Azure・VertexでLLM退役が年末集中、o3やGemini 2.5の移行期限

Azure OpenAIやGoogle CloudのGeminiを社内の問い合わせ対応や文書要約の業務システムに組み込んだ日本企業の情報システム部門にとって、2026年10〜12月は移行期限が重なる時期になる。開発はSIerに委託し、本番反映に稟議と受け入れ試験が要る体制ほど、残り時間は短い。

対象はクラウドの生成AI基盤、つまりMicrosoft FoundryのAzure OpenAIと、Google CloudのGemini Enterprise Agent Platform(Vertex AIの生成AI機能を含む基盤。本稿ではVertexと呼ぶ)の2つだ。Azure側では10月14日のgpt-4.1-nanoを皮切りに、11月19日にo1・o3・o4-miniなど推論モデル7種、12月9日にgpt-4o(2024-05-13版)が退役する[1]。Vertex側では10月20日にGemini 2.5 Pro・Flash・Flash-Liteが退役する[3]。

Microsoftは退役日の延長を認めておらず、後継へ自動で切り替わるかはデプロイの種類で異なる[2]。本稿は10〜12月の退役日と自動切り替えの有無を整理し、再検証と稟議の期間から逆算した移行計画の立て方を示す。

予備知識

  • 退役(Retired): モデルの提供が終わった状態。Azureでは推論要求がすべて410 Goneエラーを返す
  • 非推奨(Deprecated): 既存利用者は使い続けられるが、新規利用者は使えない状態。Azureでは利用実績をサブスクリプション単位で判定する
  • デプロイの種類: Azureでモデルを使う契約形態。従量課金のStandard系と、処理能力を予約するProvisioned系がある
  • PTU: Provisioned Throughput Unitの略。Provisioned系で予約する処理能力の単位

モデルの入れ替えを前提に、評価・監視・ガバナンスをどう回すかを本番運用の視点で整理したい担当者に向く一冊。

10〜12月に退役するモデルはどれか——日付と後継の一覧

10〜12月の退役は、10月中旬、11月中旬〜月末、12月前半の3つの山に分かれる。両社の一覧から、業務で使われやすいテキスト・推論・音声のモデルを抜き出した[1][3]。

退役日基盤モデル(バージョン)後継として示されたモデル
10月14日Azure OpenAIgpt-4.1-nano(2025-04-14)—
10月15日Azure OpenAIgpt-4o-transcribe、gpt-4o-mini-transcribe、gpt-4o-mini-tts(いずれも2025-03-20)—
10月20日Vertexgemini-2.5-pro、gemini-2.5-flash、gemini-2.5-flash-litegemini-3.8-flash ほか
11月15日Azure OpenAIcodex-mini(2025-05-16)—
11月15日Foundry(Anthropic)claude-haiku-4-5—
11月19日Azure OpenAIo1、o1-pro、o3、o3-deep-research、o3-progpt-5.6-sol
11月19日Azure OpenAIo3-mini、o4-minigpt-5.6-terra
11月24日Foundry(Anthropic)claude-opus-4-5—
11月30日Foundry(Anthropic)claude-sonnet-4-5claude-sonnet-5-5
12月9日Azure OpenAIgpt-4o(2024-05-13)gpt-5.6-sol
12月13日Vertexgemini-live-2.5-flash-native-audio—
12月15日Azure OpenAIwhisper、tts、tts-hd(001)—

※「—」はベンダーの表で後継モデルが示されていない項目。

10月1日時点の退役までの残り日数。gpt-4.1-nanoが13日、Gemini 2.5系が19日、claude-haiku-4-5が45日、o系が49日、claude-sonnet-4-5が60日

同じgpt-4oでも、2024-08-06版と2024-11-20版の退役は2027年4月14日だ[1]。モデル名だけで棚卸しすると、退役日を取り違える。

Googleは退役日を前倒ししないと明記する[3]。ただし、Vertexとは別窓口のGemini APIでは、2.5系の停止日が当初10月16日と掲載され、のちに未発表へ変わった[5]。Gemini APIは9月18日から、2.5系を使ったことのない利用者のアクセスを制限したが、2.5系は非推奨ではなく当面提供を続けるとしている[4]。公式の非推奨一覧でも停止日は「未発表」のままだ[6]。両方の窓口を使う企業は、日付が確定しているVertexの10月20日を期限に計画し、Gemini API側は停止日の発表を見張る形が現実的だ。

後継モデルへ切り替える前に、自社データで品質を比べる評価の仕組みを作る手がかりになる。

自動で後継モデルに切り替わるのはどのデプロイか

Azureで退役時に自動アップグレードされるのは、Global Standard、Data Zone Standard、Standardの3種類だけだ[2]。Provisioned系は自動アップグレードされず、利用者が手動で移行する必要がある[2]。

デプロイの種類退役時の動きクォータ(利用枠)
Global Standard/Data Zone Standard/Standard地域ごとに順次、後継へ自動アップグレード自動で引き継がれる
Provisioned系自動アップグレードされない。手動で移行後継モデル用の枠を事前に確保
Priority ProcessingStandardと同じく自動アップグレード—
Batch新しいデプロイを作り、ジョブを再投入—

※「—」は本稿で確認していない項目。

Standard系でも、versionUpgradeOptionという設定で動きが変わる[2]。OnceNewDefaultVersionAvailableは新しい既定版が出た時点で、OnceCurrentVersionExpiredは退役時に切り替わる。NoAutoUpgradeを選ぶと切り替わらず、退役日にデプロイが動かなくなる[2]。

Azureのデプロイがprovisioned系なら自動切り替えがなく手動移行が必要、Standard系でもNoAutoUpgradeなら退役日に停止し、それ以外なら後継モデルへ自動で切り替わることを示す図
退役日に何が起きるかは、デプロイの種類と設定で決まる

自動切り替えでも、o3からgpt-5.6-solへの移行は別モデルへの置き換えだ。出力が変わりうるため、事前に検証しておく方がよい。

Googleのページは自動切り替えに触れず、退役後のエラーを前提に参照先の書き換え手順を示している[3]。Vertex側は手動移行が必要と考えておくのが無難だ。

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移行作業では何を検証するのか

移行作業の中心は、自社のプロンプトとデータで後継モデルの品質を確かめる回帰テストだ。Microsoftは、公開ベンチマークだけに頼らず、品質・応答時間・費用を自社アプリで合わせて比べるよう求めている[2]。

確認項目は、APIの互換性、機能への対応、デプロイ種類と地域での提供状況、クォータの4点だ[2]。Microsoftが後継を正式に決めるのは退役の90〜120日前だが、それを待たずに評価を始めてよいとしている[1][2]。

Provisioned系は時間が特に限られ、後継を試せるのは退役のおよそ30日前からだ[2]。移行は、Azureが20〜30分で切り替えるインプレース移行と、新旧を並べる並行移行から選べる[2]。PTUはモデルを問わず融通できる[2]。

非推奨モデルの新規利用制限にも注意が要る。Azureは利用実績をサブスクリプション単位で判定し、同じテナントの新しいサブスクリプションは実績を引き継がない[2]。検証用に新設したサブスクリプションには、退役前でもo3などを配置できない。

退役予定は、モデル一覧APIで機械的に確認できる[2]。

GET <https://management.azure.com/subscriptions/{sub}/providers/Microsoft.CognitiveServices/locations/{location}/models?api-version=2024-10-01>

APIでは非推奨がDeprecating、退役がDeprecatedと表示される点に注意が要る[2]。

利用中のモデルとバージョンを棚卸しし、自社データで後継候補を評価し、プロンプトとクォータを調整してから本番を切り替える流れの図
移行は棚卸しから本番切替まで4段階で進める
openai

数百〜数千人規模で社内向けAIチャットボットやエージェントをAzure OpenAI Assistants API(会話履歴やツール呼び出しの状態管理をAzure側が肩代わりするAPI)上に構築し、内部統制上の変更管理プロセスを経て本番投[…]

退役日から逆算する稟議と受け入れ試験の日程

同じ退役の波は日本企業にも来るが、移行には時間がかかりやすい。ベンダーが想定するのは自社開発チームがすぐ切り替える形で、日本企業ではSIerへの発注、受け入れ試験、稟議を経るからだ。

観点ベンダーが想定する移行日本企業で起きやすいこと
作業の担い手自社の開発チームSIerへの追加発注と見積もりが先に要る
承認チーム内で判断改修費の稟議と本番反映の承認が別に要る
検証環境同じサブスクリプションで試す検証用に新しいサブスクリプションを作り、旧モデルを配置できない
監査動作確認で十分出力が変わる業務は内部統制上の変更管理として記録を求められる

例えばo3を使う業務なら、退役の11月19日から受け入れ試験に2週間、稟議に2週間を取ると、改修の完了は10月下旬が期限になる。SIerの見積もりにも時間がかかるなら、10月上旬に発注できるかどうかが分かれ目だ。

10月上旬にSIerへ発注し、10月下旬までに改修と評価を終え、11月前半に稟議と受け入れ試験を行い、11月19日の退役前に本番を切り替える日程の図
o3系の退役日から逆算すると、10月上旬の発注が分かれ目になる

IT部門の判断としては、Standard系で自動切り替えが起きる業務も含め、全デプロイの退役日と切り替え先を10月中に一覧化する。決裁側の判断としては、退役日は延長できない前提で、改修費を年度途中の追加予算として先に承認しておく。

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まとめ

10〜12月は、Azure OpenAIのgpt-4.1-nano、推論モデル7種、gpt-4o(2024-05-13版)と、VertexのGemini 2.5系が相次いで退役する。退役日は延長できず、自動で切り替わるのはStandard系だけで、Provisioned系とVertexは手動移行が前提だ。自動で切り替わる場合も別モデルへの置き換えなので、出力の再検証が要る。

IT部門の次の一手は、モデル一覧APIとデプロイ設定を使って、全デプロイのモデル名・版・デプロイ種類・versionUpgradeOptionを棚卸しし、退役日の早い順に移行計画を立てることだ。決裁側の判断材料は、退役日から稟議と受け入れ試験の期間を引いた発注期限と、その時期に必要な改修費になる。

2027年4月にはgpt-4o(2024-08-06版)の退役も控える。今回の棚卸しと評価の手順を残しておけば、次の波にも同じ手順で備えられる。

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よくある質問(FAQ)

Q. 退役日を過ぎたら、古いモデルはどうなりますか。
A. Azureでは推論要求がすべて410 Goneエラーになり、業務システムからの呼び出しは失敗する。

Q. マイクロソフトに頼めば退役日を延ばしてもらえますか。
A. できない。Microsoftは退役日の延長を例外なく認めないと明記している。

Q. 退役の通知はいつ届きますか。
A. GAモデルは退役の60日以上前に、デプロイを持つサブスクリプションの所有者へメールが届く。Azure Service Healthにも通知が出る。

出典

[1] Microsoft Learn「Model retirement schedule – Microsoft Foundry」(2026-09-23更新) https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry/openai/concepts/model-retirement-schedule
[2] Microsoft Learn「Foundry Models lifecycle and support policy」(2026-07-24更新) https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry/openai/concepts/model-retirements
[3] Google Cloud「Model versions and lifecycle」Gemini Enterprise Agent Platform(2026-09-29更新) https://docs.cloud.google.com/gemini-enterprise-agent-platform/models/model-versions
[4] Google AI for Developers「Gemini API Release notes」 https://ai.google.dev/gemini-api/docs/changelog
[5] hidekazu-konishi.com「AI model deprecation and lifecycle calendar」(2026-09-25更新) https://hidekazu-konishi.com/entry/ai_model_deprecation_and_lifecycle_calendar.html
[6] Google AI for Developers「Gemini deprecations」 https://ai.google.dev/gemini-api/docs/deprecations