米名門クラブが15系統の会員データを統合、宴会の予測に使い来場通知も仕上げ中

アメリカ東部ペンシルベニア州フィラデルフィアの会員制クラブ、ユニオン・リーグ・オブ・フィラデルフィアが、15か所に分かれていた会員データをつなぎ、宴会の需要予測に使っている。来場時の通知アプリも仕上げの段階にある[1]。米国のクラブ業界誌クラブ・アンド・リゾート・ビジネスが2026年9月30日に報じた[1]。同クラブは1862年に北軍を支える愛国団体として生まれた歴史の長いクラブで、市内の本館のほか、周辺に3つのゴルフコースを持つ[3]。

運営の規模は7施設、従業員約1,200人で、データの統合はおよそ10年前に始まった[1]。

コースに着く前に、バッグドロップ(車からゴルフバッグを預ける場所)の係が自分の到着を知っている。このクラブでは、ゲートを通った会員について到着の約2分前に写真と車、来場目的がバッグドロップへ届く仕組みを仕上げている[1]。

ビジネスの側では、ばらばらの業務システムをどうつなぐか、誰が技術の責任を持つか、会員の個人情報をAIにどう扱わせるかが論点になる。本稿では統合データの使い道を3つに分けて整理し、別のクラブの例と日本の状況を並べる。主な情報源は業界誌1誌の記事だ。

ユニオン・リーグ・オブ・フィラデルフィアはどんなクラブで、何を統合したのか

ユニオン・リーグ・オブ・フィラデルフィアは、飲食・宿泊・ゴルフなどを会員に提供する米国の会員制クラブだ[1][3]。公式サイトのゴルフページは、ペンシルベニア州のユニオン・リーグ・ゴルフクラブ・アット・トーレスデール、ユニオン・リーグ・リバティ・ヒル、ニュージャージー州のユニオン・リーグ・ナショナル・ゴルフクラブの3コースを載せている[3]。

池と砂地に囲まれたホールが森の中に並ぶゴルフコースを上空から見た写真
ユニオン・リーグ公式サイトのゴルフページに掲載されたコースの空撮。池と砂地のあいだにフェアウェイとグリーンが並ぶ(画像:The Union League of Philadelphia公式サイトより)

取材に答えたのは、最高執行責任者(COO)のショーン・パーマー氏だ[1]。PGA(全米プロゴルフ協会)の資格を持ち、同じペンシルベニア州のメリオン・ゴルフクラブで9年働いたあと、2014年にユニオン・リーグへ移った[1]。

パーマー氏によると、会員の情報はかつて15の別々の置き場に入っていた[1]。飲食の予約、ティータイム、宿泊、購買、イベントの申し込み、会員口座の動きなどだ[1]。クラブは約10年前からこれらをまとめ、ダッシュボード(指標を一画面に並べた管理画面)を作ってきた[1]。

飲食予約、ティータイム、宿泊、購買、イベント申し込みなど15の置き場のデータを統合し、宴会の予測、会員の一覧、会員同士の引き合わせに使い、来場通知は仕上げ中という流れ
分かれていた会員データと、統合後の使い道

方針は、一つの製品ですべてをまかなうことではない[1]。機能ごとに最適な技術を選び、データの共有でつなぐという考え方だ[1]。現場には社内のIT担当チームがあり、その中のプログラマーがAIツールを使って既存のデータの上に独自のアプリを作っている[1]。使っているシステムや製品の名前は、記事では明かされていない。

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会員データの統合で宴会の需要予測と人員配置はどう変わるのか

統合したデータの使い道の一つ目は、宴会の需要予測だ。宴会インテリジェンス・レポートと呼ぶ画面で、30日先または60日先までのイベント、人数、食事の時間帯、会場を見通せる[1]。パーマー氏が例に選んだ日には、宴会の予約が259食分入っていた[1]。

着席で料理を順に出す形式の宴会では、人数に応じた配置の基準を設定し、必要な給仕の人数を出せる[1]。システムは配置人数を提案できる段階にあり、パーマー氏は将来シフト表の下書きにも使えると見ている[1]。

従来の数字の出方と比べると、違いがはっきりする。月次の財務報告は、月の締めから12〜15日後に届くのが普通だった[1]。パーマー氏は、これでは問題に気づいても手当てが遅れてしまうと話す[1]。

宴会指示書(BEO)は、料理や会場設営の段取りを部署間で共有する書類だ。パーマー氏は、BEOを囲む会議とクリップボードの運用を、厨房や宴会担当がそれぞれの役割に必要な情報を画面で見る形に変えられると考えている[1]。表計算ソフトへの入力に費やす時間を減らし、人の仕事を効率化することが狙いだと話す[1]。

筆者の見立てでは、宴会は売上と人件費の両方が大きく動く部門で、予測を早めると人員の手配と食材の発注が先に決まる。ただし記事は予測の精度や削減できた人件費を数字で示していない。効果の大きさは現時点では判断できない。

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到着2分前のバッグドロップ通知と会員の一覧はどう使われるのか

二つ目の使い道は、来場する会員の一覧だ。パーマー氏は、5時15分に予約を入れた会員について、写真、職業、出身大学、来場の頻度、よく使う施設、飲食の注文履歴をまとめた画面を見せた[1]。ゴルフをするか、宿泊するか、ゴルフショップで服を買うかも並ぶ[1]。

例に挙がったのは、高級ダイニングに60人が入る夜だ[1]。パーマー氏は、スタッフが客一人ひとりを知っていれば名前で迎えられ、好みの飲み物を用意できると話す[1]。

三つ目が、ゲートとバッグドロップをつなぐアプリだ。パーマー氏のチームが仕上げている最中で、ほかのアプリも使い始めて数か月か、まだ開発中だという[1]。

ゲート係が会員の写真と来場目的を確認し、写真をクリックすると、到着の約2分前に写真、車、来場目的がバッグドロップへ届き、係がクラブを用意する流れ
ゲートからバッグドロップへの来場通知の流れ

ゲート係の画面には、近づいてくる会員の写真と、レッスンや夕食といった来場目的が出る[1]。係が写真をクリックすると、会員が約2分の距離にいる段階でバッグドロップに通知が届く[1]。通知には写真、車、来場目的が含まれ、係はクラブを準備して待てる[1]。到着をどう検知しているかは、記事では説明されていない。

もう一つ、会員同士の引き合わせにもデータを使う。会員が登録した趣味、職業、家族の情報と、施設の利用データを組み合わせ、関心の近い会員を探す[1]。退会する会員は、男性のゴルフ仲間や釣りの会のような居場所を見つけられていないことが多いという[1]。

ただし記事は、こうしたアプリをどこまで広げるかを決めるうえで、セキュリティとアクセス権限が引き続き検討課題だと書く[1]。写真、職業、出身大学まで並ぶ一覧を誰が見られるのかは、記事では詳しく述べられていない。

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会員データをAIで扱うとき、クラブは何に気をつけているのか

同じ業界誌は2026年10月8日、フロリダ州ボカラトンのセント・アンドリュース・カントリークラブの事例を載せた[2]。管理・技術部門のディレクターとして新設された役職に就いたニシャニ・ケスラー氏は、技術はすべての部署に関わるので、どのクラブにも技術の責任者が必要だと話す[2]。同クラブは外部のIT会社と組み、最近BIシステム(データを集めて分析する仕組み)を導入した[2]。

ケスラー氏は、スタッフが会員の氏名や電話番号などの個人情報をAIに入力してはいけないとしている[2]。AIの出力は人が確認することを求め、AIは答えそのものではなく道具や補助役であるべきだと話す[2]。会員向けのチャットボットより、裏方の業務に使い道があると見ている[2]。

セキュリティ面では、侵入テスト(外部からの攻撃を模した検査)と毎月のサイバーセキュリティ研修を行い、研修は人事の新人研修に組み込んでいる[2]。会員が同伴するゲストの入場を把握する技術も調べている[2]。

二つのクラブは、データをつなぐ方向は同じでも、個人情報の扱いへの言及の濃さが違う。筆者の見立てでは、到着通知や会員の一覧は便利さと監視されている感覚が隣り合う機能で、運用ルールの開示が会員の受け止めを左右する。ただし両クラブとも業界誌1誌の取材記事が情報源で、会員の評価や運用規程は公開されていない。

紅葉した木々と複数のバンカーがあるフェアウェイを見下ろした写真
同じくゴルフページに掲載されたコースの写真。手前にバンカー、奥に紅葉した木々と建物が見える(画像:The Union League of Philadelphia公式サイトより)
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日本のゴルフ場でも会員データの統合とAIの扱いは進んでいるのか

日本でも予約や来場のデータをつなぐ動きは進んでいるが、クラブが自前で15の置き場を統合するような事例は、公開情報では確認できなかった。目立つのは、基幹システム(予約・受付など運営の中心の業務システム)を担う事業者側の再編だ。

ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)は2026年6月8日、ゴルフ場向け基幹システム「Yardage Club」の事業を東京システムハウスへ譲渡すると発表した[4]。譲渡日は2026年7月1日だ[4]。理由はWEB予約の比率が上がり、予約サイトとの連携やリアルタイムのデータ処理が求められていることだ[4]。今後はGDOが予約など場外のWEB領域を、東京システムハウスが場内の運営を担う[4]。

AIと個人情報については、個人情報保護委員会が2023年6月2日に生成AIサービスの利用に関する注意喚起を出している[5]。事業者が個人情報を含む指示文を入力する場合、利用目的の達成に必要な範囲かを十分に確認することを求めた[5]。提供事業者が入力データを機械学習に使わないことの確認も求めている[5]。

項目米国の2クラブ日本
データ統合の担い手クラブ内のIT担当チームや技術責任者[1][2]基幹システムの提供事業者と予約サイトが役割を分担[4]
統合の範囲飲食・ティータイム・宿泊・購買など15の置き場[1]クラブ単位の統合範囲は公開情報では確認できなかった
AIへの個人情報の入力クラブ独自の方針で入力しない[2]個人情報保護委員会が利用目的の範囲確認などを注意喚起[5]
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まとめ

ユニオン・リーグ・オブ・フィラデルフィアの取り組みの中心は、新しい製品の導入ではなく、15の置き場に分かれていた会員データを約10年かけてつないだことにある[1]。その上に、30日先・60日先の宴会予測と会員の一覧が載り、到着約2分前の来場通知も仕上げの段階にある[1]。一方で、どこまで広げるかはセキュリティとアクセス権限が検討課題として残る[1]。

コースに着いたときに名前で迎えられ、クラブがすでに用意されている体験の裏には、予約や購買の記録を誰が見られるかという設計がある。運営や投資を判断する立場なら、システムの選定より先に、データをつなぐ担当者を置くことと、どの情報をAIに渡すかの線引きを決めることが判断材料になる。ユニオン・リーグは写真や職業までAIで束ねており、氏名などをAIに入力しないフロリダのクラブとは線の引き方が違う[1][2]。

日本では基幹システムの事業者側で役割の分担が進んでいる[4]。クラブ単位で同じことが起きるかは、今後の公開事例を見て判断したい。

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よくある質問(FAQ)

Q. ユニオン・リーグ・オブ・フィラデルフィアはゴルフ場なのか。
A. 飲食や宿泊も提供する会員制クラブで、ゴルフはその一部だ。ゴルフコースは3つある[3]。

Q. 到着の2分前に通知が来るのはどんな仕組みなのか。
A. 仕上げ中のアプリでは、ゲート係が会員の写真をクリックすると、バッグドロップに写真、車、来場目的が届く[1]。到着の検知方法は記事では説明されていない[1]。

Q. 会員の個人情報をAIに入れても問題ないのか。
A. フロリダ州のクラブは氏名や電話番号をAIに入力しない方針をとっている[2]。日本では個人情報保護委員会が、入力前に利用目的の範囲と機械学習に使われないことの確認を求めている[5]。

出典

  1. Is This America’s Most Data-Driven Private Club?, Club + Resort Business, 2026-09-30. https://clubandresortbusiness.com/is-this-americas-most-data-driven-private-club/
  2. Clubs Need Someone to Own the Technology, Club + Resort Business, 2026-10-08. https://clubandresortbusiness.com/clubs-need-someone-to-own-the-technology/
  3. Golf, The Union League of Philadelphia 公式サイト. https://www.unionleague.org/golf
  4. ゴルフ場向け基幹システム運用を東京システムハウスへ事業譲渡 次世代ゴルフ体験創出の戦略的パートナーシップへ, ゴルフダイジェスト・オンライン(PR TIMES), 2026-06-08. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000334.000006485.html
  5. 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等, 個人情報保護委員会, 2023-06-02. https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_alert_generative_AI_service.pdf