SCOMのSSRS・SSAS監視パックが2027年終了、次の監視をどう選ぶか

オンプレミスのSystem Center Operations Manager(SCOM、Microsoftのサーバー監視製品)で、SQL Serverのレポート基盤や分析基盤を監視している日本企業の運用担当に、期限付きの宿題が出た。数千人規模の企業で、帳票をSQL Server Reporting Services(SSRS)から配信し、経営分析をSQL Server Analysis Services(SSAS)で回している構成が典型だ。

Microsoftは2026年1月、SSRS、Power BI Report Server(PBIRS)、SSAS向けのSCOM管理パック(監視項目と閾値をまとめた設定集)を非推奨とし、2027年1月にサポートを終えると発表した[1]。SCOM 2019と2022では動き続けるが、新機能、修正、セキュリティ更新は出ない[1]。

移行先としてMicrosoftが示すのは、Azure Monitor、Azure Arc、Log Analyticsだ[1]。本稿は発表の範囲を整理し、SCOMを続ける、Azure Monitorへ移る、他社の監視製品を選ぶ、の三案を比べる。保守契約の更新時期までに決めるべき点も示す。

予備知識

  • 管理パック: SCOMに監視対象ごとの監視項目、閾値、アラートを追加する設定集。製品ごとに提供される
  • Azure Arc: オンプレミスや他社クラウドのサーバーを、Azureの管理画面に登録して一元管理する仕組み
  • Azure Monitor Agent(AMA): サーバーに入れて、ログや性能データをAzureへ送る収集プログラム
  • Log Analytics: Azure Monitorのログ保管と検索の仕組み。取り込んだデータ量に応じて課金される

製品を乗り換える前に、何を監視し何を捨てるかを決める考え方を整理できる一冊。

何が終わり、何が続くのか

今回の対象は、SSRS、PBIRS、SSASの3種類の管理パックに限られる[1]。サポート終了は2027年1月で、それまでの間も新機能や修正の予定はない。SCOM 2019と2022の上では動き続けるため、2027年1月に監視が止まるわけではない[1]。

問題は、周りの製品が新しくなったときだ。Microsoftは、SSAS 2025、SCOM 2025、今後のWindowsのバージョン、SSASやPBIRSの新しいリリースとの互換性は保証しないとしている。SQL Server 2025とSCOM 2025への対応も出さないと明記した[1]。つまり、OSやSQL Serverを更新した時点で監視が効かなくなる可能性がある。

なお、SQL Serverのデータベースエンジン向け管理パックについて、今回の発表では言及がない[1]。自社の監視対象がどの管理パックに依存しているかは、SCOMの管理画面で個別に確認する必要がある。

2026年1月に非推奨が発表され、2027年1月にサポートが終了する。SCOM 2019と2022では動き続けるが、SCOM 2025やSSAS 2025、新しいWindowsへ更新すると互換性が保証されないことを示す図
監視が止まるのは期限の日ではなく、周辺製品を更新した日

オンプレミスの資産をAzureで運用する場合の設計と監視の定番構成を、日本語で確認できる。

Microsoftが示す移行先の構成

Microsoftの推奨は、Azure Monitor、Azure Arc、Log Analyticsへの移行で、手順も示している。Azure Arcでオンプレミスのサーバーを登録し、各サーバーにAzure Monitor Agentを入れ、Log Analyticsのワークスペースを作る。データ収集ルール(DCR)で性能カウンターやイベントログの収集対象を決め、アラートとAzure Monitor Workbooksのダッシュボードを組む[1]。オンプレミスのSQL Serverをクラウド側の監視基盤へつなぐ形になる。

オンプレミスのSSRSやSSASのサーバーをAzure Arcに登録し、Azure Monitor Agentで収集したデータをLog Analyticsワークスペースへ送り、そこでアラートを出す構成図
推奨構成ではオンプレミスの監視データをAzureへ送る

この構成では、費用の考え方が変わる。SCOMは導入済みのライセンスの範囲なら追加の従量課金は発生しないが、Log Analyticsは取り込んだデータ量で課金される。Azureの公開価格APIでは、東日本リージョンのLog Analytics(Analytics Logs)の取り込みは1GBあたり3.34ドル(約518円、1ドル=155円換算)、データ保持は1GBあたり月0.15ドル(約23円)だ[3]。取り込みは課金アカウントあたり月5GBまで無料で、保持料金は無料の31日を超えて保管した分にかかる[4]。

費用を左右するのは、保管期間より何をどれだけ送るかだ。SCOMの管理パックと同じ粒度で性能カウンターやイベントを送ると、取り込み量が膨らむ。移行時は監視項目を棚卸しし、アラートに使わない項目を送らない設計が要る。

機能面の差もある。WinBuzzerの報道は、Azure MonitorにはSCOMにあるチケット管理画面、サービス監視、アラート抑止、ヘルス状態の表示が足りないとする、Microsoft Q&Aに以前寄せられた実務者のコメントを紹介している[2]。SCOMの画面で運用手順を組んでいる現場ほど、手順書の書き直しが必要になる。

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三つの選択肢をどう比べるか

選択肢は、SCOMを続ける、Azure Monitorへ移る、他社の監視製品を選ぶ、の三つだ。判断を分けるのは、SQL Serverを今後も更新するかと、監視をクラウド側に置けるかの二点になる。

観点SCOMを続けるAzure Monitorへ移る他社の監視製品
当面の作業少ないArc登録と監視項目の再設計製品選定と監視の作り直し
費用の形既存ライセンスデータ量で変動製品の契約次第
SQL Server更新時監視が効かない恐れMicrosoftの推奨経路製品の対応次第
運用手順そのまま書き直し書き直し
外部送信なし監視データをAzureへ送る製品次第
SQL Serverを当面更新しないならSCOM継続で時間を稼ぎ、更新するなら監視データをAzureへ送れるかを問い、送れるならAzure Monitorへ、送れないなら他社の監視製品を比較する判断フロー図
SQL Serverの更新予定と外部送信の可否で三案が分かれる

SQL Serverを当面更新しない前提なら、SCOMの継続で時間を稼げる。帳票基盤のSSRSをPower BI Report Serverへ移す計画がある企業も、移行後の監視手段を同時に決めておく必要がある。対象の3製品はどれも今回の非推奨の範囲に入っているため、製品を替えても管理パックの問題は残る。ただし、その間にOSやSQL Serverの更新計画が決まれば、監視も同時に替える必要が出てくる。

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閉域網と監査を抱える日本企業での判断

日本企業でも同じ判断が必要になるが、海外の解説より考慮点が一つ多い。監視データを社外のクラウドへ送ってよいかという、ネットワークとデータの持ち出しの問題だ。

観点海外の解説で想定される状況日本企業で起きやすいこと
ネットワークインターネット経由の送信が前提基幹系は閉域網。外部送信には申請と審査が要る
監視の運用社内のSREが設計監視と一次対応をSIerや運用会社へ委託
費用従量課金を前提に予算化ライセンス買い切りの前提で年度予算を組む
監査ログの保管先は問われにくい監視ログの保管場所と保存期間を内部統制で説明する

Azure Monitorへ移るなら、監視データをAzureへ送る経路の承認が先に要る。閉域網の基幹系では、この承認に時間がかかりやすい。2027年1月から逆算すると、方針決定は年内が目安になる。

運用委託先との契約も見直しが必要だ。SCOMの画面を前提にした監視手順とエスカレーションは、製品を替えれば作り直しになる。

IT部門の判断としては、SSRS、PBIRS、SSASの監視に使っている管理パックとSQL Serverの更新予定を洗い出し、三案のどれで行くかを決める。決裁側の判断としては、Azureへの監視データ送信を認めるかどうかと、従量課金への切り替えを予算として受け入れるかを決める。

監視設計の考え方

この記事の要点 監視とオブザーバビリティの違いは、見る量ではなく問いの立て方 閉じて有限だった系が開いて動的になり、列挙して防ぐモデルが限界を迎えた 約束する対象を入口の網羅から出口の回復力(MTTR)[…]

まとめ

SSRS、PBIRS、SSAS向けのSCOM管理パックは2027年1月にサポートを終える。監視がすぐ止まるわけではないが、SCOM 2025やSSAS 2025へ更新した時点で互換性の保証がなくなる。

IT部門の次の一手は、該当する管理パックの利用状況とSQL Serverの更新計画を棚卸しし、監視項目のうち本当にアラートに使っているものを洗い出すことだ。決裁側の判断材料は、クラウドへの監視データ送信の可否、従量課金の年額見込み、運用委託契約の変更範囲の三点になる。

どの案でも、監視項目を減らして整理する作業は共通して必要になる。期限を監視設計の見直しの機会として使うのが得策だ。

よくある質問(FAQ)

Q. 2027年1月以降、SCOMの監視は止まりますか。
A. SCOM 2019と2022の上では動き続けるとされる。修正と更新が出なくなる点が変わる。

Q. SQL Serverのデータベース監視も対象ですか。
A. 今回の発表の対象はSSRS、PBIRS、SSASの3種類で、データベースエンジン向けについては発表で言及がない。

Q. Azure Monitorは何に対して課金されますか。
A. Log Analyticsはデータの取り込み量と保持期間に応じて課金される。東日本リージョンの取り込みは1GBあたり3.34ドルだ。

出典

[1] Microsoft Tech Community「Deprecation Announcement: SSRS/PBIRS and SSAS Management Packs for SCOM」(2026-01-19) https://techcommunity.microsoft.com/blog/sqlserver/deprecation-announcement-ssrspbirs-and-ssas-management-packs-for-scom/4486497
[2] WinBuzzer「Microsoft Sets 2027 Deadline for SCOM Management Pack Support, Forcing Enterprise Azure Migration」(2026-01-21) https://winbuzzer.com/2026/01/21/microsoft-sets-2027-deadline-for-scom-management-pack-support-forcing-enterprise-azure-migration-xcxwbn/
[3] Azure Retail Prices API(Log Analytics、japaneast) https://prices.azure.com/api/retail/prices
[4] Microsoft Azure「Azure Monitor pricing」 https://azure.microsoft.com/en-us/pricing/details/monitor/