
閉鎖したゴルフ場をメガソーラー(大規模な太陽光発電所)に変える計画に、2027年4月から国の環境アセスが及ぶ範囲が広がる。環境アセス(環境影響評価)とは、大きな開発の前に事業者が自然や生活環境への影響を調べ、住民や自治体の意見を聞いて計画に反映させる手続きのことだ。政府は2026年7月17日、太陽光発電で国のアセスが必ず必要になる出力を4万kW以上から2万kW以上に下げる政令を閣議決定した[1]。
今このテーマを取り上げるのは、9月15日から10月14日まで、自治体の条例で進めてきたアセスの書類を国の手続きに引き継ぐルールの意見募集が行われているからだ[4]。ゴルフ場跡地の計画も、新しい線の内側に入ってくる。島根県浜田市の浜田ゴルフリンクスでは、最大29,900kWの太陽光発電所への転用計画が動いている[6]。
ゴルフをする側として変わりうるのは、地元のコースがいつまで営業し、跡地がどうなるかという時間軸だ。浜田ゴルフリンクスは直近の利用者が3万4,000人あり、閉鎖後の行き先は近隣のゴルファーにとって切実な問題になる[7]。ビジネス側では、手続きの段階が増えることが、ゴルフ場を売る側と買う側の条件に影響しうる。これは制度の変更から考えた筆者の見立てで、取引への影響を示すデータは見当たらない。
ゴルフ場のメガソーラー転用で、国の環境アセスは何が変わるのか?
結論から言えば、国のアセスが始まる出力の下限が、二つの区分のどちらも半分になる。必ずアセスを行う「第1種事業」は4万kW以上から2万kW以上へ、アセスが必要かを個別に判定する「第2種事業」は3万kW以上4万kW未満から1万5,000kW以上2万kW未満へ変わる[1][2]。施行日は2027年4月1日だ[1]。

きっかけは、2025年12月に関係閣僚会議がまとめたメガソーラー対策パッケージだ[1]。環境省は意見募集の結果の中で、新聞報道から集めた環境紛争の事例を示している。現行の対象より小さい1万2,000kW(30ha相当)以上3万kW未満の事業に紛争が起きており、その大半が2万kW以上だったという[5]。

出力で線を引くのは、国のアセスの結果を電気事業法の認可などの審査に直接反映させる仕組みだからだと、環境省は説明している[5]。同省は、太陽光発電では事業区域の面積と出力に相関があることも確認したとしている[5]。
太陽光などの再エネ事業が地域にどんな利益と負担をもたらすかを、国内外の事例から考えたい読者向けの一冊。
浜田ゴルフリンクスの転用計画は、新しい線引きでどこに入るのか?
浜田ゴルフリンクスの計画は、現行制度では国の法の対象外だが、2027年4月以降の基準では第1種の規模にあたる。事業者はPAG Renewables合同会社で、浜田市上府町と久代町の約155ha(約155万㎡、東京ドーム約33個分)に、最大で約29,900kWの発電所を置く計画だ[6]。現行の第2種の下限である3万kWを100kW下回る一方、新しい第1種の下限2万kWは大きく上回る。
面積の面では、島根県の環境影響評価条例が太陽電池発電所について敷地面積50ha以上を対象にしている[9]。浜田市は計画段階環境配慮書(計画の初期に環境への配慮事項を検討した書類)に対し、排水、希少な水生生物、景観などについて意見を出した[6]。2025年8月の市の環境審議会では、事業者が森林は伐採せず、コースの芝地にパネルを置く方針を説明した[7]。

地元では存続を求める動きが続く。2026年6月の浜田市議会に向けた議員の発言通告書によると、2028年12月末での転用が予定され、存続を願う署名11,090筆が島根県と浜田市に出された[8]。計画は環境影響評価の方法書の段階に入ろうとしており、住民説明会では排水や防災への不安が出たという[8]。


ゴルフ場のような土地の用途を変えるとき、どんな許可手続きを経るのかを実務の面から押さえたい読者に向く。
2027年4月の前と後で、転用計画の扱いはどう分かれるのか?
新たに国の対象になる3万kW未満の事業は、施行日までにどこまで進んでいるかで扱いが三つに分かれる。電気事業法の工事計画の届出などを済ませ、その後に内容を変えない事業は、国のアセスが要らない[3]。条例に基づくアセスが進んでいれば、その書類を国の手続きの書類とみなし、途中から国の手続きに移れる[3]。

どの条例の書類を引き継げるかは、環境大臣が自治体の意見を聞いて条例の条項ごとに指定する[4]。住民への周知や意見聴取の期間・方法が適切に定められていることなどが指定の基準になる[4]。いま意見を募集しているのは、この指定の案だ[4]。
意見募集では、ゴルフ場跡地を名指しする意見も複数寄せられた。造成済みのゴルフ場跡地は森林を切り開く開発より影響が小さいとして、対象外や簡易な評価を求める内容だ[5]。環境省は、開発済みの土地については2021年7月に示した合理化ガイドラインの活用を想定していると答えている[5]。このガイドラインは同月1日に公表されたもので、ゴルフ場跡地などの開発済みの土地に立地する場合に、評価する項目を絞り込む考え方を示している[11]。
| 案件 | 出力 | 2027年4月以降の基準 | 状況 |
|---|---|---|---|
| 浜田ゴルフリンクス(島根県浜田市) | 最大約29,900kW | 第1種の規模 | 2028年12月末に転用予定[6][8] |
| 旧・木曽駒高原宇山カントリークラブ(長野県木曽町) | 21,000kW | 第1種の規模 | 2026年8月7日着工、2027年9月運転開始予定[10] |
木曽町の案件は施行前に着工しており、浜田の案件とは置かれた位置が違う[10]。筆者の見立てでは、ゴルフ場を手放す側にとって、転用の手続きにかかる期間と買い手が見込む費用は売却の条件に響きうる。施行日前に手続きをどこまで進められるかが、取引の価値を左右する変数の一つになると考える。
2026年5月28日、福島市松川町水原にあった旧・福島カントリークラブの跡地で、太陽光発電所が稼働を始めた。かつてゴルファーが歩いたフェアウェイの上に6万3000枚のソーラーパネルが並び、発電した電力はすべてAmazon(アマゾン)向けに[…]
イングランドや米国では、ゴルフ場の太陽光転用を誰が審査しているのか?
イングランドと米国の事例では、国ではなく地元の行政が判断する範囲が広い。日本が国の審査の下限を下げるのに対し、イングランドは2025年12月31日から、太陽光発電を国の重要インフラとして扱う出力の下限を50MW(5万kW)から100MW(10万kW)に引き上げた[12]。100MW未満は地方自治体のレベルで承認される[12]。
米国バージニア州ヘンリー郡では2020年、ビーバーヒルズ・ゴルフコースの約120エーカー(約49ha)を太陽光発電所に変える計画を、郡のゾーニング(用途地域)審査委員会が全会一致で却下した[13]。郡の担当者は、今後40年パネルで覆うのは土地の最善の使い方ではないと述べた[13]。郡に残る唯一の一般開放型(パブリック)のコースだったことから、存続を求める署名も集まった[13]。土地は民間企業のThe Lester Groupが所有している[13]。
| 項目 | 日本 | イングランド | 米国(ヘンリー郡の事例) |
|---|---|---|---|
| 主な判断者 | 国(2万kW以上は必ずアセス) | 100MW未満は地方自治体 | 郡のゾーニング審査委員会 |
| 直近の方向 | 国の対象を広げる | 国の対象を狭める | — |
| 判断の物差し | 出力(kW) | 出力(MW) | 土地の使い方 |
※「—」は本稿で確認していない項目。
ビジネス側の示唆は、日本では転用の可否を決める場が国の手続きに寄っていく点だ。ゴルファー側から見ると、イングランドや米国と同じく地元の声が届く場は残るが、日本では国の手続きの中で意見を出す機会が増える。
長野県木曽町で2026年8月7日、中部電力の完全子会社が旧ゴルフ場跡地に出力21,000kWのメガソーラーを着工した[1]。一方の北海道大空町では、外国資本の会社が取得した女満別ゴルフコースのメガソーラー転用計画に対し、2025年から町議[…]
よくある質問(FAQ)
自分のホームコースが太陽光発電所になる可能性はあるのか?
長野県木曽町や島根県浜田市のように、ゴルフ場跡地を太陽光発電所にする計画は各地で動いている[6][10]。2027年4月以降は、2万kW以上の計画に国のアセスが必要になり、住民が意見を出す段階が増える[1][3]。
環境アセスが必要になると、転用は止まるのか?
一律に止まる仕組みではない。国のアセスの結果は電気事業法の認可などの審査に反映される[5]。止まるかどうかは、計画の中身と審査の結果による。
プレー料金や会員権に影響はあるのか?
制度改正とプレー料金や会員権相場の関係を示す公開データは見当たらない。影響が出るとすれば、閉鎖の時期が前後することを通じた間接的なものになる。
愛知県新城市の三河カントリークラブが2026年3月31日、大阪地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は約120億円、債権者は約1,400名にのぼる[1]。入会時にゴルフ場へ預けた資金を一定期間後に返してもらう約束、いわゆる預託金の返還[…]
まとめ
ゴルフ場のメガソーラー転用は、2027年4月から国の環境アセスの網に入りやすくなる。出力2万kWという新しい線は、浜田ゴルフリンクスの29,900kWのような跡地の計画をちょうど含む水準にある[1][6]。施行日時点で手続きがどこまで進んでいるかで、扱いは三つに分かれる[3]。
ゴルフをする読者は、地元のコースに閉鎖や転用の話が出たら、自治体のアセス手続きの公告と意見募集の時期を確かめておくとよい。ビジネス読者は、ゴルフ場の売却や取得を検討する際に、施行日をまたぐ手続きの期間と経過措置の扱いを価格の前提として確かめておくとよい。
規制の線引きが変わると、同じ土地でも出口の価値が変わりうる。ゴルフ場の閉鎖をめぐる議論は、地元の署名運動から国の手続きの中へと場所を移しつつある。
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出典
[1] 環境省「環境影響評価法施行令の一部を改正する政令の閣議決定等について」(2026年7月17日) https://www.env.go.jp/press/press_05279.html[2] 環境省「環境影響評価法施行令の一部を改正する政令案の概要」(2026年6月) https://www.env.go.jp/content/000402926.pdf
[3] 環境省「本政令案の経過措置の内容等に関する概要について」 https://www.env.go.jp/content/000402929.pdf
[4] 環境省「環境影響評価法の経過措置に係る書類であってその作成の根拠が条例又は地方公共団体に係る行政指導等であるものを指定する件に関する意見の募集について」(2026年9月15日) https://www.env.go.jp/press/press_05577.html
[5] 環境省「環境影響評価法施行令の一部を改正する政令案に対する意見の募集の結果について」 https://www.env.go.jp/content/000416631.pdf
[6] 浜田市「(仮称)浜田太陽光発電所計画段階環境配慮書に対する意見について」 https://www.city.hamada.shimane.jp/www/contents/1766403614551/simple/0819hairyo-taiyokou.pdf
[7] 浜田市「令和7年度第1回浜田市環境審議会 会議録」(2025年8月5日) https://www.city.hamada.shimane.jp/www/contents/1754461743818/simple/20250805_kaigiroku.pdf
[8] 浜田市議会「一般質問発言通告書」(2026年5月29日受付) https://www.city.hamada.shimane.jp/www/gikai/contents/1774411596439/simple/10.pdf
[9] 島根県「島根県環境影響評価条例施行規則の改正について」 https://www.pref.shimane.lg.jp/infra/kankyo/kankyo/seido/kaisei2.html
[10] 中部電力「メガソーラーきその着工について」 https://www.chuden.co.jp/publicity/press/1218178_3273.html
[11] 環境省「「太陽電池発電所に係る環境影響評価の合理化に関するガイドライン」の公表について」(2021年7月1日) https://www.env.go.jp/press/109746.html
[12] Solar Power Portal「Infrastructure Planning Order puts legislation in place for higher solar NSIP threshold」(2025年6月17日) https://www.solarpowerportal.co.uk/infrastructure-planning-order-puts-legislation-in-place-for-higher-solar-nsip-threshold/
[13] Club & Resort Business「Plans to Convert Beaver Hills GC to Solar Farm Denied」(2020年12月22日) https://clubandresortbusiness.com/plans-to-convert-beaver-hills-gc-to-solar-farm-denied/




