
タイ国政府観光庁(TAT、Tourism Authority of Thailand)は2026年9月14日から15日にかけて、海外バイヤー49社とタイ国内事業者63社を結び付ける商談会「タイ・ゴルフ・トラベル・マート(TGTM)2026」をバンコクとその近郊で開いた[1]。ゴルフにウェルネスや美食、文化体験、地域をまたぐ移動を組み合わせた旅行商品づくりを旅行業界に促し、「量より質(Value over Volume)」戦略を前面に打ち出した点が今回の特徴だ[1]。
海外ゴルフ旅行の行き先を選ぶ読者にとっては、タイ行きのゴルフ旅行で、単発のラウンド予約ではなく複数エリアを回る周遊型のプランが増えていく可能性を示す動きだ。ビジネス・IT分野の読者にとっては、国という単位で「量から質へ」の差別化戦略を実践する事例として読み解ける。本稿はTGTM2026の商談会の中身から、タイの狙いを追う。
タイのゴルフ商談会「TGTM2026」はどんな規模で開催されたか
TGTMは、TATが毎年開くゴルフツーリズム分野のB2B商談会だ[1]。2026年9月14日、バンコクから西へ約35キロのナコンパトム県にあるロイヤルジェムズ・ゴルフ&スポーツクラブで、参加者交流を兼ねたゴルフトーナメントとして開幕した[1]。翌15日には会場をバンコク・バンナー地区の「トップゴルフ・メガシティ」に移し、海外バイヤーとタイ国内事業者の商談会本番を実施した[1]。
参加したのは北米・欧州・南アジア・東南アジア・オセアニア・北東アジアの6地域から集まった海外バイヤー49社と、タイ国内のゴルフ場、ホテル・リゾート、現地手配会社、ゴルフ関連の観光事業者からなる63社だ[1]。タイ国内には250以上のゴルフ場がある[1]。TATは、東部臨海地域・カンチャナブリ・東北部へ向かう道路網や、東部臨海地域の空の玄関口となるウタパオ国際空港など、交通の改善が複数地域をまたぐ行程の選択肢を広げているとも説明した[1]。

スポーツを観光資源として地域の事業に組み込む手順を、推進組織と資金、地域資源の棚卸し、事業開発、担い手の育成まで体系立てて解説した一冊。ゴルフ専門書ではないが、TATがゴルフを起点に地域をまたぐ旅行商品づくりを促す取り組みを、日本の地域側から考える土台になる。
タイ政府観光庁の「量より質」戦略とは何か
TATのキティポン・プラパトン副総裁(デジタル化・調査研究・開発担当)は、来訪者の体験はラウンドの外まで広がるとして、ゴルフを「量より質」戦略の重要な一部と位置づけた[1]。健康・保養を軸にした「ヒーリング・イズ・ザ・ニュー・ラグジュアリー」という打ち出しのもとで、ゴルフを回復・ウェルネス・食・文化・タイ流のホスピタリティをめぐる、より大きな旅の一部として見せていると述べている[1]。
量より質という名前のとおり、来訪者数を追うより1回の旅の中身を厚くする考え方だ。TATはTGTMの狙いとして、滞在の長期化、観光需要の地域分散、国内各地の観光事業者の商機拡大を挙げる[1]。ゴルフはその起点に置かれ、タイ式マッサージやウェルネス、美食、文化体験、ショッピングなどと組み合わされる[1]。

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タイがゴルフ場を4地域に分ける狙いは何か
キティポン副総裁は9月15日の商談会のプロダクトアップデートで、タイのゴルフを4つの地域の個性に分けて紹介した[1]。
| 地域 | TATが紹介したゴルフの特徴 |
|---|---|
| 北部 | 渓谷と山並みに囲まれたハイランドコース |
| 南部 | 海沿いのコースとリンクス風の性格を併せ持ち、ウェルネス商品も充実 |
| 東北部 | 貯水池や水路、河川平野が形づくる谷あいのコース |
| バンコク・中部平原・東部臨海 | 国内で最もゴルフ場が集まる中心地。アクセスがよく、選手権級からリゾート、レジャー向けまで選択肢が広い |

4地域の区分は、単一エリアで完結するゴルフ旅行を、複数地域を回る行程へ広げるための見せ方といえる。TATはTGTM2026を通じて、地域をまたぎ、タイならではの体験を組み合わせたゴルフ行程づくりを旅行業界に促しており、その効果として滞在の長期化と観光需要の地域分散を挙げている[1]。
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商談会は海外の旅行会社にどんな商機をもたらすのか
TGTMは、海外の旅行会社やゴルフツアー専門会社と、タイ国内のゴルフ場・宿泊施設・DMC(デスティネーション・マネジメント・カンパニー、現地手配会社)などを直接引き合わせる場だ[1]。15日午後は事前に予約した商談と自由商談を組み合わせ、バイヤーとセラーが行程づくりや商品条件の交渉を進めた[1]。2026年は海外49社に対しタイ側63社と、受け入れ側の方が多い構成だった[1]。
同じ会場では、ゴルフ関連技術、練習場向けの設備、環境配慮型のゴルフカート、ゴルファー向けウェルネスサービスなどをメディアが試す企画も並行して開かれた[1]。
海外バイヤーより多いタイ側の事業者から組み合わせを選べることは、周遊行程を組むときの選択肢の広さにつながる。旅行会社にとっては、ゴルフだけでなくウェルネスや文化体験を含めた滞在提案を、現地の複数事業者と直接調整できる利点がある。

日本の海外ゴルフツアーもタイのような周遊型パッケージ化を進めているのか
日本の旅行会社が販売するタイ行きゴルフツアーにも、周遊型の商品はすでにある。阪急交通社は「パタヤ1プレイ+バンコク1プレイ」の2都市滞在とゴルフ2ラウンドを組み合わせた6日間ツアーを販売しており、タイ側の観光素材と組み合わせる形自体は珍しくない[2]。ただしこれは、タイ側の周遊資源を旅行会社が商品化しているもので、TATのように国の観光当局が地域区分を示し、ウェルネスや文化までまとめて「量より質」の看板で売り込む取り組みとは主体が異なる。
日本国内に目を移すと、外国人ゴルファーを迎えるインバウンドの側では、2023年3月に宮崎県で商談会「アジアゴルフツーリズムコンベンション2023(AGTC2023)」が開かれた。国際ゴルフツアーオペレーター協会(IAGTO)が主催し、宮崎県や日本ゴルフツーリズム推進協会(JGTA)など8団体で構成する実行委員会が共催した商談会で、35の国・地域から約320人が参加した[3]。2026年3月には、JGTAがタイ・パタヤで開かれたAGTC2026に会員企業2社と共同出展し、海外バイヤー約50社と商談している[4]。
日本のゴルフ場数は、日本ゴルフ場経営者協会(NGK)がゴルフ場利用税の納付をもとに集計した速報値で2,153(2026年6月利用分)だ[5]。2023年6月のやまとごころ.jpの記事は、日本のゴルフ場数を米国に次ぐ世界2位と紹介したうえで、タイなどの先行事例を参考に、地域ならではの観光の魅力とゴルフを組み合わせてどう訴求するかを今後の課題に挙げている[3]。
| 比較軸 | タイ(TAT) | 日本 |
|---|---|---|
| 立場 | 海外ゴルファーのインバウンド誘致(国内の周遊を促す)[1] | 訪日ゴルファーのインバウンド誘致[3] |
| 地域区分による商品化 | TATが4地域に分けて紹介[1] | — |
| 商談会 | TATが自国で毎年開催(TGTM)[1] | IAGTO主催のAGTC2023を宮崎で開催(宮崎県・JGTAなど8団体の実行委員会が共催)[3]。2026年はJGTAがパタヤのAGTCに共同出展[4] |
| ゴルフ場数 | 250以上[1] | 2,153(2026年6月利用分の速報値)[5] |
※「—」は本稿で確認していない項目。
同じ2023年の記事によれば、AGTC2023に参加した海外バイヤーには北海道への送客実績を持つ会社が多い一方、開催地の宮崎は初めてという声が多かった。オーストラリアの旅行会社は、九州方面のゴルフツアーを新たに企画していると話している[3]。三重県では、香港やシンガポール、タイからの団体が5泊ほど滞在し、ゴルフに加えて食事や観光を楽しむ例も出ている[3]。
まとめ
TGTM2026は、タイが掲げる「量より質」戦略を、海外バイヤー49社とタイ国内63社の商談という具体的な場に落とし込んだ事例だ。ゴルフを起点にウェルネス・美食・文化体験を束ね、4つの地域区分と交通網の改善を示して地域をまたぐ行程づくりを促す設計は、単発のラウンド予約とは異なる商品づくりを旅行業界に求めている。旅行会社がこれに応じれば、タイ行きのゴルフプランに周遊型が増えていく可能性がある。国単位で差別化戦略を仕掛ける事例を追いたいビジネス読者には、量より質という掛け声を地域区分と商談会という具体策に落とし込む手順が参考になる。
よくある質問(FAQ)
Q. TGTMとは何ですか。
A. タイ国政府観光庁(TAT)が毎年開くゴルフツーリズム専門のB2B商談会「タイ・ゴルフ・トラベル・マート」の略称で、2026年は9月14〜15日に開催された[1]。
Q. 「量より質(Value over Volume)」戦略とは何ですか。
A. 来訪者数の拡大より旅の中身を重視するTATの観光戦略だ。TGTM2026では滞在の長期化と観光需要の地域分散を狙い、ゴルフをウェルネスや美食、文化体験と組み合わせる形で打ち出された[1]。
Q. 日本からのゴルフ旅行にも関係がありますか。
A. 関係する。TATは旅行業界に地域をまたぐゴルフ行程づくりを促しており、日本の旅行会社が扱うタイ行きゴルフツアーでも周遊型が増える可能性がある。パタヤとバンコクの2都市に滞在する6日間ツアーのような商品はすでにある[2]。
出典
- TAT strengthens global golf tourism connections at Thailand Golf Travel Mart 2026, TAT Newsroom, 2026-09-16. https://www.tatnews.org/2026/09/tat-strengthens-global-golf-tourism-connections-at-thailand-golf-travel-mart-2026/
- 国内・海外のゴルフツアー・旅行パック特集, 阪急交通社. https://www.hankyu-travel.com/golf/
- ゴルフが関係人口創出に寄与するか。アジア最大のゴルフツーリズム商談会から読み解く日本の可能性, やまとごころ.jp, 2023-06-01. https://yamatogokoro.jp/column/inbound-seminarreport/50487/
- 【終了】アジアゴルフツーリズムコンベンション2026 パタヤ大会共同出展, 一般社団法人日本ゴルフツーリズム推進協会(JGTA), 2026-03-26. https://www.jpgta.org/2026-3-26
- 2026年6月度 全国ゴルフ場利用者数・ゴルフ場数(速報値), 一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会(NGK). https://www.golf-ngk.or.jp/news/2026/riyosya/2026.6riyosya.pdf


