2025年ゴルフ振り返り――平均スコアが悪化したのに、なぜか私は「上達した」と確信している

 

2025年のゴルフシーズンが終わりました。 結果から言いましょう。最悪です。悲しいです。 どれくらい悲しいかというと、2024年に 95.2 だった平均スコアが、2025年は 97.0 になりました。

1.8打、増えました。 毎週のように練習場やラウンドへ通い、プロや自分のスイング動画を穴が開くほど眺め、高いボールを買い足してきた1年間。その結末が「1.8打の退化」です。

普通なら、ここで「ゴルフなんて二度とやるか」と叫んで、ゴルフバッグを物置の奥深くに封印するところです。

しかし、私は少しだけ統計学を勉強中です。そして、自分の全ラウンドデータをExcelにぶち込んで分析した結果、奇妙な事実に気づいてしまったのです。

「あれ? 私、下手になったんじゃなくて、上達してないか?」

今日は、平均スコアという「残酷な現実」の裏側に隠された、美しきデータの正体についてお話しします。

3. 2024年 vs 2025年:数字が語る「安定した衰退」

去年の自分と今年の自分を、忖度なしで戦わせてみました。

指標2024年2025年変化
総ラウンド数7152-19
平均スコア95.297.0+1.8
標準偏差(SD)6.676.09-0.58

主要ティー別に見ても、状況は一貫しています。全ての主戦場で、私のスコアは「安定して」悪化しました。

ティー’24平均’25平均’24回数’25回数
ゴールド95.896.53325
98.8100.51813
87.591.8129

「安定して下手」という境地

まず見てほしいのが「標準偏差」という数字です。下のグラフだと、Standard Deviation(SD)。要は「スコアのバラつき」ですね。 これが、笑えるくらい綺麗に減っているんです。

  • 2022年:7.85

  • 2023年:7.39

  • 2024年:6.67

  • 2025年:6.09

わかりますか。平均スコアが「95→97」とフラついている横で、バラつきだけは4年間一度も休まずに、シュッと小さくなり続けている

2022年の私は、時々80台が出る代わりに、110を叩き出す「爆弾」のようなゴルファーでした。当たればデカいが、外れれば大惨事。 でも、2025年の私は違います。どんなに調子が悪くても、どんなに雨が降っても、鋼のような意志で「97前後」をきっちり叩き出す。

これ、統計学的には「再現性が向上した」って言うわけです。

プロの世界でも「安定感」は技術の証です。つまり私は今、「正確に97を量産する精密機械」へと進化したわけです。……嬉しくない? いや、嬉しいはずなんです。たぶん。

「ティーが難しかったから」という言い訳を解体する

ここで、ゴルファー、特に女子なら誰もが使う魔法の言い訳を検証してみましょう。 「いや、今年はちょっと白ティーから打つ機会が多かったからさ」

これ、本当でしょうか? 私の2025年のスコアが悪くなったのは、単に「難しいコース設定に挑んだから」なのか、それとも「私の腕自体が純粋に腐っている」のか。

これをはっきりさせるために、統計の概念である「分散分解」という手法を使いました。 小難しい数式は抜きにして、要はこういうことです。

「スコアのバラつき = ティーの選択による差 + 同じティー内での調子の波」

さて、私が「安定して下手になった」ことを証明するために、以下の指標を定義しましょう。

私の残念な結果を論理的に解体する「分散分解の公式」は、以下の通りです。$$ \mathrm{Var}(X) = E[\mathrm{Var}(X \mid T)] + \mathrm{Var}(E[X \mid T]) $$

もし、スコア悪化の原因がティーの選択にあるなら、「ティーの選択による差」の割合が大きくなるはずなのです。

7割は「自分のせい」だった

計算した結果、私の2025年のデータはこう言っていました。

  • ティーの選択による影響:27.7%

  • 同じティー内での揺れ(実力):72.3%

……はい、論破されました。 「今日は白ティーだったからスコアが悪かった」という言い訳は、全体の3割くらいしか通用しません。残りの7割は、同じティーで回っても勝手に私がドタバタしてスコアを落としているだけです。

「今日は条件が悪かった」と天を仰ぐ前に、まず自分のショットを疑え。データはどこまでも冷酷です。

でも、救いもあります。 この「同じティー内での揺れ」そのものも、年々小さくなっているんです。 つまり、2025年の私は「ティーがどこであろうと、自分の実力の範囲内で安定して(低い)パフォーマンスを出す」という、ある意味で逃げ場のない実力を手に入れたことになります。

競技ゴルフが教えてくれる「真実の姿」

さらに、遊びのラウンドを除いた「競技ラウンド」のデータだけを抽出してみました。 OKパットなし、前4なし、緊張感あり、ノイズなしの、いわば「私の履歴書」です。

ここでも傾向は同じでした。 平均スコアは少し上がりましたが、標準偏差は劇的に縮小。 これは、私が「プレッシャーがかかる場面でも、大崩れしなくなった」ことを示しています。

かつての私は、競技になるとパニックを起こして「12」とか叩いていましたが、今はもうそんなことはありません。静かに、淡々と、予定通りの主にダボを積み重ねる。

「奇跡のパー」も「悲劇のトリ」も同じ程度発生。

私のゴルフは、もはやスポーツというよりは、淡々と進行する「事務作業」の領域に達したのです。

結論:2025年は「分布が締まった」良い年だった

結局、2025年は私にとってどんな年だったのか。

平均スコアが1.8打増えたことだけを見て「下手になった」と泣くのは、今日限りでやめます。 統計的に見れば、2025年は「不確実性が排除され、実力が丸裸になった年」でした。

裾野が広かった私のスコア分布が、ギュッと中央に凝縮された。 これは、次に「平均スコアを左(良い方)へずらす」ための準備が整ったということです。

来年、2026年。 もし平均スコアがまた悪化していたら? その時は、また新しい統計モデルを持ち出して、新しい統計モデル(例えば、加齢による筋力低下を共変量とした重回帰分析など)を持ち出して、私が「統計的には依然として優れている」ことを証明する記事を書くことになるでしょう。

数字は嘘をつきませんが、解釈次第でいくらでも自分を慰めることができます。 ゴルフはメンタルのスポーツです。統計学は、そのメンタルを守るための、最強の盾なのかもしれません。

さあ、みなさんも平均スコアに絶望するのはやめて、標準偏差を計算しましょう。 「安定して下手」な自分に気づいたとき、本当の上達が始まる……かもしれませんよ。

(統計的補足)

今回の分析で使用した主な概念:

  • 記述統計:平均、標準偏差、分散。

  • 条件付き期待値と分散: 期待値: \( E[X \mid T] \) 分散: \( \mathrm{Var}(X \mid T) \)

  • 分散の加法性(分散分解):全分散を「群内分散」と「群間分散」に分ける手法。

  • 寄与率:どの要因が全体のバラつきにどれだけ影響しているかの数値化。

これらはすべて統計検定準1級の範囲内ですが、ゴルフのスコア管理に適用することで、自分の「下手さ」をより深く、論理的に愛することができるようになります。