
毎年数百〜数千台のPCをリース更新や入社時に入れ替えている日本企業では、社内のWDSサーバーとMDTでPCを一斉にネットワーク起動してキッティングする運用が今も多い。その情報システム部門で端末管理を担う担当者に、次のサーバー更改の設計を左右する告知が出た。
2026年9月21日、MicrosoftはKB5129631を公開し、次期Windows ServerからWDS(Windows Deployment Services、PCをネットワーク経由で起動してOSを配る標準の役割)を非推奨にすると発表した[1]。対象はWDSの役割そのものに加え、PXEブート、マルチキャスト転送、WinPE-WDS-Toolsまで含む[1]。層でいえば、PCの電源を入れてからOSが入るまでの展開基盤の話だ。
WDS経由の無人展開は2026年4月の更新で既定無効になり、MDTも1月に提供終了した[4][5]。WDSとMDTの組み合わせは、すでに部品が外れ始めている。
本稿の結論を先に書く。Windows Server 2025のWDSは2034年11月まで使えるため、慌てて捨てる必要はない[1][6]。ただし移行先ごとに前提条件が大きく違うので、次の更改の設計段階で行き先を決めておくべきだ。
予備知識
- PXE: PCがOSなしでネットワークから起動用プログラムを受け取る仕組み
- マルチキャスト: 1つのOSイメージを複数台へ同時に流す配信方式
- Configuration Manager: Microsoftのオンプレミス型端末管理製品。OS展開機能と配布ポイントを持つ
- Autopilot: PCメーカーが入れたWindowsをクラウド経由で業務用の状態に変える仕組み
Autopilotを移行先に入れるなら前提になるIntuneの登録とポリシー配布を、画面手順で確かめられる一冊。
KB5129631で何が非推奨になったのか——WDSの役割とPXE・マルチキャスト
非推奨になるのは、WDSの役割と付随するPXE・マルチキャスト・管理ツール一式である[1]。
| 区分 | 非推奨の対象 | 変わらないもの |
|---|---|---|
| 役割 | WDS役割、Deployment Server、Transport Server | Windows Server 2025以前のWDS |
| 起動 | WDSが提供するPXEブート | WDSに依存しない他社PXE |
| 配信 | WDSマルチキャストと依存ワークフロー | Configuration ManagerのOS展開 |
| 管理 | 管理ツール、WDSUTILなどのCLI、API | HTTP(S) Boot(別機能) |
| WinPE | WinPE-WDS-Tools | — |
※「—」は本稿で確認していない項目。
削除時期はまだ決まっていない。KBは、次のLTSC(長期サービスチャネル)で削除される場合も、数リリース先になる場合もあるとしている[1]。告知は9月25日にWindowsメッセージセンターにも載り、BleepingComputerも報じた[2][3]。

今回は突然の告知ではない。2021年には、インストールメディアのboot.wimをWDSで使う手順がWindows 11以降で非推奨になっていた[1]。
WDSを猶予期間中も使い続ける受け皿となるWindows Server 2025の基本構成と運用管理を押さえるのに向く。
Windows Server 2025以前でWDSはいつまで使えるのか
Windows Server 2025以前のWDSは、各版のサポート期間中は従来どおり使える[1]。セキュリティ更新の適用は引き続き必要だ[1]。
| 版 | 延長サポート終了 | WDSを使える残り期間(2026年10月起点) |
|---|---|---|
| Windows Server 2016 | 2027年1月 | 約3か月 |
| Windows Server 2019 | 2029年1月 | 約2年3か月 |
| Windows Server 2022 | 2031年10月 | 約5年 |
| Windows Server 2025 | 2034年11月 | 約8年1か月 |
2016で動かしている組織は、WDSの判断より先にOSの期限が来る[6][7][8][9]。

ただし、猶予があるのはPXE配信の部分だけだ。Unattend.xml(応答ファイル)を使う無人展開は、CVE-2026-0386への対策として2026年4月14日以降の更新で既定無効になった[4]。認証のない経路で応答ファイルが流れ、資格情報を盗まれるおそれがあるためだ[4]。
KB5074952が示す設定は次のとおりだ[4]。値を1にすれば無人展開は続くが、安全でないためMicrosoftは推奨していない[4]。
HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\WdsServer\Providers\WdsImgSrv\Unattend
DWORD: AllowHandsFreeFunctionality
0 = 無人展開を無効(安全)/1 = 無人展開を継続(非推奨)
MDT(Microsoft Deployment Toolkit、展開手順を組む無償ツール)は2026年1月6日に即時提供終了となった[5]。既存環境は動くが、更新もサポートもなく、直接の移行経路もない[5]。
数千台規模のWindows端末を、オンプレミスのActive Directory(AD、企業内のユーザー・端末を一元管理するディレクトリサービス)とGPO(グループポリシーオブジェクト、ADで端末設定を一括配布する仕組み)でパッチ運用して[…]
移行先はConfiguration Manager・Autopilot・他社PXEのどれか
移行先は、独自イメージを焼くか、メーカー出荷のWindowsを生かすかでまず分かれる。KBはConfiguration Managerを例に挙げ、MDTの終了告知はAutopilotを推奨する[1][5]。
| 観点 | Configuration Manager | Autopilot | 他社PXE製品 |
|---|---|---|---|
| WDSの要否 | 不要(WDSなしのPXE応答機能) | 不要 | 製品次第 |
| マルチキャスト | 使えない(ユニキャストのみ) | 対象外 | 製品次第 |
| 独自イメージ | 使える | 使わない(メーカー出荷版を変換) | 製品次第 |
| ネットワーク | 社内LANと配布ポイント | インターネット上の各サービス | 製品次第 |
| ライセンス | Configuration Manager | Entra ID P1とIntune相当(M365 E3等) | 製品ごと |
Configuration Managerを使う場合、配布ポイントで「Enable a PXE responder without Windows Deployment Service」を有効にすればWDSなしでPXEに応答できる[10]。有効にするとWDSサービスは停止される[10]。ただしこの応答機能とマルチキャストは同時に有効にできない[10]。
Autopilotはメーカーが入れたWindowsを業務用の状態に変えるため、機種ごとのイメージとドライバーの管理が要らない[13]。一方で、展開中の端末がEntra ID、Intune、Windows Updateなどへ到達できることが前提になる[12]。

HTTP(S) Boot(ファームウェアがHTTPで起動する方式)は他製品では代替になり得るが、Configuration ManagerのPXE型OS展開の代わりにはならない[1]。
工場の検査装置や店舗のPOS、窓口端末にWindows 10 Enterprise LTSC 2021を入れて運用している、数百〜数千台規模の製造・流通・金融企業の情シスと生産技術の担当者向けの記事だ。装置ベンダーの検証を待たないとOSを[…]
マルチキャストをやめるとキッティング工程はどう変わるか
影響が最も大きいのは、マルチキャストで一斉に流していた現場だ。WDSなしのPXE応答機能はユニキャストだけなので、配信は1台ずつになる[1][10]。
Microsoftの目安では、他の資源を考えなければ、100Mbpsの回線で4GBのイメージを1時間に処理できるのは11台だ[11]。100Mbpsは1時間で45GBになり、4GBで割ると11台になる[11]。
| 条件 | 1時間あたりの台数 | 根拠 |
|---|---|---|
| 100Mbps・4GBイメージ | 11台 | Microsoftの例示[11] |
| 1Gbps・4GBイメージ | 約110台 | 上記の単純計算(他の資源は考慮しない) |
KBも、ユニキャストへ移るなら配布ポイントの追加、回線容量、時間割、一度に流す台数の見直しを求めている[1]。

KBは依存関係の洗い出しも促す。対象はWDSの役割が入ったサーバー、独自のWinPE、スクリプト、WDSUTILの利用、WDS APIを呼ぶアプリだ[1]。
従業員数千人規模で、オンプレミスのVMware仮想化基盤をAzure VMware Solution(AVS、MicrosoftがAzure上で提供するVMware互換の仮想化基盤サービス)へ移行済み、または移行中の日本企業は少なくない。[…]
リース更新とキッティング委託を抱える日本企業はどこから見直すか
同じ問題は日本企業でも起きる。ただし、キッティングの担い手と展開時の接続先で、移行先の選びやすさが変わる。
| 観点 | KBが想定する組織 | 日本企業で起きやすいこと |
|---|---|---|
| 作業の担い手 | 自社のIT部門 | キッティング業者やSIerが請け負い、WDSやMDTへの依存が手順書に埋もれる |
| ネットワーク | 必要に応じて調整 | 閉域網や認証プロキシのため、Autopilotの通信要件を満たすのに申請が要る |
| 更新の周期 | 製品のライフサイクル | 4〜5年のリース満了とサーバー保守期限が別々に来る |
| 決裁 | 移行計画を随時実施 | 基盤更改は年度予算と稟議に乗せるため、前年度から準備が要る |
特に重いのは委託契約だ。手順書がMDTとWDSマルチキャスト前提なら、移行は委託先の見積もりから始まる。
IT部門の判断としては、次のサーバー更改をWindows Server 2025で受けるか、WDSを使わない構成へ移るかを、キッティング委託先の手順書を棚卸ししてから決める。決裁側の判断としては、ユニキャスト化に伴う配布ポイントの追加や回線増強、委託手順の改訂費用を、次年度の基盤更改予算に含めるかを決める。
よくある質問(FAQ)
Q. 今あるWDSサーバーはすぐ止まりますか。
A. 止まらない。Windows Server 2025以前のWDSは、各版のサポート期間中は使える。
Q. Configuration Managerも使えなくなりますか。
A. OS展開機能は非推奨にならない。WDSを使うPXEは、WDSなしのPXE応答機能へ切り替える。
Q. MDTはもう使えませんか。
A. 既存の環境は動く。ただし2026年1月で更新とサポートは終わった。
まとめ
KB5129631は、次期Windows ServerでWDSの役割、PXE、マルチキャストを非推奨にする告知だ。Windows Server 2025なら2034年11月まで猶予があるが、無人展開は既定無効、MDTは提供終了済みだ。
IT部門の次の一手は、WDSの役割が入ったサーバー、マルチキャストの利用、WinPE-WDS-Toolsや独自スクリプトへの依存を棚卸しし、代表機種でWDSなしのPXE応答機能かAutopilotを検証することだ。決裁側の判断材料は、マルチキャストを失うと4GBのイメージで100Mbpsあたり1時間11台が目安になるため、配布ポイントや回線の追加費用が次のサーバー更改の時期に発生する点である。
削除時期が未定のうちは、移行を急ぐより行き先を決めることが先になる。次の更改を展開基盤の選び直しに使える組織ほど、負担は小さい。
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出典
[1] Microsoft Support「Windows Deployment Services (WDS) deprecation in the next Windows Server release」KB5129631(2026-09-21) https://support.microsoft.com/en-us/servicing/os/windows/docs/2026/09/windows-deployment-services-deprecation-in-the-next-windows-server-release[2] Microsoft Learn「Windows message center」(2026-09-25掲載分) https://learn.microsoft.com/en-us/windows/release-health/windows-message-center
[3] BleepingComputer「Microsoft to deprecate Windows Deployment Services after Windows Server 2025」 https://www.bleepingcomputer.com/news/microsoft/microsoft-to-deprecate-windows-deployment-services-after-windows-server-2025/
[4] Microsoft Support「Windows Deployment Services (WDS) Hands-Free Deployment Hardening Guidance related to CVE-2026-0386」KB5074952(2026-01-13) https://support.microsoft.com/en-us/topic/windows-deployment-services-wds-hands-free-deployment-hardening-guidance-related-to-cve-2026-0386-0daa3a3c-f3cd-4291-9147-a459c290c462
[5] Microsoft Learn「Microsoft Deployment Toolkit (MDT) – immediate retirement notice」(2026-01-06) https://learn.microsoft.com/en-us/troubleshoot/mem/configmgr/mdt/mdt-retirement
[6] Microsoft Lifecycle「Windows Server 2025」 https://learn.microsoft.com/en-us/lifecycle/products/windows-server-2025
[7] Microsoft Lifecycle「Windows Server 2022」 https://learn.microsoft.com/en-us/lifecycle/products/windows-server-2022
[8] Microsoft Lifecycle「Windows Server 2019」 https://learn.microsoft.com/en-us/lifecycle/products/windows-server-2019
[9] Microsoft Lifecycle「Windows Server 2016」 https://learn.microsoft.com/en-us/lifecycle/products/windows-server-2016
[10] Microsoft Learn「Install and configure distribution points in Configuration Manager」 https://learn.microsoft.com/en-us/intune/configmgr/core/servers/deploy/configure/install-and-configure-distribution-points
[11] Microsoft Learn「Prepare site system roles for OS deployments with Configuration Manager」 https://learn.microsoft.com/en-us/intune/configmgr/osd/get-started/prepare-site-system-roles-for-operating-system-deployments
[12] Microsoft Learn「Windows Autopilot requirements」 https://learn.microsoft.com/en-us/autopilot/requirements
[13] Microsoft Learn「Overview of Windows Autopilot」 https://learn.microsoft.com/en-us/autopilot/overview


