
米国中南部オクラホマ州ブロークンアロー(州第2の都市タルサの郊外)にあるゴルフクラブ、ザ・クラブ・アット・フォレストリッジ(The Club at Forest Ridge)が、2026年11月1日付で完全会員制に移る[2]。これまでは会員とビジターが共存するセミプライベート型で、会員でなくても料金を払えばプレーできた[1]。運営を受託するのは、米ジョージア州アトランタに本社を置くゴルフ場運営会社ボビー・ジョーンズ・リンクス(Bobby Jones Links)だ[2]。
移行を前に、クラブは2026年9月30日付のリリースで成果を公表した[1]。2025年初めからの会員の純増は185人、会員収入は前年比40%超の増加だという[1]。
ゴルフをする側から見ると、ビジターも受け入れていたコースが完全会員制に変わると、近くの住民でも会員にならなければ予約できなくなる。行けるコースの選択肢が一つ減る話だ。ビジネスの側では、ビジターのプレー料金を手放して会員収入に寄せる判断が、数字の上でどう出たかが論点になる。本稿はリリースの数字を範囲を区切って読み、ゴルフ以外の施設投資と米国の会員制需要の流れを重ねて整理する。
フォレストリッジはなぜビジターの受け入れをやめて完全会員制にするのか
フォレストリッジは、住宅地と一体で開発されたゴルフクラブだ。1989年に元牧場の土地で開業し、18ホールのコースは設計家ランディ・ヘッケンケンパーが手がけた[2][3]。クラブハウスは2棟あり、フィットネス、プール、照明付きテニスコート6面、ピックルボール(テニスに似た小型ラケット競技)、屋内ラケット用ドームを備える[2]。ゴルフ場の口コミサイトGolfPassの利用者投票では、コース外の付帯施設で全米上位25に選ばれた[2]。

完全会員制への移行は、2025年11月に公表された[1]。2026年2月のリリースで、移行日が2026年11月1日と示された[2]。オーナーで開発者のデイビス・ロブソンCEOは、父で創業者のジョー・ロブソン氏と10年来温めてきた構想だと説明している[1]。

移行の理由について、リリースは明確な一文を置いていない[1]。ロブソン氏は、一般開放の施設を限られた人の場所に変えるには、見られ方の変化に見合う施設への投資が要ると述べている[1]。公表が市場に急ぎの空気を生み、会員の希少性を強めたともリリースは書く[1]。
運営面では、12州で40超の施設を受託するボビー・ジョーンズ・リンクスが入り、総支配人にはPGA(米国プロゴルフ協会)の資格を24年持つ人物が就いた[2]。ロブソン氏は、一般開放の施設から会員制に移るなかで、会員の要望を最優先に扱う運営を同社が1年半続けてきたと評価している[1]。
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完全会員制への移行で会員数と会員収入はどれだけ伸びたのか
2025年初めから2026年4月末までに、会員は差し引き185人増えた[1]。内訳は、2025年の新規入会105人で純増80人、2026年1〜4月の新規入会110人で純増105人だ[1]。2026年は4か月で、2025年通年の新規入会を上回った。

退会を差し引いた数で見ると、2025年は新規の約4分の1が退会で相殺された。2026年1〜4月は、新規110人に対し純増105人で、退会による目減りが小さい。全会員は約500人に近づき、うちゴルフ会員が約300人だ[1]。
| 項目 | 数値 | 範囲・注記 |
|---|---|---|
| 会員の純増 | 185人 | 2025年1月〜2026年4月[1] |
| 2025年の新規入会/純増 | 105人/80人 | 通年[1] |
| 2026年の新規入会/純増 | 110人/105人 | 1〜4月[1] |
| 全会員数 | 約500人 | うちゴルフ会員約300人[1] |
| 会員収入の伸び | 前年比40%超 | 比較期間はリリースに明記なし[1] |
| 入会金・年会費の金額 | 非公表 | — |
※「—」は本稿で確認していない項目、「非公表」は公開されていない項目。
注意したいのは40%超の範囲だ。これは会員収入(membership revenue)の伸びで、クラブ全体の売上や利益の数字ではない[1]。ビジターのプレー料金がどれだけ減ったかも公表されておらず、差し引きで収益が増えたかはこの数字だけでは判断できない。
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ゴルフ以外の施設投資は会員集めにどう効いたのか
投資の柱は、2025年9月に完成した屋内ラケット施設、ラケッツ・パビリオンだ[1]。ドームで覆われ、天候に関係なく1年中ラケット競技のプログラムを組めるという[1]。ロブソン氏は、ドームがなければ提供できなかった会員区分とプログラムが生まれたと話している[1]。
全会員約500人のうちゴルフ会員は約300人なので、残る約200人はゴルフ以外の会員区分にいる計算になる[1]。リリースは入会の理由を示していないが、ゴルフをしない家族やラケット競技の愛好者も会員の対象にしたことが、人数を押し上げた可能性がある。屋外のテニスコートだけでは、雨や夏の暑さで使えない日が出る。屋根のあるドームが、季節を問わず通う理由になったとも考えられる。
クラブは1,600戸を超える住宅を含む開発地とつながっている[1]。ロブソン氏は、会員の多くが自宅からカートでクラブに来て、帰りにプールに寄れる点を挙げた[1]。周辺住宅地は地元タルサの住宅展示会で2019〜2024年に最優秀住宅地に選ばれている[2]。

ロブソン氏は、移行には調べ尽くしても不確実さが残るとも語っている[1]。ゴルフだけでなく家族で使う施設をそろえ、住宅地の住民を会員に取り込む設計が、入会の伸びを支えたというのが筆者の見立てだ。
米国ジョージア州アトランタを拠点とするクラブ運営会社ボビー・ジョーンズ・リンクス(Bobby Jones Links、以下BJL)を、世界最大手のゴルフ場運営会社トゥーン(Troon、米アリゾナ州拠点)が買収したと2026年8月3日に発表[…]
米国では会員制ゴルフクラブの需要が伸びているのか
フォレストリッジの動きは、米国の会員制ゴルフの追い風と重なる。全米ゴルフ財団(NGF、米国のゴルフ業界の調査団体)によると、会員制クラブは米国のゴルフ場供給の約4分の1を占める[5]。一方で、会員制クラブの会員はゴルファー全体の8%に満たない[4]。
その会員数は、コロナ禍の時期(2019年以降)に約50%増えた[4]。NGFが2025年10月に示した前年比では、会員制クラブのラウンド数が3%増、一般開放のコースが1%増だった[4]。新設コースの計画でも、会員制が半数を超えるという[4]。
NGFは、会員制クラブのゴルファーは平均より多くプレーし、多くお金を使うとも説明する[4]。レッスンを受けたりゴルフ旅行に出たりする割合も高く、世帯収入も平均より高い[4]。クラブ側から見れば、人数は少なくても1人あたりの支出が大きい層だ。
NGFは、人気のある会員制クラブで会員名簿と順番待ちが膨らんでいると書いている[4]。需要が積み上がる市場では、一般開放のコースが会員制に移っても、入会の受け皿が残っている。フォレストリッジの純増は、この流れの中に置いて読むと位置がつかみやすい。
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日本でも一般開放コースを会員制に切り替える動きはあるのか
公開情報で確認できる範囲では、日本で一般開放のコースを完全会員制に切り替えたという事例は見つからなかった。会員制とパブリック(一般開放)の構成比を示す新しい公的統計も、本稿では入手できず、日本の公開データは乏しい。
確認できるのは大手の事業の組み立て方だ。パチンコ機メーカーの平和は2024年12月、ゴルフ場運営のアコーディア・ゴルフの親会社を買収すると発表した[6]。取得価額は有利子負債などを含めて5,100億円で、子会社のパシフィックゴルフマネージメント(PGM)と合わせ、保有ゴルフ場は321か所になる見込みとした[6]。
平和の資料は、アコーディアを初心者や女性も通いやすいブランド、GRAND PGMを高級ブランドと位置付けている[6]。年間来場者数は、アコーディアが1,202万人、PGMとGRAND PGMの合算が905万人だった(2024年3月期)[6]。国内ゴルフ場の市場規模は2023年に9,390億円と、同じ資料が日本生産性本部の数値を引いている[6]。
| 比較軸 | 米国(フォレストリッジ・NGF) | 日本(平和の開示資料) |
|---|---|---|
| 事例の方向 | セミプライベートから完全会員制へ[1] | 一般開放から会員制への転換事例は確認できず |
| 成果の測り方 | 会員の純増・会員収入の伸び[1] | 保有ゴルフ場数・年間来場者数[6] |
| 客層の分け方 | 会員制かどうか[2] | 同じグループ内のブランドの違い[6] |
| 会員制の比率 | ゴルフ場供給の約4分の1[5] | — |
※「—」は本稿で確認していない項目、「非公表」は公開されていない項目。
導入 豪州(オーストラリア)発のゴルフ会員制プラットフォーム「Future Golf」が、2026年9月9日に米国へ上陸した。まずはカリフォルニア州から展開し、ネバダ・テキサス・アリゾナ・フロリダを加えた5州、60以上の加盟コースへと広げ[…]
まとめ
フォレストリッジは、ビジターのプレー料金を手放す前に、ゴルフ以外の会員区分と住宅地の住民という受け皿を用意した。その結果、2025年1月から2026年4月までに会員が差し引き185人増え、会員収入は前年比40%超伸びた。
コースに通う側にとっては、会員制の需要が強い米国では、近所のビジターを受け入れるコースが会員制に変わる例が今後も出うると知っておくと、ニュースの見え方が変わる。ビジネスの判断材料としては、会員収入の伸びだけでなく、手放したビジター収入と退会の数を並べて見ることが要る。
40%超は会員収入に限った数字で、クラブ全体の損益は公表されていない。11月1日の移行後に会員数が伸び続けるかが、この判断の答え合わせになる。
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よくある質問(FAQ)
Q. 完全会員制になると、会員以外はプレーできないのか。
A. 2026年11月1日以降、フォレストリッジは完全会員制のクラブになる[2]。会員以外の利用条件の詳細は、リリースでは示されていない。
Q. 会員収入40%超増は、売上全体の伸びなのか。
A. 違う。会員収入(membership revenue)の前年比で、クラブ全体の売上や利益の数字ではない[1]。
Q. 米国では会員制クラブが増えているのか。
A. NGFによると、会員制クラブの会員数は2019年以降で約50%増え、新設コースの計画でも会員制が半数を超える[4]。
出典
- From daily fee to fully private, The First Call Golf(The Club at Forest Ridge/Bobby Jones Links リリース), 2026-09-30. https://www.firstcallgolf.com/industry-news/release/2026-09-30/from-daily-fee-to-fully-private
- Oklahoma’s The Club at Forest Ridge will become a fully private country club in November 2026, The First Call Golf, 2026-02-05. https://www.firstcallgolf.com/industry-news/release/2026-02-05/oklahomas-the-club-at-forest-ridge-will-become-a-fully-private-country-club-in-november-2026
- The Club at Forest Ridge (OK) goes private, The Golf Wire, 2026-02. https://thegolfwire.com/club-at-forest-ridge-ok-goes-private/
- Golf’s Private Side, National Golf Foundation, 2025-10-02. https://www.ngf.org/short-game/golfs-private-side/
- Summary of U.S. Private Golf – 2025, National Golf Foundation. https://www.ngf.org/member-publication/summary-of-u-s-private-golf/
- 株式会社アコーディア・ゴルフの親会社であるPJC Investments株式会社の株式取得に関する補足資料, 株式会社平和, 2024-12-18. https://www2.jpx.co.jp/disc/64120/140120241218540214.pdf


