Kubernetes 1.34が10月EOL、EKS・AKS・GKEの期限と延長費用

Amazon EKS・Azure AKS・Google GKEといったマネージドKubernetesで社内システムを動かす日本企業では、クラスタの更新計画を立てるプラットフォーム担当に、今年度中の判断が求められている。数十から数百のアプリケーションを複数クラスタに載せ、更新作業をSIerに委託している企業ほど、準備に時間がかかる。

対象はKubernetes 1.34だ。オープンソースのKubernetesプロジェクトは、1.34のパッチ提供を2026年10月27日で終える[1]。一方、各クラウドの標準サポートの終了日は、AKSが2026年11月、EKSが12月2日、GKEが2027年1月25日と少しずつずれている[2][4][7]。

期限を過ぎても延長サポートに入れば使い続けられる。ただし3社とも管理料金は1クラスタ1時間0.60ドル(約93円、1ドル=155円換算)に上がり、標準期間の0.10ドルの6倍になる[3][6][8]。本稿は、3社の期限と費用、1.35以降へ上げる際の注意点を整理し、年度内に更新するか延長費用を払うかの判断材料を示す。

予備知識

  • マイナーバージョン: 1.34や1.35の2つ目の数字。約4か月ごとに新しいものが出て、上流では約1年パッチが提供される
  • コントロールプレーン: クラスタ全体を管理する中枢部分。マネージドサービスではクラウド事業者が運用する
  • 延長サポート: 標準サポートの終了後も、追加料金でセキュリティ修正を受け続けられる仕組み。AKSではLTS(長期サポート)と呼ぶ
  • ノード: コンテナが実際に動くサーバー。コントロールプレーンとは別に更新が必要になる

クラスタを実際に壊して直す手順で、バージョン更新時に起きがちな不具合の切り分け方を身につけたい担当者に向く一冊。

Kubernetes 1.34のサポートはいつ切れるか

1.34の期限は、上流のEOL(サポート終了)とクラウド各社の標準サポート終了が別々に来る。上流は2026年10月27日でパッチを止め、以後は1.35・1.36・1.37の3系統だけを保守する[1]。9月15日時点の最新パッチは1.34.12だ[1]。

項目上流EKSAKSGKE
標準サポート終了2026-10-272026-12-022026年11月末2027-01-25
延長サポート終了—2027-12-022027年11月(LTS)2027-11-25
延長の申し込み—既定で有効Premium層とLTSの明示選択Extendedチャネルへの登録
期限後の扱いパッチなし延長終了後に自動更新プラットフォームサポートへ縮退サポート終了後に自動更新

※「—」は本稿で確認していない項目。

EKSは延長サポートが既定で有効なので、何もしなければ12月2日から自動的に延長料金がかかる[2]。延長を無効にすると、標準サポート終了時にコントロールプレーンが自動更新される[2]。

AKSは月だけ示された終了日をその月の末日として扱い、終了後は1.38のGAまでプラットフォームサポート(Azure基盤の問題だけを扱う縮小サポート)になる[4]。この期間はセキュリティパッチもKubernetes部品の修正も対象外だ[4]。

2026年10月27日の上流EOL、11月末のAKS標準終了、12月2日のEKS標準終了、2027年1月25日のGKE標準終了を順に並べた図
1.34の期限は上流EOLからGKEの標準終了まで3か月にわたって続く

GKEは、Extendedチャネルに入っていないクラスタをサポート終了後に自動更新する[7]。延長を使うかどうかにかかわらず、3社とも最終的には更新が避けられない。

EKSを本番で使うときの構築と運用上の注意点を、アプリケーション側の視点から押さえたい場合に役立つ。

延長サポートの費用はいくらか

延長期間の管理料金は、3社とも1クラスタ1時間0.60ドルだ。EKSは標準0.10ドルに延長分0.50ドルを足した額と明記している[3]。GKEも、延長期間の管理料金0.50ドルが通常の0.10ドルに加算され、合計0.60ドルになる[8]。

AKSのLTSはPremium層でしか使えない[5]。料金ページは金額を表示しなかったが、Azure Retail Prices API(Azureの公開価格一覧)では東日本リージョンのStandard層が1時間0.10ドル、Long Term Supportが0.60ドルと掲載されている[6]。

1か月を730時間として10クラスタで計算すると、標準期間は月730ドル(約11万円)、延長期間は月4,380ドル(約68万円)になる。差額は月3,650ドル(約57万円)、年間では43,800ドル(約679万円)だ。

年度末まで先送りした場合の10クラスタの延長費は、EKSが14,400ドル、GKEが7,920ドル

年度末まで先送りした場合の追加費用も試算できる。EKSは12月2日から3月31日までの120日で、10クラスタの延長分は14,400ドル(約223万円)だ。GKEは1月25日から3月31日までの66日で、7,920ドル(約123万円)になる。

この金額は管理料金だけで、ノードの計算資源は含まない。

eks・amazon

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1.35以降へ上げると何が変わるか

1.34から上げる際に最も影響が大きいのは、ノードのOS側の前提だ。Kubernetes 1.35はcgroup v1(Linuxの旧式な資源管理機構)のサポートを外し、cgroup v2に対応しないOSのノードではkubeletが起動しなくなる[9]。古いLinuxディストリビューションのノードを残している場合は、先にOSを入れ替える必要がある。

変更点1.35での扱い準備すること
cgroup v1サポート削除cgroup v2対応OSへ移行
containerd 1.x1.35が最後の対応版1.36前にcontainerd 2.0以降へ
kube-proxyのipvsモード非推奨化、起動時に警告nftablesモードへの移行を検討

containerd(コンテナを実行する基盤ソフト)の1.x系は1.35が最後の対応版だ[9]。1.36へ進む前に2.0以降へ切り替える必要があり、kubelet_cri_losing_supportメトリクスで該当ノードを確認できる[9]。

更新の順序にも制約がある。AKSでLTSを使わないクラスタは1マイナーずつしか上げられず、1.34から1.36へは1.35を経由する[4]。EKSでは、コントロールプレーンを更新してもマネージドノードグループは自動で更新されない[2]。

ノードのOSがcgroup v2に対応しているかを確認し、対応済みなら1.35へ更新、未対応ならOS移行の期間で延長サポートを使うかを判断する流れの図
OSとcontainerdの前提を先に確認し、更新か延長かを選ぶ
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年度末の変更凍結と稟議で1.34更新をどう計画するか

3社の標準サポートは、いずれも日本企業の年度末である2027年3月31日より前に切れる。日本企業では期限そのものより、年度末の変更凍結と予算の締めが制約になりやすい。

観点クラウド各社が想定する運用日本企業で起きやすいこと
更新時期期限前にいつでも更新12〜3月は決算・監査対応で変更凍結
作業体制社内チームが随時実施SIerの作業契約が年度単位で、追加作業は別見積もり
検証環境本番と同じ構成を用意検証クラスタが古いまま放置され、先行検証ができない
費用延長料金は使った分だけ予算外の月額増に稟議が要る
監査更新記録を残すサポート切れの基盤が内部監査の指摘事項になる

特に注意したいのはEKSだ。延長サポートが既定で有効なので、稟議を通さないまま12月から料金が6倍になり得る[2][3]。逆に延長を無効にすると、変更凍結期間中にコントロールプレーンが自動更新される可能性がある[2]。

10月中にクラスタとノードOSを棚卸しし、11月までに更新できれば更新、できなければ延長費用を稟議にかけて年度明けに更新する流れの図
変更凍結に入る前に更新するか、延長費用を予算化するかを10月中に決める

IT部門の判断としては、10月中にクラスタごとの版とノードOSを棚卸しし、凍結前に更新できる範囲を確定させる。決裁側の判断としては、更新が間に合わないクラスタの延長費用を上限額付きで承認し、年度明けの更新作業の予算と組にする。

eks・クラスタ

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まとめ

Kubernetes 1.34は上流で10月27日にEOLを迎え、AKS・EKS・GKEの標準サポートも2027年1月までに順に切れる。延長すれば3社とも1クラスタ1時間0.60ドルに上がり、10クラスタで月約68万円になる。1.35以降ではcgroup v1が外れるため、ノードOSの状態が更新時期を左右する。

IT部門の次の一手は、全クラスタの版・ノードOS・containerdの版を棚卸しし、変更凍結前に更新できるクラスタを特定することだ。決裁側の判断材料は、延長費用の見込み額と、年度明けに更新を完了させる時期を並べて比べることになる。

延長サポートは更新の先送りを買う費用であり、更新そのものを不要にはしない。どこかで更新する前提で、いつ払い、いつ上げるかを今月中に決めておきたい。

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よくある質問(FAQ)

Q. 10月27日を過ぎると、EKSのクラスタは止まりますか。
A. 止まらない。EKSの標準サポートは12月2日まで続き、その後は延長サポートに移る。

Q. EKSの延長サポートは申し込みが必要ですか。
A. 不要だ。既定で有効になっており、標準サポート終了日から自動で延長料金がかかる。

Q. 1.34から1.36へ一度に上げられますか。
A. AKSでLTSを使わない場合は1マイナーずつの更新が必要で、1.35を経由する。

出典

[1] Kubernetes「Releases」 https://kubernetes.io/releases/
[2] Amazon EKS User Guide「Understand the Kubernetes version lifecycle on EKS」 https://docs.aws.amazon.com/eks/latest/userguide/kubernetes-versions.html
[3] Amazon EKS Pricing https://aws.amazon.com/eks/pricing/
[4] Microsoft Learn「Supported Kubernetes Versions in Azure Kubernetes Service (AKS)」 https://learn.microsoft.com/en-us/azure/aks/supported-kubernetes-versions
[5] Microsoft Learn「Long-Term Support for Azure Kubernetes Service (AKS) Versions」 https://learn.microsoft.com/en-us/azure/aks/long-term-support
[6] Azure Retail Prices API(Azure Kubernetes Service、japaneast) https://prices.azure.com/api/retail/prices?$filter=serviceName%20eq%20’Azure%20Kubernetes%20Service’%20and%20armRegionName%20eq%20’japaneast’
[7] Google Cloud「GKE release schedule」 https://docs.cloud.google.com/kubernetes-engine/docs/release-schedule
[8] Google Cloud「Google Kubernetes Engine pricing」 https://cloud.google.com/kubernetes-engine/pricing
[9] Kubernetes Blog「Kubernetes v1.35」リリース告知 https://kubernetes.io/blog/2025/12/17/kubernetes-v1-35-release/