とニュージーランドを合わせた数より多い[1][2]。一方、最も成熟した地域とされたのは北欧だった[1][2]。北欧は461施設で、成熟度のスコアは92.5とされた[4]。判断の軸は、サービスの幅、技術の導入、施設の密度、複数店舗を持つ事業者の浸透度の4つだ[2]。施設が多いことと、運営が進んでいることは別の指標として扱われている。

日本の施設数は、東京への集中に支えられている。日本の1,033施設のうち約35%が東京にある(365÷1,033で計算)[1]。打席数の国別の内訳は、報道では示されていない。

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シミュレーターゴルフ施設はどのソフトの導入が遅れているのか

遅れているのは、競技・リーグの運営基盤と顧客管理の仕組みだ。ハードの導入元がわかる施設は71%、予約の仕組みを持つ施設は73%ある[1]。これに対し、競技やリーグの運営基盤は11%、CRM(顧客管理システム)やアプリは0.5%しかない[1][2]。

予約とハードは7割を超えるが、競技基盤は11%、CRM・アプリは0.5%にとどまる

会員制を用意する施設は58%あるが、何らかのリーグを開く施設は32%だ[1][2]。Golf Geniusの紹介ページは、会員制を持つ施設の多くがそれを支えるデジタルの仕組みを欠いていると書く[4]。店をまたぐ競技を開く施設は25%に満たず、その多くは表計算やWhatsApp(メッセージアプリ)で管理している[4]。

項目施設に占める割合
予約の仕組み73%[1]
ハードの導入元が判明71%[1]
会員制を提供58%[1]
リーグを運営32%[1]
競技・リーグの運営基盤11%[1]
CRM・アプリ0.5%[1]

初心者向けの環境をうたう施設は77%ある[4]。入口は広く開いているのに、通い続ける理由を用意する仕組みが薄い。この差が、レポートがソフトの遅れを問題にする理由になっている[3]。

利用の偏りも大きい。打席の稼働率は、空いている時間帯で平均約20%にとどまる[1][3]。需要は夜と週末に集中する[2][3]。予約の仕組みは入っていても、空いた時間を埋める仕掛けまでは回っていないと考えられる。

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シミュレーターゴルフ施設は時間貸しの次に何を売るのか

レポートの答えは、打席の時間ではなく所属する感覚を売ることだ[1][3]。最も商業的に進んだ施設はすでにそうしていると、レポートは書く[1]。打席料の中央値は1打席1時間28ドル(約4,340円。1ドル=155円換算)で、英国の業界誌は約21ポンド(約4,410円。1ポンド=210円換算)と伝えた[1][2][3]。

打席の時間貸しから会員制(58%)、リーグ運営(32%)を経て、予約・会員・記録をソフトでつなぐ段階(競技基盤11%、CRM・アプリ0.5%)へ進む流れを2段に組んだ図
シミュレーターゴルフ施設の売り方の段階

具体例として、オランダのPGA(プロゴルファー協会)が挙がった。最高経営責任者のフランク・キルステン氏は、施設をまたぐシミュレーターリーグを全国で運営していると話す[1][2]。狙いは再来店と、シミュレーターでのハンディキャップづくりだ[2]。同氏は、客を一度呼び込むだけでは機会を生かしきれないと述べている[1]。

Golf Geniusのショーン・デインティ氏(国際部門の責任者)は、シミュレーターゴルフが国際的にどれほど速く育ったかを最も明確に示す調査だと話す[2]。同社はゴルフ向けのソフトを売る立場で、ソフトの遅れを強調する結論は自社の商機とも重なる。数値は調査結果として、結論は提供会社の主張として読むのがよい。

レポートは結論として、シミュレーターゴルフを新しい参加者を呼び込み、続けてもらい、収益を生む入口と位置づけた[3]。そのうえで、ハードの普及はすでに進んだので、次の成長の段階はソフトの統合だとしている[3]。施設側の投資先は、打席の台数や機種より、予約、会員、リーグ、顧客の記録をつなぐ仕組みに移ると考えられる。

打席を選ぶゴルファーの側でも、比べる点は変わってくる。予約できるかに加えて、月例のリーグがあるか、会員になるとスコアが記録として残るか、空いている時間帯の扱いはどうかを見る。この3点は、レポートが施設の差として挙げた会員制、リーグ、空いている時間帯の稼働率に対応する。

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日本のシミュレーターゴルフ施設はどれだけ増えているのか

日本では国内の統計でも、屋内のゴルフ施設は増え続けている。全日本ゴルフ練習場連盟の調べでは、インドア施設は2021年10月末に1,265施設で、前年から241施設増えた[5]。2023年10月31日時点では1,518施設となり、1年で196施設増えた[6]。同じ時点の屋外型は2,322施設で、42施設減った[6]。

ただし、数え方はレポートと同じではない。連盟の数はインドアの練習施設全体で、シミュレーターを置く施設に限らない。レポートの日本1,033施設はシミュレーター施設を地図上で洗い出した数で、両者をそのまま比べることはできない。

比較軸市場レポート(12か国)全日本ゴルフ練習場連盟(日本)
数えた対象シミュレーター施設[1]インドア施設全体[6]
日本の施設数1,033施設[1]1,518施設(2023年10月31日)[6]
増え方43%が2020年以降の開業(12か国全体)[1]1年で196施設増[6]
リーグの普及率日本13.9%(12か国全体は32%)[4]—

※「—」は本稿で確認していない項目。

Golf Geniusの紹介ページは、日本のリーグ普及率を13.9%と示している[4]。12か国全体でリーグを開く施設は32%で[4]、日本はその半分に満たない。紹介ページはこの対比に「規模と成熟度は同じではない」という見出しを付け、施設の数は市場がどこにあるかを示し、参加を支える仕組みが今後の機会の場所を示すと書く[4]。

リーグの普及率は12か国全体が32%、日本が13.9%で、日本は施設数が最多でも全体の半分に満たない
リーグの普及率:日本と12か国全体

12か国全体の32%には、日本の値も含まれている。日本の1,033施設は全体の約39%を占めるので、全体の平均を下げる側に働く。

予約の仕組みやCRMの導入率は、日本単独の値が公開されていない。屋外型が減り、インドア型が増える流れは、連盟の2つの時点の数で確かめられる[5][6]。日本は施設の数では12か国の先頭にいるが、リーグで客を通わせる仕組みでは平均を下回っている。

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よくある質問(FAQ)

シミュレーターゴルフの打席料はいくらくらいか

12か国の調査では、1打席1時間の中央値が28ドル(約4,340円)だった。国や地域ごとの料金は報道では示されていない。

日本のシミュレーターゴルフ施設は本当に多いのか

調査した12か国の中では最多で、2,683施設のうち1,033施設が日本にある。東京だけで365施設あり、豪州とニュージーランドの合計を上回る。一方、リーグを開く施設の割合は13.9%で、12か国全体の32%を下回る。

打席を選ぶときは何を見ればいいのか

予約のしやすさに加えて、リーグや会員制があるかを見るとよい。調査では会員制を持つ施設が58%、リーグを開く施設が32%で、施設ごとの差が大きい。

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まとめ

12か国2,683施設の調査で、日本は1,033施設と最も多かった。施設の43%は2020年以降の開業で、予約は73%、ハードは71%まで入っている。一方で、競技・リーグの運営基盤は11%、CRM・アプリは0.5%にとどまる。

日本に限ると、リーグを開く施設は13.9%で、12か国全体の32%に届かない。空いている時間帯の稼働率が約20%という数字と合わせると、日本の施設がリーグや会員の記録で再来店をつくる余地は大きいと考えられる。

日本では屋外練習場が減り、インドア施設が増える流れが国内統計でも続く。施設の数で先頭に立った市場で、次に問われるのは客を通わせ続ける仕組みのほうだ。

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出典

  1. The Golf Business「Simulator golf is going mainstream, but venues are missing out on software, says new report」(2026年10月14日) https://thegolfbusiness.co.uk/2026/10/simulator-golf-is-going-mainstream-but-venues-are-missing-out-on-software-says-new-report/
  2. Golf Business News「Simulator Golf Insights Report reveals key factors driving market growth」(2026年10月14日) https://golfbusinessnews.com/news/practice-range-and-teaching/simulator-golf-insights-report-reveals-key-factors-driving-market-growth/
  3. Asian Golf Industry Federation「Simulator golf: gateway to game’s growth」(2026年10月17日) https://agif.asia/2026/10/simulator-golf-gateway-to-games-growth/
  4. Golf Genius「Simulator Golf Market Report」 https://golfgenius.com/about/international/golf-genius-simulator-golf-market-report
  5. みんなのゴルフダイジェスト「インドアゴルフ施設は増加傾向、オンラインのトーナメントやコンペも。「バーチャルゴルフ」が流行の兆し!?」(2022年7月13日、全日本ゴルフ練習場連盟の調べとして) https://www.golfdigest-minna.jp/_ct/17555453
  6. みんなのゴルフダイジェスト(週刊ゴルフダイジェスト、2024年10月22日、全日本ゴルフ練習場連盟の調べとして) https://www.golfdigest-minna.jp/_ct/17727850
  7. exchange-rates.org「GBP to JPY」(2026年10月16日の値を参照) https://www.exchange-rates.org/converter/gbp-jpy