予測財務諸表の作り方|サイゼリヤの2014年を予測し、最新決算で答え合わせする【MBAアカウンティング基礎 Day5】

MBAの科目「アカウンティング基礎」の全6回を、1回1本で解説するシリーズのDay5です。講義で学んだ枠組みを整理するだけでなく、その道具を使って、実在企業の最新の決算を読み解くところまで進みます。講義で予測したのはサイゼリヤの2014年8月期でした。2026年8月期の最新決算と突き合わせると、予測の方向が12年後も当たっていたか、会社がどんな手を打ったかが見えてきます。

この回の2本柱内容
講義で学ぶこと予測財務諸表の4つの手順とPLUG。サイゼリヤの2014年8月期の予測、差異分析、責任会計
最新決算で読み解くことサイゼリヤの2026年8月期のセグメント情報。国内の営業利益率は3.0%で、持ち直しが続くものの12年前の予測水準より低い。営業利益の約6割はアジアが稼いでいるが、アジアの利益率はこの1年で下がった


1. この回で何を持ち帰るのか

Day4では、費用を変動費と固定費に分けて、損益分岐点を計算した。Day5はその道具を使って、将来の財務諸表を組み立てる。

冒頭の演習は、Day4の復習を兼ねていた。

パンを1種類だけ作って売る店がある。売価は100円。生産能力は月10,000個だが、実際に売れているのは5,000個。1個あたりの変動費は30円、固定費は月50万円。
ある日、百貨店から「イベントで売るので、2,000個を1個50円で卸してほしい」と注文が来た。受けるべきか

定価の半額である。店長は気に入らない。まず、そもそもこの店が儲かっているかを確かめる。損益分岐点は50万円÷(1-30%)で約71万円、販売数にして7,143個。実際は5,000個しか売れていないので、この店はもともと赤字だ。

では注文を受けるとどうなるか。

通常特別注文を受けた場合
販売数5,000個7,000個
売上50万円60万円(うち卸売10万円)
変動費(30円/個)15万円21万円
限界利益35万円39万円
固定費50万円50万円
営業利益△15万円△11万円

1個50円でも、変動費30円を上回るので、1個あたり20円の限界利益が出る。2,000個で4万円。固定費は注文を受けても受けなくても同じなので、その4万円はまるまる赤字の縮小になる。生産能力にも余裕がある。受けるべきだ。

定価の半額という見た目に惑わされず、限界利益で判断する。Day4の考え方は、こうした一回きりの意思決定にも、そして将来の業績予測にも使える。Day5の主題は後者である。


2. ケース:サイゼリヤの事業予測

Day3で財務分析をしたサイゼリヤを、今度は予測の題材にする。

ケースの前提はDay3と同じく、縮む外食市場だ。2013年の外食産業の市場規模は23.9兆円で、1997年の29.1兆円から16年で約5兆円縮小していた。景気回復で需要は持ち直しつつあったが、人手不足でアルバイトの賃金が上がり始めていた。

そうした中でサイゼリヤは、毎年40〜50店を新規出店して成長してきた。2013年8月時点で982店。売上高も毎年3%を超える成長を続けていた。

ところが、利益の動きは違った。

サイゼリヤの売上高営業利益率:3年連続で低下
(百万円)2011年8月期2012年8月期2013年8月期
売上高95,41698,426102,263
営業利益11,3209,4297,040
営業利益率11.9%9.6%6.9%
期末店舗数882店929店982店

売上は3年で7%伸びたのに、営業利益は38%減った。ケースの問いはこうだった。

もし2014年8月期も出店戦略を継続した場合、利益や財務状態はどのようになるだろうか


3. 予測財務諸表の4つの手順

予測は、やみくもに数字を置いていく作業ではない。講義では手順を4つに整理した。

売上連動項目の特定、売上高の予測、連動項目の比例計算、非連動項目の個別見積という4つの手順の流れ
予測財務諸表は、売上に連動する項目を見極め、売上を予測し、連動項目を比例計算し、最後に連動しない項目を個別に見積もる、という順に組み立てる。
手順やることポイント
① 売上連動項目の特定過去の売上比や回帰分析で、変動費と固定費を分ける。B/S項目も売上に比例するか確かめるDay4の変動費・固定費の区分がそのまま使える
② 売上高の予測景気、市場環境、競合、自社の戦略から売上を置く1つに絞らず、いくつかの想定を置く
③ 連動項目の比例計算売上に連動する項目を、売上比で計算する過去の比率をそのまま使わず、環境変化や戦略を加味する
④ 非連動項目の見積もり売上に直接連動しない項目を個別に予測する人件費は採用計画、減価償却費は設備投資計画から

①の変動費と固定費の分け方(固変分解)には、3つの方法が紹介された。

方法やり方長所と短所
勘定科目法勘定科目ごとに変動費か固定費かを決める簡便。ただし人件費や光熱費のように両方が混じる科目は分けきれない
高低点法売上が最も高い期と低い期の2点を結んで、総費用線を引く科目に縛られずに分けられる。2点しか使わないので精度は低い
回帰分析法複数期のデータから統計的に総費用線を導く全データを使うので実態に近い

Day4でオリエンタルランドのコロナ前後の2期から費用構造を逆算したのは、この高低点法である。


4. 過去3年を分解する

予測の前に、過去の数字を売上比で並べ、どの費用が売上とどう動いてきたかを見る。

サイゼリヤの費用構造(売上高=100):すべての費用率が上がっていた
売上高に対する比率2011年8月期2012年8月期2013年8月期
売上原価32.3%33.1%34.5%
人件費23.8%24.3%24.7%
設備費(減価償却費を含む)16.9%17.2%17.3%
その他販管費15.1%15.8%16.7%
営業利益11.9%9.6%6.9%

どの費用も、売上の伸びを上回るペースで増えている。店舗が増えれば人件費も家賃も設備費も増える。そこに食材価格の上昇と、アルバイトの賃金上昇が重なる。売上を伸ばすための出店が、費用率を押し上げている。この3年間のトレンドを、そのまま翌年に延ばすとどうなるかが予測の出発点になる。


5. 前提を置き、予測する

講義で示された予測の回答例では、次のような前提を置いた。

5-1. P/Lの前提

項目前提根拠
売上高成長率3.0%過去実績のトレンド
売上原価率35.5%過去実績のトレンド
人件費率25.0%過去実績のトレンド
設備費前年比+5.0%過去実績のトレンド
減価償却費の増加+2.5億円設備投資50億円を20年の定額法で償却
その他販管費率17.5%過去実績のトレンド
特別損失12.3億円過去3年平均
法人税率40.0%

売上に連動する項目(原価、人件費、その他販管費)は売上比で、連動しない項目(設備費、減価償却費、特別損益)は個別に見積もっている。3章の手順どおりだ。

5-2. 予測P/L

(百万円)2013年8月期(実績)2014年8月期(予測)前年比
売上高102,263105,331+3.0%
売上原価35,23237,392+6.1%
販売費及び一般管理費59,99063,299+5.5%
営業利益7,0404,639△34.1%
経常利益7,7565,354△31.0%
当期純利益3,4502,495△27.7%

売上は3%伸びるのに、営業利益は3分の1減る。営業利益率は4.4%まで下がる。

5-3. 予測B/Sと財務指標

B/Sも同じ要領で組み立てる。売上に連動する項目(売掛金、棚卸資産、買掛金)は回転期間を過去実績で置き、連動しない項目(有形固定資産は+50億円、長期借入金は年10億円の返済)は個別に置く。

予測したP/LとB/Sから、Day3で学んだ指標を計算し直すと、こうなる。

指標2011年8月期2012年8月期2013年8月期2014年8月期(予測)
ROE10.1%8.4%5.5%3.9%
売上高当期純利益率5.9%5.1%3.4%2.4%
流動比率168.8%184.6%158.4%126.8%
当座比率123.4%124.7%105.1%68.0%
手元流動性(日)63.855.049.130.0

※ ROEは期末の自己資本ベース

講義で示された問いは短かった。

これを見てどう思いますか? 違和感ないですか?

ROEは3年で10%から4%を切るところまで下がる。手元の現金は売上の約2か月分から1か月分へ半減し、当座比率は100%を大きく割り込む。出店を続ける限り、利益は細り、手元資金も薄くなる。数字を並べると、成長戦略の持続性そのものに疑問符がつく。

講義ではこの予測をもとに、「2014年8月期のROEをどう改善するか」をグループで議論した。何を、どのように改善するのか。利益率か、回転率か、レバレッジか。Day3のデュポン分解がここで効いてくる。


6. PLUG ―― B/Sの左右を最後に合わせる

予測B/Sを項目ごとに組み立てると、たいてい左右の合計が合わない。そこで最後に、左右を一致させるための調整項目を1つ決める。これをPLUG(プラグ)と呼ぶ。

講義の練習問題が、PLUGの考え方をよく示していた。

パターン状況PLUGにする項目
現金がPLUG余裕資金がある。借入金に前提を置き、差額を現金で吸収する現金及び預金
借入金がPLUG素直に埋めると現金がマイナスになる。あるべき現金残高を先に決め、差額を借入で埋める短期借入金

サイゼリヤの予測では、手元流動性を「売上の1か月分(30日)」と先に決め、短期借入金をPLUGにしている。出店のための設備投資50億円を、営業CFだけでは賄いきれないからだ。

PLUGにはもうひとつの意味がある。予測を組み上げた結果、PLUGの借入金がどれだけ膨らむかを見れば、その計画にいくらの資金調達が必要かが分かる。予測財務諸表は、資金計画の道具でもある。


7. 予測の答え合わせ ―― 2014年8月期の実績

講義では、この予測の横に2014年8月期の実績も並べて示した。

2014年8月期:予測と実績。売上はほぼ的中、利益は予測より悪かった
(百万円)予測実績差
売上高105,331105,049△0.3%
営業利益4,6393,849△17.0%
経常利益5,3544,092△23.6%
営業利益率4.4%3.7%

売上は0.3%しかずれなかった。3%成長という前提は、ほぼ当たっていた。しかし営業利益は予測をさらに17%下回った。費用率の上昇が、過去3年のトレンドよりも速かったということになる。

予測は外れた。ではこの予測は役に立たなかったのか。そうではない。予測が示した方向 ―― 出店を続ければ利益率は下がり続ける ―― は正しかった。外れたのは程度であり、実際はもっと悪かった。方向を正しく示し、打ち手を考えるきっかけを作るのが、予測財務諸表の役割である。


8. 良い財務予測とは何か

講義では、予測の良し悪しを次のように整理した。

財務予測のポイントは「正確性」よりも「ロジック」

観点中身
前提の置き方にロジックがある根拠がある。事業構造と財務構造がつながっている。「事業環境が変化 → 戦略を変更 → 事業構造が変化 → 財務構造が変化」というストーリーを語れる
作成の手順にロジックがあるP/Lから着手する。B/Sの左右の調整(PLUG)は最後に決める
幅を持たせる予測がぴったり当たることはまずない。上振れ・下振れしたときに業績や資金繰りがどうなるかを見ておく
変数を増やしすぎないシミュレーションを増やしても、意思決定の確度が上がるとは限らない

実務的な注意もあった。売価を変える前提を置くときは、売上高が変わるだけでなく、原価率など費用や資産の売上比も変わる。値上げすれば原価率は下がり、値下げすれば上がる。売上比で機械的に計算していると、ここを見落とす。

講義のまとめは、予測は作って終わりではない、ということだった。予測財務諸表は、その結果を打ち手に反映させて初めて意味を持つ。


9. 予測の後 ―― 実行をどう管理するか

Day5の後半は、予測(Plan)を立てたあとの実行フェーズの話だった。

9-1. コントロールシステム

計画を立てても、組織が動かなければ実現しない。組織を目標に向けて動かす仕組みを、講義ではコントロールシステムと呼んだ。

事業構造の理解から組織全体の目標設定、部門の目標、個人の目標と評価方法、実行・測定・修正、個人の評価とインセンティブまでの流れを2段で示した図
コントロールシステムは、事業構造の理解から組織全体の目標を立て、それを各部門と個人の目標に分解し、実行結果を測定して修正し、個人の評価とインセンティブにつなげる一連の仕組み。

Day4の変動費・固定費、損益分岐点、そしてDay5の予測財務諸表は、組織全体の目標、つまり予算を立てるための道具だった。予算はさらに部門や個人の目標に分解され、実行され、結果が測定される。

9-2. 予算はなぜ実現しないのか

講義では、自社の予算が実現しない理由をグループで議論した。挙がった内部要因は多岐にわたる。

分類要因
目標の立て方そもそも全社目標が適切でない。判断の根拠になった実績の集計の仕方に問題がある(間接費・共通費の配賦など)。計画の難易度が適切でない
整合性全社目標と部門目標が整合していない。部分最適に陥っている。目標の修正が適切なタイミングで行われていない
実行の仕組みPDCAが回っていない。財務目標が非財務の目標(行動のKPI)に落とし込まれていない
評価評価される人の権限と責任に見合った業績評価になっていない。評価の公平性がない。人事考課や報酬と連携していない

9-3. 差異分析 ―― ずれを価格と数量に分ける

予算と実績の差を精査するのが差異分析である。差異は、単価がずれたこと(価格差異)と、量がずれたこと(数量差異)に分けられる。

差異分析の図。予算価格100円・予算数量1,000個の予算額10万円に対し、実際価格130円・実際数量1,200個で実際額15.6万円。差5.6万円のうち、数量差異は100円×200個で2万円、価格差異は30円×1,200個で3.6万円

価格差異 =(実際価格 - 予算価格)× 実際数量
数量差異 = 予算価格 ×(実際数量 - 予算数量)

材料費が予算を超えたとき、それが「仕入値が上がったから」なのか「使った量が多かったから」なのかで、打つ手はまったく違う。前者なら購買の問題、後者なら製造や歩留まりの問題だ。差異を分けることで、責任の所在と打ち手が見える。

サイゼリヤの2014年8月期で、営業利益が予測を17%下回ったのも、この考え方で分解できる。売上は予測どおりだったのだから、差の大半は費用の側にある。原価の単価が上がったのか、人件費の時給が上がったのか、店舗あたりの人数が増えたのか。そこまで降りて初めて、次の打ち手が決まる。

9-4. 責任会計

差異の責任を誰に問うかを明確にするのが、責任会計の考え方である。業績を測る単位(責任中心点)を、その単位の権限に合わせて設計する。

責任中心点評価の対象例
コストセンター発生する費用製造部門、管理部門
レベニューセンター売上営業部門
プロフィットセンター利益(売上-費用)事業部
インベストメントセンター投資に対するリターン(ROIなど)独立性の高い事業部、子会社

費用しか動かせない部門を利益で評価しても、納得感は得られない。権限と責任と評価がそろっていることが、コントロールシステムの前提になる。


10. 最新決算で読み解く ―― 12年後、営業利益の6割はアジアから

講義で予測した「出店を続ければ国内の利益率は下がる」という流れは、その後どうなったか。2026年8月期の決算を見る。

サイゼリヤのセグメント別営業利益(2025年8月期と2026年8月期)。日本は50.3億円から60.1億円、アジアは101.3億円から97.1億円、豪州は3.3億円から7.5億円。アジアが約6割を稼ぐ
セグメント(2026年8月期)売上高営業利益営業利益率
日本2,033億円60億円3.0%
アジア981億円97億円9.9%
豪州(食材製造)141億円7億円5.3%
連結3,015億円164億円5.4%

※ セグメント売上高はセグメント間の取引を含む

日本の営業利益率は3.0%で、講義で予測した2014年8月期の水準(予測4.4%、実績3.7%)より低い。ただし、この比較は2014年が単体、2026年が連結のセグメントで、範囲が同じではない。直近の動きは持ち直しで、日本セグメントの営業利益は2025年8月期に前期比83.9%、2026年8月期に19.4%増えた。利益率の改善は2.9%から3.0%と小さい。決算説明資料によれば、2026年8月期の国内は為替の影響や食材の単価上昇で売上原価率が2.4ポイント悪化し、販管費率を2.4ポイント下げて吸収した。決算短信も、国内の利益を圧迫した要因として円安による食材価格やエネルギー価格の上昇を挙げており、出店そのものではない。12年前の予測が示した「国内の利益率は細りやすい」という見立ては、費用の中身を入れ替えながら、いまも国内事業の課題として残っている、と読むのが妥当だろう。

一方で、会社全体の営業利益は164億円あり、連結の営業利益率は5.4%。その約6割(59%)を稼いでいるのが、アジアで店舗を展開する事業だ。同社の決算短信は、アジアの増収について「新規出店を継続的に進め、店舗数が増加した」と説明している。ただし2026年8月期のアジアは、売上が17.1%増えた一方で営業利益は4.2%減り、利益率は12.1%から9.9%に下がった。決算説明資料の法人別の内訳では、上海の営業利益が32億円から25億円に減り、新しく出店したベトナム・マレーシア・武漢と、広州の食品工場が赤字だった。

講義のグループワークで議論した「ROEをどう改善するか」に対して、会社が実際に選んだ答えの一つは、国内の薄利を、利益率の高い海外で補うという事業構造の転換だった。Day3で見たとおり、連結のROEは2026年8月期に8.8%と、12年前の5.6%を上回っている。ただし、補う側の海外の利益率もこの1年で下がっており、この組み立てが固まったとまでは言えない。

国内でも手は打っている。2024年10月から12月にかけて、徳島、愛媛、大分の未出店県に出店し、2025年には朝食限定メニューの実験を始めた。海外では2025年5月にベトナムに1号店を出した。2026年8月期には、QRコードと顧客の携帯端末を使った注文方式を2025年12月末までに全店へ導入し、朝食限定メニューの販売を東北と北陸の店舗にも広げた。海外では2026年1月に中国・広州の新工場が竣工し、武漢とマレーシアに1号店を開いた。

会社の2027年8月期の計画は、国内の売上高2,180億円、営業利益100億円。利益率にすると約4.6%で、12年前の予測水準を上回る計画である。この計画がどこまで実現するかは、1年後の決算で確かめられる。

予測財務諸表は、12年前の時点で「このままでは国内の利益率は下がり続ける」ことを示していた。そのシグナルを受けて、どんな事業構造に組み替えるか。それが経営の仕事であり、予測はその出発点になる。


11. 他のDayとつなげて立体化する

Day3|サイゼリヤの財務分析 ―― 過去を読むから、未来を描くへ

Day3では、同じサイゼリヤの2013年度を指標で分析した。Day5はその指標を前提に、翌年の財務諸表を組み立てた。分析と予測は、同じ数字を過去向きに読むか、未来向きに使うかの違いである。

Day4|変動費と固定費 ―― 予測の前提そのもの

売上に連動する項目と連動しない項目の区分は、Day4の変動費・固定費の区分とほぼ同じだ。損益分岐点を計算するための道具が、そのまま予測の骨組みになる。

Day6|総合演習 ―― 新規事業の財務計画

最終回のDay6では、まだ存在しない事業について、ゼロから予測財務諸表を組み立てる。過去の実績がない分、前提の置き方のロジックがすべてになる。

アカウンティングI|予測財務諸表とシナリオ分析

予測に幅を持たせる考え方は、基礎の次に履修する「アカウンティングI」のDay4で、シナリオ分析として掘り下げている。

予測財務諸表

mermaid.initialize({startOnLoad:true}); 戦略を数字に落とし込む──予測財務諸表の作り方とシナリオ分析 この記事でわかること アパレル業界の構造的課題と、需給マッチングが競争優位の核[…]


12. 実務への持ち帰り

Day5の学びを3点に絞る。

① 予測は「ロジック」で組み立てる

売上に連動する項目と連動しない項目を分け、P/Lから組み立て、B/Sの左右は最後にPLUGで合わせる。それぞれの前提に、事業上の根拠を持たせる。

② 予測は外れる。方向を読む

数字がぴったり当たることはない。見るべきは、このまま進むと数字がどちらに向かうかだ。そして幅を持たせて、下振れしたときの資金繰りまで確かめておく。

③ 計画と実行をつなぐ

予算は立てて終わりではない。部門と個人に分解し、実績とのずれを価格と数量に分け、権限と責任に見合った評価につなげる。

自社に引き寄せる問い

  • 自社の来期の予算は、どの項目を売上連動、どの項目を個別見積で置いているか。その根拠は何か
  • 過去3年の費用を売上比で並べると、どの費用率が上がり続けているか
  • 前期の予算と実績の差を、価格差異と数量差異に分けたことはあるか

考え直してみたい問い

  • 予測が外れたとき、「外れた」で終わらせず、どの前提がずれたのかを振り返っているか
  • 自社の成長戦略を今のまま延ばすと、3年後の利益率と手元資金はどうなるか
  • 評価されている人が、その評価指標を動かせる権限を持っているか

よくある質問(FAQ)

予測財務諸表はどんな順番で作りますか?

①過去のデータから売上に連動する項目と連動しない項目を分け、②売上高を予測し、③売上に連動する項目を売上比で計算し、④連動しない項目(人件費、減価償却費、設備投資など)を個別に見積もります。P/Lから着手し、B/Sの左右の差は最後に現金または借入金(PLUG)で調整します。

PLUGとは何ですか?

予測したB/Sの左右の合計を一致させるための調整項目です。余裕資金がある場合は現金及び預金を、現金がマイナスになってしまう場合は短期借入金をPLUGにするのが一般的です。PLUGの借入金がいくらになるかを見れば、その計画に必要な資金調達額も分かります。

差異分析とは何ですか?

予算と実績の差を、原因ごとに分けて分析する方法です。代表的なのが価格差異と数量差異で、たとえば材料費の超過を「単価が上がったから」と「使った量が多かったから」に分けます。原因によって責任を負う部門と打ち手が変わるため、差異を分けることが改善の出発点になります。


公式リソース

本記事の2011〜2014年度の数値は同社の有価証券報告書(単体)、最新期は以下によります。

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