豪州の117年続くゴルフクラブが停電時の地域拠点に、日本のゴルフ場も防災の拠点になれるか

オーストラリア南東部ビクトリア州の地方の町トラファルガーにあるトラファルガー・ゴルフクラブが、太陽光パネルと蓄電池、予備の発電機を組み合わせた独立型の電源を設置した[1]。トラファルガーはメルボルンの東約124kmにある町で、地方自治体はボーボー郡にあたる[4]。クラブの創立は1909年で、一次記事は創立117年のクラブと紹介している[1][2]。

狙いは、異常気象で電気が止まったときに、地域住民が暖を取り、湯を使い、携帯電話を充電できる拠点をつくることだ[1]。事業費の90%は州政府の補助で賄われ、設備は数週間以内に稼働する見込みと2026年10月2日に報じられた[1]。

日本でも、中国地方5県が2026年5月にゴルフ場の連盟と協定を結び、会員コースのクラブハウスを災害時の避難先にできるようにした[8]。週末に通うコースが、災害時には地域の避難先を兼ねる仕組みは日本にもすでにある。

ビジネスの側から見ると、論点は投資判断だ。補助率、電気代の削減額、平時と停電時の二つの使い道をどう評価するかで、遊休資産になりがちな設備が採算に乗るかが決まる。本稿では設備の規模と補助の仕組みを整理し、日本の事例と比べる。

トラファルガー・ゴルフクラブはどんな電源設備を入れたのか

設備は、出力35kWの太陽光パネル、容量107kWhの蓄電池、出力40kWの予備発電機の三つでできている[1]。kWは一度に出せる電力の大きさ、kWhはためておける電力量を表す。

牧草地に囲まれたトラファルガー・ゴルフクラブのコースとクラブハウスを上空から見た写真
牧草地の中に広がるトラファルガー・ゴルフクラブのコースと、手前のクラブハウス・駐車場(画像:Trafalgar Golf Club公式サイトより)

昼に太陽光でつくった電気を蓄電池にため、足りないときは発電機が補う。一次記事はこの設備を、送電網に頼らずに動くスタンドアローン型の電源と説明している[1]。

設備は災害対応のために4時間以内に別の場所へ移せる[1]。被害の大きい地区へ運び込めば、ゴルフ場の外でも同じ役割を果たせる設計だ[1]。事業名は「トラファルガー・ゴルフコース・レジリエンス・プロジェクト」で、レジリエンスは災害から立ち直る力を指す[1]。

太陽光35kWと予備発電機40kWが蓄電池107kWhに電気を送り、停電時に開放するクラブハウスで冷暖房・給湯、調理・冷蔵、携帯電話の充電を提供する流れ
トラファルガー・ゴルフクラブの電源設備と停電時の使い道

停電時にクラブハウスで提供するのは、冷暖房、給湯、調理、冷蔵、携帯電話の充電だ[1]。機器はセカンド・ライフ・ソーラーから購入し、PHNXXが施工した[1]。一次記事の時点で設置は終わっており、稼働は数週間以内の見込みだ[1]。

事業は、クラブと地域の気候変動対策団体ギップスランド気候変動ネットワークの共同事業として進められた[1]。ギップスランドはビクトリア州東部の地方名で、トラファルガーはその西部に位置する[4]。

同団体の担当者でクラブ会員でもあるクリス・バーフット氏は、住民が避難してきて携帯を充電し、お茶を飲みながらテレビを見られる場所にしたいと話している[1]。

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なぜ地方のゴルフクラブが停電時の避難拠点になったのか

きっかけは、この数年に地域で起きた約5日間の大停電2回で、うち1回は2025年に起きた[1]。もう1回の時期は一次記事に書かれていない。ビクトリア州全体では2024年2月13日の嵐で送電設備が壊れ、ピーク時に50万人が電気を失った[6]。

この嵐では、停電した顧客の90%が48時間以内に復旧した[6]。一方で長引く停電に備え、州と連邦政府は、7日以上停電した世帯に週1,920豪ドル(約21万円。1豪ドル=110円換算)を最長3週間支給する制度を設けた[6]。

ミアブー・ノースという町には電力会社のオースネットが大型発電機を持ち込み、住民が電気を使える拠点にした[6]。州は弱い立場の住民を優先して発電機を配る準備も進めた[6]。

発電機は嵐のあとに運び込む臨時の手段で、届くまでに時間がかかる。常設の電源なら、停電が起きたその日から拠点を開けられる。

平屋建てのトラファルガー・ゴルフクラブのクラブハウスと屋根付きの屋外スペース
トラファルガー・ゴルフクラブのクラブハウス。左手に屋根付きの屋外スペースがある(画像:Trafalgar Golf Club公式サイトより)

トラファルガーの取り組みは、この発電機による臨時の拠点を、常設の設備に置き換える発想に近い。ゴルフクラブは1953年から町の北側の現在地にあり、18ホールのコースとクラブハウスを持つ[3]。人が集まれる建物と、パネルを置ける土地が最初からそろっていたことも、拠点に選ばれた理由と考えられる。

大半の世帯が2日で復旧しても、残りの数日を過ごす場所が要る。約5日の停電を2回経験した町にとって、その受け皿を平時から用意しておく意味は大きい。

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補助率90%の電源投資はゴルフクラブにとって割に合うのか

クラブの見込みでは、電気代は年9,000〜10,000豪ドル(約99万〜110万円)減る[1]。事業費の90%は州の「100ネイバーフッド・バッテリーズ」プログラムが負担した[1]。残りの10%を誰が出したかは、一次記事に書かれていない。

このプログラムは、地域単位の蓄電池に補助金を出すビクトリア州政府の事業だ。2025年7月の州の発表時点で州内に90基が導入済みで、第3回の公募で合計100基を超える計画とされた[5]。第3回の補助は1基あたり最大40万豪ドル(約4,400万円)で、これは上限であり個々の交付額ではない[5]。

トラファルガーの総事業費は、一次記事では公表されていない[1]。そのため回収年数は計算できない。仮にクラブが残りの1割をすべて出したとしても、年約100万円の削減で負担分を早く取り戻せる可能性が高い、というのが筆者の見立てだ。

比較のため、日本の環境省の補助事業を使った六甲国際ゴルフ倶楽部(兵庫県)の例を置く。駐車場に太陽光パネル付きの屋根を設けた事業で、補助率は3分の1だ[7]。設備はPPA(第三者が設備を持ち、発電した電気を施設に売る方式)で導入され、PPA事業者はシン・エナジーだ[7]。クラブは初期費用や保守費を負わず、発電量に応じたサービス料を払う[7]。資料はエネルギーコストの削減を年約182万円、投資回収を補助ありで約6年、補助なしで約8年と試算している[7]。設備を持つのはPPA事業者なので、この回収年数はクラブ自身が設備費を取り戻す年数とは読めない。

CO2の削減は年約36トンで、視察や近隣の小学校の社会科見学の受け入れにもつながったと報告されている[7]。電気代以外の効果を数字にしにくい点は、トラファルガーの停電対策も同じだ。

トラファルガーの補助率は90%で、六甲国際ゴルフ倶楽部の3分の1を大きく上回る
項目トラファルガーGC(豪州)六甲国際GC(日本)
主な設備太陽光35kW・蓄電池107kWh・発電機40kW[1]駐車場の太陽光パネル付き屋根(PPA方式)[7]
補助の出し手ビクトリア州政府[1]環境省[7]
補助率90%[1]3分の1[7]
年間の削減額約99万〜110万円(見込み)[1]約182万円[7]
停電時の地域開放あり[1]—

※「—」は本稿で確認していない項目。

電気代

米国のワイヤレス給電企業WiTricity(ワイトリシティ、磁気共鳴方式で非接触の電力伝送を手がける企業)が2026年2月、電源プラグを一切使わないゴルフカート専用の充電パッド「MR/1」の新モデルを発表した[1][2]。カート側に受電ユ[…]

日本のゴルフ場は停電時に地域へ電気を出せるのか

部分的には出せるが、本稿で確認できた電気の開放の計画は1例にとどまった。避難先としての協定は進んでおり、中国地方5県は2026年5月25日、会員99クラブを持つ中国ゴルフ連盟と災害時の支援協定を結んだ[8]。

協定の中身は、クラブハウスへの被災者の収容、飲料水・食事場所・浴場の提供、臨時ヘリポートの設置などで、電源の提供は項目に入っていない[8]。太陽光の導入も進むが、リソルグループの有田リソルゴルフクラブ(和歌山県)は年間電力の約30%を賄う設備を2026年2月に稼働させ、災害時の非常用電源は将来の検討課題としている[9]。

電気の開放に最も近い例は、横浜市の磯子カンツリークラブだ。出力306.8kWの太陽光と容量193.5kWhの蓄電池を駐車場に設ける計画が2024年1月に報じられ、災害時には余剰電力を地域住民に提供できるとされた[10]。

比較軸トラファルガーGC(豪州)日本の事例
避難先としての役割停電時にクラブハウスを開放[1]中国5県が99クラブの連盟と協定[8]
電源の提供冷暖房・給湯・調理・充電[1]磯子CCが将来の地域開放を検討[18]
設備の主目的地域の停電対策[1]脱炭素とコスト削減が中心[9]
公的補助州が事業費の90%[1]環境省事業で3分の1の例[7]

磯子カンツリークラブのその後

設備は計画どおり動き出した。クラブは2024年2月、EV充電器(急速50kWが1基、普通3.2kWが3基)の利用を4月1日から始めると告知し[19]、同年8月には利用時間を朝6時からに広げた[20]。充電器はソーラーカーポートと一体の設備で、発電した電気はクラブハウスでも使い、余った分は蓄電池にためて夜間や災害時の予備電源にする設計だ[18]。

屋根に太陽光パネルを並べたカーポートの下に電気自動車が並び、手前にEV急速充電器が立つ完成イメージ
磯子カンツリークラブの駐車場に設けたソーラーカーポートとEV充電器の完成イメージ(画像:afterFIT・双日・ミライト・ワンの発表資料より)

一方、地域への電気の開放はまだ将来の話だ。事業者3社の発表は、有事の電源として本設備の「地域解放も視野にいれています」という書き方にとどまる[18]。開放の手順を決めた市との協定、住民と行う訓練、実際の停電で使った記録は、クラブの告知や横浜市の公開資料では確認できなかった。

立地の役割ははっきりしている。横浜市磯子区は「磯子カントリークラブ一帯」を、大地震で火災が広がったときに逃げ込む広域避難場所に指定し、上中里町や栗木などの住民の避難先に割り当てている[21]。逃げ込める広い空間と、電気をためる設備が同じ場所にある点は、トラファルガーと共通する。電気を住民に出すには、誰がいつ設備を開けるかを市と決めておく必要がある、というのが筆者の見立てだ。

太陽光

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日本のゴルフ場は災害のときに何をしてきたのか

電気の開放は少ないが、ゴルフ場が災害時に地域を支えた例は、実際の災害でも協定でも積み重なっている。

実際の災害で施設を開いた例

2019年9月の台風15号(房総半島台風)では、千葉県で停電が長く続いた。大多喜城GC(大多喜町)や米原GC(市原市)など10数コースが地元住民に風呂を提供し、1日600人が1週間ほど利用したコースもあった[11]。千葉県の支配人会の会長を務める千葉夷隅GCの岡本豊総支配人は、地域の避難場所としてクラブハウスを提供するなど、ゴルフ場が地域への貢献を担えたと振り返っている[11]。

2024年1月1日の能登半島地震では、震度5強だった石川県小松市の小松カントリークラブが、クラブハウスと駐車場の一部を住民の緊急避難所として開放した[12]。福井県あわら市の芦原ゴルフクラブも、休業日だった当日の夜から住民約30人にクラブハウスと駐車場を開いた[12]。周辺が断水した能登カントリークラブ(石川県宝達志水町)は、3日まで給水所として住民に水を配った[12]。

2026年7月28日に熊本県で起きた地震では、震源に近いとされる八代GCが8月上旬まで休業した。それでも支配人は、8月5日から20日まで風呂を無料で開放すると答えている[14]。

協定で役割を先に決めておく例

佐賀県多久市は熊本地震を機に、2016年6月、佐賀クラッシックゴルフ倶楽部、天山カントリークラブ、多久ゴルフ倶楽部の3コースと災害時の施設利用協定を結んだ[13]。内閣官房の国土強靱化の事例集によると、佐賀クラッシックゴルフ倶楽部は高台にあり、100名程度を収容できる避難所としての役割が期待されている。井戸水を使う浴場で温水を出せ、平坦な練習場は防災ヘリの臨時離着陸場になる[13]。同倶楽部は自家発電設備や備蓄の見直しにも取り組んでいる[13]。

千葉県富津市は2021年3月、PGMプロパティーズ5が市内に持つ南総ヒルズカントリークラブ、総丘カントリー倶楽部、東京ベイサイドゴルフコースの3コースと協定を結んだ。クラブハウスや駐車場を、市民や帰宅困難者の緊急避難場所などに使える[15]。

神奈川県では2026年4月6日、県、相模原市、東京電力パワーグリッドなどが、津久井湖ゴルフ倶楽部(相模原市緑区)を運営する津久井湖観光と協定を結んだ。コースを警察・消防・自衛隊などの活動拠点や宿営地、ヘリコプターの臨時離着陸場に使える[16]。前の節で見た中国5県の協定は、こうした役割を5県と99クラブの規模でまとめて決めた形だ[8]。

千葉県勝浦市では2026年1月、ゴルフ場やホテルを含む「東急リゾートタウン勝浦」を運営する東急不動産が市と包括連携協定を結び、連携事項に「防災及び災害時支援に関すること」を入れた[17]。ゴルフ場に限った協定ではなく、支援の中身は発表資料に書かれていない。

日本のゴルフ場8事例が災害時に提供した役割の一覧。避難先・入浴・給水・ヘリの離着陸・応援部隊の拠点には実例や協定があるが、電源の提供は磯子CCの将来の検討だけ
日本のゴルフ場が災害時に担った役割。電源の提供を明記した例は見当たらない

並べてみると、日本のゴルフ場が担ってきたのは、広いクラブハウス、浴場、井戸水、平地という、もともと持っている設備を開く役割だ。トラファルガーのように電気そのものを地域に出す役割は、まだ空いている。

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ゴルフ場をイオンのように国の防災の枠組みに入れたら潰れにくくなるのか

イオンは2017年7月1日、セブン&アイ・ホールディングスなど流通7社とともに、災害対策基本法に基づく指定公共機関に指定された[22]。指定公共機関は、公共的機関や公益的事業を営む法人の中から内閣総理大臣が指定するもので、2026年9月16日時点で112機関ある[23]。指定された機関は、平時に防災業務計画の作成や資材の備蓄を行い、発災時には国や自治体と連携して応急対策にあたる[24]。

流通7社を指定した理由は、自治体や政府の要請に応じて、全国の店舗網を生かして支援物資を調達し、被災地へ届けることが見込まれるためと説明された[22]。指定の中心は物資の供給で、店舗を拠点に使う取り組みは別に進んでいる。イオンの資料によると、2019年7月に内閣府と災害対応に関する連携協定を結び、店舗を応援部隊の進出拠点に使うことや保有機材の活用を決めた。行政や自治体などと結んだ防災協定は1,050を超える[25]。

ゴルフ場は指定公共機関の一覧に入っていない[23]。防災上の位置づけは、ここまで見た自治体との協定か、市による避難場所の指定だ[8][15][16][21]。指定や協定に伴う補助や税の優遇は、本稿で確認した内閣府と自治体の資料には書かれていなかった。六甲国際ゴルフ倶楽部の太陽光には環境省の補助が付いたが[7]、これは脱炭素の設備に対する補助で、防災の役割への対価ではない。

指定公共機関、自治体との防災協定、広域避難場所の指定の3つを、誰が決めるか・根拠・平時の役割・ゴルフ場の現状で比べた図。ゴルフ場は指定公共機関の一覧に入っていない
指定公共機関・防災協定・広域避難場所の違い。ゴルフ場は後の2つで防災に関わっている

筆者の見立て:経営を支えるのは指定そのものより「地域が残してほしい理由」

筆者は、ゴルフ場にもイオンのような国の位置づけがあれば、立地が不便なコースでも閉鎖しにくくなるのではないかと考えている。広い土地、大きな駐車場、浴場、厨房、ヘリが降りられる平地を一か所に持つ民間施設は、地方では多くない。

この考えに近い実例が、神奈川県の茅ヶ崎ゴルフ場だ。運営事業者は2014年に経営上の理由で撤退の意向を示したが、茅ヶ崎市は広域避難場所の確保などを理由に、土地所有者にゴルフ場の存続を求めた[26]。県などは30年間の長期契約で運営事業者を募り、2025年11月に優先交渉権者を選んだ[27]。選ばれた提案には、一時避難場所や物資集積場所としての活用と、行政と連携した平時からの防災の取り組みが入っている[27]。防災上の役割が、ゴルフ場を残す理由の一つになった例だ。

ただし、この見立ての根拠はまだ弱い。茅ヶ崎の例は、土地の約6割を県が持ち、周りを住宅地が囲むという都市部の条件がそろっていた[26]。防災の役割がゴルフ場の採算そのものを支えたことを示す数字は、公開資料にはない。

課題は三つある。第一に、指定や協定はそれだけでは収入にならない。指定公共機関になれば、防災業務計画の作成や備蓄という役割が増える[24]。それに見合う補助は、本稿で確認した範囲にはなかった。

第二に、設備の維持費は平時の収益で賄うことになる。トラファルガーの電源も、州の9割の補助と年約100万円の電気代削減があって成り立つ[1]。協定を結んでも、来場者が減ったコースの芝や建物を維持する費用は、プレー料金から出る。

第三に、辺鄙な立地ほど、避難してくる住民の数は少ない。住宅地に近い茅ヶ崎や磯子と比べ、山あいのコースが担えるのは、ヘリの離着陸場や応援部隊の宿営地のように、周りに人が少ないことがむしろ生きる役割だと考えられる。

筆者は、国の指定を目指すより、協定で役割を細かく決め、その役割に要る設備(蓄電池、井戸、浴場の非常用電源)に補助が付く形のほうが、地方のコースの存続に効くと見ている。トラファルガーの90%補助は、その一つの型だ。

まとめ

トラファルガー・ゴルフクラブの電源は、太陽光35kW、蓄電池107kWh、発電機40kWという小さな規模だ。それでも州が事業費の9割を負担し、平時の電気代削減と停電時の地域開放を一つの設備で両立させた点に新しさがある。

週末に通うコースのクラブハウスが、停電時には近所の人が充電や食事に来る場所になりうると知ると、ゴルフ場の見え方が少し変わる。設備投資を判断する立場なら、補助率と年間の削減額に加えて、停電時の地域への価値を評価に入れるかどうかが分かれ目になる。

日本では避難先としての協定が先行し、電気の開放は本稿で確認できた範囲では磯子カンツリークラブが将来の検討としているだけだ。ゴルフ場は国の指定公共機関ではなく、協定や避難場所の指定に伴う補助や税の優遇も確認できない。防災の役割を経営の支えにするには、役割に要る設備への補助が鍵になる、というのが筆者の見立てだ。トラファルガーの設備が数週間以内に動き出したあと、実際の停電でどう使われるかが次に見るべき点だ。

よくある質問(FAQ)

Q. トラファルガー・ゴルフクラブはどこにあるのか。
A. オーストラリア・ビクトリア州のトラファルガーにあり、メルボルンから東に約124kmの町だ[4]。

Q. 停電時にゴルフをしない住民も使えるのか。
A. 使える。停電時には地域住民がクラブハウスで冷暖房、給湯、調理、携帯電話の充電を利用できる計画だ[1]。

Q. 日本のゴルフ場でも同じことはできるのか。
A. 避難先としての協定はすでに結ばれているが、電気の開放まで踏み込んだ例は限られる。横浜市の磯子カンツリークラブは蓄電池付きの設備を稼働させ、地域への開放を将来の検討課題としている[18][19]。

Q. ゴルフ場はイオンのような指定公共機関になっているのか。
A. なっていない。2026年9月16日時点の指定公共機関112機関にゴルフ場は入っておらず[23]、ゴルフ場は自治体との協定や避難場所の指定で防災に関わっている[8][21]。

出典

  1. Trafalgar Golf Club prepares to launch solar and battery community resilience hub, Golf Industry Central, 2026-10-02. https://www.golfindustrycentral.com.au/golf-industry-news/trafalgar-golf-club-prepares-to-launch-solar-and-battery-community-resilience-hub/
  2. Trafalgar Golf Club 公式サイト(Established 1909). https://trafalgargolf.com.au/
  3. Holiday at home: Victoria’s secret, Golf Australia. https://www.golfaustralia.com.au/feature/holiday-at-home-victorias-secret-596155/page3
  4. Trafalgar, Victoria, Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Trafalgar,_Victoria
  5. Driving Down Power Bills With Neighbourhood Batteries, Premier of Victoria, 2025-07. https://www.premier.vic.gov.au/driving-down-power-bills-neighbourhood-batteries
  6. Working Together For Victorians After Extreme Storms, Joint Media Release, 2024-02-16. https://www.premier.vic.gov.au/sites/default/files/2024-02/240216-Working-Together-For-Victorians-After-Extreme-Storms.pdf
  7. 民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業 事例(六甲国際ゴルフ俱楽部), 環境省. https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/case/pdf/2024/enetoku-jirei-2024-71.pdf
  8. 「災害時における被災者へのゴルフ場の支援協力に関する協定」の締結について, 広島県. https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/669535.pdf
  9. 「有田リソルゴルフクラブ」、ソーラーカーポートを稼働開始, リソルグループ, 2026-02-25. https://www.resol.jp/resol/news/pdf/release_1171.pdf
  10. 磯子CCのソーラーカーポート計画, みんなのゴルフダイジェスト, 2024-01-29. https://www.golfdigest-minna.jp/_ct/17680478
  11. 台風15号被害のコース営業再開。地域貢献も, 週刊ゴルフダイジェスト 2019年10月29日号「BACK9」. https://www.golfdigest.co.jp/digest/column/back9/2019/10/29/i.asp
  12. 能登半島地震 ゴルフ場クラブハウスは緊急避難先に, GDO ゴルフダイジェスト・オンライン, 2024-01-04. https://news.golfdigest.co.jp/news/article/163525/1/
  13. 国土強靱化 民間の取組事例435 ゴルフ場施設をヘリの離着陸や入浴もできる避難所として提供(佐賀クラッシックゴルフ倶楽部), 内閣官房. https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/h29_minkan/pdf/2435.pdf
  14. 熊本地震で八代GCはお風呂無料開放! 被災地に寄り添うゴルフ場の取り組み, みんなのゴルフダイジェスト, 2026-08-23. https://www.golfdigest-minna.jp/_ct/17859682
  15. 災害時におけるゴルフ場施設の利用に関する協定, 富津市, 2021-04-20. https://www.city.futtsu.lg.jp/0000006549.html
  16. 災害時における津久井湖ゴルフ倶楽部の施設の使用等に関する協定を締結します, 神奈川県, 2026-04. https://www.pref.kanagawa.jp/docs/j8g/prs/r7064691.html
  17. 勝浦市における包括連携協定の締結について, 勝浦市・東急不動産, 2026-01-29. https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/news/companies/pdf/8510802a772954accf765e65e36f6442ebbbfb88.pdf
  18. afterFIT、双日、ミライト・ワンが磯子カンツリークラブに先進的なグリーンソリューションを提供, ミライト・ワン, 2024-01-11. https://www.mirait-one.com/info/000915.html
  19. EV充電器設置のお知らせ, 磯子カンツリークラブ, 2024-02-13. https://isogocc.jp/information/news/12074/
  20. EV充電器 営業時間変更のお知らせ, 磯子カンツリークラブ, 2024-08-08. https://isogocc.jp/information/news/12627/
  21. 広域避難場所一覧, 横浜市磯子区. https://www.city.yokohama.lg.jp/isogo/bosai_bohan/saigai/hinan/kouikihinan.html
  22. 松本内閣府特命担当大臣閣議後記者会見要旨, 内閣府, 2017-06-27. https://www.cao.go.jp/minister/1608_j_matsumoto/kaiken/2017/0627kaiken.html
  23. 指定公共機関, 内閣府 防災情報のページ. https://www.bousai.go.jp/taisaku/soshiki/s_koukyou.html
  24. 中間貯蔵・環境安全事業株式会社の指定公共機関への指定について, 内閣府(防災担当), 2026-09-16. https://www.bousai.go.jp/pdf/260916_1100_koukyo_shitei.pdf
  25. イオンの防災への取り組み, イオン(四国南海トラフ地震対策戦略会議 資料), 2023-06-26. https://www.skr.mlit.go.jp/kikaku/senryaku/pdf/13-kaigi/06_【資料4-1】構成機関からの情報提供について%E3%80%80イオンの防災への取り組み.pdf
  26. 茅ヶ崎ゴルフ場区域のまちづくりに関する意見交換会 資料, 茅ヶ崎市, 2024-04. https://www.city.chigasaki.kanagawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/057/497/20240426_28shiryou.pdf
  27. 茅ヶ崎ゴルフ場利活用事業の優先交渉権者を選定しました, 神奈川県, 2025-11-07. https://www.pref.kanagawa.jp/docs/gh8/prs/r6053624.html