
英国(イギリス)のゴルフクラブ売買市場で、良質な物件の供給が買い手の需要に追いついていない。事業用不動産の専門アドバイザー、クリスティー・アンド・カンパニー(Christie & Co)は2026年9月、オーナー経営者から海外の買い手まで幅広い層の引き合いが続いていると分析した。海外ゴルフ旅行でリゾート型のゴルフクラブに泊まる読者には、宿泊棟やスパへの投資を誰の資本が進めるかに関わる話になる。ゴルフ場経営やホスピタリティ投資を考えるビジネス読者には、会員費とグリーンフィーだけに頼らないクラブ経営の条件を教えてくれる事例でもある。本稿はクリスティー・アンド・カンパニーの分析と、英国でゴルフリゾートの取得を重ねるドバイ資本の事例から、優良物件争奪戦の実態を追う。
なぜ英国ゴルフクラブに買い手が集まるのか
クリスティー・アンド・カンパニーは事業用不動産の売買を助言する専門会社で、ゴルフリゾートの売却も手掛けている[2]。同社リテール・レジャー部門のジェームズ・マトソン氏は2026年9月の分析で、買い手は「オーナー経営者、個人投資家、レジャー企業、海外の買い手」と幅広く、運営の安定と長期の成長余地を兼ねる業界への投資機会を求めていると述べた[1]。海外勢は、並べられた4つの買い手層のひとつという位置づけだ。需要が特に強いのはゴルフに宿泊や幅広いレジャーを組み合わせたリゾート型の施設で、国内と海外の双方の投資家を引きつけているという[1]。
マトソン氏は、参加の多さや会員数の伸び、業界の長期的な見通しへの信頼が市場を下支えしていると分析する[1]。良質な物件の供給を需要が上回る状態が続いており、これが優良物件の争奪戦を生んでいる[1]。
英国で買い手が評価する条件と照らし合わせて、人口減少が進む日本のゴルフ場がどうすれば持続できるのかを考えたい読者には、ゴルフ場の持続可能性を10章にわたって論じた齊藤修氏の一冊がある。
買い手はどんな条件のクラブを求めているのか
記事によれば、買い手が評価するのは会員費とグリーンフィー以外の収益源を持つクラブだ[1]。具体的には宿泊・飲食、婚礼・イベント、練習場やシミュレーター、健康・ウェルネス施設などが挙げられている[1]。年間を通じて収益を生む仕組みは「投資家から特に好意的に見られる」とマトソン氏は指摘する[1]。
会員の増加余地、宿泊施設の拡張余地、テクノロジーを使った新しいゴルフ体験の導入余地も、買い手が探す条件に含まれる[1]。裏を返せば、会員費とグリーンフィーだけに頼るクラブは、投資対象として見劣りしやすいということでもある。

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Select Groupの英国ゴルフリゾート買収はどう進んだか
海外の買い手の具体例が、ドバイに本社を置く不動産開発会社Select Group(セレクト・グループ)による一連の取得だ。2022年7月、同社は英チェシャー州のザ・メア・ゴルフリゾート&スパを取得した[5]。2025年5月にはハンプシャー州のオールド・ソーンズ・ホテル&リゾート(317エーカー、約128万平方メートル、東京ドーム約27個分)を取得している[4]。
2026年5月、Select Groupは英国内の3つのデルタ・ホテルズ・バイ・マリオット系ゴルフリゾート(セント・ピエール、ブレッドソール・プライオリー、テューダー・パーク、計900エーカー超=約364万平方メートル、東京ドーム約78個分、客室380室)を一括で取得した[2][3]。価格は非公表[2]。これにより同社の英国内ゴルフリゾート保有は5施設・客室530室超に達した[2]。

Select GroupのCEO、イスラー・リアカット氏は今回の3施設について「確立されたブランド、良い立地、広い敷地、根強いゲスト層という強固な土台を持つ物件だ」と述べている[2][3]。運営は引き続きマリオット・インターナショナルが担う[3]。

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優良物件不足はゴルフクラブ市場に何をもたらすのか
クリスティー・アンド・カンパニーは、良質なゴルフクラブやリゾートへの投資意欲が2026年の残りの期間も強いまま続くとみている。特に、事業モデルを変えて通年の収益機会を広げたクラブが対象になるという[1]。裏を返せば、複合収益化に対応できていないクラブほど、買い手からの評価が伸び悩む可能性がある。
立地も評価を分ける。裕福な住宅地、ゴルフが根付いた地域、通勤人口の多い地域にあるクラブほど関心を集めやすく、会員の増加に加えてビジター、法人ゴルフ、飲食の需要も見込める[1]。買い手が重視する条件には、灌漑設備やコースの耐候性など持続性への投資も含まれる[1]。

日本のゴルフ場M&Aでは誰が買い手なのか
日本の直近の大型案件は、海外マネーの流入ではなく国内資本による集約だった。2024年12月、ゴルフ場運営で国内2位のPGM(パシフィックゴルフマネージメント)の親会社である平和が、国内最大手アコーディア・ゴルフの全株式を持つPJC Investmentsを買収すると発表した[6][7]。
売り手は、投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループの関連事業体が運用する、ケイマン諸島の投資会社だ[6][7]。買収額は有利子負債を含めて5100億円で、全額を銀行から借り入れる[6]。株式の取得は2025年1月31日に完了した[8]。保有ゴルフ場はアコーディアの173カ所とPGMの148カ所を合わせて321カ所となり、平和はゴルフ場運営会社として国内最大、保有ゴルフ場数では世界最大になったとしている[6][8]。
両社のゴルフ場運営は統合せず、どちらも平和の子会社として残す方針だ[6][7]。そのうえで平和は、管理費や仕入コストの削減、システムの統合、予約サイトやポイントプログラムの共通化を進めるとしている[8]。
海外資本がゴルフ場を持つ例もある。2022年2月、西武ホールディングスは子会社プリンスホテルが持つゴルフ場10カ所を含むホテル・レジャー31物件を、シンガポールの政府系ファンドGICのグループが出資する会社へ譲渡する基本協定を結んだ。運営は西武グループが受託する形で、所有と運営を分ける点はSelect Groupとマリオットの関係に近い[9]。2025年8月の報道によれば、北海道大空町の女満別ゴルフコースでは、土地を所有する外資系企業がゴルフ場を閉鎖して太陽光パネルを整備する方針を示し、町や地元経済界が存続を求める署名活動を行っている[10]。こちらはゴルフ場をやめて土地の用途を変える計画で、収益源を広げるためにクラブを買う英国の動きとは向きが異なる。
| 観点 | 英国 | 日本 |
|---|---|---|
| 買い手 | オーナー経営者・個人投資家・レジャー企業・海外の買い手[1] | 国内資本(平和)が最大手を取得、海外ファンドは売り手[6][7] |
| 代表例 | Select Group(ドバイ)、英5施設・客室530室超(2026年)[2] | 平和、321カ所への集約(2024年12月発表・2025年1月完了)[6][8] |
| 収益面の焦点 | 宿泊・婚礼・練習場・ウェルネスなどの複合化[1] | 管理費・仕入コストの削減、予約サイト等の共通化[8] |
まとめ
英国ゴルフクラブ市場では、良質な物件の供給が、国内外の幅広い買い手の需要に追いついていない。Select Groupが約4年で5施設まで買い進めた経過は、宿泊や婚礼など会員費とグリーンフィー以外の収益源を持つリゾートに買い手が集まる流れと重なる。海外リゾートに泊まる読者には、新しいオーナーが今後数年かけて施設への投資を進めるとしている点が、滞在の質に関わる[2]。クラブ経営やホスピタリティ投資に関心があるビジネス読者には、複合収益化の度合いが買い手の評価を分ける具体例として読める。日本では2024年12月、海外ファンドが売り手となり、国内資本がゴルフ場運営の最大手を取得した。海外資本の保有例はあるものの、直近の大型案件の資金の向きは英国と逆だ。
よくある質問(FAQ)
Q. Christie & Co(クリスティー・アンド・カンパニー)とは何ですか。
A. 英国の事業用不動産の売買を助言する専門会社で、ゴルフリゾートやホテルの売却も手掛ける[2]。
Q. Select Groupが買収した物件の価格はいくらですか。
A. 2026年5月の3施設一括買収を含め、価格はいずれも公表されていない[2][3]。
Q. 日本のゴルフ場でも海外投資家は買い手になっていますか。
A. 例はある。2022年に西武ホールディングスが、ゴルフ場10カ所を含む31物件をシンガポールの政府系ファンドGICのグループへ譲渡する基本協定を結んだ[9]。ただし直近の大型案件である2024年12月発表の平和によるアコーディア・ゴルフ買収では、海外ファンドが売り手、国内資本が買い手だった[6][7]。
出典
- Strong buyer demand continues to drive UK golf club market, The Golf Business, 2026-09-03. https://thegolfbusiness.co.uk/2026/09/strong-buyer-demand-continues-to-drive-uk-golf-club-market/
- Three prestigious golf & leisure resorts across the UK sold, Christie & Co. https://www.christie.com/news-resources/press-releases/three-prestigious-golf-leisure-resorts-sold/
- Dubai group acquires THREE UK golf resorts, The Golf Business, 2026-05-21. https://thegolfbusiness.co.uk/2026/05/dubai-group-acquires-three-uk-golf-resorts/
- Hampshire resort sold to Dubai-based group, The Golf Business, 2025-05-29. https://thegolfbusiness.co.uk/2025/05/hampshire-resort-sold-to-dubai-based-group/
- Select Group Acquires The Mere Golf Resort & Spa Knutsford, UK, PR Newswire UK, 2022-07-12. https://www.prnewswire.co.uk/news-releases/select-group-acquires-the-mere-golf-resort-amp-spa-knutsford-uk–831586940.html
- PGM運営の平和がアコーディア親会社を5100億円で買収へ 保有ゴルフ場は世界最多に, Golf Digest(news.golfdigest.co.jp), 2024-12-19. https://news.golfdigest.co.jp/news/article/175600/1/
- 株式会社平和による当社の親会社であるPJC Investments株式会社の株式の取得に関するお知らせ, アコーディア・ゴルフ, 2024-12-18. https://www.accordiagolf.com/corp/news/detail.php?no=0000000870
- 株式会社平和による当社の親会社であるPJC Investments株式会社の株式の取得完了のお知らせ(平和の適時開示資料を掲載), アコーディア・ゴルフ, 2025-01-31. https://www.accordiagolf.com/corp/news/detail.php?no=0000000878
- 当社グループのホテル・レジャー事業の一部資産に関するGICとの基本協定書締結のお知らせ, 西武ホールディングス, 2022-02-10. https://release.nikkei.co.jp/attach/626628/01_202202101530.pdf
- 人気ゴルフ場、太陽光に転用計画 大空町で外資系 地元反発、存続の署名活動広がる, 北海道新聞デジタル, 2025-08-07. https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1196842/

