
Snowflake(クラウド型のデータ分析基盤)を全社の分析基盤として使い、生成AI機能の業務利用を検討している日本企業のデータ基盤担当と予算担当に、見積もりの前提を変える仕組みが入った。顧客データや取引データを東京リージョンに置き、個人データの国外移転を社内規程で制限している企業ほど、この変更の影響を受ける。
Snowflakeは、Cortex Agents(自然言語で問い合わせを受けてデータを検索・集計するAIエージェント)やAI Functions(SQLから呼び出すAI関数)などのAI機能を、通常の利用料とは別の「AI Credits」で課金している[1]。価格はエディションに関係なく一律で、AI処理を他リージョンへ回すことを許す設定なら1クレジット2.00ドル(約310円、1ドル=155円換算)、自社のリージョンや特定の地域に限る設定なら2.20ドル(約341円)になる[1]。
つまり、処理を国内に固定すると単価は1割高くなる。加えて、既存の容量契約の割引はAI Creditsには適用されない[1]。本稿は公式ドキュメントをもとに、どの設定でいくらかかるのかを整理する。データの所在と予算をどう両立させるかも示す。
予備知識
- クレジット: Snowflakeの利用料の単位。ウェアハウスの計算時間などに応じて消費される
- Platform Credits: AI機能以外の通常の利用に使うクレジット。価格はエディションとリージョンで変わる
- クロスリージョン推論: AIの処理を、アカウントがあるリージョン以外の計算資源で行うこと
- 容量契約: 一定額を前払いで約束する代わりに割引を受ける契約形態
ウェアハウス、ロール、クレジットといったSnowflakeの基本を押さえてから費用設計に進みたい担当者に向く。
AI Creditsとは何か——通常の利用料と切り離された別通貨
AI Creditsは、AI機能だけに使う独立した課金単位だ。公式ドキュメントは、AI CreditsはPlatform Creditsと別で、Standard、Enterprise、Business Critical、VPSのどのエディションでも同じ価格だと説明している[1]。一方、Platform Creditsの価格はエディションとリージョンで変わる[1]。
対象になる機能は8つある。Cortex Code、Cortex Agents、Snowflake CoWork、Cortex REST API、AI Functions、Cortex Search、Cortex Batch Search、AI Parse Docだ[1]。Cortex Fine-tuningと、単体で呼び出すCortex Analyst APIは、従来どおりPlatform Creditsで課金される[1]。
公式ドキュメントの計算例では、Enterprise EditionでPlatform Creditsが1クレジット3.00ドルの顧客が、Platform Creditsを100、AI Creditsを100使うと、合計は500ドル(約7万7,500円)になる[1]。内訳は通常利用が300ドル、AI利用が200ドルだ。

注意したいのは割引の扱いだ。年間契約額に応じたAI Creditsの自動割引はあるが、容量契約の割引はAI Creditsに適用されない[1]。既存の容量残高や契約条件は変わらないとされているが、通常利用で得ている割引率をAI利用にもそのまま当てはめて予算を組むと、見込みが外れる[1]。
AI機能のように使うほど増える費用を、部門ごとに見える化して配賦する考え方を学べる。
国内に固定すると何が変わるのか——価格と使えるモデル
単価を決めるのは、アカウント単位の設定CORTEX_ENABLED_CROSS_REGIONだ[1][2]。設定は4種類あり、制約が強いほど単価が上がり、使えるモデルが減る。
| 種類 | 設定値の例 | 処理される場所 | AI Creditの単価 |
|---|---|---|---|
| グローバル | ANY_REGION | 全クラウドの全リージョン | 2.00ドル |
| クラウド限定 | AWS_GLOBAL、AZURE_GLOBAL、GCP_GLOBAL | 同じクラウドの全リージョン | 2.00ドル |
| 地域限定 | AWS_JP、AWS_APJ、AWS_US、AZURE_EUなど | 指定したクラウドと地域 | 2.20ドル |
| 無効 | DISABLED | アカウントのリージョンのみ | 2.20ドル |
AWS上の東京リージョンのアカウントで処理を国内に限るなら、AWS_JPかDISABLEDを選ぶことになる[2]。どちらも2.20ドルの対象だ[1]。公式ドキュメントは、DISABLEDを選ぶと使えるモデルと機能がそのリージョンに展開済みのものに限られると明記している[2]。

他リージョンで処理する場合のデータの扱いも確認しておきたい。公式ドキュメントによると、顧客データはアカウントのあるリージョンにだけ保存される。他リージョンへ送られるのは入力と出力だけで、処理中に一時的に転送され、保存はされない[2]。同じクラウド内では事業者の閉じたネットワークを通り、クラウドをまたぐ場合は相互認証付きの暗号化通信でインターネットを経由する[2]。課金はアカウントのリージョン基準で、データ転送料はかからない[2]。
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自社の設定を確かめる——既定値は組織の作成時期で違う
設定していない場合の既定値は、アカウントを作った時期と置いているクラウド・リージョンで異なる。2026年3月9日より後に新しい組織で作られた商用アカウントはANY_REGIONが既定だ[3]。それ以外の商用アカウントは、同じクラウド内の地域単位の値が既定になり、日本の場合は次のように分かれる[3]。
| アカウントの状況 | 既定値 | 処理される場所 | AI Creditの単価 |
|---|---|---|---|
| AWSの東京・大阪にある既存アカウント | AWS_JP | 東京と大阪のみ | 2.20ドル |
| 2026年3月9日より後に新しい組織で作ったアカウント | ANY_REGION | 国外を含む全リージョン | 2.00ドル |
| Azureの東日本、Google Cloudの東京など | DISABLED | アカウントのリージョンのみ | 2.20ドル |
つまり、AWSの東京リージョンで以前からSnowflakeを使っている企業は、何も設定していなければすでに国内処理の2.20ドル側にいる。逆に、新しい組織で作ったアカウントは既定のままだと国外で処理されうる。なお、AWS_APJはソウル、シンガポール、シドニーなども含むため、国内に閉じた設定ではない[3]。
現在の値は次のコマンドで確認できる[2]。
SHOW PARAMETERS LIKE 'CORTEX_ENABLED_CROSS_REGION' IN ACCOUNT;
データの所在に要件があるなら、既定値に頼らず明示的に設定するよう公式ドキュメントは勧めている[2]。利用量はCORTEX_AGENT_USAGE_HISTORYやCORTEX_FUNCTIONS_QUERY_USAGE_HISTORYといったビューで追える[1]。

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越境移転の社内規程を持つ日本企業は1割の差をどう扱うか
同じ価格体系は日本企業にもそのまま適用されるが、判断の順番が海外の解説と違う。公式ドキュメントはANY_REGIONを、使えるモデルが最も多く、単価も最も安い設定として示している[2]。一方、日本企業では、個人データや機密データの国外処理を社内規程で制限している例が多く、規程の解釈が先に来る。
| 観点 | 海外の解説で想定される状況 | 日本企業で起きやすいこと |
|---|---|---|
| 処理場所 | ANY_REGIONで最安とモデルの幅を取る | AWS_JPやDISABLEDを選ぶ。DISABLEDでは使えるモデルが自リージョン展開分に限られる |
| 規程 | 契約上の保護で足りると判断しやすい | 越境移転の社内規程があり、法務と情報セキュリティ部門の確認が要る |
| 予算 | 使用量に応じて随時増額 | 年度予算で上限を先に決める |
| 契約 | 容量契約の割引を前提に交渉 | 既存の割引がAI利用に効かないことを稟議で説明する必要がある |

判断の軸は、1割の単価差と、規程上のリスクと、使えるモデルの差の三つだ。月に数千ドル規模のAI利用なら、1割の差は数百ドルにとどまる。規程の例外申請にかかる手間と比べれば、国内固定を選ぶ合理性は高い。
IT部門の判断としては、現在の設定値を確認し、社内規程に合う範囲を法務と決めて明示的に設定する。決裁側の判断としては、2.20ドルを前提にAI利用の年額上限を決め、容量契約の割引が効かない点を予算に織り込む。
事業部ごとにSnowflakeの利用料を配賦し、四半期ごとに経理へチャージバックの内訳を報告している企業のデータ基盤担当にとって、コストの異常検知は長年もどかしい機能だった。Snowflakeの異常検知はアカウント全体、あるいは組織全体で[…]
まとめ
SnowflakeのAI機能は、通常の利用料とは別のAI Creditsで課金される。処理を国内や自リージョンに限ると単価は2.00ドルから2.20ドルへ1割上がり、容量契約の割引は適用されない。
IT部門の次の一手は、SHOW PARAMETERSでCORTEX_ENABLED_CROSS_REGIONの現在値を確認し、社内規程に合う値を明示的に設定することだ。決裁側の判断材料は、国内固定による1割の単価差、使えるモデルの制約、容量割引が効かない予算差の三点になる。
AI利用の費用はウェアハウスの費用と別に見える化し、部門ごとに追える形で予算化するのが扱いやすい。
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よくある質問(FAQ)
Q. Enterprise EditionだとAI Creditsも高くなりますか。
A. ならない。AI Creditsはエディションに関係なく同じ価格とされている。
Q. 他リージョンで処理するとデータが海外に保存されますか。
A. 公式ドキュメントでは、顧客データはアカウントのリージョンにだけ保存され、処理中の入力と出力は保存されないと説明している。
Q. 容量契約の割引はAI利用にも効きますか。
A. 効かない。年間契約額に応じたAI Creditsの自動割引は別にある。
出典
[1] Snowflake Documentation「Snowflake AI pricing」 https://docs.snowflake.com/en/user-guide/snowflake-cortex/pricing[2] Snowflake Documentation「Cross-region inference」 https://docs.snowflake.com/en/user-guide/snowflake-cortex/cross-region-inference
[3] Snowflake Documentation「Parameters」(CORTEX_ENABLED_CROSS_REGION) https://docs.snowflake.com/en/sql-reference/parameters



