ゴルフ場をソーラー化すれば842GW──査読論文が示す再エネ転用の射程

ゴルフ場の使い道に、新しい選択肢が示された。米英日など上位10カ国のゴルフ場用地の一部を太陽光発電に転用すれば、最大842ギガワット(GW)の発電容量が得られる。査読付き学術誌の試算である[1][2]。

この数字は、論文「Countries across the world use more land for golf courses than wind or solar energy」(世界の国々はゴルフ場に風力・太陽光より多くの土地を使っている)が示した[2]。掲載誌はEnvironmental Research Communications(環境研究コミュニケーションズ、英IOP出版の査読付きオープンアクセス誌)である。

ゴルフ場は、土地という資産だ。本稿は、コース用地の出口戦略とエネルギーROIを、PESTとブルーオーシャンの枠組みで読む。遊休化した広大な用地を再エネ資産へ転換する射程を、定量で示す。

842GWはどう算出されたのか──論文が示す転用の試算

舞台は世界のゴルフ大国である。研究は、ゴルフ場が多い上位10カ国を対象に、コース用地の25〜75%を太陽光に転用した場合の発電容量を試算した[1]。

結果は281〜842GWだった[2]。転用率を低く見積もっても281GW、高く見積もれば842GWに達する。後者は、同じ10カ国の現在の累積太陽光導入量646GWを上回る[1]。

対象国の顔ぶれは、ゴルフ場の数で並ぶ。下表は上位国とコース数を整理したものだ。

順位ゴルフ場数(概数)
1米国16,000超
2英国約3,100
3日本約2,700

これにカナダ、豪州、ドイツ、韓国、フランス、中国、スウェーデンが続く[1]。米国の突出ぶりが、全体の容量を押し上げる。

含意は明快だ。ゴルフ場は、世界で再エネ用地を上回る面積を占める。その一部を転用するだけで、国家規模の発電容量が生まれる[2]。土地は、用途を変えれば別の価値を持つ資産になる。

太陽光発電を事業として捉える視点と採算の勘所を、短時間で押さえられます。

Indian Wellsはゴルフ場の太陽光転用で何を得たのか

試算は机上だけではない。実例がある。カリフォルニア州のIndian Wells Golf Resort(インディアン・ウェルズ・ゴルフリゾート、市営の大型ゴルフ施設)だ。

同リゾートの太陽光設備は、施設全体で使う電力の80〜90%を賄う見込みだ[3]。年間の発電量は約230万キロワット時に上る[3]。

環境効果も大きい。この発電は、約210万ポンド(約950トン)のCO2排出を削減する計算になる[3]。電力の自給と排出削減を同時に実現する。

ここにエネルギーROIの核心がある。ゴルフ場は灌漑や照明、空調で電力を多く使う。敷地内に太陽光を置けば、その電力を自家消費し、購入電力を減らせる。

下表は、用地転用の二つの方向を整理したものだ。

方向自家消費型売電・転用型
目的運営コスト削減用地の出口・収益化
規模施設電力を相殺ユーティリティ規模
Indian Wells[3]281〜842GWの射程[2]

Indian Wellsは前者、論文の試算は後者を示す。営業を続けながらコストを下げる道と、用地を再エネ資産へ転換する道の両方が開ける。

採算の悪化した用地を負債でなく資産として活かす出口設計を学べます。

なぜ今ゴルフ場の太陽光転用が現実味を帯びるのか

この動きは、外部環境の枠組みで読める。PEST(政治・経済・社会・技術の4要因)で見ると、追い風が重なっている。

政治面では、脱炭素政策と再エネ導入目標が各国で強まる。経済面では、太陽光の発電コストが下がり、転用の採算が改善した。社会面では、広大な芝の維持に向ける目が厳しくなっている。技術面では、設置と系統連系の手法が成熟した。

四つの要因がそろい、ゴルフ場の太陽光転用が現実味を帯びる。とりわけ、来場者減や水コスト増で採算が悪化したコースには、転用の動機が強い。

ブルーオーシャンの観点も効く。ゴルフ用地の再エネ転用は、競合の薄い新市場だ。土地はすでに平坦で、日当たりがよく、送電網にも近い場合が多い。新規の用地買収より初期条件が整っている。

ただし制約もある。用地転用には規制や地域の合意、景観への配慮が要る。論文も、転用は25〜75%という幅で見積もる[1]。全面転用を前提にはしていない。

数字の射程は大きいが、実装は一律ではない。自家消費でコストを下げるか、用地を出口として収益化するか。コースごとの立地と財務が、最適解を分ける。

サステナ/環境/土地

ゴルフ場の閉鎖は、長くネガティブな話題として扱われてきた。だが2026年に米国で起きているのは、閉鎖の先にある「出口」の設計である。マサチューセッツのMaplegate Country Clubは2,480万ドル(約38億円。以下1ドル=[…]

日本の約2,700コースにとってこの試算は何を意味するのか

この議論は、日本にとって他人事ではない。日本は約2,700のゴルフ場を抱え、世界3位の規模だ[1]。多くは郊外の丘陵地にあり、広い面積を占める。

日本のゴルフ場は高齢化と利用者減に直面している。採算の悪化した郊外コースは、用地の出口を迫られている。住宅化やメガソーラーへの転用は、すでに現実の選択肢だ。

下表は、採算が崩れた用地の主な出口を整理したものだ。

出口内容制約
住宅化宅地造成・分譲立地・人口減
メガソーラー全面を売電用に転用系統・景観・規制
自家消費型営業を続け電力を相殺設備投資の回収

丘陵地は日当たりと傾斜の条件で、太陽光に向く場合がある。一方で、系統連系の余地や地域の合意が制約になる。論文の25〜75%という幅は、日本でも全面転用が前提でないことと整合する[1]。営業継続と用地転換のどちらを選ぶかが、各コースの分岐点になる。

閉鎖済みのコースなら全面転用、営業中のコースなら自家消費が現実的だ。立地の系統条件と残存する集客力が、その判断を左右する。日本でも、採算と地域事情に応じた使い分けが進むとみられる。

採算が崩れたゴルフ場用地をどう資産として読み直すか

私たちが得るのは、土地を多用途の資産として読み直す視点である。ゴルフ場は、レジャー施設であると同時に、広大で平坦な再エネ適地でもある。

第一の論点は、出口戦略だ。来場者減や維持費増で採算が崩れた用地に、売却や住宅化以外の選択肢が加わる。太陽光への転用は、用地の終活の一形態になる。

第二は、自家消費の経済性である。施設の電力を敷地内発電で相殺すれば、運営コストが下がる。Indian Wellsのように、営業を続けながら採算を改善できる[3]。

第三は、規模の意識だ。1コースの効果は小さく見えても、国全体では281〜842GWに積み上がる[2]。分散した遊休地の集合が、国家規模の電源になりうる。

土地は固定された負債ではない。用途を変える発想を持てば、コストの源泉が収益の源泉に変わる。ゴルフ場の太陽光転用は、その読み替えの好例である。

まとめ

査読付き論文は、上位10カ国のゴルフ場用地の25〜75%を太陽光に転用すれば281〜842GWの容量が得られると試算した[1][2]。842GWは同10カ国の現在の導入量646GWを上回る[1]。カリフォルニアのIndian Wellsは、太陽光で施設電力の80〜90%を賄う[3]。

私たちが見るべきは、土地を多用途の資産として読み直す視点だ。来場者減で採算が崩れた用地も、自家消費でコストを下げ、あるいは再エネ資産へ転換できる。PESTの追い風とブルーオーシャンの初期条件がそろう今、ゴルフ場は電源候補になりうる。土地の価値は、用途の発想で書き換えられる。

よくある質問(FAQ)

Q. 日本のゴルフ場が太陽光に転用する際の主な障壁は何か?
A. 系統連系の空き容量、地域住民や自治体の合意、景観規制が主な障壁になる。立地と系統条件を先に確認することが重要だ。

Q. 営業中のゴルフ場でも太陽光を導入できるのか?
A. Indian Wellsのように、全面転用でなく施設内の自家消費型から始める方法がある。営業を続けながら電力コストを下げる選択肢だ。

Q. 842GWという数字はどの程度の規模感なのか?
A. 同じ上位10カ国の現在の累積太陽光導入量646GWを上回る試算値だ。国家規模の電源容量に相当する。

出典

[1] https://interestingengineering.com/energy/golf-course-conversion-solar-power
[2] https://www.pv-magazine.com/2025/02/24/global-golf-courses-take-up-more-land-than-solar-wind-plants/
[3] https://www.foremagazine.com/sustainability/sun-spot-indian-wells-golf-resort-goes-solar/