障がいのあるゴルファーを迎えると年2.65億ポンド 英・アイルランド調査の試算

欧州障がい者ゴルフ協会(EDGA、European Disabled Golf Associationの略。障がいのあるゴルファーの競技と普及を支える国際団体)は2026年9月17日、英国の調査会社スポーティング・インサイツ(Sporting Insights)に委託した調査の結果を公表した[1][2]。対象は英国(グレートブリテン)とアイルランドで、障がいや健康上の課題、学習障がいのある人のうち、ゴルフに関わる人は約130万人と推計された[1]。受け入れ体制を整えれば170万人に増え、ゴルフ市場に年2億6500万ポンド(約556億円)の価値が加わるという試算だ[1][2]。

ゴルフをする側から見ると、行くコースの受け入れ体制の話になる。調査では、対象となった現役ゴルファーの28%が、健康上の制約を抱えた後にゴルフを始めていた[1]。けがや病気を抱えた後もプレーを続けられるかは、コースの設備や指導体制にかかっている。

ビジネス側の論点は、2.65億ポンドが実現した売上ではなく、阻害要因を取り除いた場合の試算だという点にある。本稿は試算の前提と、費用・アクセス・認知といった阻害要因を整理し、ゴルフ場の集客余地を供給側の体制から読み解く。

※ポンドの円換算は、三菱UFJ銀行の2026年9月25日の公表仲値(TTM、1ポンド=209.80円。9月26日時点の最新の公表値)で計算した[3]。

EDGAの調査は障がい者ゴルフの市場をどう試算したのか

調査の結論は、英国とアイルランドで障がい等のある人のゴルフへの関与を約40万人増やせるというものだ[1][2]。ここでの関与は、定期的にプレーする人だけでなく、ゴルフに何らかの形で関わる人を含む推計だ。このうち定期的にプレーする人は36万2000人から47万6000人へ、11万4000人増えると見込む[1]。

金額は2段階で示されている。EDGAは、全ゴルファーから生まれる価値の伸びを英国・アイルランドだけで年2.65億ポンドと推計した[1]。定期プレー層の増加分だけで年9600万ポンド(約201億円)を見込む[1][2]。

受け入れ体制を整えると、ゴルフに関わる障がい等のある人は130万人から170万人に増える試算

筆者の単純計算では、2.65億ポンドを増える40万人で割ると1人あたり年約660ポンド(約13.8万円)になる。定期プレー層では9600万ポンドを11万4000人で割り、年約840ポンド(約17.6万円)だ。調査がこうした1人あたりの内訳を示しているかは、公表資料では確認できなかった。

試算の背景について、EDGAのトニー・ベネット会長は、世界人口の16%に障がいがあることを挙げている[1][2]。そのうえで、障がいのある新しい世代の消費者は、顧客としてより多くを求めていると述べた[1]。

公表資料には、この成長をいつまでに実現するかという時期の記載は見当たらない。筆者の見立てでは、2.65億ポンドは達成の目標ではなく、迎える準備が整った場合の市場の大きさを示す目安として読むのが妥当だ。

調査は2025年後半に英国・欧州などで実施され、回答者の内訳は次のとおりだ[1]。

障がい等のある英国居住者1001人、英国成人の代表サンプル1503人、EDGA名簿の523人の回答をスポーティング・インサイツが分析し、3本の報告書で年2.65億ポンドの成長余地を試算した流れ
EDGA委託調査の回答者と報告書の構成

EDGA名簿の523人は英国135人、欧州168人、その他の地域220人だ[1]。報告書は英国内の参加実態、市場規模と経済効果の分析、EDGA登録選手の調査の3本からなる[1]。

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障がいのあるゴルファーはゴルフをどう評価しているのか

英国の障がい等のあるゴルファー(EDGA登録者を含む)の多くは、ゴルフの体験を肯定的、またはとても肯定的と評価した[1]。89%が、ゴルフは幅広い障がいのある人が楽しめると答えた[1][2]。85%は、ゴルフは異なるニーズに合わせて調整しやすいと答えている[1]。

プレーの動機は楽しさと健康だ。スポーツをする主な理由に楽しさを挙げた人は69%、健康の改善・維持を挙げた人は70%だった[1]。英国の障がいのあるゴルファーの65%は、ゴルフはほかの主要スポーツより障がいのある人に向いていると答えた[1]。

英国の障がい等のあるゴルファーの9割近くが、ゴルフは幅広い障がいでも楽しめると回答

需要がはっきり出ているのは指導の面だ。調査対象のゴルファーの66%が、専門のコーチングがあれば利用すると答えた[1][2]。障がいのあるゴルファーはほかの人をゴルフに誘う傾向が強い、ともEDGAは説明している[1]。

一方で、ゴルフの参加者は男性の比率が高い。障がいのある人口の52%は女性であり、女性の取り込みが遅れている[1]。若年層では精神疾患や自閉スペクトラム症、コミュニケーションや学習の障がいが多く、直接の支援がないと試す機会を逃しやすいという[1]。

高齢層についても言及がある。適切なコーチングと環境は定着と上達に大きく影響し、調整次第でゴルフは高齢者が長く活動を続ける手段にもなるという[1]。

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障がい者のゴルフ参加を阻むものは何か

調査が挙げた阻害要因は、費用、物理的なアクセス、周囲の態度、認知の不足、適切な調整の不足の5つだ[1][2]。EDGAは、参加を妨げているのは本人の能力ではなく周囲の認識だと整理している[1]。

5つのうち費用と物理的なアクセスは料金や設備の問題で、残る3つは人と情報の問題に分けられる。

EDGAは現在、英国・アイルランドの各国ゴルフ協会を含む50の国内競技団体と、12の各国PGA(プロゴルファー協会)と連携している[1][2]。R&A(ゴルフの規則を管轄する英国の団体)が推奨する8段階の育成の道筋(パスウェイ)を、この4年間で各団体に広めてきた[1]。

上段は5つの阻害要因で、料金・設備(費用、物理的アクセス)と人と情報(周囲の態度、認知の不足、調整の不足)の2つに分かれる。中段はパスウェイの支援(競技会の仕組み、安全な会場、スタッフ・ボランティア研修、コーチ教育、地域での普及)。下段は参加の段階で、初めての体験から定期プレー、競技参加へ進む
阻害要因と、EDGAのパスウェイが支援する領域

支援の中身は、競技会の仕組み、安全な会場づくり、スタッフとボランティアの研修、コーチ教育、地域での普及活動だ[1]。初めての体験から定期的なプレー、大会出場までを一続きで支える[1]。

EDGAは調査結果から、次の4点を自らの活動の裏付けとして挙げた[1]。

  • 診断を受けた後に参加の道筋を用意すると効果があり、広げるべきだ
  • 主な制約は本人の能力ではなく、周囲の認識だ
  • コーチング、教育、人材育成が持続的な成長の中心になる
  • 女性や若年層など、複数の層に未開拓の余地がある

筆者の見立てでは、ゴルフ場にとっての論点は設備投資よりも人の体制にある。阻害要因のうち態度と認知はスタッフの対応で変わり、専門コーチングへの需要も66%と高いからだ。ベネット会長は、ゴルフ業界にとって機会があるかどうかではなく、各組織がそれをどう変化につなげるかが問われていると述べた[1]。

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日本の障がい者ゴルフはどこまで広がっているのか

日本では障がい者ゴルフの競技団体は活動しているが、参加人数や市場規模の推計は一次情報では確認できなかった。英国・アイルランドのように、受け入れ体制を整えた場合の集客余地を金額で示した調査も見当たらない。

担い手の中心はNPO法人日本障害者ゴルフ協会(DGA)だ。1991年に創立し、1996年から活動を始めた[5]。東京・首都圏、名古屋・中部、関西の3支部で例会やレッスン会を開き、年3回の公式競技を主催している[5]。2025年11月に福岡県で開いた第30回日本障害者オープンゴルフ選手権には、74人が出場した[6]。

障がい者のスポーツ全般では、スポーツ庁が2026年3月11日に公表した調査がある[4]。週1日以上運動・スポーツをする人の割合は、20歳以上で35.0%、7〜19歳で38.3%だった[4]。20歳以上の週1日未満の人では、「行いたいと思うができない」が28.2%を占めた[4]。

比較軸英国・アイルランド日本
障がい等のあるゴルフ関与者の推計約130万人[1]—
受け入れによる市場の試算年2.65億ポンドの価値増[1]—
主な推進団体EDGA(50の国内競技団体、12のPGAと連携)[1]日本障害者ゴルフ協会(3支部、年3回の公式競技)[5]
全国規模の大会—日本障害者オープン、2025年は74人出場[6]
障がい者のスポーツ実施率—週1日以上:20歳以上で35.0%[4]

※「—」は本稿で確認していない項目。

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まとめ

EDGAの委託調査は、障がいや健康上の課題のある人の受け入れを、年2.65億ポンドという金額で示した。ただしこれは阻害要因を取り除いた場合の試算で、実現した売上ではない。阻害要因は費用、アクセス、態度、認知、調整の5つで、66%が専門コーチングを利用したいと答えている。

ゴルフをする読者にとっては、けがや病気を抱えた後もプレーを続けられるかが、通うコースの体制で決まる点が見え方を変える。ビジネス読者にとっては、集客余地が設備だけでなく、スタッフ研修やコーチ教育といった人の体制に左右されることが判断材料になる。日本では同じ規模の推計が一次情報では確認できず、比較の土台になる数字そのものがまだ乏しい。

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よくある質問(FAQ)

Q. 2.65億ポンドはもう生まれている売上なのか。
A. そうではない。受け入れ体制を整えて関与者が約40万人増えた場合に、英国・アイルランドのゴルフ市場に加わる年間の価値を推計した試算だ[1]。

Q. 障がいのある人は何に困っているのか。
A. 調査では、費用、物理的なアクセス、周囲の態度、認知の不足、適切な調整の不足の5つが阻害要因として挙がった[1]。

Q. 日本にも障がい者ゴルフの大会はあるのか。
A. ある。日本障害者ゴルフ協会が日本障害者オープンゴルフ選手権などを主催しており、2025年の第30回大会には74人が出場した[6]。

出典

  1. EDGA highlights ‘untapped growth potential’ in golf market, EDGA, 2026-09-17. https://www.edgagolf.com/web24/edga-highlights-untapped-growth-potential-in-golf-market/
  2. New Research Shows Inclusive Golf Could Unlock £265 Million in Annual Growth, GCMA(Golf Club Managers’ Association), 2026-09-17. https://gcma.org.uk/news/new-research-shows-inclusive-golf-could-unlock-265-million-in-annual-growth/
  3. 外国為替相場(2026年9月25日), 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(三菱UFJ銀行の公表相場). https://www.murc-kawasesouba.jp/fx/past/index.php?id=260925
  4. 令和7年度「障害児・者のスポーツライフに関する調査研究」の調査結果について, スポーツ庁, 2026-03-11. https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/houdou/jsa_00231.html
  5. トップページ, NPO法人 日本障害者ゴルフ協会. https://dga-japan.com/
  6. 第30回日本障害者オープンゴルフ選手権は無事終了しました, NPO法人 日本障害者ゴルフ協会, 2025-11-30. https://dga-japan.com/news/30th-japan-disabled-open-2025/